2015年8月30日日曜日

書評: ぼくらの真実

「もっと早く読んでおけば良かった。」というのが素直な感想。
         
ぼくらの真実
著者:青山繁晴
出版社:扶桑社


本書に手を出したきっかけは、TBSラジオ番組VOICEというコーナーの存在だ。内容もそうだが、青山繁晴氏の熱意溢れる姿勢に心打たれる。彼の声が引き起こすスタジオ内の空気振動が、そのまま私に届いているんじゃないかと錯覚するほどの・・・そんな熱意を感じるのである。そんな人が魂を込めて書いた、と言う。それは読まずにいられない。

本書には、自衛隊問題や改憲問題、沖縄基地問題、靖国問題など、何かと気軽な意見を述べることが憚れるような解決が難しい問題を語る際、あれは語る以前に、そもそも我々が知っておくべきこと・・・それを著者は”僕らの真実”と呼んでいる・・・について書かれている。その事実とは、日本国憲法の中の矛盾、日本国憲法と現実の矛盾、そしてそのような日本国憲法が生まれた背景のことなどである。

いきなり著者の考えを述べるのではなく、大元の情報・・・いわゆる一次情報を基に考察を展開させているので、「えー、本当にそうなのかなぁ・・・」とか「信じがたいなぁ」といった野暮な感想を持ちづらい。一次情報とは、例えば、憲法前文について問題提起をするにあたり、日本国憲法の基になっていると言われるGHQ案の英語の原文を引用し、それと日本国憲法の日本語文を比較しているが、そうったことだ。そのお陰で、青山氏自身が自らの考察を披露する前に、私自身が今の憲法に違和感を持つことができた。深く考えさせられるし、彼が示す見解に対する反論も容易ではない。つまり非常に示唆性、説得性に富んだ一冊になっている。

ただし、著者自身が述べているように、あくまでも彼は一石を投じることが目的なので、そのまま書いてあることを鵜呑みにすべきではないとは思うが。

読み終えてみて、「もっと早くにこの本に出会っておきたかった」というのが最初の感想だ。本書は最近出版されたものなので不可能とは分かっているが・・・そう、できれば学生時代、憲法について学習する時に、知っておきたかった。誰かが作ったルールの中で踊らされている、とは言い過ぎかもしれないが、少なくとも誰がどのような意図で作ったルールの中で自分たちが生きているのか、誰が何を必死で守ろうとしているのか、守るべきなのか、を知ることができるからだ。

私は日本が好きだ。反省すべき点もあるが、これからも残って欲しいと思う良い面がたくさんある。さらにいい国になって欲しい。そう思うからこそ、先に挙げたような難題にも逃げずに自分の意見を持って、よりよくするための意思表示をできるようにしておきたい。そのためにはコトの本質を理解しておくことが必要不可欠だ。そして、本書はまさにその本質にせまる入り口たりえるだろう。


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