同様に、組織のマネジメントで苦労するマネージャーが、日頃当たり前のように行っている活動の中に、ちょっとした合理性を持ち込んでみてはいかがだろう・・・というものが、この本の狙いだ。
MBA流チームが勝手に結果を出す仕組み
著者: 若林 計志
出版社: PHPビジネス新書
※レビュープラス様から献本いただいた本です
本書は、”マネジメントコントロール”と呼ばれる管理手法を紹介し、その使い方を指南するものだ。管理手法・・・と言うと、ややアカデミックな響きがあり「理論よりもまず実践だろ!」という主義の人は、アレルギー反応を示すかもしれない。しかし、難解な用語が並ぶ、だらだらと眠くなる・・・大学時代を思い出す・・・あのようなな講義とは全く違う。総論的な話の後には、必ずといっていいほど具体例が紹介されており、読み手への配慮がうかがい知れる。
『マネジメントコントロールのなかで、最も直接的な方法が「行動コントロール」である。やって欲しい行動を極めて具体的に指示し、それに沿って動いてもらうことで、望ましいゴールへと導く・・・(中略)・・・よく人気のラーメン屋が、チェーン展開したとたんに味が落ちて失敗してしまう例がある。その原因は、「行動コントロール」が甘いからだ。・・・』(本書第3章行動コントロールより)
また、実践性を重視した本とも言える。最近、やはりマネージャー向けのもので「結果を出すリーダーはみな非情である」(冨山和彦著)」を読んだばかりだが、あちらが”広く浅く”ならば、こちらは”狭く深く”といった感がある。すなわち、本書の200ページ全てが、マネジメントコントロールと呼ばれる1つのツール解説に注ぎ込まれており、この本を読み終えたときには必要な知識が一通り身につくような設計になっている。MBAにはマネジメントコントロールと呼ぶ科目があるが、言ってみれば、この本一冊にその科目の全てをまとめたようなものだ。
さて、ここで冷静になって考えてみたい。この本を読むメリットは何だろうか?
実はあまり世に知られていなかったマネジメントに役立つツールを習得できることだろうか? いや、違う。マネジメントコントロール自体は目新しいものじゃない。実は、わたしがこの本を読んでみて最初に感じたのは、「あー、それ何となくわかるし、今まで自分自身でも無意識の中に実践してきたものだな」というものだった。そうなのだ。実はマネジメントコントロールは、そんなに斬新な考え方ではないのだ。マネジメントの人たちはみな、多かれ少なかれ、無意識のうちに実践しているハズなのだ。
では、改めて、読むメリットはあるのだろうか?
その答えはYESだ。わたしが前段であえて”無意識のうちに実践しているハズ”と述べた点がポイントだ。そう、「無意識を(有)意識に変えてくれる」ということがこの本最大のメリットなのだ。多くの夢を実現し続けてきた渡邉美樹氏は「僕の夢には日付がある」と語ったことで有名だが、その真意は「夢を夢として漠然と考えているだけでは駄目で、いつまでに実現したいという意識を持つことで、実際のアクションへとつながっていく」ということだと思う。無意識を(有)意識に変えることが以下に大事かということの一例だ。ひるがえって、本書が指南するマネジメントコントロール。これも、無意識を(有)意識に変えることが実践性を高める第一歩なのではなかろうか。
著者も次のように語っている。
『大切なのは、自分の指示がどのマネジメントコントロールに当たるかを念頭に、そのプラス面とマイナス面を意識して使うことなのである』
組織のマネジメントに苦労しているマネージャー達におすすめの一冊だ。
【類書】
・結果を出すリーダーはみな非情である(冨山和彦著)
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