2011年8月28日日曜日

書評:学校では教えてくれない日本史の授業

みなさんは、学校で習った歴史をまだ覚えているだろうか?

自慢じゃないが、わたしの場合は、かろうじて受験時代に語呂合わせで覚えた年号(例:1333(一味散々)、室町幕府滅ぼされ・・・)が頭の片隅に残っているだけだ。

勘違いしないでいただきたいのだが、わたしは決して歴史が嫌いではない。むしろ好きだ。歴史小説も読むし、古い建物を見ては昔に想いを馳せる。もういちど読む山川日本史を買って読んだこともある。

しかし・・・しかし、である。記憶に残らないのである。

そして「おっ、面白そう。この本なら、きっと・・・」と思って買ったのがこの本だ。

タイトル: 学校では教えてくれない日本史の授業
著者: 井沢元彦 出版社: PHP研究所
発行年月日: 2011年2月7日 (1,700円)

■実は歴史にはおざなりに説明されてきたことが多い

この本は、文字通り”学校では教えてくれなかった日本史”について、斬新で明瞭簡潔な論拠を持って、解説してくれている。”学校では教えてくれなかった日本史”と言っても、誰も知らないマイナーな知識、という意味ではない。歴史上、有名なイベント(例:聖徳太子の十七条憲法や、源平の戦い、大政奉還など)について、なぜそれが起きたのか、実は意外にいい加減に説明されてきた事柄について、突っ込んだ説明をしてくれている。

1つだけ例を挙げよう。大和朝廷と邪馬台国。どちらが日本を統一したのか、どこにあったのか、近畿か九州か・・・など、学者の間で色々な論争があることで有名だ。著者は、”邪馬台国”は中国の文献に記述されていたものなのだから、日本読みでヤマタイコクと読むべきではなく、当時の中国語の発音で読んでみるべきでは?と提案する。著者が調べたところ、当時の中国語で発音すると”邪馬台国”は「ヤマド」という音になることが分かったそうだ。そう、つまり「邪馬台国」は単なる中国語読みでの大和朝廷、というわけだ。この2つは違うとか違わないとか、そういった議論はナンセンスだと著者はバッサリ切り捨てる。

著者曰く、似た様な理由で、説明のつく歴史上の事象が数多くあるのだそうだ。

「源氏の敵とも言える藤原氏へ嫁いだ紫式部はなぜ源氏を讃える源氏物語を書いたのか」
「聖武天皇は、数年の間に何故何回も遷都を繰り返し、結局同じ平城京に戻ってきたのか」
「なぜ百人一首にも選ばれていない人が六歌仙として選ばれているのか」

上に挙げたのはこの本で取り扱っているテーマの一部にしか過ぎないが、いずれにせよ数多くの矛盾・疑問について答えている。

■全てを鵜呑みにはできないが、ハナから無視すべき主張でもない

「大勢の歴史学者が何十年もかけて研究してきたものを、1人の著者に簡単に解決されてたまるか」
「きっとほとんど都市伝説に近いレベルの話ばかりに違いない」

そう思う人もいるだろう。わたし最初はそう思った。「著者の言うことを全て信じていいのか」と言えば、わたしは「ノー」だと思う。それはそうだろう。所詮、タイムマシンでも無い限り、この世の誰も証明できない過去の事象を説明しようとしているのだから。

ただ、先ほど挙げた大和朝廷と邪馬台国の例からも分かるとおり、著者の主張はハナから聞く価値のないものとは言えないだろう。一理も二理もあるような主張も数多くあり、わたしは愉しんで読めた。

■点と点にしか過ぎなかった歴史を太い線でつなげてくれた本

さて、この本を読み終えて数日後、試しに、覚えていることを書き出してみた。すると、出てくるわ、出てくるわ・・・頭の中から。そこには、本で読んだことをほぼ全て覚えている自分がいた。

今まで私の記憶に残らなかったものが鮮明に残る。

点と点にしか過ぎなかったものが、しっかりと太い線で結ばれた証ではないかと思う。そしてそれは間違いなくこの本のお陰だ。また折を見て、読んでみたい。いや、できれば続編が読みたい。心からそう思っている。


【面白い切り口で歴史を紐解くという観点での類書】
 ・学校では教えてくれない日本史の授業2 天皇編(井沢元彦著)
 ・学校では教えてくれない日本史の授業3 悪人英雄論(井沢元彦著)
 ・地図から読む歴史(足利健亮著)
 ・戦国の軍隊(西股総生著)

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