あけましておめでとうございます!
ちょっと遅れたが、2013年に読んだ本を軽く振り返っておきたい。2013年に読んだ本は全部で42冊。いま、はじめて知ったが、昨年とほぼ同数(2012年は43冊読んでいた)だ。
○ 2014年、中国は崩壊する(宇田川啓介著)
○ 墜落の夏 ~日航123便事故全記録(吉岡忍著) ★3
○ 現実を視よ(柳井 正著)
○ 地図から読む歴史(足利健亮著) ★4
○ 結果を出すリーダーはみな非情である(冨山和彦著)
○ 医者が患者をだますとき(ロバート・メンデルソン著)
○ 戦略の本質(野中郁次郎ほか著)
○ カンブリア宮殿 村上龍×経済人 変化はチャンス(村上龍著)
○ MBA流チームが勝手に結果を出す仕組み(若林計志著)
○ ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~(今野晴貴著)
○ 間抜けの構造(ビートたけし著)
○ リスク、不確実性、そして想定外(植村修一著)
○ 学び続ける力(池上彰著)
○ 運脳神経のつくり方(深代千之著)
○ 決断の条件(P.F.ドラッカー著)
○ 感じる科学(さくら剛著) ★1
○ あんぽん ~孫正義伝~(佐野眞一著) ★7
○ はじめての積み立て投資1年生(竹内弘樹著)
○ 忙しいビジネスマンでも続けられる毎月5万円で7000万円つくる投資術(カン・チュンド著)
○ 実践 日本人の英語(マーク・ピーターセン著) ★6
○ 中学受験という選択(おおたとしまさ著)
○ 学校では教えてくれない日本史の授業2天皇編(井沢元彦著)
○ 聞く力(阿川佐和子著)
○ プラチナデータ(東野圭吾著)
○ 成功学のすすめ(神野博史著)
○ 中学受験に失敗しない(高濱正伸著)
○ 信念を貫く(松井秀喜著)
○ モンスター(百田尚樹著)
○ 奇跡の営業(山本正明著)
○ 日本人が「世界で戦う」ために必要な話し方(北山公一著)
○ マッキンゼー流 入社1年目 問題解決の教科書(大嶋祥誉著)
○ 井沢元彦の学校では教えてくれない日本史の授業3悪人英雄論(井沢元彦著)
○ 静かなるイノベーション(ビバリー・シュワルツ著)
○ 選択の科学(シーナ・アイエンガー著) ★5
○ 死の淵を見た男(門田正隆著)
○ 戦略プロフェッショナル(三枝匡著)
○ 不格好経営(南場知子著) ★2
○ 爆速経営 新生ヤフーの500日(蛯谷敏著) ★8
○ イシューからはじめよ(安宅和人著)
○ 消費税のカラクリ(斎藤貴男著) ★9
○ 消費税が日本を救う(熊谷亮丸著)
○ 「空気」を変えて思いどおりに人を動かす方法(鈴木博毅著)
※★は全42冊の中でとりわけ印象に残った本。★の横の番号は印象に残った順。
全42冊の内訳は上に示したとおりだが、うち、献本によるものが6冊、知人からのすすめによるものが3冊、ラジオ紹介に影響をうけたものが5冊、残りは雑誌や読んだ本の中で取り上げられていたものだ。
★印をつけたものは特に印象の残ったもの。共通して言えるのは、実生活にとても役に立ったか、あるいは、本当にリアルな追体験をさせてもらえたか・・・といったところだろうか。前者について言えば、たとえば「実践日本人の英語(マーク・ピーターセン著)」。これは自分の英語を磨くのにとても助かった。後者について言えば、たとえば「不格好経営(南場知子著)」。実体験を生々しく語っていて、共感できる部分も多く、かじりついて読んでしまった。ちなみに、献本でめぐりあえてラッキーだと思ったのは「爆速経営 新生ヤフーの500日」。献本してもらえなかったら、自らかって読んでいたかどうか怪しかったと思う。だが、出会えて良かった。
iPad miniも買ったことだし、2014年は、電子書籍などもうまく活用して英語の本などもバンバン読んでいきたい。
・・・というわけで、今年もよろしくお願いします。
【関連リンク】
・2012年に読んだ本を振り返る
・2011年に読んだ本を振り返る
20代後半から、今日にいたるまで毎日を全速力で駆け抜けてきました。疾走するスピードは毎年加速度的に増えています。 そんな自分の足跡を残したい、考えを整理したい、自分の学びの場としたい・・・こういった思いからこのブログを立ち上げました。とりわけ、読んだ本や雑誌、観た映画、その他遭遇した事件・・・などなど、思いの丈を吐露しています。
2014年1月1日水曜日
2013年12月30日月曜日
書評: 「空気」を変えて思いどおりに人を動かす方法
「空気」を変えて思いどおりに人を動かす方法
著者: 鈴木 博毅
発行元: マガジンハウス
※レビュープラス様から献本いただきました
■KYにならないためのすすめ
誰しも「KYな人(=空気が読めない人)」とは言われたくない。少なくとも「空気が読める人」くらいにはなりたいもの。本書は「空気を読める人」になりたいという人はもちろん、「空気を変える人」になりたいという人の望みをかなえる指南書である。ところで、そもそも「空気」とは何だろうか。
・空気が読めない
・空気に飲み込まれる
・空気を変える
・空気を支配する
本書では、こうした表現にも使われる「空気」を「ここで”それは検討しません”という暗黙の了解(ルール)のこと」と定義している。つまり、「空気が読めない」とは、「暗黙のルールが何かがわからない」、「空気を変える」とは「暗黙のルールを変更する」となる。本書を読んで「暗黙のルール」を理解し、ひいてはそれを自由自在にコントロールできるようになる術を学ぼう・・・というわけだ。
本書を読みはじめると、とにかく本書・・・いや「空気の動かし方」一つで世の重要なこと全てをカバーできてしまうという気にさせられる。事実、本の帯には「人間関係を新しい視点で捉えられるようになる」、「スポーツや試験で勝負強くなれる」、「会議やプレゼンを段取りよく進められるようになる」、「婚活や合コン、結婚生活がうまくいくようになる」、「リコール対策が迅速にできる組織になれる」・・・などと書かれている。私たちが日々直面する様々なシーンに活用できると本は唄っているのだ。
で、そんな素敵なワザを、どのように指南してくれているのか? 著者は、いわゆる「空気」を4パターンに分けることができるとし、それぞれのパターンについて攻略方法を解説している。なお、そのパターンとは次の4つである。
・問題への「問い」を設定することで生まれる「空気」
・体験的な思い込みに固くこだわることで生まれる「空気」
・検証、測定による偏った理解に固執して生まれる「空気」
・選択肢を限定してしまうために生まれる「空気」
さて、本書に対する率直な感想だが、正直、評価は難しい。どちらかと言えば、私にはあまり感動がなかった。ただ、Amazonをはじめ、結構な数の書評家たちから高評価を得ているような感じなので、きっと好き嫌いが分かれる本なのだろうと思う。
ちなみに、私になぜ感動が少なかったのか。1つには、本を手に取った直後こそ、「空気」という切り口を斬新に感じたものの、読み進めるにつれ、「あれ!?なんか似た切り口の本があったな」と気がついたからだ。そう、書きっぷりこそ異なるが、「間(ま)」をテーマにしたビートたけしの著書「間抜けの構造」と、イメージが重なる部分が少なからずあるように思ったのだ。
また、もう1つには「空気を動かす術を学ぶことで世の中の多くの問題を解決できますよ」という著者のアピールは確かに魅力的だと思ったが、無理に「空気を動かす術」で全てを語ろうとし過ぎた感があり、かえってわかりづらく感じる部分があったからだ。著者が「思い込み」を生じさせる4パターンのうちの1つとして挙げている”問題への「問い」を設定することで生まれる「空気」”が良い例だ。これは「モノゴトの上辺だけを見て課題設定をするのではなく・・・その裏に隠れた真の課題を見つけだそう」・・・と、こういう意図なのだが、この考え方は、いわゆるイシューベースアプローチと呼ばれる有名なものだ。大前研一氏の「質問する力」でも出てくるし、先日読んだ「イシューから始めよ(安宅和人著)」でも言及されている。こうしたテーマをなにも、無理に「空気を動かす術」というテーマのもとに書かなくても・・・という気がしたのだ。
散々な辛口を書かせていただいたが、先述したようにおそらく好き嫌いが分かれる本なのだと思う。つまり、私のようにこういった類の本を何冊も読んでいる人には、向いていないのだろう。逆に、普段からあまりこういった啓発本を手に取ったことがない人であれば、私のようにひねくれた見方をすることもなく素直に楽しめて読めるのだと思う。
著者: 鈴木 博毅
発行元: マガジンハウス
※レビュープラス様から献本いただきました
■KYにならないためのすすめ
誰しも「KYな人(=空気が読めない人)」とは言われたくない。少なくとも「空気が読める人」くらいにはなりたいもの。本書は「空気を読める人」になりたいという人はもちろん、「空気を変える人」になりたいという人の望みをかなえる指南書である。ところで、そもそも「空気」とは何だろうか。
・空気が読めない
・空気に飲み込まれる
・空気を変える
・空気を支配する
本書では、こうした表現にも使われる「空気」を「ここで”それは検討しません”という暗黙の了解(ルール)のこと」と定義している。つまり、「空気が読めない」とは、「暗黙のルールが何かがわからない」、「空気を変える」とは「暗黙のルールを変更する」となる。本書を読んで「暗黙のルール」を理解し、ひいてはそれを自由自在にコントロールできるようになる術を学ぼう・・・というわけだ。
■空気を支配できれば、全てを支配できる
で、そんな素敵なワザを、どのように指南してくれているのか? 著者は、いわゆる「空気」を4パターンに分けることができるとし、それぞれのパターンについて攻略方法を解説している。なお、そのパターンとは次の4つである。
・問題への「問い」を設定することで生まれる「空気」
・体験的な思い込みに固くこだわることで生まれる「空気」
・検証、測定による偏った理解に固執して生まれる「空気」
・選択肢を限定してしまうために生まれる「空気」
