2010年5月2日日曜日

書評: 『ピータードラッカーのマネジメント~基本と原則~』

結局、今回の海外出張中は、雑誌3冊(日経ビジネス4月26日号、5月3日号、ハーバードビジネスレビュー)と書籍2冊(ピータードラッカーのマネジメント、ERMの実践)にかろうじて手を出すことができた。

そんな中から今日は『ピータードラッカーのマネジメント~基本と原則~』について書こうと思う。先日、週刊ダイヤモンドの特集で見て、つい読みたくなって思わず買ってしまった本だ。(ちなみに図書館にいってみたら、1ヶ月待ち・・・だった)

「なんで今更・・・」

と、言う人もいるかも知れない。

コンサルタント&経営者をやるようになって色々な知識・経験を積み重ねた今だからこそ、改めて読むと新たな発見があるかもしれない、という思いがあった。

この書籍は、文字通り「ビジネスの基本と原則」について、ピータードラッカーが自身の経験にもとづいた確固たる考えを語っている。「企業とは」「事業とは」「戦略計画とは」「経営資源とは」「生産性とは」「組織とは」「マネージャとは」などといったビジネスを構成するコンポーネント(要素)について、事例を挙げながら丁寧に解説をしてくれている。

一見すると、抽象的な言葉に対する単なる定義の羅列・・・ともとれなくはない。もし、僕が社会人になりたてのときにこの本を読んでいたら「企業の目的とは?」と聞かれても「そんなの、言うまでもなく利益を最大限に追求することじゃないか!・・・そんな概念的な問答に何ページも割いて何の意味があるんだ!?」と生意気に一蹴していただろう。

勿論、ちょっと考えれば、そんな簡単な話ではないことは分かる。でなきゃ、これほど世界的なベストセラーになるわけもない。

たとえば、先ほどの「企業の目的とは?」という問いに対してドラッカーは「顧客を創出すること」と述べている。では「利益は?」というと「企業の目的ではなくて、条件である」と語っている。

つまり、企業は「利益を出すためにどうしたらいいか?」という問いの答えを見つけようとするのではなく「企業は顧客を創出するためにどうしたらいいか?」に対する問いの答えを求めることが必要、ということになる。たとえば会計上、利益を創出することはさほど難しいことではないので、利益を上げることを目的としてしまうと、ゆがんだ結果がもたらされるということもありえるわけだ。

「いつの間にか手段が目的化してしまっている」

とは良くいったものだ。なるほど、こうやって改めて1つ1つの言葉の”本質”について考えてみると、自分の視野が広がる。

ドラッカーの理論は、MBAなどでも学んだことだが、実は、当時は、あまり自分の脳の中で消化できていなかったように思う。

「コンサルをやっていて何を今さら・・・」

と言われれば、それまでだ。正直、自分はそれなりに勉強し経験を積み重ね、十分に理解しているという自負があった。普段、完全に理解したつもりで使っていた言葉だが、まだ本質を理解しきれていないものもあるようだ

ただし、「現場で色々なことを経験しては、何度も原点に返って基礎を考え直してみる」ということは自己を成長させるにあたり必然のプロセスなのだと思う。

ビジネスは、本当に奥が深い。だから、面白いのだろうけど。



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