2016年4月5日火曜日

書評:ストーリーセラー

久々の小説。


ストーリーセラー(著者:有川浩)を読んだ。なぜって、書店の目立つ場所にランキング1位と掲げられ置かれていたからだ。

カセットテープよろしく、A面とB面といった2本仕立ての小説から構成されている。両方とも、夫婦の話。両方とも、彼女の方が小説家という設定。両方とも、彼女の夢を支える素敵な旦那さんという設定。両方とも、どこまでがリアルでどこまでが架空の話か、その境界がわかりにくい。異なるのは・・・もちろん、エンディング。

ほのぼのとした、でもリアリスティックな結末の話。2つの夫婦の人生を追体験できた。なかなかとらえどころのないオチはなんだったんだろう・・・と考え込んで、ページをぱらぱらとめくってなんでも読み返してしまった。なんでこの本が1位なのか、どうしても腑に落ちなかった。何が面白いのか。

でも読んでからしばらく・・・1時間ほど経って、ふと、結婚した誰の人生でもA面かB面のどちらかの話に当てはまるのかもな・・・と気がついた。自分にこれから降りかかる人生はA面なのかB面なのか。そう考えると、なんとなく他人事で読んでいたこの小説が自分ごとに思えてくる。

もし、作者がそれを見越して本書を書いたのなら、それはなんかすごいことだと思う。でも、やっぱりなんか腑に落ちない。私には、向いてない本がだったのかも。

2016年4月3日日曜日

書評: 創価学会と平和主義

私が好きなNHK番組に100分で名著というものがある。先日、そこで司馬遼太郎が取り上げられていた。著書の代表作「花神」に登場する主人公「大村益次郎」にまつわる解説者の話が印象的だった。

『多くの日本人は“これまでこうしてきました”、“みなさんそうなさいます”からといった理由で、既存概念から脱却できずにいた。これに対し、大村益次郎は、合理主義の信徒だった。そのお陰で戦いで勝ち続けた。』

この発言は、人間いや我々日本人は、感情に走り過ぎて、あるいは、横(他人)を見過ぎて、損してることが結構あるのではないか、という示唆に富んでいる。もちろん合理的・論理的であることが常に正解とは限らない。事実、大村益次郎は人間的にはダメダメだったらしい。だが、余計な感情を廃し、合理的・論理的に物事を見る行為には我々が暮らしよくしていくためのヒントが隠されているのではないかと思うのだ。これこそが、私が本書に手を出した理由である。

著者:佐藤 優
出版社:朝日新書


⚫️創価学会と公明党を客観的に紐といた本
創価学会の正体を語ってくれている本だ。公明党とのつながり、その奥底にある決してブラさない軸、当該宗教における池田大作氏の位置づけ、彼や創価学会、公明党が果たしてきた役割などを、“偏見を入れずに”解説している。

“偏見を入れずに”と、なぜ言えるのか?それは著者が、あの佐藤優氏だからである。しかも、佐藤優氏自身、既に別の宗教に入信している身である。そう、プロテスタントであり、肩入れするような立場でもないのだ。

⚫️佐藤優氏が本書を書いた理由
そう考えると逆に「なぜ、彼がこんな本を?」という疑念がわくが、これについては冒頭で私が述べたものに似た趣旨の発言を、本書の中で述べている。

『キリスト教とは、同時に他の宗教を信じることが認められていない。したがって、私は、当然、創価学会員ではない。また、創価学会におもねる必要もない。しかし、同時に私は、偏見を極力排除し、創価学会を等身大で理解し、そこから学びたいと思っている。それは私の理解では、創価学会が生きている、本物の宗教だからである。』(本書より)

ちなみに、私も創価学会には接点はない。良い印象も悪い印象も持っていない。強いて言うなら「得体の知れない団体」という、ややもすれば負の印象を持っていると言えるかもしれない。若い頃、私が塾でバイトをしていた関係もあって、そのときの教え子に「集会に来てみませんか?」と誘われて、その集まりに参加したことがある。そこで見た、大勢の人が集団で何度も一斉に「何妙法蓮華経」と声に発していた光景だけが、いっぺんの記憶として残っている。