パッと見ると難しく思えるが、この4パターン・・・何か共通点があることに気がつかないだろうか。そう、良く観察してみると・・・「思い込み」・・・という共通キーワードが浮かび上がってくる。つまり私なりに分かりやすくまとめさせていただくと、「空気」は「思い込み」の産物であり、そしてこの「思い込み」は、上記4つのいずれか(たとえば過去体験など)がきっかけで生まれるものであり、そこを特定した上で攻略できれば怖いものなんてない・・・そう著者は言っているのだ。このような論理で攻められると、確かになんとなく「空気を支配できれば、全てを支配できる」という気になってくる。
■好き嫌いが分かれる本
さて、本書に対する率直な感想だが、正直、評価は難しい。どちらかと言えば、私にはあまり感動がなかった。ただ、Amazonをはじめ、結構な数の書評家たちから高評価を得ているような感じなので、きっと好き嫌いが分かれる本なのだろうと思う。
ちなみに、私になぜ感動が少なかったのか。1つには、本を手に取った直後こそ、「空気」という切り口を斬新に感じたものの、読み進めるにつれ、「あれ!?なんか似た切り口の本があったな」と気がついたからだ。そう、書きっぷりこそ異なるが、「間(ま)」をテーマにしたビートたけしの著書「間抜けの構造」と、イメージが重なる部分が少なからずあるように思ったのだ。
また、もう1つには「空気を動かす術を学ぶことで世の中の多くの問題を解決できますよ」という著者のアピールは確かに魅力的だと思ったが、無理に「空気を動かす術」で全てを語ろうとし過ぎた感があり、かえってわかりづらく感じる部分があったからだ。著者が「思い込み」を生じさせる4パターンのうちの1つとして挙げている”問題への「問い」を設定することで生まれる「空気」”が良い例だ。これは「モノゴトの上辺だけを見て課題設定をするのではなく・・・その裏に隠れた真の課題を見つけだそう」・・・と、こういう意図なのだが、この考え方は、いわゆるイシューベースアプローチと呼ばれる有名なものだ。大前研一氏の「質問する力」でも出てくるし、先日読んだ「イシューから始めよ(安宅和人著)」でも言及されている。こうしたテーマをなにも、無理に「空気を動かす術」というテーマのもとに書かなくても・・・という気がしたのだ。
散々な辛口を書かせていただいたが、先述したようにおそらく好き嫌いが分かれる本なのだと思う。つまり、私のようにこういった類の本を何冊も読んでいる人には、向いていないのだろう。逆に、普段からあまりこういった啓発本を手に取ったことがない人であれば、私のようにひねくれた見方をすることもなく素直に楽しめて読めるのだと思う。
2013年12月21日土曜日
書評: 消費税が日本を救う
賛否両論ある話題は、片方の意見だけを聞くと、正しい判断ができない。やはり、両方の意見を聞かないと・・・。そして、賛否両論ある話題の1つと言えば「消費税」だ。先日は「消費税のカラクリ」という反対派の人の本を読んだ。そんなわけで今回は、賛成派の人の本をば・・・。
消費税が日本を救う
著者: 熊谷 亮丸
発行元: 日経プレミアシリーズ
■消費税賛成の理由をとことん語る
内容は、ご推察のとおり。消費税賛成を唄う本だ。著者の熊谷亮丸(くまがいみつまる)氏は、大和総研のチーフエコノミスト。為替アナリストとしてあの有名な「ワールドビジネスラテライト」レギュラーコメンテーターを務めているとのこと。要するに、有名かつ人気あるその道の専門家が書いた本というわけだ。
無謀と知りつつ、著者の主張をあえて一言にまとめさせていただくと「日本の借金は限界に来ているから、税収を増やすのに効率的・効果的な消費税を導入するべき」となる。
日本の借金が限界に来ている理由について、たとえば著者がどんな発言をしているかというと、「日本の借金を背負ってくれている日本国民自体の財布が危険水域に到達しつつあること」、「実際に破綻したギリシャや破綻しそうになったスペイン、ポルトガルに共通する双子の赤字が、日本にも差し迫っているということ」などを述べている。また、消費税を効果的・効率的な手段と考える点については、「実際は比較的、景気変動に左右されにくい税制であるということ」、「若者より裕福といわれながら税を納める機会の少ない高齢者からもお金を徴収できるという点で公平性が強いこと」などを理由に挙げている。これらは一例だが、著者は、こうした発言に対して様々な角度からデータを集め、論拠を用意している。
もちろん、本書の中では、消費税反対派が一般的に取り上げる理由(「益税・損税」や「景気への影響」問題など)に対しても、しっかりと反論を行っている。
■本書の魅力はどこにある?
本書の魅力は3点ある。1つ目は、消費税賛成派の意図のほぼ全てを、おそらくはこれ一冊読めばカバーできるという点だ。本書が、消費税に賛成の理由、また、消費税反対派に与しない理由・・・について幅広く触れていることは既に述べたとおりだ。
2つ目は、この本が2012年6月に出版された本であるという点だ。そう、自民党への政権交代が行われたのは2012年12月なので、6月と言えばまだ民主党政権下の時期。暗いニュースばかりが広がり、野田前首相は消費税アップに躍起になり・・・そんな時期だ。安倍首相になり、円安が進み、株価が15000円を超え、東京オリンピック開催が決まり・・・さて、政権交代前に書かれた予想が、この状況下にいたってどこまで当たっているのか・・・そう考えると、おもしろく読める。ちなみに、わたしは、結構当たっているように思うのだが。
3つ目は、消費税の本にしては、そこそこ分かりやすいという点だ。私にはちょうどいいレベル感だ。大事な箇所は太字+下線が引かれており目立つような配慮がなされている。各章のおわりには、必ず「その章で訴えたかったこと・重要なこと」を約1ページの中にまとめてくれている。ただし、わかりやすいと言っても、池上彰さんほどのレベルではないので、そこはご注意いただきたい。
■本書を持ってして読者なりの答えが導き出せるか?
本書の意義はなんだろうか。至極一般的な結論で恐縮だが、いろいろな物事をより深く考えられるようになった・・・という点だろう。ただし、「消費税増税の是非」に関しては、自分なりの答えを導き出す・・・というところまでにはいたらなかった。
いろいろな物事を深く考えられるようになった・・・一例を挙げよう。たとえば本書読了後に、たまたま読売新聞に掲載されていた消費税増税に関する論説を目にしたときのことだ。そこでは確か、経済学者(飯田泰之氏)が「消費税を上げると景気に影響がでるから、このタイミングでの消費税増税は望ましくない」という発言をされていた。ところが前出のとおり、本書では「消費税アップは景気に影響が出るという証拠はない(=景気への影響はほぼない)」と唄っている。というわけで消費税増税賛成派と反対派の意見のすれ違いの1つはここにあるのだな・・・と改めて気づいたわけだ。どっちが正しい・正しくない云々は別にしても、まず、こうした専門家の発言に、少なからず、自分の脳みそが反応できるようになれた・・・というのはまことに本書のお陰である。
では、本書を読むことで「消費税増税の是非」に関して自分なりの答えが出たか?・・・というと、正直、そうは言えない。前の段落で取り上げた一例「景気への影響のあるなし問題」に代表されるように、賛成派・反対派・・・どっちの主張にもまだ疑問がいっぱいあるからだ。ちなみに、「消費税増税の是非」についての答えはまだ出せないが、「消費税の是非」については是だと改めて思った次第だ。「消費税のカラクリ」の主張はもっともだが、やっぱり得られるメリットのほうが大きいように思う。
さて、このように本書を読めば、自分の納得できる答えが必ずしも見つかるわけではないが、少なくとも、その答えを見つけるための最初の一歩として一役買ってくれる本であることに間違いないだろう。
消費税が日本を救う
著者: 熊谷 亮丸
発行元: 日経プレミアシリーズ
■消費税賛成の理由をとことん語る
無謀と知りつつ、著者の主張をあえて一言にまとめさせていただくと「日本の借金は限界に来ているから、税収を増やすのに効率的・効果的な消費税を導入するべき」となる。
日本の借金が限界に来ている理由について、たとえば著者がどんな発言をしているかというと、「日本の借金を背負ってくれている日本国民自体の財布が危険水域に到達しつつあること」、「実際に破綻したギリシャや破綻しそうになったスペイン、ポルトガルに共通する双子の赤字が、日本にも差し迫っているということ」などを述べている。また、消費税を効果的・効率的な手段と考える点については、「実際は比較的、景気変動に左右されにくい税制であるということ」、「若者より裕福といわれながら税を納める機会の少ない高齢者からもお金を徴収できるという点で公平性が強いこと」などを理由に挙げている。これらは一例だが、著者は、こうした発言に対して様々な角度からデータを集め、論拠を用意している。
もちろん、本書の中では、消費税反対派が一般的に取り上げる理由(「益税・損税」や「景気への影響」問題など)に対しても、しっかりと反論を行っている。
■本書の魅力はどこにある?
本書の魅力は3点ある。1つ目は、消費税賛成派の意図のほぼ全てを、おそらくはこれ一冊読めばカバーできるという点だ。本書が、消費税に賛成の理由、また、消費税反対派に与しない理由・・・について幅広く触れていることは既に述べたとおりだ。
2つ目は、この本が2012年6月に出版された本であるという点だ。そう、自民党への政権交代が行われたのは2012年12月なので、6月と言えばまだ民主党政権下の時期。暗いニュースばかりが広がり、野田前首相は消費税アップに躍起になり・・・そんな時期だ。安倍首相になり、円安が進み、株価が15000円を超え、東京オリンピック開催が決まり・・・さて、政権交代前に書かれた予想が、この状況下にいたってどこまで当たっているのか・・・そう考えると、おもしろく読める。ちなみに、わたしは、結構当たっているように思うのだが。
3つ目は、消費税の本にしては、そこそこ分かりやすいという点だ。私にはちょうどいいレベル感だ。大事な箇所は太字+下線が引かれており目立つような配慮がなされている。各章のおわりには、必ず「その章で訴えたかったこと・重要なこと」を約1ページの中にまとめてくれている。ただし、わかりやすいと言っても、池上彰さんほどのレベルではないので、そこはご注意いただきたい。
■本書を持ってして読者なりの答えが導き出せるか?
