どこかのラジオ番組でそんな印象をもったのがきっかけである。聞けば、この人が、文章を上手く書くためのヒント本もだしている、という。そんなわけで、すぐに飛びついた。
タイトル: 「超」文章法
著者: 野口悠紀雄
出版社: 中公新書
■”つまみ食い”できるノウハウ本
全七章、245ページからなるこの本には、”明日からすぐに使える文章力向上テクニック”がつまっている。
第一章: メッセージこそ重要だ
第二章: 骨組みを作る(1)・・・内容面のプロット
第三章: 骨組みを作る(2)・・・形式面の構成
第四章: 筋力増強・・・説得力を強める
第五章: 化粧する(1)・・・わかりにくい文章と闘う
第六章: 化粧する(2)・・・100回でも推敲する
第七章: 始めればできる
この本の最大の特徴は、実践的・・・いや、そうではあるが、それ以上に”つまみ食い的に活用できるノウハウ本である”、ということだ。
”つまみ食い的に活用できる”とは、つまり、本をパラパラっと斜め読みして、自分の気になるところだけに目をとめても、それだけで十分役に立つ本、という意味だ。
章構成だけを見ると、七章全てが揃わなければテクニックの習得が困難であるかのようにも見える。が、章1つひとつに込められた著者のメッセージは明確だし、章の中が数多くの小見出しで分けられており、どこをどう読み始めても理解ができるような配慮がされている。
■”つまみ食い”を侮るなかれ
ところで、”つまみ食い”といっても、心にいちいち響くメッセージも、少なくない。
たとえば、わたしは著者の「タイトルをいい加減につけてはならない」というメッセージに関する次の”くだり”に、心をうたれた。
『内容がわからないタイトルをつけるのは、「どうしても読んでもらいたい」という熱意が書き手にない証拠でもある。タイトルをいい加減な気持ちでつけているなら、内容もいい加減な気持ちで書いているに違いない。読者にそう評価されても、しょうがない。』 (「超」文章法より引用)
全く同感である。
プレゼンスライドのタイトルをいつもいい加減につける我が部下に、この”くだり”だけでも、読ませたいくらいである。
せっかくなので、もう1つ、わたしが心うたれた・・・というか、胸をぐさりと刺された”くだり”を挙げておこう。
「最初に言い訳をする」文章を書く人に対する著者の次の批判だ。
『(「私はこの問題の専門家ではないのだが」などといった言い訳)文章の真意は、「間違っていたとしても、大目に見て欲しい。私自身もれっきとした専門家なのだが、じつは専門は別の分野で、そちらでは間違うことはありませんよ(あなたは知らないでしょうが)、ということである』(「超」文章法より引用)
わたし自身、ハッとさせられた。
■文章力を少しでも向上させたいと思っているなら、読むべき本
「おめーさん、それを言っちゃぁ、おしめーだよ」
そう注意されるのを恐れずに言わせてもらえば、いずれにせよ思うのは「本を読んだだけでは文章能力は向上しない」という事実である。
英語のスピーキング能力は、実際にしゃべらなければ伸びない。リスニング能力は、実際に聴かなければ伸びない。同様に、文章力は、実際に文章を書いてみなければ伸びないのだと思う。
ただ、それにしたって、全く知識なしで書くのと、知識を少しでも持って書くのとでは効果が違うのではないだろうか。
しかるに、こうした類の本を読むことの意義は決して少なくないと思うわけである。
ちなみに、著者自身もプロローグの中で触れているが、論文、課題論文、解説文、報告文、企画書、評論、批評、エッセイ、紀行文などを書く人にお勧めの本である。
とにかく、少しでもまともな文章をかけるようになりたい・・・そんな人はぜひ。
【関連リンク】
・書評: 井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室(井上ひさし)
・感想文: 「ニッポンの書評」(豊崎由美)
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