ビジネス小説と呼べばいいのだろうか!? 単にビジネス書と呼ぶにはあまりに面白すぎるし、小説と呼ぶにしては内容があまりにも実生活に役立ち過ぎる・・・。
「The Goal(ザ・ゴール)」
~ Theory of Constraints(制約理論) ~
著者: Eliyahu M. Goldratt and Jeff Cox (エリヤフ・ゴールドラット)
発行元: The North River Press
※わたしが、読んだのは原文ですが日本語版も同じタイトルで発売されています
昨年(2011年)の9月19日号日経ビジネスの中で「オムロンで成功した納期短縮と在庫の適正化」の記事中、引用されていたのがこの本だった(おそらく経営修士学で少なからずオペレーションズ・マネージメントを学習した者なら、絶対知っているハズなのだろうが、例によってわたしは学校で教授の話を聞いていなかったのだろう・・・汗)。
■経営管理の実践を面白く学べる本
この本は、小説に仕立て上げられた経営管理の教育本である。その小説とは、機械メーカーの工場長を務める主人公アレックスが、恩師である物理学者ジョナの指導を受けながら、採算悪化によって閉鎖の危機に追い込まれた自分の工場を立てなおしていくストーリーだ。読者はTheory of Constraints (TOC:制約理論)と呼ばれる著者エリヤフ・ゴールドラット博士自身が考案した経営管理手法(理論)を主人公さながらに体験していくことになる。
ところで、この本が最初に登場したのが、今から20年以上も前のことだ。アメリカでは300万部が売れ、ありとあらゆる賛辞を受けている。実際、わたしが買った本のカバーには次のようなコメントが記載されている。
「ゴールドラット氏は、産業界の教祖だ(フォーチュン誌)」
「氏は天才だ(ビジネスウィーク誌)」
2001年には日本でも邦訳版が出版されベストセラーになった。
■何故、そんなに面白いのか
そこまで注目されている本なので、わたしがこのブログでとりたてて騒ぐ必要性は全く持ってないわけだが、あえて言わせてもらえばこの本の凄さは、その中で紹介されている「理論の汎用性・実用性の高さ」もさることながら、「教育書としてわかりやすさ」、「小説として面白さ」の3つをいずれも高度に満たしている点だろう。しかも、これら3つ全てが”制約理論の実践を読者に学ばせる”という意味において大きな役割を果たしている。
いわば一石三鳥とも言える本だ。なお、原本(英語版)も決して難しくない英語が使われており、英語の勉強もついでに・・・という人にはなんと”一石四鳥”だ。
とりわけ、小説としての妥協のないストーリー描写には驚かされる。単なる主人公の工場での苦労が描かれているだけでなく、私生活において直面する問題など様々な要素が様々な観点から描かれている。異国の話だが、自分も本当にその場にいるかのようにさえてくれる描写だ。
さらに、(わたしが読んだのが第三版だったからなのかもしれないが)巻末についているゴールドラット氏のインタビュー記事も圧巻だ。氏がインタビューの質問に単に答えるだけでなく、氏がとりあげるTOCの事例会社の担当者(氏の本を読んだ読者からの手紙をきっかけに得たネットワークらしい)に、直接行ったインタビュー記事もいくつも紹介されている。もちろん、事例会社の中には製造業だけでなく、異業種・・・たとえばサービス業にTOCを適用したケースも含まれている。
まさに世界に2つとない実用書だ。
■プロセスあるところに、TOCあり!?
小説の舞台はたまたま機械メーカーだが、この本の巻末にとりあげられている事例会社のように、制約理論は世の中に存在する様々な業種、組織・・・あるいは私生活にすら当てはまるものだと思う。”プロセスあるところに、TOCあり”といったところだろうか。
そういった意味では、誰もが一度は読んでみるべき本だろうが、製造業の人はもちろんのこと、企業のマネージャーの地位にある人や、コーチングが要求される職業(教育者やコンサルタントという立場にある人など)にある人は、特に読まなければ損する本だと思う。
ちなみに、この本には 「It's Not Luck (邦訳名: ザ・ゴール2)」 が存在するそうで、近いうちにこの本もぜひ読んでみたいと思っている。
【コーチングという観点での類書】
・書評:It's Not Luck(ザ・ゴール2)
・書評:子どもの心のコーチング
・書評:この1冊ですべてわかるコーチングの基本
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