2012年3月11日日曜日

書評: 50歳を超えても30代に見える生き方

「心拍数上げると死ぬらしいですよ」「ぜひ、この本を読んでみてください」

そんな言葉で同僚から勧められたのが次の本だ。

50歳を超えても30代に見える生き方 ~人生100年計画の工程表~
著者:南雲吉則
出版社: 講談社プラスアルファ新書

■要するに’健康管理啓発本’

57歳(1955年生まれ)の医師が、長く健康でいられるための秘訣を伝授する本だ。

正しい健康管理のあり方について、自身の実体験からはじまり、医学的、統計学的・・・そして動物学にいたるまで・・・幅広い分野に主張の根拠を求めているので非常に説得力がある。しかし、なんといってもこの本最大のウリは著者自身だろう。著者の南雲氏は本を執筆した当時56歳(2012年現在57歳)。写真を見ると、なるほど56歳には全然見えない。

本人は「脳年齢38歳、骨年齢28歳、血管年齢26歳です!」と豪語する。

■特徴1) 全ての生物には”命の導火線がある”という考え方

こうした著者の主張の出発点を探ると、すべて1つの科学的根拠にたどりつく。生物に存在する’テロメア’・・・著者が「命の導火線」とも呼んでいるもの・・・に基づく考え方だ。細胞が何兆個に分裂してもDNAは正確にコピーされるが、このテロメアはコピーが繰り返されるたびにどんどん劣化してゆくと言う。セミが約7日間という短い期間で一生を終えるのも、人間の最高齢が120歳前後であることも、このテロメアの考え方に基づけば全て説明ができるとのこと。

人が120年を全うせずして亡くなってしまうのは、何らかの原因でこのテロメアをどんどんすり減らしてしまっているからだ、というわけだ。もちろん、本はその原因に迫ってゆく。

■特徴2) ”病気は悪者ではない”という考え方

著者の主張の根底にある考え方のもう1つは「病気は悪者ではない」・・・「病気は人間の命を救うためにある」という考え方だ。全ては進化と適応の結果だと言う。

たとえば、糖尿病。人間には糖分を脂肪分に変換するインシュリンというものが存在する。ところが脂肪分を蓄えすぎると「これ以上、体に脂肪分をつけるのは危険」と細胞が判断し、インシュリンはその変換機能を停止する、というのだ。病状が進行すると、失明したり、手足の先が腐ったりするが著者に言わせれば、それも命を守るために重要性の低い部分から切り捨てていこうとする細胞の意思の現れだ、とのこと。

すなわち”病気”は体からの親切な警告である、ということだ。逆に言えば、薬を飲んだり、手術をしたりして治癒するのは、その”警告を一時的に打ち消しているに過ぎず、それだけで事を済ませるのはかえって危険”というわけだ。警告を発した根本原因・・・たいていは生活習慣なのだが、そこにメスを入れないと「”命の導火線”はどんどん減る一方ですよ」となる。

かくして、この本は生活習慣をどのような方向性にどのように持っていったらいいかについて深く言及しているのである。

【本の章立て】

第一章: アンチエイジング実現の条件
第二章: メタボの真実
第三章: ガンは悪者ではない
第四章: 免疫を高めすぎてはいけない!
第五章: 「老い」にも「病気」にも意味がある
第六章: 細胞から若返る食事術
第七章: 20歳若返るシンプル生活術

■”健康を害したことのない人”は読まなくても良し

冒頭で述べたように医学的、(本人の)経験的、動物学的など色々な見地から、生活習慣を変えることの重要性とその現実的な実践方法について述べているので、読み終えた後「あー、オレも今日から、コトを起こそう!」という気になることは確実だ。

ただし、それだけ説得力を持つ本であっても、これが心に響く年齢は大病をした人・・・もしくは、おそらく30代後半・・・40代以降(ちなみにわたしは39歳)の人だろう。

なぜか!?

実は、著者は決して目新しいことは言っていないからだ。「塩分は控えめ」「運動のし過ぎはダメ!」「”まるごと食べる!”が基本」「サプリはダメ!」「睡眠は良より質!」などなど・・・どこかテレビや雑誌で聞きかじったことのあるような訓戒がズラリと並ぶ。

似たような話を過去に聞き、その後「生活習慣を変えた人」が果たしてどれだけいるだろうか!?

人は所詮、痛みが伴わなければなかなか本気にならないものだ。そんな痛みを伴った人は、30歳台後半・・・40歳以降の人に多いのではないかと思う。私の周りでも「突然、老眼がきたよ」とか「健康診断でいつもアウトでね」などと言っている人はそういった年代の人が多い。

私自身、まだ一度も大病を患ったことがなく自分の健康を信じて疑わなかった37歳のとき、突如、原因不明の症状で倒れ1週間入院した。その後も、飛蚊症(眼底出血が起こり、血の塊がその後、蚊のように眼底の周りをうごくため)になったり、腕が上がらなくなったり・・・様々な病気を経験した。そうした経験を経た今だからこそ、著者の書いている内容を真剣に受け止めることができるし、今まで以上に生活習慣を変えていこう・・・そう思うのである。

健康のありがたみを少しでも実感したことのある人・・・そういう人にぜひ読んでいただきたい。



【関連リンク】
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