⚫️異教徒が異教を語るユニークさこそが本書最大の魅力
宗教を異にする佐藤優氏自身が他の宗教について語っているということ自体が異色だが、キリスト教との類似点について語っているのは佐藤氏ならではだと思う。キリスト教布教の歴史と創価学会の布教の歴史を対比させているのは佐藤氏くらいではなかろうか。

そして、さらに、政教分離がどうの・・・と言われる中で、あえて「むしろ、公明党と創価学会はお互いの距離を、外部の人間の目にも見える形で縮めるべきだと主張したほうが日本のためになる」という発言は、興味深い。なぜ、そんな主張をしているのか、についてはぜひ本書を読んでもらいたい。

⚫️読んで見て、思った通りに得られた学び
本書を読んでみて、「びっくりぽん」(あさちゃん風)だったのは、以下の3つである。
  • 佐藤優氏がプロテスタントだったということ(実は知らなかった)
  • 政教分離に対して間違った認識を持っていたこと(公明党は政教分離スレスレだと思っていた)
  • ナショナリズム※も、グローバリズムも、今の世界が抱えている課題解決にはたり得ないということ。逆に創価学会が説く、非暴力と対話に基づく平和主義に解決にヒントが隠されているのではないかということ
※ナショナリズムは自分の国の習慣と価値観が他の国のものより優れているという考え方

⚫️誰が読むべきだろうか
佐藤優氏曰く、次の読者を想定した執筆したとのこと。

創価学会に反感を覚える人、宗教に無関心な人、熱心な創価学会員、両親が創価学会員である関係で自分も学会員になっているが活動には熱心でない子と、恋人が創価学会員であるために両親から交際をやめろと言われている人など。

宗教がどうのこうのとか、創価学会がどうのこうのとかということを差し置いて、まず今事実として誰が何をしようとしているのか、それはどんな意味を持つのかについて認識することは決して損ではなく自分にとっての正しい答えを導き出す近道にもなり得ると思う。

まぁ、装丁やタイトルには、正直、手にとって読もうと思いづらい雰囲気があるけどね。


【宗教解説という観点での類書】
・ふしぎなキリスト教(著者:橋爪大三郎、大澤真幸)

2016年3月30日水曜日

書評: ワークシフト

先日も書いたが、インプットとアウトプットは常にセットで行うと身につく。
習ったこと・覚えたこと・見聞きしたことを、改めて自分の口に出してみたり、文書に落としてみたり・・・。アウトプットすると、自分の考えが鮮明になり、持つべき意思も、より強固になる。意思がはっきりすれば、自然と実行力も上がる。

本書が取り扱うテーマは、自分の未来には何が待ち受け、それに備えてどう行動すべきか、だ。このテーマについては、日常生活の中で、しょっちゅう考える機会はあるし、考えてきた。でも、きちんとアウトプットする機会はあまりなかったように思う。だから、いつも未来には何が待ち受け、自分がどうするか・・・明確な意思は持ててないし、自分の行動にもつながっていない。

本書は、まさにそこを解決してくれる一助になるかもしれない。

WORKSHIFT(ワークシフト)
~孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〔2025〕
著者:リンダ・グラットン(池村千秋訳)
出版社:プレジデント社


将来がどう変わるかを予測し、我々が後悔しない生き方をするために今からどんなことに気をつけておいたほうがいいのかといったテーマを考えるための基礎情報を提供してくれている本だ。単に基礎情報を提供するだけでなく、同基礎資料を使って自分なりの答えを導き出した人々の回答例や、著者本人としての結論も紹介されている。なお、ここで言う将来とは、今から10年先(2025年)のことを指している。

ところで、著者はどうやって不確実な未来予測をしたのか。世界に散らばるメンバーからなる共同研究プロジェクトを立ち上げて実施したという。そして、次の5つの要因からなる32の現象をリストアップしていったそうだ。
  • テクノロジーの進化
  • グローバル化の進展
  • 人口構成の変化と長寿化
  • 社会の変化
  • エネルギー・環境問題の深刻化
32の現象とはたとえば、「メガ企業とミニ起業家が台頭する」「バーチャル空間で働き、“アバター”を利用することが当たり前になる」「世界の様々な地域に貧困層が出現する」など。

