著者: 野中郁次郎、戸部良一、鎌田伸一、寺元義也、杉之尾宣生、村井友秀
発行元: 日本経済新聞出版社
同著者陣の前著「失敗の本質」では、戦略の重要性を学んだ。本書「戦略の本質」では、有効な戦略とは何たるかを学んだ。
■過去の歴史に”戦略のあるべき姿”を求めた本
本書は、過去の戦争や紛争の中で劇的な逆転劇を引き起こした事例をとりあげ、そこでの戦略を詳しく観察・分析することを通じて、”戦略のあるべき姿とは何か?”を追究した本だ。なお、取り上げられる事例は、いずれも有名なものばかりで、次の6つだ。
- 毛沢東の反「包囲討伐」戦
- バトル・オブ・ブリテン
- スターリングラードの戦い
- 朝鮮戦争
- 第4次中東戦争
- ベトナム戦争
なお、私にとって最も興味深かったのは、戦略目的(≒たとえば相手を屈服させること)を実現できるかどうかは「有効な戦略を立てられたかどうか」というよりも・・・もちろん、それも重要ではあるがそれよりもむしろ・・・「状況変化に合わせて、有効な戦略を立て続けられたかどうか(あるいは変化を織り込んで戦略を立てられたかどうか)」にかかっている、という点だ。つまり、戦略とは何らかの前提(たとえば自分の保有する資源や、能力、相手の動きなどに対する想定)があってはじめて立案できるものだが、そうした前提は時間の経過とともにどんどん変化するのが常であり、その変化に合わせて、柔軟かつ適切に相手の効果を上回る戦略を立てられるかどうかが目的達成のカギとなる、というわけだ。そして、その鍵を握っているのは、言わずもがなリーダー。ゆえに、本のサブタイトルに「リーダーシップ」という言葉がつくのも納得できる。
ところで、本書の魅力は、戦略に対する学びだけではない。歴史そのものを学べるというおもしろさもある。取り上げられているケースは全て有名な戦争・紛争だが、歴史好きでもない限り、我々が知っているのはせいぜい、戦争・紛争が起きた年と、その結末くらいだ。ちなみに、私が一番興奮したのは第4次中東戦争、そしてバトル・オブ・ブリテンの話だ。結果がわかっていても、思わずのめりこんでしまうというのは面白い。
■いきなり飛びついても理解ができる
本書は、決して易しい読み物ではないものの、戦略の基礎知識がなくても読むことができるという点が嬉しい。加えて、著者陣の前著「失敗の本質」を読んでいなくても全く問題ない。
組織においては、特に戦略を考える立場にある人・・・つまり、経営者や経営企画部の人、あるいはそのような立場を目指す人に、おすすめできるものだと思う。
【関連書籍】
・失敗の本質(野中郁次郎氏ほか)
0 件のコメント:
コメントを投稿