本書の意義はなんだろうか。至極一般的な結論で恐縮だが、いろいろな物事をより深く考えられるようになった・・・という点だろう。ただし、「消費税増税の是非」に関しては、自分なりの答えを導き出す・・・というところまでにはいたらなかった。
いろいろな物事を深く考えられるようになった・・・一例を挙げよう。たとえば本書読了後に、たまたま読売新聞に掲載されていた消費税増税に関する論説を目にしたときのことだ。そこでは確か、経済学者(飯田泰之氏)が「消費税を上げると景気に影響がでるから、このタイミングでの消費税増税は望ましくない」という発言をされていた。ところが前出のとおり、本書では「消費税アップは景気に影響が出るという証拠はない(=景気への影響はほぼない)」と唄っている。というわけで消費税増税賛成派と反対派の意見のすれ違いの1つはここにあるのだな・・・と改めて気づいたわけだ。どっちが正しい・正しくない云々は別にしても、まず、こうした専門家の発言に、少なからず、自分の脳みそが反応できるようになれた・・・というのはまことに本書のお陰である。
では、本書を読むことで「消費税増税の是非」に関して自分なりの答えが出たか?・・・というと、正直、そうは言えない。前の段落で取り上げた一例「景気への影響のあるなし問題」に代表されるように、賛成派・反対派・・・どっちの主張にもまだ疑問がいっぱいあるからだ。ちなみに、「消費税増税の是非」についての答えはまだ出せないが、「消費税の是非」については是だと改めて思った次第だ。「消費税のカラクリ」の主張はもっともだが、やっぱり得られるメリットのほうが大きいように思う。
さて、このように本書を読めば、自分の納得できる答えが必ずしも見つかるわけではないが、少なくとも、その答えを見つけるための最初の一歩として一役買ってくれる本であることに間違いないだろう。
【消費税という観点での類書】
2013年12月13日金曜日
書評: 消費税のカラクリ
2014年4月から消費税が8%になる。その後、順当にいけば、すぐに10%になる。無関心ではいられないハズだ。
消費税のカラクリ
著者: 斎藤 貴男
発行元: 講談社現代新書
■消費税アップ、いや、消費税そのものに反旗を翻す本
「(消費税について)訳知り顔の講釈が、街のあちこちから聞こえてくる。問題は、そう語りたがる人々が、消費税という税制の本質を少しでも理解できているのかどうか、という点だ。一人一人に問いただすことはできないが、一般の主要な情報源であるマスコミが、いつの間にか消費税増税派ばかりになっていた事実だけは明白である。」
そんな書き出しからも容易に推察されるように、本書は消費税アップに強く異を唱える本だ。消費税のアップ・・・いや、アップどころか消費税そのものの悪い部分・・・それも世間一般にはあまり広く知られていない負の側面に対して、スポットライトを当てている。
■税収アップの手段としての有効性に疑問を投げかける

「視界が開けた感じがする」・・・それが本書を読み終えたときのわたしの素直な感想だ。それは本書の論点が、今まで目にしてきたメディアのそれとは大きく異なるからだ。
メディアのそれと、どう異なるのか。一般的な消費税の論点は、税率や税率アップのタイミングに終始する。とりわけ、ここ最近は「消費税アップは必要不可欠だ。問題はそのタイミングだ」というように時期を問題にした論戦が多い。2014年度からの消費税アップに賛成する人たちの多くは「このままでは現在の福祉水準を維持することができなくなるから」とか「日本の世界に対する信用問題につながるから」とかといったものだ。逆に消費税アップに賛成しない人たちの多くは「長いデフレからようやく脱却する足がかりをつかみ始めたのに、その芽を摘み取るなんてありえない」というものだろう。しかし、本書の論点はそこではない。本書は、税収アップの手段としての消費税の有効性に疑問を投じているのである。消費税の有効性・・・これこそが著者が本書の中で首尾一貫して掲げている論点であり、本書最大の特徴でもある。
なお、著者が消費税を「ダウト!」と叫ぶ理由にはおもに2つある。1つには、そもそも消費税は、税率アップ=税収アップとは言いづらい、極めて非効率な手段であることを挙げている。「消費税は、国税のあらゆる税目の中で、最も滞納が多い税金なのである」というクダリを読んだときに、私自身少なからずびっくりしてしまった。そして2つ目には、消費税は、大企業を保護し中小企業をイジメる不公平な環境を生み出すものであることを理由に挙げている。なるほど、中小企業は日本の強さの源だ。日本国全体の企業数の99.7%、従業者数の7割、付加価値額(製造業)の5割強を占めており「日本経済の基盤そのものを形成している存在」といっても過言ではない。消費税が、そんな中小企業イジメにつながっているという点は決して見過ごせるものではない。
■消費税に少しでももの申したいなら・・・
ユニークさが際立つ本書だが、決して奇をてらった的外れな本ではない。論拠がしっかりしており説得力がある。そんなわけで、社会問題に興味がある人は言わずもがな、消費税アップの是非に何らかの意見を持つ人であれば、その意見の誤りをただすためにも、意見の質を上げるためにも、ぜひ、読んでおきたいところだ。
なお、誤解のないように言っておくが、別にわたしは本書の宣伝を通じて世の皆さんに消費税に反対してほしいという考えを持っているわけではない。実際のところ、わたし個人的には、本書を読み終えた今でも「消費税アップはやむなしかな」という考えを持っているくらいなのだから。
ただ、本質を知らずして意見するのはあまり健全でないように感じてしまうわけで・・・本質を理解し、それに基づいて自分の意見を持つ人が増えれば、それだけで社会は少しずつ良くなっていくような気がするのだ。いかがだろうか。
消費税のカラクリ
著者: 斎藤 貴男
発行元: 講談社現代新書
■消費税アップ、いや、消費税そのものに反旗を翻す本
「(消費税について)訳知り顔の講釈が、街のあちこちから聞こえてくる。問題は、そう語りたがる人々が、消費税という税制の本質を少しでも理解できているのかどうか、という点だ。一人一人に問いただすことはできないが、一般の主要な情報源であるマスコミが、いつの間にか消費税増税派ばかりになっていた事実だけは明白である。」
そんな書き出しからも容易に推察されるように、本書は消費税アップに強く異を唱える本だ。消費税のアップ・・・いや、アップどころか消費税そのものの悪い部分・・・それも世間一般にはあまり広く知られていない負の側面に対して、スポットライトを当てている。
■税収アップの手段としての有効性に疑問を投げかける

「視界が開けた感じがする」・・・それが本書を読み終えたときのわたしの素直な感想だ。それは本書の論点が、今まで目にしてきたメディアのそれとは大きく異なるからだ。
メディアのそれと、どう異なるのか。一般的な消費税の論点は、税率や税率アップのタイミングに終始する。とりわけ、ここ最近は「消費税アップは必要不可欠だ。問題はそのタイミングだ」というように時期を問題にした論戦が多い。2014年度からの消費税アップに賛成する人たちの多くは「このままでは現在の福祉水準を維持することができなくなるから」とか「日本の世界に対する信用問題につながるから」とかといったものだ。逆に消費税アップに賛成しない人たちの多くは「長いデフレからようやく脱却する足がかりをつかみ始めたのに、その芽を摘み取るなんてありえない」というものだろう。しかし、本書の論点はそこではない。本書は、税収アップの手段としての消費税の有効性に疑問を投じているのである。消費税の有効性・・・これこそが著者が本書の中で首尾一貫して掲げている論点であり、本書最大の特徴でもある。
なお、著者が消費税を「ダウト!」と叫ぶ理由にはおもに2つある。1つには、そもそも消費税は、税率アップ=税収アップとは言いづらい、極めて非効率な手段であることを挙げている。「消費税は、国税のあらゆる税目の中で、最も滞納が多い税金なのである」というクダリを読んだときに、私自身少なからずびっくりしてしまった。そして2つ目には、消費税は、大企業を保護し中小企業をイジメる不公平な環境を生み出すものであることを理由に挙げている。なるほど、中小企業は日本の強さの源だ。日本国全体の企業数の99.7%、従業者数の7割、付加価値額(製造業)の5割強を占めており「日本経済の基盤そのものを形成している存在」といっても過言ではない。消費税が、そんな中小企業イジメにつながっているという点は決して見過ごせるものではない。
■消費税に少しでももの申したいなら・・・
ユニークさが際立つ本書だが、決して奇をてらった的外れな本ではない。論拠がしっかりしており説得力がある。そんなわけで、社会問題に興味がある人は言わずもがな、消費税アップの是非に何らかの意見を持つ人であれば、その意見の誤りをただすためにも、意見の質を上げるためにも、ぜひ、読んでおきたいところだ。
なお、誤解のないように言っておくが、別にわたしは本書の宣伝を通じて世の皆さんに消費税に反対してほしいという考えを持っているわけではない。実際のところ、わたし個人的には、本書を読み終えた今でも「消費税アップはやむなしかな」という考えを持っているくらいなのだから。
ただ、本質を知らずして意見するのはあまり健全でないように感じてしまうわけで・・・本質を理解し、それに基づいて自分の意見を持つ人が増えれば、それだけで社会は少しずつ良くなっていくような気がするのだ。いかがだろうか。
2013年12月4日水曜日
書評: イシューからはじめよ
「マッキンゼー流 入社1年目 問題解決の教科書」「ハーバード、マッキンゼーで知った一流にみせる仕事術」「マッキンゼー式 世界最強の仕事術」「マッキンゼー流プレゼンテーションの技術」等々、最近、マッキンゼーを冠にした出版が急激に増えてきた。マッキンゼーブランドここに極まれり・・・といった感がある。正直言うと、同じような性質の本をやや見せ方を変えて発売しお金をとるやり方に反抗心を覚える一方で、商売が上手だなとも思う。こんなこといいながら私も結局、複数の本を買っちゃってきたわけだし・・・。
イシューからはじめよ
著者: 安宅和人(あたかかずと)
発行元:英治出版
■コンサルタントの王道ワザ、イシューベースアプローチの伝授本
本書は、超一流コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーにプロのコンサルティング流儀を学んだ著者が、そのノウハウを懇切丁寧に解説している本だ。ここで言う「プロのコンサルティング流儀」とは、イシューベースアプローチとも呼ばれるものだ。今までに経験がない、情報がない、そんな未知の問題に直面したときでも、効果的効率的に最善のアウトプットを出すためのワザだ。
このアプローチを使えば「日本にマンホールはいくつあるか?」「日本に走っている電車の数は?」など!!!???と思える質問でも、論理的に・・・しかも高速に、制約条件下での最適解を求めることができる。これらはもちろん極端な例だが、「シカゴで売っているピザの枚数は?」などといった突拍子もない質問に答えられるようにしよう!ということではなく、イシューベースアプローチをビジネスシーンに適用して仕事の生産性を上げようじゃないか・・・というのが、このワザの・・・いや、本書の狙いである。
■イシューベースアプローチ講座があればテキストになり得る!
講義を受けているような感じで読み進めることができる・・・というのが本書最大の特徴と言えるだろう。もしイシューベースアプローチという名の講座が大学にあるならば、この本を教科書にしてもいいかもしれない。プロのコンサルタントが書いた本ということもあり、章構成はきわめて合理的な建て付けになっているから、章1つ1つがちょうど講座一回分になるイメージだ。
序章: この本の考え方 ~脱「犬の道」
1章: イシュードリブン ~「解く」前に「見極める」~
2章: 仮説ドリブン① ~イシューを分解し、ストーリーラインを立てる~
3章: 仮説ドリブン② ~ストーリーを絵コンテにする~
4章: アウトプットドリブン ~実際の分析を進める
5章: メッセージドリブン ~「伝えるもの」をまとめる~
加えて、本書が講座教科書に適しているように見えるのは、著者がイェール大学の脳神経科学で博士号(PhD)をとった背景が寄与している面もあるだろう。ほぼ全ての講義ポイントにおいて、著者の主張を裏付けするため、何らかの事例が引き合いに出されているが、マッキンゼー時代や、大学院時代に学んだ脳科学の知識・経験に基づくものが少なくない。ややもすると、多少アカデミック色が色濃く出る場面があり、抵抗感を生じさせる場面があるかもしれないが、多くの場面において、そうした事例が極めて明快かつ論理的であり、説得力がある。
『インパクトがあるイシューは、何らかの本質的な選択肢に関わっている。「右なのか左なのかというその結論によって大きく意味合いが変わるものでなければイシューとは言えない。すなわち、「本質的な選択肢=カギとなる質問」なのだ。 科学分野の場合、大きなイシューはある程度明確になっていることが多い。僕の専門である脳神経科学の場合、19世紀末における大きなイシューのひとつは「脳神経とはネットワークのようにつながった巨大な構造なのか、それともある長さをもつ単位の集合体なのか」というものだった。』(本書 イシュードリブンより)
■多くの類書・・・さてどれを選ぶ?