我々は、こうした32の現象を、一つの基礎資料として自分なりのより具体的な未来想定と、どうすべきかの答えを導き出していくわけだ。先述したように、単に基礎資料だけ用意して「あとは自分だけで考えてみてくれ」というわけではない。そこには、実際にこの現象を基にどういった未来を描いたのか、いくつかの事例が紹介されているし、著者自身の考えも述べられている。「物理的な距離を感じさせないバーチャルな共同業務が当たり前になり、ますます仕事の細切れ化が進む」といった話や「何でもネットでつながっていくがために、人と人とのつながりが希薄化していく」といった話など様々だ。

ちなみに著者自身に1つの考えはこうだ。「色々な仕事はコンピュータにとって変わられる」「コンピュータがとって変われない仕事は、専門性が高く、想像力が求められる仕事である」「そこまでの力量を身につけるためには、“自らが本当にやりたいと思う仕事”でなければ無理だろう」「ただし予想した未来が確実にやってくるとは言えない」「だから、“自ら本当にやりたいと思う仕事”を見つけ、それにつく努力を今以上にしていくことがいいだろう」というものだ。ただし、何度も言うように、これは著者自身の考えであり、実際は本書が提供する基礎資料を基に、自分なりの未来を描く必要がある。

私自身はこの本を買って読んだおかげで、冒頭に述べたように今まで漠然としか考えてこなかった未来、それに伴って自分がすべきことが、よりはっきりしてきた。その意味で本書には感謝している。他のみなさんも読んだ方がいいのか?という問いに関しては、人による・・・というのが私の答えだ。今から10年後の話なのだから、学生自身、そして学生を子供に持つ親にとっては、使い方次第で有益な本になるだろう。


2016年3月22日火曜日

常にインプットとアウトプットは“ペア”にする

NewsPicks【堀江貴文×鈴木おさむ】面白い企画は“心の貯金”から生まれる
https://newspicks.com/news/1456846/body/?ref=search

は面白い記事だった。下記、言は印象にはピンと来るモノがあった。

「インプットとアウトプットは同時に行うように心がける」(堀江貴文)
「じっくり3カ月かけて企画を出すより、短期間集中して出す22個のほうが大事だと思います。」(鈴木おさむ)

アウトプットってインプットするより面倒臭くて、例えば自分で本を読んでもアウトプット出すのに時間を空けちゃうことがよくある。「きちんと思考を整理したいから、時間を取れるまで置いとこう」みたいな。でも、振り返ると時間をおいたからってアウトプット品質がすごく良くなるわけではないし、むしろ時間が経過したせいで記憶が薄れ、品質が劣化する(あるいは時間がかかる)ことも少なくない。

「アウトプットは自分にとって本当に役立つ情報への変換作業である」という目的に鑑みれば、時間をかけてアウトプットするよりも、むしろ、できるだけ素早く数多くこなした方が、有効性が高いという事実は、成功者が共通に発見してきたことなのだろう。

2016年3月12日土曜日

書評: 経営パワーの危機 ~会社再建の企業変革ドラマ~

インフルエンザBで倒れてた...。読み終わってはいたけれど、パソコンに向かうことができなかった。

さて、書評。


■ノンフィクションに限りなく近い、会社再建ドラマ
これは、会社再建ドラマだ。フィクションではあるが、著者自身が経営コンサルをする中で得た実話を上手に組み合わせて、書き上げたかなりリアルな物語である。読者に追体験させることを狙いとしている。

舞台は、色々な会社を買収し、多角化を進めてきた企業、新日本工業から始まる。投資した子会社の業績は惨憺たる状態。新日本工業社長・・・財津は、立て直しをしようと抜本改革を目指す。そもそも経営を担える次世代幹部が育っていないことを真の課題ととらえた財津社長は、36歳の伊達陽介に注目し、彼を傾きかけた子会社の1つに出向させる。そう、物語の主人公は財津社長・・・ではなく、倒産寸前の会社に送り込まれた伊達陽介だ。彼は困難に立ち向かい、会社を再建できるのか。

