2013年3月19日火曜日

災害に強い組織の作り方

月刊VOICE4月号を読んだ。2点気になる記事があったので、書いておきたい。

■グローバル企業という名の落とし穴
(外国人投資家に支配されたサムスンの悲劇 by 三橋貴明)

グローバリズムとかグローバル企業という言葉は、なんとなくモダンでポジティブな印象を受ける。ところが、そこに大きな落とし穴が待っているというお話。なお、三橋氏によれば、グローバル企業とは次の3つのいずれか、または複数が達成された組織を指すとのこと。

1. モノ・サービスの国外への輸出
2. 労働者の国外への移動
3. 資本(お金)の国外への移動

このいずれもイメージしやすい。トヨタは、クルマを世界中に輸出(=①)しているし、ユニクロは海外労働者の雇用を増やしている(=②)。また、これらの企業いずれも国外で稼いだ金の一部を国外の工場や店舗などに投資している(=③)。

さて、三橋氏の言う落とし穴だが、これは③が過度に進んだケースを指す。③が過度に進むと、企業は儲かっても、企業の母国は儲かるとは限らない・・・という構図ができあがる。なぜなら、企業がいくら国外で儲けてもそれが母国に落ちてこないからだ。母国民の失業は減らないし、母国民にお金が落ちてこないからだ。ちなみに、これは日本企業に限った話ではない。ここ最近ではアップル社が、このケースにぴったり当てはまる企業としてよく取り上げられている。2011年8月7日の「苦悩するアメリカ」という日経新聞の記事でも、やはり同じようなことが言及されている。

三橋氏の指摘で、驚いたのは、この落とし穴に・・・モロ・・・ハマっているのが我がお隣、韓国という事実だ。韓国というと、サムスンやLG、現代自動車など、世界に名だたる会社を連ねた勢いのある国・・・というイメージが(個人的に)あるが、その基盤は脆弱・・・らしい。脆弱な理由が、先に述べた③が過度に進んだ企業が多い、ということに加え、そうした大企業の株主のほとんどが、実は外国人であるということにある。なんとサムスンの株主の54%は外国人投資家だとか。さらに驚くべきことに、韓国では、韓国国内の中小企業より、サムスンなどグローバル企業の払う税金の方が少なくなるよう優遇措置がはかられているとのこと。

韓国は一度、IMFが介入していることもあり、このように歪な構造ができあがったとある。日本のグローバル企業に、そのままこれを当てはめるのは無理があるが、少なくともこの韓国の事例に、日本企業・・・というか、日本国としての学びは、大いにありそうだ。国民も、企業のように、自由気ままに、来年からイギリスに永住するから・・・とできるのなら別の話だが・・・。

■災害に強い組織の作り方
(「震災から二年」記憶すべきあの企業の対応 by 夏目幸明)

東日本大震災の混乱下で、大きな被害を受けたにもかかわらず、迅速果敢に行動し、成果を上げた企業が紹介されている。

いずれの成功事例にも共通するのは、災害の影響でトップと現場の間のコミュニケーションやモノの流れが切断されても、機能できる態勢を持っていた、という点だ。平時は、組織図どおり、トップから現場に指示が落ちそのとおりに機能するが、有事だと何が起こるかわからない。通信手段は生命線だから強化しておこう・・・と仮に、二重・三重の備えをしておいたとしても、いざ、それが機能するか、人が慌てずに動けるか、なんて誰もわからない。

記事によれば、態勢作りのヒントは次の3つだ。

#1. 現場への権限委譲
#2. 災害時に#1を即実践できるための日頃の訓練と方針の周知徹底
#3. 過去の震災履歴の活用

記事では、有事に現場が平時の権限をオーバーライドできる方針を周知徹底していた例として、NEXCO東日本を取り上げている。

『緊急時には、大まかにいえば、「見積もりはあとでいい。資材も、別の工事のためのものを使っていい。とにかく震災が起きたら、被災地に救援物資を運ぶ道を通すことが最優先」という態勢を築いていたのだ。』

また、日頃から現場が判断できる能力を養っていた組織の例としてヤマト運輸を挙げている。ちなみに、本記事では紹介されていなかったが、確かどこぞの記事で、ローソンも日頃から進めていた権限委譲が、災害時に役立ったと紹介されていたことを、ふと思い出した。

こうした話を聞くにつけ、思うことがある。今、どの企業でも、有事の行動計画(BCP)を策定する際には、「有事の方針」なるものを策定するのが王道にはなっている。王道・・・にはなっているのだが、本当に現場が有事の判断のよりどころにできる方針になっているかどうかと言えば、それは別の話だ。たとえば、「人命保護を最優先にする。つぎに、事業の継続・・・」といった感じで方針を策定する企業が多いが、果たして、このような当たり障りのない方針が、先のNEXCO東日本のような現場の迅速な行動を促すものと言えるのか・・・企業は、熟慮が必要だと思う。

さらに、何でもかんでも行動ルールを文書化しておけばいいという風潮もまだ根強い。これは大企業になればなるほど、当てはまる。やはり、先述した成功事例に鑑みれば、これもまた、危険な思い込み・・・である。我々は東日本大震災をはじめ、過去の大震災から、たくさん学んだハズだ。それを活かさないでなんとするか。

月刊VOICE 2013年4月号

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