さて、こんな特徴を持つ本だが、どういった人向きだろうかとハタと考えてしまう。というのも、冒頭で触れたように、イシューベースアプローチを解いた本は、タイトルこそ違えど、たくさんあるからだ。
結論を言えば、もし、イシューベースアプローチを解いた類いの本をこれまでに読んだことがなくて、「上記特徴を持った本が自分は好きだ」という人なら、買い!だろう。言い換えると、イシューベースアプローチを解いた本は、本書を含め、コンサルティングのプロが書いた本ならどれか一冊を読めばそれで十分なのではないかと思う。なぜなら、技術の習得において、文字から得られるレベルには限界があるからだ。本書評の最後は著者自身の次の言葉で締めくくりたい。
『結局のところ、食べたこともないものの味はいくら本を読み、映像を見てもわからない。自転車に乗ったことのない人に乗ったときの感覚はわからない。恋をしたことのない人に恋する気持ちはわからない。イシューの探究もこれらと同じだ。「何らかの問題を本当に解決しなければならない」という局面で、論理だけでなく、それまでの背景や状況も踏まえ、「見極めるべきは何か」「けりをつけるべきは何か」を自分の目と耳と頭を頼りにして、自力で、あるいはチームで見つけていく。この経験を1つひとつ繰り返し、身につけていく以外の方法はないのだ』(本書 おわりに より)
【一流のコンサルタントが使うワザを学べるという観点での類書】
・マッキンゼー流入社1年目 問題解決の教科書(大嶋祥誉著)
・質問する力(大前研一著)
・マッキンゼー流 図解の技術ワークブック
イシューからはじめよ
著者: 安宅和人(あたかかずと)
発行元:英治出版
■コンサルタントの王道ワザ、イシューベースアプローチの伝授本
本書は、超一流コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーにプロのコンサルティング流儀を学んだ著者が、そのノウハウを懇切丁寧に解説している本だ。ここで言う「プロのコンサルティング流儀」とは、イシューベースアプローチとも呼ばれるものだ。今までに経験がない、情報がない、そんな未知の問題に直面したときでも、効果的効率的に最善のアウトプットを出すためのワザだ。
このアプローチを使えば「日本にマンホールはいくつあるか?」「日本に走っている電車の数は?」など!!!???と思える質問でも、論理的に・・・しかも高速に、制約条件下での最適解を求めることができる。これらはもちろん極端な例だが、「シカゴで売っているピザの枚数は?」などといった突拍子もない質問に答えられるようにしよう!ということではなく、イシューベースアプローチをビジネスシーンに適用して仕事の生産性を上げようじゃないか・・・というのが、このワザの・・・いや、本書の狙いである。
■イシューベースアプローチ講座があればテキストになり得る!
講義を受けているような感じで読み進めることができる・・・というのが本書最大の特徴と言えるだろう。もしイシューベースアプローチという名の講座が大学にあるならば、この本を教科書にしてもいいかもしれない。プロのコンサルタントが書いた本ということもあり、章構成はきわめて合理的な建て付けになっているから、章1つ1つがちょうど講座一回分になるイメージだ。
序章: この本の考え方 ~脱「犬の道」
1章: イシュードリブン ~「解く」前に「見極める」~
2章: 仮説ドリブン① ~イシューを分解し、ストーリーラインを立てる~
3章: 仮説ドリブン② ~ストーリーを絵コンテにする~
4章: アウトプットドリブン ~実際の分析を進める
5章: メッセージドリブン ~「伝えるもの」をまとめる~
加えて、本書が講座教科書に適しているように見えるのは、著者がイェール大学の脳神経科学で博士号(PhD)をとった背景が寄与している面もあるだろう。ほぼ全ての講義ポイントにおいて、著者の主張を裏付けするため、何らかの事例が引き合いに出されているが、マッキンゼー時代や、大学院時代に学んだ脳科学の知識・経験に基づくものが少なくない。ややもすると、多少アカデミック色が色濃く出る場面があり、抵抗感を生じさせる場面があるかもしれないが、多くの場面において、そうした事例が極めて明快かつ論理的であり、説得力がある。
『インパクトがあるイシューは、何らかの本質的な選択肢に関わっている。「右なのか左なのかというその結論によって大きく意味合いが変わるものでなければイシューとは言えない。すなわち、「本質的な選択肢=カギとなる質問」なのだ。 科学分野の場合、大きなイシューはある程度明確になっていることが多い。僕の専門である脳神経科学の場合、19世紀末における大きなイシューのひとつは「脳神経とはネットワークのようにつながった巨大な構造なのか、それともある長さをもつ単位の集合体なのか」というものだった。』(本書 イシュードリブンより)
■多くの類書・・・さてどれを選ぶ?
さて、こんな特徴を持つ本だが、どういった人向きだろうかとハタと考えてしまう。というのも、冒頭で触れたように、イシューベースアプローチを解いた本は、タイトルこそ違えど、たくさんあるからだ。
結論を言えば、もし、イシューベースアプローチを解いた類いの本をこれまでに読んだことがなくて、「上記特徴を持った本が自分は好きだ」という人なら、買い!だろう。言い換えると、イシューベースアプローチを解いた本は、本書を含め、コンサルティングのプロが書いた本ならどれか一冊を読めばそれで十分なのではないかと思う。なぜなら、技術の習得において、文字から得られるレベルには限界があるからだ。本書評の最後は著者自身の次の言葉で締めくくりたい。
『結局のところ、食べたこともないものの味はいくら本を読み、映像を見てもわからない。自転車に乗ったことのない人に乗ったときの感覚はわからない。恋をしたことのない人に恋する気持ちはわからない。イシューの探究もこれらと同じだ。「何らかの問題を本当に解決しなければならない」という局面で、論理だけでなく、それまでの背景や状況も踏まえ、「見極めるべきは何か」「けりをつけるべきは何か」を自分の目と耳と頭を頼りにして、自力で、あるいはチームで見つけていく。この経験を1つひとつ繰り返し、身につけていく以外の方法はないのだ』(本書 おわりに より)
【一流のコンサルタントが使うワザを学べるという観点での類書】
・マッキンゼー流入社1年目 問題解決の教科書(大嶋祥誉著)
・質問する力(大前研一著)
・マッキンゼー流 図解の技術ワークブック
2013年12月1日日曜日
書評: 爆速経営 新生ヤフーの500日
最近の話だが、本当に偶然、ヤフージャパンの本社を訪れる機会があった。受付を通り抜けると、眼前に現れるる会議室のガラス窓には大きく”爆速”と書かれていた。それがとても印象的だった。ヤフージャパンは老舗とはいえない会社だが、創業は1996年。昨日今日に、立ち上がった企業ではない。にもかかわらず一歩足を踏み入れると、とてつもない活力を感じる。最近、 ヤフオクの出店無料化をブチあげるなど、メディアをもにぎわせている。この会社に、一体何が起こっていると言うのだろうか?
そんな疑問を持った矢先に、これまた偶然、手元に届いた一冊の本※・・・。
爆速経営 新生ヤフーの500日
著者: 蛯谷 敏
出版社: 日経BP社※レビュープラスさまからいただきました
■ヤフー生まれ変わりの謎に迫った本
本書は、宮坂社長率いる若手経営陣達が、決して悪くはない・・・いや、むしろ立派な経営状態だった組織に、何を理由にどんな大胆なメスを入れ、どうやって大きな変革を起こし、そして、結果を出したかを、描いたものだ。著者の蛯谷氏が、2012年4月の宮坂氏のCEO就任から2013年末頃までの約1年半にわたって続けた取材に基づいている。
ところで、このようないわゆる”経営者物語”には、 2種類ある。1つは、経営者本人が書くもの。柳井正ファーストリテイリング会長兼社長が書いた「一勝九敗」。DeNAの元社長、南場智子氏の「不恰好経営」などはこれにあたる。もう一つは、本人以外の者が第三者目線で描いたもの。先日読んだソフトバンク孫正義社長の「あんぽん」やローソン社長の新浪剛史氏を描いた「個を動かす」がそうだ。本書は後者だ。
■スーパーマンではないがスーパーな結果を残す宮坂社長が読者にもたらすもの
DeNAの南場智子氏の本は素晴らしかったが、本書も負けず劣らず秀逸だ。第三者目線で書かれているにもかかわらず、経営陣たちの熱気がムンムンと伝わってくる。紙の上に書かれた文字を追っているだけなのに、情熱を感じた。学びもたくさんあった。
私にとって最も興味深かったことは、印象に残った言葉の多くが、実は主人公の宮坂社長自身が発したものではなく、宮坂社長が他の経営者からもらい、感銘を受けたものばかりであるという事実だ。思うに、これは宮坂社長の立場が、私のような凡人とシンクロしやすかったからではなかろうか。本書を読むに、宮坂社長の前任者である井上前社長は、一言で言えば天才でありスーパーマン的存在であったようだ。これに対して著者は、宮坂社長を「実直さ」と「親しみやすさ」、そして「執着心」の3つの言葉で表現している。宮坂社長の存在を私たち読者の立場に近い、と公言するのはおこがましいとは思うが、少なくとも柳井ファーストリテイリング会長や、南場DeNA元社長、あるいはヤフー井上前社長に比べると、むしろ我々読者に近い親しみのおける存在と言えるのだ。
だからなのか、本書を読んでいると、いつも以上に、自分にもできそうだ。自分でもやってみるべきだ、やってやろう!という気にさせられる。幾つか例をあげておきたい。
新生ヤフーの経営陣をどうするかで宮坂社長が悩んでいた時に、仲間が名著「ビジョナリーカンパニー」から引っ張ってきた言葉・・・「大事なのは、誰をバスに乗せるかである」。そして、宮坂社長が現場にできるだけ権限を与えるようになったきっかけとして挙げた言葉・・・「永守さんは、経営者には2つの要素しかないと言うのです。 1つは、いかに多くの意思決定をするかということ。もう一つは、いかに早く挫折を経験するかと言うことです」。いずれも単純だが含蓄のある言葉だと思った。言い換えれば、当たり前に聞こえるほどシンプルだが、実は私も含め、実践できていない人が多いというふうに感じたのだ。