■「ザ・ゴール」を彷彿とさせる示唆にとんだ本
読んでパッと頭に思い浮かんだのは、エリヤフ・ゴールドラット氏が書いた有名なオペレーションズ・マネージメント小説「ザ・ゴール」だ。「ザ・ゴール」は小説に仕立て上げられた経営管理の教育本だが、本書「経営パワーの危機」も、言わば、その経営再建バージョンと言えるだろう。

結論から言うと、面白かった。500ページ近くからなる分厚い本だが、立ち止まることなくあっという間に読めた。加えて、小説の合間合間に登場する著者のちょっとしたコメントは示唆に富んでおり、役に立つ。たとえば、財津社長が主人公の伊達陽介を出向させる場面では、

「日本企業の弱点は、経営が育ちにくい環境であることだ。組織を小さなプロフィットセンターに分けて、権限を与えればいいが、日本ではこのアプローチがまだまだできていない。多くの日本企業が依然として機能別組織や中途半端な事業部制の組織にとどまっている。だから実質、本来の意味での“経営センスを磨く場”が乏しいといえる」

といった著者のコメントが登場する。なるほどな、と思っているところ・・・本を読み終えた翌々日くらいに次のような日経新聞の記事がたまたま飛び込んできた。

みずほ、顧客別に組織!みずほフィナンシャルグループは4月に社内カンパニー制を導入する。2016年2月27日日経新聞朝刊より
トヨタ、次世代経営者育成! カンパニー制導入発表。「トヨタ自動車は2日、社内カンパニー制を4月に導入すると発表した。」2016年3月4日日経新聞朝刊より

みずほの場合は、どちらかと言えば顧客ニーズを掘り起こすことを目的とした組織編成だが、トヨタなどはまさに著者がしてきたしたような課題解決を目指した組織編成を行おうとしているわけだ。

こうしたリアルな企業のニュースが、自分のアンテナにひっかかり、単なるニュースが単なるニュースだけでおわらないのは、本書を読んだからこそだと思う。本書は本当にタメになる。こんなケーススタディ本がたくさん登場し、読まれるようになれば、と願う。日本企業から真の経営者が生まれることは、日本経済の活性化にもつながるのだろうから。


【経営ノウハウを物語から学習できるという観点での類書】
・ザ・ゴール(エリヤフ・ゴールドラット)
・ザ・ゴール2(エリヤフ・ゴールドラット)

2016年2月13日土曜日

イノベーションと経済危機と自動洗濯折り畳み機

今日は、イノベーションについて考えたい。世の中、イノベーションを起こすのにみんな必死だ。だがイノベーションってそもそも何だろう。

私は、ユーザーにもたらす良い意味での驚きのことだと思う。そしてその驚きには購買欲求も伴う。その意味で言えば、iPhoneなぞは、まさにイノベーションだった。その証拠に、みんな(私も含め)飛びついた。多少高価でも関係ない。みんな飛びついた。

だが、盛者必衰のことわりを表すとはよく言ったもの。iPhoneの売り上げが減少したと先日の日経は報じていた。人間は飽きやすい動物だ。驚きは長続きはしないのだ。そんな動物にイノベーションをもたらし続けるってきっと大変なことなのだ。

他方、イノベーションは、経済危機にも関係があると言う。佐藤優氏の本で学んだ。イノベーションが停滞すると購買活動が減り、売り上げが減少、給料が減少、これが行くところまでいくとバブルがはじける・・・それが経済危機だそうだ。

ぼんやりとそんなことを考えていたところ、今日、日経ビジネスを読んでいて良い意味での驚きに出会った。なんと、自動洗濯折り畳み機の実用化がすぐそこまで来ているという。これが実用化されたら、その購買欲求たるや、iPhoneに匹敵・・・いやそれ以上ではなかろうか。

人間は飽きやすい動物といったが、飽くなき欲求があるかぎり、イノベーションはもたらされつづけるのだろう。経済危機もやってはくるだろうが、乗り切れそうだ。

2016年2月12日金曜日

仕事の効率化術(バッグ編)

私はずっとランドセルのような厚さの大きなバッグを仕事で使っていた。しかも、常にパンパンだった。酷使していたため、数年でひもが引きちぎれ、買い換えてきた。その都度、大きめのモノを・・・という選び方をしてきた。

