2011年3月14日月曜日

東日本大地震の事例に学ぶ風評被害対応

東京電力の動向が今、色々な意味で全世界に注目されている。

「なんだ、事前の想定の甘さは!?」
「なんだ、原発事故のあの不器用な発表の仕方は!?」
「なんだ、あの計画停電の伝達の不正確さは!?」
「原発神話は終わり、もう今世紀中に原発は建設されない」


メディア(ソーシャルメディアも含む)を見ていると、最前線で命をかけて戦っている人たちを尻目に、そんな声が聞こえてくる。いいも悪いも、常に避難の矛先を向ける相手を探す・・・失敗を決して許容しない・・・そんな日本人の傾向性が少なからず垣間見られる。

怖いのは、こうした声が(事実に即しているかどうかにかかわらず)多くの人の頭の中に、そのまま吸収されてしまう・・・ということである。ツイッターやFacebookなど、ソーシャルメディアが発達した今日では、その傾向がより一層強まる。世間に流れる声が事実と異なる内容であれば、・・・そう、それはつまり、その組織にとっての”風評被害”になる可能性が極めて高い。

こうした”風評被害”に企業はどのように対処したらいいのか? 「そりゃーさ、きちんと対応することだよ。東京電力だって、しっかり対応してれば・・・こんな避難を浴びることにはならなかったはず・・・」というのは簡単である。本当にそうだろうか?

世の中には「”きちんと”対応できない」ことはごまんとある。そうしたときに、どうすればいいのか?・・・こうした観点でも考えておくことが重要だ。これは日本のみならずソーシャルメディアが発達した世界に進出した企業全てに共通する課題でもある。

「対応のしようなんてあるのか!?」と思わず天を仰ぎそうな難題だが、専門家の記事や事例を見ていると、その中に一つのヒントが見えてくる。それは、負の情報発信を打ち消すための、正の情報発信を行うことである。ここで負の情報発信とは、その企業にとって望ましくない(または非好意的な)情報のことを指し、正の情報発信とは、その企業に望ましく(または好意的な)情報発信のことを指す。もちろん正論だがそんな簡単に実施できることではない。

具体的には、抑えるべき3つのポイントがある。

まずは、企業が情報発信できる場を作っておくことだ。いや、そういった場を醸成しておくこと・・・といったほうが正しいかもしれない。ここであえて”醸成”と書いたのは、それなりの意味がある。単にツイッターやFacebookなど有名どころのソーシャルメディア上に企業アカウントを作っておけばいい、という話ではなく、こうしたアカウントを日頃からアクティブに活用して情報発信を行い、その企業の存在をアピールしておくことが重要だ、ということだ。たとえば、ツイッターであれば、フォロワーを増やし、いざというときに流す情報をできる限り多くの人に見てもらえる環境を整えておくことがカギだ。

つぎに、企業のサポーター(賛同者)を増やしておくこと。ポジティブな口コミをしてくれる人たちを日頃から増やしておくことも重要だ。もちろん、これには時間がかかるだろうし、一番大変な作業だ。なお、これについて思い起こされるのは、先日、ブログでも書いたベビーカーで有名なマクラーレン社の事例だ。マクラーレン社は、同社製品のリコール対応について、誠実な対応を進めていたが、予期しない事情で対応が後手後手にまわり世間の非難を浴びた。しかし、そのような事態でもあきらめずに誠実な対応を続けていたのが功を奏して、最後は、同社の賛同者の口コミがどんどん広がり、最後には、信用力がかえって上がったという事例だ。

最後のポイントとしては、負の情報が発信されたことにすぐに気づけるモニタリング態勢を整備しておくことだ。企業にとって正しくないネガティブな情報が噂されているにもかかわらず、これを放置しておけば、「あぁ、この噂は事実だからあの企業は、噂をうちけそうとしないんだな・・・」と思われて、手遅れになる可能性がある。こういった事態を回避するためには、常日頃から企業がどのような噂をされているか、アンテナを張っておく必要がある。これについては、今回の東日本大地震の際に流れたデマメールへの素早い対応を見せたコスモ石油の事例が思い起こされる。この事例では、携帯メールや電話で、工場勤務の方から情報として「コスモ石油の爆発により有害物質が雨などといっしょに降る」というような風評が流れた。これをいち早く察知したコスモ石油側は「そのような事実はない」という情報を発信し、すぐに噂は鎮火されたと言うケースだ。

そんなところだ。

さて、ところで、今回の東北地方太平洋沖地震(東日本大地震)における東京電力の対応だが・・・反省すべき点は多々あるだろう。しかし、今は誰が悪いと非難するのではなく、みんな一丸となって解決に向けて動くときだ。”頑張る”・・・抽象的な言葉で嫌いだが、今こそ声を大にして言いたい。今こそ一致団結して頑張ろう!

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