さらに、ヤフージャパンの新しい”信条”を組織に定着化させることを考える場面で登場した言葉・・・「Facebookから良いアドバイスをもらったのは、会社の価値観を作るんだったら、人事評価にそれを持ってこないと定着しないということでした」。ちょうど自分も会社で信条を作り上げ定着化させようとしていたところでだったので、本当にハっとさせられた。単純と思われるかもしれないが、早速自分の会社でもこれを実践しようと試みているところだ。
■経営に携わる人たち、経営の立場を目指す人たちに
さて、最後に、冷静に本書の評価をまとめたおきたい。他の類書にも言えることだが、本書は決して奇抜なことを紹介してあるわけではない。新生ヤフーの経営陣達に、何かとてつもないユニークさを期待して読むとがっかりするだろう。
ただ、先に挙げた私自身の例からおわかりいただけるように、ヤフー経営陣たちと、立場がぴったりと当てはまる読者であれば、間違いなく、とても面白く読める本だ。すなわち、会社の経営、もしくは経営になる幹部の立場にある人、また、これから起業しようとしている人・・・には、強くおすすめしたい本である。
「巨漢だったヤフーがたった500日で、ここまで変われたんだ、だから僕らも変われるはずだ。」
きっとこう思わせてくれるハズだ。それが本書最大の価値である。
【一定の成功を収めた経営者を・が描いた本という観点での類書】
・セブン-イレブン終わりなき革新(田中陽著)
・個を動かす ~新浪剛史、ローソン作り直しの10年~(池田信太朗著)
・不格好経営 ~チームDeNAの挑戦~(南場智子著)
・ユニクロ帝国の光と影(横田増夫著)
・一勝九敗(柳井正著)
・あんぽん ~孫正義伝~(佐野眞一著)
そんな疑問を持った矢先に、これまた偶然、手元に届いた一冊の本※・・・。
爆速経営 新生ヤフーの500日
著者: 蛯谷 敏
出版社: 日経BP社※レビュープラスさまからいただきました
■ヤフー生まれ変わりの謎に迫った本
本書は、宮坂社長率いる若手経営陣達が、決して悪くはない・・・いや、むしろ立派な経営状態だった組織に、何を理由にどんな大胆なメスを入れ、どうやって大きな変革を起こし、そして、結果を出したかを、描いたものだ。著者の蛯谷氏が、2012年4月の宮坂氏のCEO就任から2013年末頃までの約1年半にわたって続けた取材に基づいている。
ところで、このようないわゆる”経営者物語”には、 2種類ある。1つは、経営者本人が書くもの。柳井正ファーストリテイリング会長兼社長が書いた「一勝九敗」。DeNAの元社長、南場智子氏の「不恰好経営」などはこれにあたる。もう一つは、本人以外の者が第三者目線で描いたもの。先日読んだソフトバンク孫正義社長の「あんぽん」やローソン社長の新浪剛史氏を描いた「個を動かす」がそうだ。本書は後者だ。
■スーパーマンではないがスーパーな結果を残す宮坂社長が読者にもたらすもの
DeNAの南場智子氏の本は素晴らしかったが、本書も負けず劣らず秀逸だ。第三者目線で書かれているにもかかわらず、経営陣たちの熱気がムンムンと伝わってくる。紙の上に書かれた文字を追っているだけなのに、情熱を感じた。学びもたくさんあった。
私にとって最も興味深かったことは、印象に残った言葉の多くが、実は主人公の宮坂社長自身が発したものではなく、宮坂社長が他の経営者からもらい、感銘を受けたものばかりであるという事実だ。思うに、これは宮坂社長の立場が、私のような凡人とシンクロしやすかったからではなかろうか。本書を読むに、宮坂社長の前任者である井上前社長は、一言で言えば天才でありスーパーマン的存在であったようだ。これに対して著者は、宮坂社長を「実直さ」と「親しみやすさ」、そして「執着心」の3つの言葉で表現している。宮坂社長の存在を私たち読者の立場に近い、と公言するのはおこがましいとは思うが、少なくとも柳井ファーストリテイリング会長や、南場DeNA元社長、あるいはヤフー井上前社長に比べると、むしろ我々読者に近い親しみのおける存在と言えるのだ。
だからなのか、本書を読んでいると、いつも以上に、自分にもできそうだ。自分でもやってみるべきだ、やってやろう!という気にさせられる。幾つか例をあげておきたい。
新生ヤフーの経営陣をどうするかで宮坂社長が悩んでいた時に、仲間が名著「ビジョナリーカンパニー」から引っ張ってきた言葉・・・「大事なのは、誰をバスに乗せるかである」。そして、宮坂社長が現場にできるだけ権限を与えるようになったきっかけとして挙げた言葉・・・「永守さんは、経営者には2つの要素しかないと言うのです。 1つは、いかに多くの意思決定をするかということ。もう一つは、いかに早く挫折を経験するかと言うことです」。いずれも単純だが含蓄のある言葉だと思った。言い換えれば、当たり前に聞こえるほどシンプルだが、実は私も含め、実践できていない人が多いというふうに感じたのだ。
さらに、ヤフージャパンの新しい”信条”を組織に定着化させることを考える場面で登場した言葉・・・「Facebookから良いアドバイスをもらったのは、会社の価値観を作るんだったら、人事評価にそれを持ってこないと定着しないということでした」。ちょうど自分も会社で信条を作り上げ定着化させようとしていたところでだったので、本当にハっとさせられた。単純と思われるかもしれないが、早速自分の会社でもこれを実践しようと試みているところだ。
■経営に携わる人たち、経営の立場を目指す人たちに
さて、最後に、冷静に本書の評価をまとめたおきたい。他の類書にも言えることだが、本書は決して奇抜なことを紹介してあるわけではない。新生ヤフーの経営陣達に、何かとてつもないユニークさを期待して読むとがっかりするだろう。
ただ、先に挙げた私自身の例からおわかりいただけるように、ヤフー経営陣たちと、立場がぴったりと当てはまる読者であれば、間違いなく、とても面白く読める本だ。すなわち、会社の経営、もしくは経営になる幹部の立場にある人、また、これから起業しようとしている人・・・には、強くおすすめしたい本である。
「巨漢だったヤフーがたった500日で、ここまで変われたんだ、だから僕らも変われるはずだ。」
きっとこう思わせてくれるハズだ。それが本書最大の価値である。
【一定の成功を収めた経営者を・が描いた本という観点での類書】
・セブン-イレブン終わりなき革新(田中陽著)
・個を動かす ~新浪剛史、ローソン作り直しの10年~(池田信太朗著)
・不格好経営 ~チームDeNAの挑戦~(南場智子著)
・ユニクロ帝国の光と影(横田増夫著)
・一勝九敗(柳井正著)
・あんぽん ~孫正義伝~(佐野眞一著)
2013年11月17日日曜日
書評: 不格好経営
本書を読んで、南場智子という人間に惚れた。はっきり言うが、これまで色々な本を何冊も読んできたが、このように感じることは滅多にないゾ。
不格好経営 ~チームDeNAの挑戦~
著者: 南場 智子(なんば ともこ)
発行元: 日本経済新聞出版社
■DeNA(ディー・エヌ・エー)の起業物語
本書は、オークションサイトやショッピングサイトを運営する株式会社DeNA(ディー・エヌ・エー)の創設者にして元社長、現在は同社取締役を担う南場智子氏が書いた、言わば”会社起業振り返り物語”だ。彼女が1999年に起業を決心してから、ディー・エヌ・エーを立ち上げ、社長の立場で東奔西走・活躍し、諸事情により役職を退くまでの密度の濃い10年間を振り返っている。
コンサルティング会社マッキンゼーを辞めて、ディー・エヌ・エー社立ち上げにいたった経緯や、資金集め・社名決めですったもんだした話、システム開発での大トラブル、競合他社に自社の広告を載せてしまった話、モバイルビジネスへのシフト、野球チーム買収、コンプライアンス問題、旦那の病気など、テーマはわんさかある。著者本人も認めているが、よくもまぁ10年の間に、これだけ色々な経験を詰め込んだものだ・・・と関心するほどだ。
■南場智子の言葉には勢いがある
本書の特徴は、2点ある。1点目は著者自身が述べている”とりわけ失敗体験に焦点を当てて書いた本である”ということだ。
『私はビジネス書をほとんど読まない。こうやって成功しました、と秘訣を語る本や話はすべて結果論に聞こえる。まったく同じことをして失敗する人がゴマンといる現実をどう説明してくれるのか。だから本書の執筆にあたっては、誰か遠い他人の仕業とおもいたいほど恥ずかしい失敗の経験こそ詳細に綴ることにした。』(本書 まえがきより)
ただしこの点については、特徴の1つではあるが本書最大の魅力とは言い難い・・・ということを付け加えておく。わたしの読書経験から言えば、たとえば柳井会長の「一勝九敗」や、渡邉美紀(ワタミ創設者)さんの「青年社長」、鈴木敏文セブン-イレブン創業者の「セブン-イレブン終わりなき革新」・・・あるいは孫社長の半生を描いた「あんぽん」など・・・実は成功体験より苦労体験に触れている本の方が多いといったからだ。
2点目の特徴・・・これこそが本書最大の魅力だと思うが・・・「他人の仕業とおもいたい」と彼女が形容するほどの失敗に対する彼女なりの総括が、気持ちいいくらい”単純明快”であることだ。これは、南場さんのバックグラウンドが超一流会社のコンサルタントであったことも寄与しているのだろう。彼女の発言はロジカルなだけでなく、哲学というか魂というか信念というか、生き様に何かこうしっかりとした一本の筋がとおっており、感じたこと・思ったことを、常にブレない視点で、シンプルな言葉を使って、はっきりと言い切っているのだ。
『しかし、DeNAを立ち上げてすぐに、会社はロジカルな人間だけでは少しも前に進まないことがわかってくる。事実、マッキンゼーのエース(自称)3人が1年で黒字化させますと宣言して会社をつくり、実際は4年も赤字を垂れ流したわけだ。コンサルタントの言うことは信用しないほうがいい。』
『ビジネススクールに行くことで人脈ができるのでは、ともよく訊かれるが、そうも思わない。逃げずに壁に立ち向かう仕事ぶりを見せ合うなかで気づいた人脈意外は、仕事で早くに立たないと痛感している。』(第七章 人と組織より)