数年前、佐藤可士和氏の「仕事の超整理術」という本を読んだとき、「定期的にバッグをからっぽにする」といった彼の発言を見て、これだ!と思った。そして、定期的にバッグをからっぽにするように心がけてきた。だが、気がつけば最後はいつもパンパンになっている。

ホチキス!ポストイットのり!参考書!ノート!PC!iPad!電源がなくなったときのための予備バッテリー・・・。困ったときにあると便利だが、バッグが重くなる一方だった。パンパンかつ重たいバッグを持ち歩いて、健康に良いことなどない。肩も痛くなるし、体も傾く。

2016年12月、何を思ったか突如、薄型のバッグを買った。とにかく何も持ち歩きたくない・・・いっそのこと持ち歩けないバッグにしてみてはどうだろうか・・・と思ったからだ。予備のバッテリー? いらない! ホチキス! なくても困らない! ノート!数枚で十分!・・・そんな感じで無駄を排除した結果、必要なものは全てそこに収まった。それから2ヶ月。特に困ることは何もない。強いて言えば、客先でもらったペットボトルの水が入らないことくらいだ。でもさっさと飲み干せばいい。
いったい、パンパンで重たいバッグを持ち歩いて・・・それでも、まだ何か足りない・・・という状態だったあの数年間の苦しさはいったい何だったのだろう。バッグは軽いし、体も軽い。必要なものもすぐに取り出せる。整理整頓の整理は捨てること、整頓はしまうこと・・・とは良く言ったモノだが、捨てること・・・これをせざるを得ない強制的な環境を作ること・・・これも一つの有効な手段なのかもしれない。

書評: 売る力 〜心をつかむ仕事術〜





●顧客目線を実践したい一心で手を出した
著者の鈴木敏文氏が結果的に成功したものはその多くが、提案当初、たくさんの人から反対されたものばかりだった・・・という。セブン銀行やおにぎり販売、共同配送・・・などなど。セブン銀行のときは取引銀行の頭取までもが直接訪問してきて反対したというからびっくりだ。顧客目線が重要と言いながら、いかに顧客目線じゃない人が多いかということを示すのにこれほど分かりやすい例はないのではなかろうか。

セブン-イレブンに関する本は過去に1冊に読んでおり、鈴木敏文氏の考え方はある程度わかっているつもりだ。それでも、今回改めて彼の本に手を出したのは、顧客目線・・・が分かっていても、実践しきれていないと感じるからだ。まるで、顧客目線から引き離そうとする強力な磁場が働く中にいるかのようだ。油断するとすぐに売り主目線になっている。

この強力な磁場から抜け出すためのヒントが少しでも得られれば・・・という思いから、本書に手を出した。そして結論から言えば、その希望はある程度叶えられたと思う。

●顧客目線の第一人者が語る仕事術
「売る力」は、顧客重視の第一人者といっても過言ではない、鈴木敏文氏が執筆した本だ。ご存知の通りセブンイレブンは競争が激化しているコンビニ市場にあって、コンビニ業界・・・いや小売業界の王様と言える。その大きな原動力になってきたのは、間違いなく鈴木敏文氏である。どんな環境変化にさらされてもタイムリーに顧客の心を掴み、売れる商品を提供し続けてきた鈴木敏文氏のアプローチ方法が、本書には書かれている。

●本書が読者にもたらす3つの価値
3つの理由で価値ある本だと思う。

1つめは、顧客目線とは何たるかを教えてくれる点だ。顧客目線とは、売れる商品を作り完売させることではなく、顧客が買いたいと思う商品に欠品を出さないことだ・・・という鈴木敏文氏の話が、印象的だった。Francfranc(フランフラン)高島氏の「横(ライバル)を見るのではなくひたすら客だけを見続けた」と言う対談話は、胸にぐさりと突き刺ささった。

2つめは、顧客目線を持つにはどうしたらいいかを教えてくれる点だ。顧客目線を持つには、「顧客のために」という思考ではなく、「顧客の立場で」という思考が大事という鈴木氏の話は至極まっとうだ。そのほかにも、セブンイレブンのブランディングを担当したクリエイティブディレクター佐藤可士和氏の赤い携帯電話の事例話が面白かった。

