マッキンゼー流 入社1年目 問題解決の教科書
著者: 大嶋 祥誉(おおしま さちよ)
発行元: ソフトバンク クリエイティブ(株)
■ビジネスファンダメンタルの指南書
本書は、マッキンゼー出身者である著者(大嶋 祥誉氏)が自身の経験を基に、特に技術面から、ビジネスマンなら誰しも知っておきたいこと、知っておくと必ず役立つこと、を手引きした本だ。
「いくら有名なコンサルティングファームのマッキンゼー出身者が書いた本だからって、自分はコンサルタントをやっているわけではないんだし、それが自分の何の役に立つのか?」・・・そう疑問に思うなら、それは杞憂だ。人間の基本スキルである”見て聞いて読んで話して書くこと”・・・と同様に、どんな業種・業態・規模・役職・部署に所属する人であっても、共通に求められる基本中の基本のワザが紹介されている。そのワザとは、タイトルにあるように”問題解決能力”のことだ。どんな役割の人であれ、日々問題に直面し、それを乗り越えることが求められる。そのためには、何が真の問題かを正しくとらえるために、事実関係を確認・分析をしたり、誰かの理解や協力をもらうために説得材料を用意し、わかりやすくプレゼンをしたり、あるいは上司に承認をもらった計画を確実に履行するためにプロジェクト管理をしたり・・・さまざまな活動が必要になる。
本書では、こうした活動を効果的・効率的に行うためのテクニックを・・・一流コンサルティングファームが昇華させてきた基本中の基本のスキルを・・・マッキンゼー社員も入社一年目に学ぶワザを・・・紹介しているのである。
■問題解決能力を支える基本テクニック
問題解決能力とひと言で言っても、先に触れたとおり、さまざまな技術要素が絡んでくる。そもそもの心構え、課題・仮説設定や仮説検証を行うためのロジカルシンキング能力、それを文書にまとめるドキュメンテーション能力、人に伝えるプレゼン能力、これら活動を間接的に支えてくれるツール(フレームワーク)など、様々だ。こうした要素すべてをバランス良くカバーしているのが本書の特徴だ。
”バランス良く”・・・というところがミソで、フレームワークにしても10個も20個も紹介されているわけではなく、3Cや7S、ポジションマトリックスなど、本当に良く使うであろう4~5つ程度のツール紹介にとどめられている。プレゼン資料のまとめ方についても、何重ものポイントについて触れられているわけではなく、考え方を整理するピラミッドストラクチャーをはじめ、1つ2つの程度の主要ポイントの言及のみにとどめられている。なぜなら、知識武装させることだけが目的ではないからだろう。人は、ややもするとこうした本にテクニックばかりを追い求めてしまいがちである。本書も指摘しているが、3Cや7S・・・など、どんなに立派なフレームワークを使おうが、プレゼンスキルを持とうが・・・一番最初のとっかかりである「どこからどこまでが事実で、どこからどこまでが人(あるいは自分)の意見なのか」を整理する力(雲雨傘の理論)が、しっかり身についていなければ、何の役にも立たないのだと思う。
確かに”内容の濃さ”という観点では、玄人は物足りなさを感じるかもしれないが、そうでない人には、多過ぎず複雑過ぎず難しすぎず・・・ちょうどよい案配と言えるだろう。
■新入社員に読ませたい本
1つだけ気をつけておきたいこととすれば、本書のタイトルにある「入社1年目」というキーワードは、「マッキンゼー社内で1年目の社員がこうした教育を徹底的に施されるよ」というところに由来している点だ。冒頭でも触れたとおり、彼らはエリート中のエリート集団だ。入社1年目・・・あるいは入社前に目を通しておくのが理想的だろうが、こうした類の本を読んだことがない若者であれば、別に、入社2年目でも、5年目でも、手にとってみる価値はあるのではなかろうか。
こういった類の本を読んだことがない方で興味がある方、ビジネスマン初心者や、ビジネスマンでありながらも基礎が弱いんだよな、と思っている方、あるいは新入社員研修を考える人事部門の人々・・・などには参考になる可能性が高い本だ。
【類書】
・質問する力 (大前研一著)
・「正しく」考える方法(齋藤了文、中村光世著)
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