2016年7月22日金曜日

書評: 自分を変える読書術

ここ数ヶ月間、読書から遠ざかっていたが、それでも過去5年を振り返ると年間40冊くらいは読んでいると思う。本当はもっと読みたいのだが、読むだけではなく、必ず読んだ本の書評を書くようにしているので、どうしてもこれくらいのペースに落ち着いてしまう。

そこそこの読書量だとは思うが、だからこそ、こうした読書方法が合っているのかどうなのか、気になる。ついつい、“読書術”を語った本に定期的に手を出してしまう自分がいる。というわけで、堀紘一氏の書いた「自分を変える読書術」という本にも手を出してしまった。

著者: 堀 紘一
出版社: SB新書


本書の内容は、

・なぜ、読書がいいのか?
・読書は、どんな効能をもたらしてくれるのか?
・どういう本を読むのがいいのか?
・著者自身に、本がどのように役立ってきたのか?

といったもの。著者は、経営コンサルタントの中のコンサルタント、プロ中のプロ、堀紘一氏だ。その著者が読んだという5000冊以上の本の中から、おすすめ本をたくさん列挙してくれているのか?と思う人もいるだろうが、そうではない。あくまでも、読書の効能とその効能の手の入れ方に終始した本である。ちなみに、唯一、本のタイトルが出てくるのは本書の最後・・・そこで5000冊の中の6冊・・・と称して、紹介してくれている。

ずっとコンサルタント人生を歩んできた堀紘一氏らしく、コンサルタント目線での主張が多い。たとえば、野村克也さんの「勝ちに不思議の価値あり、負けに不思議の負けなし」という言葉を引用しつつ、「コンサルタントにできるのは絶対確実な成功の方法を教えることではなく、失敗する確率を下げて成功確率を上げることなのだ。(その失敗する確率を下げる最上の手段の一つが読書である)」という主張。いかにもコンサルタントらしい。

ただし、こうしたコンサルタント目線での語り口調がどうしても肌に合わない人もいるだろう。後半、堀紘一氏自身の人生の歩みを追うことで、「読書がどう自分に役立ってきたか?」を伝えようとしてくれているのだが、そこでは「イギリスへの大使館職員としての父の赴任、エリート校への入学、同じ黒田東彦日銀総裁よりも自分の学生時代のほうが本を読んでいたという話、ハーバード大学へ入学、ボストンコンサルティングへ入社・・・」などの話が登場する。パッとみただけでも、どちらかというと恵まれた環境にいた堀紘一氏の話は、読者の人生と重なりにくい印象があり、なんか、こう・・・共感を呼びにくいというか、なんというか・・・そんな人がすすめる読書術・・・??・・・と複雑な心境になる。

読書術に関する本は無数にある。ゆえに、こうしたコンサルタント目線での語り口調がどうしても肌に合わない人には他の読書術の本を読んだほうがいいだろう。読書がどう役立ったかという話なら、ライフネット生命会長兼CEOの出口治明氏の「人生を面白くする本物の教養」のほうが面白いと思う。あれは面白かった。まだ読んでない人がいるなら、ぜひそちらの本を読んで欲しい。


【読書術という観点での類書】
人生を面白くする本物の教養(出口治明)

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