世界のトップを10秒で納得させる資料の法則
著者: 三木 雄信
出版社: 東洋経済新報社
本書は、ソフトバンクにて孫さんの下で経営が納得する資料作りの酸いも甘いも経験してきた著者が、たどり着いた「資料作り道」を指南してくれる本だ。
私が本書に手を出したのは冒頭で述べたような理由もあったが、もう一つは、一流と言われる孫さんの求めるレベルに興味があったからだ。加えて、実際にソフトバンクグループと取引することもあるので、そうした資料文化を知っておいて損はない。
さて、何が書かれているのかというと、「資料作りの本質とは何か」「どうやったら本質を汲んだ資料作りができるのか」「より具体的にはどんなテクニックがあるのか」と言ったことが書かれている。これらの説明を理解するためには、著者(孫さん?)の資料作りの信条を押さえておくことが大事だ。それは、プレゼンでも何でも、何かをアピールする際には数字が大事だ(全てのページに入れてもいいくらい)ということ。そして数字を基にしたキーメッセージを発信するにはグラフ化が大事ということだ。そう言えば、堀紘一氏もその著書「コンサルティングとは何か」の中で、コンサルの仕事を一言で表すとすると「グラフ化だ」と言っていた。
だから、本書はグラフ化の話から始まる。とりわけ業務改善をする際に役立ちそうな分析・グラフ化について解説している。「群管理」「回帰分析」など。グラフ化の話をベースとして、各種資料作り・・・議事録作成、プロジェクト管理、企画書作成、プレゼン資料作成に話は及ぶ。
なるほど、明日から役立ちそうなヒントが載っている。私の場合は幸か不幸かすでに色々なお客様にしごかれてきたので、おおよそ知っているようなポイントも多かったが、学んだのにすっかり忘れていたことを気付かさせてくれたことだけでもありがたい。例えば、グラフ化のところで登場する回帰分析は、MBAで習っていたものだが、すっかり使うことを忘れてたので良いリマインダーになった。また、議事録やプロジェクト管理の精度を高めるポイントも一部、忘れていたものに気づかせてくれた。プレゼンターとプレゼン資料との間の関係性が主従逆になることが多いという指摘も尤もだ。
ところでかの伝説の教師、橋本武氏がこんなことを言っている。「すぐに役立つものは、すぐに役立たなくなる」と。本書はどうか? 両方が内在している本だと思う。強いて言えばやや「すぐに役立つ」よりか。資料作りの本質について言及する一方、事細かなテクニック...中にはエクセルを具体的にどう使えば欲しいグラフに落とせるかの手順にまで言及しているパートがある。だからだ。
結論を言えば、ビジネスマン、それも入社3年目以降の社員であれば、本書を読む価値はあると思う。なぜ、3年目以降かと言えば、無駄な資料作りを何回か経験し、失敗してからの方が本質をより理解できると思うからだ。逆に私のように既に色々なことを経験済みの人は「自分がどれだけ一流が求める力量に到達できているか」のギャップ分析に使えるだろう。
【資料作りに役立つという観点での類書】
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