3つめは、顧客自身も気づいてない顧客目線というものをどうやって持つかを教えてくれる点だ。ただし、この点については昨日読んだ堀江貴文氏の「アイデア自体の価値は下がっている。重要なのは実行に移すかどうかだ」という言葉も思い起こされる。その意味では、ヒントはごろごろ転がっているハズで、ちょっとした工夫で、気づけるようになる・・・ということなのだろう。AKB48で有名な秋元康氏の予定調和の壊し方に関する対談話や、自らの声にいかに耳を傾けるかという鈴木敏文氏自身の話が興味深かった。

●会社の仲間に伝えたい
あの鈴木敏文氏が敬意の念を抱いているという人達の話は、有名な人ばかりだ。そして期せずして共通しているのは、みんな地道で尋常じゃない努力をし続けているという点だと言う。

うちはB-to-Cじゃないから。そういう声もあるだろう。だが、顧客重視に業種・業態など関係ないはずだ。みんな顧客目線に立つために、地道で尋常じゃない努力をしつづけてきているんだ・・・ということを、わたしの会社の仲間にも伝えたいし、読んで欲しい。そう思わせてくれる本である。

2016年2月11日木曜日

書評: 本音で生きる


著者: 堀江貴文



堀江貴文が、日々何を心がけ、どういう努力をし続けてきているのかを紹介した本だ。いろいろなメディアで見かけるので、おおよその生き方は知っていたつもりだが、本書を読んでみて、彼の究極まで突き詰めた無駄時間の排除には改めて驚く。ちなみに、「そもそも無駄なことを排除することがいいことなのか?」「無駄にも意味があるだろう!」などといった反論が聞こえてきそうだが、無駄の定義は人それぞれだし、それは揚げ足し取りだと思うので、ここではそうした議論は取り上げない。

価値観の違いはあってしかるべきだから、読んだこと全てを受け入れ、マネする必要は全くないが、「おっ、これは使える」とか「確かにそうだ」とか・・・刺激となったものは私にとっても、いくつかあったようだ。

たとえば無駄な会議を減らす方法についての話。わたしの会社の会議が増える一方で困っているのだが、メーリングリストの活用など実は実践できてない。トライする価値があると思った。

また、「今の時代アイデアの価値はなくなってきている。アイデアはでつくしているし、自分が思いつくアイデアなど既に転がっているものばかりだ。ゆえに、成功するかしないかの違いは、良いアイデアを思いついたかではなく、それをやったかどうか・・・それだけだ」という堀江貴文氏の発言には、ぐうの音も出ない。実行力の大切さを普段から意識し、実践を心がけてはいるが、まだまだ腰が重い方だと思う。

そんなことを気づかせてくれる本書だが、「上には上がいる。自分がやっている努力などたかが知れている。」と思わせてくれることが、私にとっては何よりも価値があることだった。わたし自身本をたくさん読んでいるし、ニュースアプリや各種媒体から情報もたくさん入手するし、モノをたくさん書くし、公私ともに日々自分に足りないところを感じれば改善の努力をし続けているつもりだ。それなりに頑張っていると思うのだが、ビジネスマンとしては彼の足下にも及ばない。でもそう思わせてくれるので、また明日から突っ走れる。

さて、井上ひさしの時にも感じたが、堀江貴文は一家庭人としてとか、一人間としてどうか・・・などといった問いかけをすると、その答えは怪しい。そこは当人も本書の中で(チャレンジの多い人生を送りたいとか、何かを成し遂げたいとか、思っている中で、全てにバランスをとろうだなんてそんなきれい事は通用しない。ずるい、などと)述べている。ただしビジネスマンとしての堀江貴文には、学ぶべきところが大いにあると感じる。彼の言動に嫌な感じを覚え、嫌い・・・という人もいるだろうが、少なくとも彼の努力は本当に尋常じゃないほどすごいと思うし、そこは私は素直に尊敬している。


記事評: Can you employee really speak freely? (従業員はあなたに自由に話しかけることができるか?)