■偶然の一致か必然の一致か
そんな本書だが、個人的感想を言わしてもらうと”ひさしぶりに気分が高揚した”感がある。また、冒頭で触れたように著者の南場智子氏をとても魅力的な人物だと思った。
その理由は先述したとおりだ。加えて、起業時に経験している内容がわたしのものとすごく似ていたから、という理由もある。やや余談になるが、たとえば、南場さんがコンサルタント出身であり、MBA経験者であるということ。格は全然異なるが、私もそうだ。また、南場さんが起業してまだ間もない頃、寝起きする真横にサーバをおいていつでも再起動できる体制をとって寝ていたということ。わたしも、奈良でISP起業に参画したときは同じ経験をしている。さらに、社内で過激なダイエット競争を繰り広げていたという話。実は自分自身がダイエット競争に参加してたわけではないのだが、同僚が目の前で、全く同様の”やり過ぎ!”とも思える熾烈なダイエットバトルを行っていた。最後に、人の採用に関して、とある大きな誤解から、大切な人との間に大きな摩擦を生じさせてしまったという話。これも全く一緒の経験がある。
質と規模において南場氏のそれと比べるべくもないが、自分と驚くほど似た経験を持つことに、ものすごく親近感を覚えてしまうのだ。そのせいで本書については客観的な評価ができていないかもしれないので、その分は差し引いて評価していただいて構わない。
■失敗を追体験できる貴重な教科書
本書は当然、会社の経営者・・・とりわけ起業に興味がある人なら読むべきだ。起業について学びたければ、さっさと起業して自らが失敗経験をするのが一番いいわけだが、人生には終わりがあり、失敗を重ねられる回数にも限りがある。だからこそ、こうした先人たちの体験をフル活用すべきだと思うのだ。だから、読むことをお勧めする。
なお、時間に余裕があるのなら、他の起業家たちの本との読み比べをしてみてはいかがだろうか。そのほうが、起業家たちの特徴が際立つし、そこに新たな”気づき”が生まれることも少なくないからだ。たとえば、ファーストリテイリングの柳井さんの本を読んでいたときは、良くワンマン経営と揶揄されるように、柳井さんばかりが読者の視野に入る印象だった。が、南場さんの本では、南場さん本人だけでなく、固有名詞で語られる強く頼もしい仲間が頻繁に登場する。両起業人の信条の違い、アプローチの違いの現れなのだと感じる。かと思えば、起業時の金銭面での苦労や、人の採用における苦労なんかは、両者ともに非常に似ていたりする・・・。このように色々な気づきを得ることができる。
とにもかくにも、まずは失敗の追体験本として、南場智子氏のディー・エヌ・エー起業物語を対象に選んでみてはいかがだろうか。わたしのイチオシ本だ。
不格好経営 ~チームDeNAの挑戦~
著者: 南場 智子(なんば ともこ)
発行元: 日本経済新聞出版社
■DeNA(ディー・エヌ・エー)の起業物語
本書は、オークションサイトやショッピングサイトを運営する株式会社DeNA(ディー・エヌ・エー)の創設者にして元社長、現在は同社取締役を担う南場智子氏が書いた、言わば”会社起業振り返り物語”だ。彼女が1999年に起業を決心してから、ディー・エヌ・エーを立ち上げ、社長の立場で東奔西走・活躍し、諸事情により役職を退くまでの密度の濃い10年間を振り返っている。
コンサルティング会社マッキンゼーを辞めて、ディー・エヌ・エー社立ち上げにいたった経緯や、資金集め・社名決めですったもんだした話、システム開発での大トラブル、競合他社に自社の広告を載せてしまった話、モバイルビジネスへのシフト、野球チーム買収、コンプライアンス問題、旦那の病気など、テーマはわんさかある。著者本人も認めているが、よくもまぁ10年の間に、これだけ色々な経験を詰め込んだものだ・・・と関心するほどだ。
■南場智子の言葉には勢いがある
本書の特徴は、2点ある。1点目は著者自身が述べている”とりわけ失敗体験に焦点を当てて書いた本である”ということだ。
『私はビジネス書をほとんど読まない。こうやって成功しました、と秘訣を語る本や話はすべて結果論に聞こえる。まったく同じことをして失敗する人がゴマンといる現実をどう説明してくれるのか。だから本書の執筆にあたっては、誰か遠い他人の仕業とおもいたいほど恥ずかしい失敗の経験こそ詳細に綴ることにした。』(本書 まえがきより)
ただしこの点については、特徴の1つではあるが本書最大の魅力とは言い難い・・・ということを付け加えておく。わたしの読書経験から言えば、たとえば柳井会長の「一勝九敗」や、渡邉美紀(ワタミ創設者)さんの「青年社長」、鈴木敏文セブン-イレブン創業者の「セブン-イレブン終わりなき革新」・・・あるいは孫社長の半生を描いた「あんぽん」など・・・実は成功体験より苦労体験に触れている本の方が多いといったからだ。
2点目の特徴・・・これこそが本書最大の魅力だと思うが・・・「他人の仕業とおもいたい」と彼女が形容するほどの失敗に対する彼女なりの総括が、気持ちいいくらい”単純明快”であることだ。これは、南場さんのバックグラウンドが超一流会社のコンサルタントであったことも寄与しているのだろう。彼女の発言はロジカルなだけでなく、哲学というか魂というか信念というか、生き様に何かこうしっかりとした一本の筋がとおっており、感じたこと・思ったことを、常にブレない視点で、シンプルな言葉を使って、はっきりと言い切っているのだ。
『しかし、DeNAを立ち上げてすぐに、会社はロジカルな人間だけでは少しも前に進まないことがわかってくる。事実、マッキンゼーのエース(自称)3人が1年で黒字化させますと宣言して会社をつくり、実際は4年も赤字を垂れ流したわけだ。コンサルタントの言うことは信用しないほうがいい。』
『ビジネススクールに行くことで人脈ができるのでは、ともよく訊かれるが、そうも思わない。逃げずに壁に立ち向かう仕事ぶりを見せ合うなかで気づいた人脈意外は、仕事で早くに立たないと痛感している。』(第七章 人と組織より)
■偶然の一致か必然の一致か
そんな本書だが、個人的感想を言わしてもらうと”ひさしぶりに気分が高揚した”感がある。また、冒頭で触れたように著者の南場智子氏をとても魅力的な人物だと思った。
その理由は先述したとおりだ。加えて、起業時に経験している内容がわたしのものとすごく似ていたから、という理由もある。やや余談になるが、たとえば、南場さんがコンサルタント出身であり、MBA経験者であるということ。格は全然異なるが、私もそうだ。また、南場さんが起業してまだ間もない頃、寝起きする真横にサーバをおいていつでも再起動できる体制をとって寝ていたということ。わたしも、奈良でISP起業に参画したときは同じ経験をしている。さらに、社内で過激なダイエット競争を繰り広げていたという話。実は自分自身がダイエット競争に参加してたわけではないのだが、同僚が目の前で、全く同様の”やり過ぎ!”とも思える熾烈なダイエットバトルを行っていた。最後に、人の採用に関して、とある大きな誤解から、大切な人との間に大きな摩擦を生じさせてしまったという話。これも全く一緒の経験がある。
質と規模において南場氏のそれと比べるべくもないが、自分と驚くほど似た経験を持つことに、ものすごく親近感を覚えてしまうのだ。そのせいで本書については客観的な評価ができていないかもしれないので、その分は差し引いて評価していただいて構わない。
■失敗を追体験できる貴重な教科書
本書は当然、会社の経営者・・・とりわけ起業に興味がある人なら読むべきだ。起業について学びたければ、さっさと起業して自らが失敗経験をするのが一番いいわけだが、人生には終わりがあり、失敗を重ねられる回数にも限りがある。だからこそ、こうした先人たちの体験をフル活用すべきだと思うのだ。だから、読むことをお勧めする。
なお、時間に余裕があるのなら、他の起業家たちの本との読み比べをしてみてはいかがだろうか。そのほうが、起業家たちの特徴が際立つし、そこに新たな”気づき”が生まれることも少なくないからだ。たとえば、ファーストリテイリングの柳井さんの本を読んでいたときは、良くワンマン経営と揶揄されるように、柳井さんばかりが読者の視野に入る印象だった。が、南場さんの本では、南場さん本人だけでなく、固有名詞で語られる強く頼もしい仲間が頻繁に登場する。両起業人の信条の違い、アプローチの違いの現れなのだと感じる。かと思えば、起業時の金銭面での苦労や、人の採用における苦労なんかは、両者ともに非常に似ていたりする・・・。このように色々な気づきを得ることができる。
とにもかくにも、まずは失敗の追体験本として、南場智子氏のディー・エヌ・エー起業物語を対象に選んでみてはいかがだろうか。わたしのイチオシ本だ。
【著名な経営者の体験を描いた本という観点での類書】
2013年11月10日日曜日
努力は運を支配する
日経ビジネス2013年11月11日号を読んだ。以下、感想。
(原発対策、「国主導」の行方より)
(感想)これが国が東電破綻の道を選択しない理由だそうだ。が、結局は、都合の良い言い訳に聞こえる。現行法を尊重して、社債の償還を優先させて、仮に賠償が滞った場合には、国がその分を負担する・・・とすればいいだけの話では?・・・と思ってしまう。いずれにしても、要するに、全ては”国のやる気次第”だと思うのだが。やはり、その覚悟ができていないのか。
『立花が懇意にしていた三井住友銀行取締役にしてラグビー日本代表監督だった宿澤広朗は、生前こんな言葉を残している。”努力は運を支配する”。立花は来年も”日本一”でそれを証明するつもりだ。』
(日本の革新者たち 立花陽三より)
(感想)努力は運を支配する・・・いい言葉だ。
『2013年のイノベーターはこんな人・・・エナジャイザー(チームを鼓舞する力)、インテグレーター(組み合わせで革新する力)、ビジョナリ-(ゴールを設定する力)、ソーシャル・チェンジャー(社会を変える志)、ノン・ギバー・アッパー(あきらめない心)』
(イノベーション生む5つの力より)
