「勉強しろ」と言わずに子どもを勉強させる法
著者: 小松公夫(こまつきみお)
出版社: PHP新書
この本の著者である小松氏は、一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。法学博士。現在、明治大学法科大学院教育補助講師として・・・あの有名な受験漫画「ドラゴン桜」にも取り上げられ・・・うんぬんかんぬん・・・難しいので省略させていただく。
名実ともに頭の良いエリート先生が書いた本だ。
■”生徒を育てる教育者”と”子を育てる親”の立場から、論じる
さすがに数多くの生徒やその両親と接してきた教育のプロである。ハッとするような話も数多く紹介されている。たとえば以下は、わたしがドキッとした著者の指摘だが、多くの父親が陥りやすい罠の一例である。
『子どもがまだ幼いうちに信頼関係を培っていないと、後で修復は非常に難しくなります。大学受験のときに突如、「私(子どもの幼少期にあまり接して来なかった父親)が率先して面倒を見る!」と息巻いてみたところで、もはや手遅れなのです。』(本書第二章より)
なお、著者自身も二児の父親。教育のプロがエリート育成について、教育者としての立場と、実際に子を育てている親・・・その両面の立場から、学び、感じたことを描いてくれているところにもこの本の特徴があると言えよう。
『ちょっぴりズレてはいるものの、比較的勉強好きな姉に対して、妹の方は勉強に全く興味がありません・・・(中略)・・・あざらしとあしかの違いがよくわからないんだよ。あなた(妹)は動物に詳しいから、明日、学校から帰ったらお父さん(著者)に説明してくれないかな。」すると勉強の宿題には全く積極性のない下の娘が、そういうことはきちんとやるのです。』(本書第三章より)
■エリートが良いか悪いかは別問題
ところで、良くも悪くも、この本には”エリート=目指したほうがいいもの”という前提がある。
実際、著者は本書で、弁護士、東大、国立大学・・・こういった道に進めた人たちをポジティブな事例で紹介する一方で、普通の私立大学、普通のOLになった人を「タダの人」と評する。
こう書くと・・・
「そもそもエリート偏重の世の中が、どうしようもない日本を作り上げたんだ! そんなクソ本、読んでどうすんだ!?」
そう主張し、この本を一蹴する人もいようが、もちろん、そういう人はこの本に時間を割くべきではないと思う。
そもそも「エリートになるのがいいのか、悪いのか」といった話を展開させるのがこの本の目的ではないからだ。冒頭でも述べたように、あくまでも、エリートを1つのゴールとして見た時に、そこにどのような傾向が見て取れるか・・・その一点で、参考になる情報を紹介しようと、色々な事例をまとめた本なのである。
■コーチングの必要性を理解したいか、コーチング方法を理解したいか
「東大生の多くは親に勉強しろ!と言われたことがない」
先日、立ち読みしたプレジデントファミリー「東大生184人”親の顔”」にも似たようなことが書いてあったし、本書の売り文句でもある。
親がガミガミ言わない子ほど結果を残している・・・というわけだが、改めて感じたのは、結局のところ「子に対して上手なコーチングを実践できたかどうか」が、子育ての成否に大きくかかわっている、ということだ(※コーチングとは、ゴールを自覚させ、やっていることに楽しみや意義を感じさせ、自発的な行動をとるように仕向ける・・・カウンセリングの一種だ)。
いずれにせよ、本書を読むことで、子育てにおけるコーチングの必要性について、ある程度、理解することができる。
ただし・・・子育てコーチングの必要性は十分に理解しているのだが、その方法が良くわからない・・・そいういう親なら、この本を読むよりも、むしろ、「子どもの心のコーチング」のようなコーチングそのものをテーマにした本に手を出したほうがベターだろう。
【類書】
・書評: 子どもの心のコーチング(菅原裕子)
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