2016年2月号のハーバードビジネスレビューで次の記事が目にとまった。

Can you employee really speak freely? (従業員はあなたに自由に話しかけることができるか?)

なぜなら、私の会社でも果たして従業員が本音を語ってくれているだろうか?と不安に思うからである。この問いは最近メディアを騒がせているような事象も想起させる。コンプライアンスに関わる事件事故を引き起こした会社の足下でも、こうしたことが課題になっていたのではないだろうか。

私が知っている言葉に“集団浅慮”というものがある。「あるテーマに対し周りの判断が何かおかしいな」と、あなた1人違和感を感じていたとする。ところが、マジョリティーがオーケーだと言う判断をしているわけだから、その雰囲気に呑まれ、「あ、おかしくないんだ」と、違和感がかき消されてしまう。せっかく違和感をもっていてもとりあげられず、結果として大きなミスや事故を回避できない事態を引き起こしてしまうような集団心理を指す。こうした心理はまさに組織におけるコミニケーションの円滑化を難しくするものだ。

企業はこうした状態に陥いらないようにそれなりにコミュニケーションの円滑化に向けて、努力をするがなかなかうまくいかない。この記事もそれを指摘する。

『最近の企業では匿名のユーザーアンケートやオープンドアポリシー(いつもあなたの上司もしくはその上の上司へのドアはあいています!悩みがあればいつでも相談に来て下さい・・・という会社方針)などで、従業員が気軽にコミュニケーションを取れる環境を作るよう躍起になっている。が、その効果は期待するほどではない。なぜなら匿名といっても本当にどこまで匿名性が守られるか、怪しいからだ。皮肉なことに、会社が課題と感じて解決に向けて取り組もうとすれば、ある程度誰が言ったかなどは推定できてしまう場合も少なくない。オープンドアポリシーにしても、あまりに受け身であり、従業員にとってはハードルが低くない。』

ではどうすればいいのか? まさにその部分がこの記事の趣旨である。大雑把にポイントをまとめると以下のようなものだ。

  • 定期的かつカジュアルな会話機会を頻繁に持つ
  • 直接現場に足を運び話しかける
  • 相手がリラックスできる(少なくとも上司のオフィスではない)場所を選ぶ
  • 相談したらきちんと「アクションをとってくれるんだ」と思ってもらえる信頼を勝ち取る
  • 仮にアクションは取れない場合は、誠意を持って何らかの回答を返す
自ら従業員に積極的に話しかけているか?・・・そして、従業員があなたに話しかけたくなるような雰囲気作りに努めているか?・・・が大事なのだと思う。皆さんの企業での取り組みはこうした要件を満たすものになっているだろうか?

2016年2月6日土曜日

書評: 色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年

著者:村上春樹

久々に読んだ・・・村上春樹の小説。うーん、好きだ。村上節は健在だ。百田尚樹もそうだが、テンポがいい。過度な情景描写はない。でも、シンプルかつ美しい言葉で読み手の頭の中に情景を思い描かせる。

主人公の田崎つくるは、高校時代、仲良し5人グループの一人だった。このグループは、主人公曰く・・・完璧な調和がとれたグループだった。そうまさに完璧だった。この関係は、つくるが地元の名古屋を出て、東京の大学に進学したあとも決して壊れることなく続いた。そんなある日・・・つくるは、4人から絶縁される・・・。物語は、30代になった主人公つくるが、当時のことを振り返る場面から始まる。いったい何が起こったのか。

読んで感じるのは、一応の爽快感?・・・。同時に、たくさんの疑問。物語のあちからこちらに登場する、不思議な話、悲しい話、つらい話、明るい話・・・。咀嚼するまもなく、本を読み終えてしまう。

そんな中で、私が感じたのは、

 ・世の中、自分の思い通りにならないことなんていっぱいある
 ・自分の思い込みもたくさんある
 ・事実・現実から目を背けて何も解決しない
 ・意思とは無関係に、時間は流れてゆく

泥臭く頑張るのはかっこわるい、そこまで頑張って何がかわる・・・など、何事もクールにすまそうとする・・・人々・・・現実逃避しがちな若者こそ、読むべき物語なのかな・・・と感じた。

書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...