2013年1月7日号 |
このテーマ自体は目新しいものではない。実際、本雑誌中で1つの参考にすべきモデルとして採りあげられている”ジョンルイス社”は1985年に既にこの考えを取り込み始めたという。とりわけ、資本主義の悪しき部分が目立ったリーマンショック以降、同じようなことを取り上げる記事が増えたと思う。ただし日経ビジネスなりに、豊富な事例をもとに、わかりやすく丁寧に解説しているところは有難い。
さて、この号で気になったのは2つ。
■中国労働人口、年内に減少へ
最新の国連推計によると中国の出生率が、なんと1.18だというのだ(出生率の低下が叫ばれる日本は1.4で、なんと中国の出生率は日本よりも低いことになる!)。記事は、この数字の信ぴょう性に疑問を投げつつも、この数字を前提として捉えた場合の世界経済へのインパクトについて論を展開している。
正直、にわかには信じがたい。なお、1.18という出生率を前提にすると当然、そのインパクトはとてつもないものになる。記事はこれが事実だとすれば予想より人口減少に転ずるのに後10年かからないと訴える。
ただし個人的には「でも、人口が増えなきゃ繁栄を約束できない世界って、どうなん?」
と、感じるのだが・・・。「扶養力」・・・確か、NHKか何かの番組でそのような言葉を使っていたように思うが、地球が今の技術で扶養できる人口は確か90億だったと思う。ねずみ算のように人口が増える世界を前提とするシステム・・・それを資本主義と言っていいのか分からないが・・・は、大きな欠陥を抱えたシステムであるように思えてならない。
■「見える手」の幻想
民主化に舵をとったかのように見える中国・・・でも実態は、社会主義というOSの上に、資本主義経済というアプリをインストールしたものにすぎない・・・。これを国家資本主義と呼ぶ・・・らしいが、リーマン・ショックに資本主義の限界を見た先進諸国の中には、このシステムに羨望の眼差しを向けている国もあるらしい。
でも、「他人の芝は青く見える」とは良くいったもの。記事は、見た目ほど決して素晴らしく上手に回っているわけではないという。そういえば、先日読んだばかりの「2014年、中国は崩壊する」(宇田川敬介著)でも、その危うさ(危うさどころか、タイトル通り、2014年の崩壊するかもしれないと言っている)について語っていた。
その危うさの原因が人口の多くを占める貧困層・・・下層民衆だ。つまり、国家資本主義は一党・・・すなわち、共産党によるコントロールが前提であるため、その強大な権限を持つ、共産党員に利権が集中し、国全体でみれば儲かっているように見えても、そのほとんどは一部のエリートにのみ集中してしまっている・・・というのがその理由だ。一言で言えば、格差社会問題だ。
この記事の面白いところは、現状の中国の体制を受け入れつつ、格差社会上の欠陥をなくそうと動いている人物やその手段を紹介しているところだ。たとえば記事では、民主化を唱える改革派として知られる経済学者の茅于軾(マオ・ユーシー)氏が、事業資金を借りることのできない(でも、ビジネスを立ち上げる意思のある)貧困層の人たちに、お金を融資するマイクロファイナンスの仕組みを確立した話を取りあげている。なるほど!だ。
資本主義がいいのか、国家資本主義がいいのか、社会主義がいいのか・・・。それは分からないが、間違えいなく言えるのはいずれも何らかの欠陥を持っているということだ。よりよい社会を作ろうと目指す人達の話はとても面白い。
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