(感想)2013年の・・・という冠がついているが、この5つの力は、今回雑誌で取りあげられた日本人たちだけでなく、日本の外でも、いつの時代でも、イノベーションを生むのに必要なもの、と思う。振り返ってみれば、今年9月に読んだ『静かなるイノベーション(ビバリー・シュワルツ著)』で登場した社会起業家たちにも当てはまる。個人的には、「ゴールを設定する力」「あきらめない心」がこの5つの中でも重要なのだと感じる。「何かをやり遂げたい」という気持ちが、チームを鼓舞するだろうし、社会を変える志につながるだろうし、ほかの全てにつながるんじゃないかと思う。
2013年11月9日土曜日
書評: 戦略プロフェッショナル
こんなことを言う人がいる。
『日本で成功する人の一般的なパターンは、20代でたくさん恥をかき、30代で一度は自信過剰になって失敗し、40代では謙虚に努力して、50代で花開く、といったところではなかろうか。これが米国の場合だと、10年以上も前倒しの速いスピードで駆け抜けるスターがたくさんいる。それがあの国の魅力をつくっている。日本でも、これからは若い世代からそうしたパターンをたどる人が多くなってくるだろう。』
本ブログのタイトルにもなっているように、わたし自身も、人生をかなり全速力で駆け抜けてきたつもりだったが上には上がいる、と驚かされる。冒頭の言を発っしたのは、自らも非日本流のスピードで駆け抜けてきた三枝匡(さえぐさただし)氏だ。三井石油化学、ボストンコンサルティングを経て、MBA(スタンフォード大学)を取得し、30代にして、赤字会社再建やベンチャー投資など3社の代表取締役を歴任した経歴を持つ。本日は、その三枝氏が書いた戦略本を紹介したい。
戦略プロフェッショナル ~シェア逆転の企業変革ドラマ~
著者:三枝匡
発行元:日経ビジネス文庫
■シェア逆転の企業変革ドラマに見る戦略指南書
本書は、企業における戦略的アプローチの実践を、物語調に示した指南書だ。
主人公は、日本有数の鉄鋼メーカーに勤めるMBAあがりの36歳、広川洋一。広川の会社は、新事業開発部の活動を全社的に広げて脱鉄鋼の戦略をさらに展開しようという想いがあった。そんな矢先、会社は、一見、本業の鉄鋼とは無縁に見える米国発医療機器販売の代理店販売を行っている会社、新日本メディカルに出資を決める。広川が勤める鉄鋼会社から全体の売り上げからすれば微々たるものだったが、それよりもなによりも、新日本メディカルの成長が芳しくない。物語は、広川は、そんな新日本メディカルに常務取締役として出向を決意したところから始まる。いったい新日本メディカルの何が悪いのか、そもそも勝機はあるのか、そして広川は会社を建て直すことができるのか・・・。
・・・物語のあらすじはざっとこんな感じだ。
■あの「ザ・ゴール」を彷彿とさせる本
この「戦略プロフェッショナル」の類書は?と聞かれれば、エリヤフ・ゴールドラット氏の「ザ・ゴール」を挙げたい。経営理論を、物語形式で伝えるところが、まさにそっくりだ。読み物語形式でありながら、技術理論をしっかりとカバーしており、興味をもって集中して読める良さがある。具体的にはたとえば、目標設定の話だとか、セグメンテーションの話、プライシングの話・・・などが登場するが、とてもわかりやすい。
なお、「ザ・ゴール」の場合は、隅から隅まで小説の体をなしており、ともすればビジネス書と気がつかないほど、良く練り込まれたストーリーが秀逸だった。そんな「ザ・ゴール」と本書が異なるのは、ストーリーそのものがほぼ1つの”実話に基づいている”という点と、物語の章の合間合間に「戦略ノート」と呼ばれる解説が差し込まれている点だろう。実は、こうした著者の解説が意外に馬鹿にならない。物語と解説の両方があって初めてわれわれ読者の腹にストンと落ちる・・・そんな感じだ。
「朝礼暮改がある会社は決して悪いことではない。むしろ、元気の裏返しでもある」という言。「社員への礼儀作法とか社内の清掃への感覚がお粗末な会社は成績もともなっていないことが多い」という言。「失敗の疑似体験をするための前提は、しっかりしたプラニングです」という言。「元来が人間志向の(人間性・包容力に重きをおく)人は戦略志向に、戦略志向の人は人間志向にと、互いに同じ壁を反対側に超える努力をしないと経営者として明日への成長がないようだ」との言。
このように・・・心に響いた著者の言葉を挙げればきりがない。
■追体験を通じた戦略理論の学習
まとめると本書は、”MBAで習う戦略論の数クラス分の授業を一冊に集約させた本”と言うことができる。ただし、MBAで使うケーススタディ教材とは一線を画する。MBAで扱うケーススタディにはほとんどの場合、結論が描かれていないが、本書には物語としての結論・・・主人公の広川洋一がどうなったかの結論がある。これは前者が、生徒同士が自らの意見をぶつけあう・・・ディスカッションを通じて、理論の実践を学ぶことに目的があるのに対し、後者は読者が主人公、広川洋一の人生を追体験することを通じて、理論の実践を学ぶことに目的があるためだ。
すなわち、MBAで身につけるような戦略理論を、一人からでもスパっと学習できる・・・これこそが、本書最大の意議であるように思うのだ。そんな意議に共感できる人はぜひ。
【物語を通じて理論を学習できるという観点での類書】
・書評: ザ・ゴール(The Goal)
・書評: ザ・ゴール2 (It's Not Luck)
・書評: V字回復の経営(三枝 匡)
『日本で成功する人の一般的なパターンは、20代でたくさん恥をかき、30代で一度は自信過剰になって失敗し、40代では謙虚に努力して、50代で花開く、といったところではなかろうか。これが米国の場合だと、10年以上も前倒しの速いスピードで駆け抜けるスターがたくさんいる。それがあの国の魅力をつくっている。日本でも、これからは若い世代からそうしたパターンをたどる人が多くなってくるだろう。』
本ブログのタイトルにもなっているように、わたし自身も、人生をかなり全速力で駆け抜けてきたつもりだったが上には上がいる、と驚かされる。冒頭の言を発っしたのは、自らも非日本流のスピードで駆け抜けてきた三枝匡(さえぐさただし)氏だ。三井石油化学、ボストンコンサルティングを経て、MBA(スタンフォード大学)を取得し、30代にして、赤字会社再建やベンチャー投資など3社の代表取締役を歴任した経歴を持つ。本日は、その三枝氏が書いた戦略本を紹介したい。
戦略プロフェッショナル ~シェア逆転の企業変革ドラマ~
著者:三枝匡
発行元:日経ビジネス文庫
■シェア逆転の企業変革ドラマに見る戦略指南書
本書は、企業における戦略的アプローチの実践を、物語調に示した指南書だ。
主人公は、日本有数の鉄鋼メーカーに勤めるMBAあがりの36歳、広川洋一。広川の会社は、新事業開発部の活動を全社的に広げて脱鉄鋼の戦略をさらに展開しようという想いがあった。そんな矢先、会社は、一見、本業の鉄鋼とは無縁に見える米国発医療機器販売の代理店販売を行っている会社、新日本メディカルに出資を決める。広川が勤める鉄鋼会社から全体の売り上げからすれば微々たるものだったが、それよりもなによりも、新日本メディカルの成長が芳しくない。物語は、広川は、そんな新日本メディカルに常務取締役として出向を決意したところから始まる。いったい新日本メディカルの何が悪いのか、そもそも勝機はあるのか、そして広川は会社を建て直すことができるのか・・・。
・・・物語のあらすじはざっとこんな感じだ。
■あの「ザ・ゴール」を彷彿とさせる本
この「戦略プロフェッショナル」の類書は?と聞かれれば、エリヤフ・ゴールドラット氏の「ザ・ゴール」を挙げたい。経営理論を、物語形式で伝えるところが、まさにそっくりだ。読み物語形式でありながら、技術理論をしっかりとカバーしており、興味をもって集中して読める良さがある。具体的にはたとえば、目標設定の話だとか、セグメンテーションの話、プライシングの話・・・などが登場するが、とてもわかりやすい。
なお、「ザ・ゴール」の場合は、隅から隅まで小説の体をなしており、ともすればビジネス書と気がつかないほど、良く練り込まれたストーリーが秀逸だった。そんな「ザ・ゴール」と本書が異なるのは、ストーリーそのものがほぼ1つの”実話に基づいている”という点と、物語の章の合間合間に「戦略ノート」と呼ばれる解説が差し込まれている点だろう。実は、こうした著者の解説が意外に馬鹿にならない。物語と解説の両方があって初めてわれわれ読者の腹にストンと落ちる・・・そんな感じだ。
「朝礼暮改がある会社は決して悪いことではない。むしろ、元気の裏返しでもある」という言。「社員への礼儀作法とか社内の清掃への感覚がお粗末な会社は成績もともなっていないことが多い」という言。「失敗の疑似体験をするための前提は、しっかりしたプラニングです」という言。「元来が人間志向の(人間性・包容力に重きをおく)人は戦略志向に、戦略志向の人は人間志向にと、互いに同じ壁を反対側に超える努力をしないと経営者として明日への成長がないようだ」との言。
このように・・・心に響いた著者の言葉を挙げればきりがない。
■追体験を通じた戦略理論の学習
まとめると本書は、”MBAで習う戦略論の数クラス分の授業を一冊に集約させた本”と言うことができる。ただし、MBAで使うケーススタディ教材とは一線を画する。MBAで扱うケーススタディにはほとんどの場合、結論が描かれていないが、本書には物語としての結論・・・主人公の広川洋一がどうなったかの結論がある。これは前者が、生徒同士が自らの意見をぶつけあう・・・ディスカッションを通じて、理論の実践を学ぶことに目的があるのに対し、後者は読者が主人公、広川洋一の人生を追体験することを通じて、理論の実践を学ぶことに目的があるためだ。
すなわち、MBAで身につけるような戦略理論を、一人からでもスパっと学習できる・・・これこそが、本書最大の意議であるように思うのだ。そんな意議に共感できる人はぜひ。
【物語を通じて理論を学習できるという観点での類書】
・書評: ザ・ゴール(The Goal)
・書評: ザ・ゴール2 (It's Not Luck)
・書評: V字回復の経営(三枝 匡)
2013年11月4日月曜日
本当に尊大になっていないか?
『(会社が伸び続けている)秘訣と呼べるものはありませんが、挙げるとすれば2つ。会社の調子がいい時に経営者自身が尊大にならないこと、そして問題を先送りにしないで早めに手を打つことです。』 (編集長インタビュー 藤田晋サイバーエージェント社長 課題は全部「合宿」で潰す、より)
(感想)
結果を残してきた社長さんみんなが口を揃えるのが、まさにこの藤田晋社長の言。会社の大きさも残してきた実績も、比べるべくもないが、我が社も会社の歴史から言えば、比較的順調な時期と言える。つまり、今のまさにこの順調な時期が、これまで以上に謙虚な姿勢を持って、ことに臨まなければいけない時期である、とも言える。「本当に尊大になってないか? 問題を先送りにしてないか?」と自分に問いかけると、それを全く否定することはできない、と思うのである。忙しさをいいわけに、手をつけられてないことがたくさんある。
来年から・・・いや、明日から、いや、今この瞬間から改めて態度をいれかえて、ことに臨みたい・・・そう思った。
(感想)
結果を残してきた社長さんみんなが口を揃えるのが、まさにこの藤田晋社長の言。会社の大きさも残してきた実績も、比べるべくもないが、我が社も会社の歴史から言えば、比較的順調な時期と言える。つまり、今のまさにこの順調な時期が、これまで以上に謙虚な姿勢を持って、ことに臨まなければいけない時期である、とも言える。「本当に尊大になってないか? 問題を先送りにしてないか?」と自分に問いかけると、それを全く否定することはできない、と思うのである。忙しさをいいわけに、手をつけられてないことがたくさんある。
来年から・・・いや、明日から、いや、今この瞬間から改めて態度をいれかえて、ことに臨みたい・・・そう思った。
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| 日経ビジネス2013年11月4日号 |
2013年11月2日土曜日
書評: 死の淵を見た男
かの東国原(ひがしこくばる)氏は、宮崎県知事だった時、鳥インフルエンザ問題に直面した。現場に足を運び、自ら現状を把握し、指示を出していった。周りの評価は高かったようだ。他方、管元首相。3・11にて福島第一原発の事故に直面した。やはり、自ら現場に駆けつけたが、そのときの評価はさんざんなものだ。危機時にトップ自らが現場に足を運ぶ・・・ここに共通点を見いだせるが、評価は真反対。この違いはいったい何なのだろうか。もちろん、「県のトップと国のトップでは立場が異なる」・・・そう、一蹴してしまうのは簡単だが、わたしはここに”学び”があるような気がしてならない。それを知るためには、やはり当時、現場で何が起きたのかを次の本を通して、正確に知るべきだと思うのだ。
死の淵を見た男
著者: 門田 正隆
発行元: PHP研究所
■福島原発・・・報道されなかった裏舞台を描いた本
東日本大震災で起きた福島第一原発の事故。事故を収束させるための一連の活動の中で起きた騒動は、まだ記憶に新しい。あのとき、報道の裏側で、いったい何が起きたのか? 福島第一原発の現場で必死になって闘った人たちは? 彼らの家族は? 周辺に住む住民は? 駆けつけた自衛隊員は? 首相官邸にいた人々は? 東電の経営陣は?・・・そのとき何を考えてどう動いたのか? 本書は、東日本大震災が起きた2011年3月11日から約9ヶ月後の2011年11月頃までの時間軸の中で、福島第一原発の事故が悪化の一途をたどっていく状況とそのときの人間模様を物語調に描いた本である。
ただし、物語調と言っても、事実を脚色するような書き方をしているわけではない。
『私はあの時、ただ何が起き、現場が何を思い、どう闘ったか、その事実だけを描きたいと思う。』(死の淵を見た男 「はじめに」より)
これは本書の冒頭にある著者の言葉だが、容易に推察されるように、本書は当時の状況を読者にわかりやすく伝えるために当事者中心の視点で描かれてはいるが、文中に登場する会話などは、聞いた事実がほぼそのまま反映されたものと思われる。
■2つの”凄まじさ”
本書を読み、頭にパッと浮かぶのは”なんと、凄まじいことか”という想いだ。ここには2つの意味がある。
1つは”現場力の凄さ”という意味での凄まじさだ。管元首相のことが色々と取り沙汰されてきたが、誤解を恐れずに言えば、結局のところ、当時のトップが管首相であってもなくても、(多少の違いはあったかもしれないが)あの現場の人たちがいたかいなかったか・・・それが全てだったんじゃないかと思う。それほど現場力は凄まじいものだったと感じるのだ。実際、「注水」だとか「ベント」だとか・・・当時、東京にいた首相官邸や東電の対策本部にいたお偉いさんたちが、現場に指示をだそうと必死に動いていたようだが、本書を読むと、東京側で考えつくことは全て、現場でも早々に検討されていたことが良くわかる。つまり、指示がなくても彼ら・彼女らは立派に動けていたのだ。
もう1つは”なんと過酷なことだったのか”という意味での凄まじさだ。海外からはフクシマフィフティと言う言葉でたたえられた現場の人たち。自らの命をも省みず、家族・・・いや、日本のために、必死で闘った人たちのことだ。本書を読むと、彼ら・彼女らに降りかかった肉体的・精神的な負担が、いかに過酷なものだったのかが、はっきりと伝わってくる。胸をえぐられるようだ。
『(現場を仕切る責任者として)何人を残して、どうしようかというのを、その時に考えましたよね。ひとりひとりの顔を思い浮かべてね。・・・(中略)・・・極論すれば、私自身はもう、どんな状態になっても、ここを離れられないと思ってますからね。その私と一緒に死んでくれる人間の顔を思い浮かべたわけです。・・・(中略)・・・こいつなら一緒に死んでくれる、こいつも死んでくれるだろう、と、それぞれの顔を吉田(所長)は思い浮かべていた。』(死の淵を見た男・・・「第15章 一緒に死ぬ人間とは」より)
ちなみに、こうした現場の過酷さを知るにつけ、やはり原発は廃止すべきなんじゃないかと思った。目に見えている以上に多くの犠牲を払っているのだとしたら・・・原発事故に最悪の事態を想定したとき(たとえば関東一帯が居住不能になる・・・など)、それを受け入れられる覚悟があるのだろうか?と疑問に思うのだ。受け入れられる覚悟がないなら、私はやってはいけないと思う。
■原子力の恩恵を享受する人たち全員が読むべき本
原発の恩恵を享受する国民一人一人が、原発廃止の是非を判断する前に、当時報道されなかった”見えなかった犠牲”というものを知るために本書を手に取るべきだということはもちろんだが、加えて、組織のトップこそ、ぜひ読むべきだと思った。
なぜなら、本書を通じて、災害時における組織のトップのあり方を理解することができるからだ。災害時には現場こそが一番機能する・・・これは9・11からも、3・11を描いた本書からも見て取れるが、組織のトップがその事実を改めてしっかりと理解しておくことで、自分のあるべき真の役割を見いだせるのではないかと思うのだ。たとえば私なら、トップは結局、「現場がより円滑に機能できるように後方からサポートをしてあげること・・・決して邪魔をしない・・・それにつきる」という答えを出すんじゃないかと思う。そうやって考えると、冒頭に触れた東国原元知事と管元首相の評価の違いの理由も見えてくる。現場を混乱させないように休暇という体をとって、単身現場に乗り込んだ東国原元知事と、一国の首相という体のまま現場に乗り込み、現場の手を止めさせたという管元首相。まぁ、この考察が正しい、正しくないは別にしても、こうした思考をめぐらせることは、非常に大事なことだと思う。その意味でも、本書の意議は大きいと思うのだ。
死の淵を見た男
著者: 門田 正隆
発行元: PHP研究所
■福島原発・・・報道されなかった裏舞台を描いた本
東日本大震災で起きた福島第一原発の事故。事故を収束させるための一連の活動の中で起きた騒動は、まだ記憶に新しい。あのとき、報道の裏側で、いったい何が起きたのか? 福島第一原発の現場で必死になって闘った人たちは? 彼らの家族は? 周辺に住む住民は? 駆けつけた自衛隊員は? 首相官邸にいた人々は? 東電の経営陣は?・・・そのとき何を考えてどう動いたのか? 本書は、東日本大震災が起きた2011年3月11日から約9ヶ月後の2011年11月頃までの時間軸の中で、福島第一原発の事故が悪化の一途をたどっていく状況とそのときの人間模様を物語調に描いた本である。
ただし、物語調と言っても、事実を脚色するような書き方をしているわけではない。
『私はあの時、ただ何が起き、現場が何を思い、どう闘ったか、その事実だけを描きたいと思う。』(死の淵を見た男 「はじめに」より)
これは本書の冒頭にある著者の言葉だが、容易に推察されるように、本書は当時の状況を読者にわかりやすく伝えるために当事者中心の視点で描かれてはいるが、文中に登場する会話などは、聞いた事実がほぼそのまま反映されたものと思われる。
■2つの”凄まじさ”
本書を読み、頭にパッと浮かぶのは”なんと、凄まじいことか”という想いだ。ここには2つの意味がある。
1つは”現場力の凄さ”という意味での凄まじさだ。管元首相のことが色々と取り沙汰されてきたが、誤解を恐れずに言えば、結局のところ、当時のトップが管首相であってもなくても、(多少の違いはあったかもしれないが)あの現場の人たちがいたかいなかったか・・・それが全てだったんじゃないかと思う。それほど現場力は凄まじいものだったと感じるのだ。実際、「注水」だとか「ベント」だとか・・・当時、東京にいた首相官邸や東電の対策本部にいたお偉いさんたちが、現場に指示をだそうと必死に動いていたようだが、本書を読むと、東京側で考えつくことは全て、現場でも早々に検討されていたことが良くわかる。つまり、指示がなくても彼ら・彼女らは立派に動けていたのだ。
もう1つは”なんと過酷なことだったのか”という意味での凄まじさだ。海外からはフクシマフィフティと言う言葉でたたえられた現場の人たち。自らの命をも省みず、家族・・・いや、日本のために、必死で闘った人たちのことだ。本書を読むと、彼ら・彼女らに降りかかった肉体的・精神的な負担が、いかに過酷なものだったのかが、はっきりと伝わってくる。胸をえぐられるようだ。
『(現場を仕切る責任者として)何人を残して、どうしようかというのを、その時に考えましたよね。ひとりひとりの顔を思い浮かべてね。・・・(中略)・・・極論すれば、私自身はもう、どんな状態になっても、ここを離れられないと思ってますからね。その私と一緒に死んでくれる人間の顔を思い浮かべたわけです。・・・(中略)・・・こいつなら一緒に死んでくれる、こいつも死んでくれるだろう、と、それぞれの顔を吉田(所長)は思い浮かべていた。』(死の淵を見た男・・・「第15章 一緒に死ぬ人間とは」より)
ちなみに、こうした現場の過酷さを知るにつけ、やはり原発は廃止すべきなんじゃないかと思った。目に見えている以上に多くの犠牲を払っているのだとしたら・・・原発事故に最悪の事態を想定したとき(たとえば関東一帯が居住不能になる・・・など)、それを受け入れられる覚悟があるのだろうか?と疑問に思うのだ。受け入れられる覚悟がないなら、私はやってはいけないと思う。
■原子力の恩恵を享受する人たち全員が読むべき本
原発の恩恵を享受する国民一人一人が、原発廃止の是非を判断する前に、当時報道されなかった”見えなかった犠牲”というものを知るために本書を手に取るべきだということはもちろんだが、加えて、組織のトップこそ、ぜひ読むべきだと思った。
なぜなら、本書を通じて、災害時における組織のトップのあり方を理解することができるからだ。災害時には現場こそが一番機能する・・・これは9・11からも、3・11を描いた本書からも見て取れるが、組織のトップがその事実を改めてしっかりと理解しておくことで、自分のあるべき真の役割を見いだせるのではないかと思うのだ。たとえば私なら、トップは結局、「現場がより円滑に機能できるように後方からサポートをしてあげること・・・決して邪魔をしない・・・それにつきる」という答えを出すんじゃないかと思う。そうやって考えると、冒頭に触れた東国原元知事と管元首相の評価の違いの理由も見えてくる。現場を混乱させないように休暇という体をとって、単身現場に乗り込んだ東国原元知事と、一国の首相という体のまま現場に乗り込み、現場の手を止めさせたという管元首相。まぁ、この考察が正しい、正しくないは別にしても、こうした思考をめぐらせることは、非常に大事なことだと思う。その意味でも、本書の意議は大きいと思うのだ。
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