2010年5月7日金曜日

書評:スティーブ・ジョブズ 危機を突破する力

昨日の夜、竹内一正著書『スティーブ・ジョブズ 危機を突破する力』(朝日新聞出版)を読んだ。ソフトカバーで200ページ強、¥1,500の本。非常に読みやすい本で数時間で読み終わってしまった。

実は、この本、最近聴くようになった『新刊ラジオ-「話題の本を耳で読む」新刊JP公式ポッドキャスティング』で知ったのがきっかけだ。通勤の道中、解説を聴いて、つい衝動買いをしてしまった。

この本は、アップル社のCEO(最高経営責任者)であるスティーブ・ジョブズのノウハウについて、アップル出身のコンサルタントが6つの要素(16の中項目と77の小項目)に分解、経営の閉塞状況を打破する突破口を指し示したものだ。

読んでみて「なるほど!」と思える印象的な部分が結構あったので、わずかだが、そのいくつかを挙げておく。

・今やっていることを一生懸命にやろう。将来(いい意味で)どうつながるか分からない。
・自分で決めたことの失敗が成長につながる。
・売り込む先の相手の立場に立つ(どうやって利害を一致させるか?)。

といった点は、特に自身の体験からも「なるほど!」と思えたものだ。特に3つ目の「どうやって利害を一致させるか?」のポイントで著者が挙げた、ジョブズのインターネット音楽配信サービスiTMS(アイチューン・ミュージックストア)の成功事例は目から鱗だった。アメリカの5大音楽会社のCEOたちを説得させた彼の論理に僕は、

「全くその通り。5大CEOのみならず、一消費者である自分自身も、当該サービスについて、全くそのように感じていた(から、iTMSを使っている)。うーむ。」

と、ただただ、うなるしかなかった。まぁ「語るに易く行うに難し」ではあるけれども「もっと知恵を絞れ、やりようはあるハズ・・・」というメッセージとして受けとめた。

このほかにも、

・最も重要な決定とは何をするかではなく、何をしないかを決めることだ
・いいプレゼンは全て見せる。凄いプレゼンは少し隠す。
・部下の能力は自分自身の能力の反映
・育てられるのではなく、育つ

などといった点について勉強になった。4つ目の「育てられるのではなく、育つ」とは、「上司が無能だから、自分は成長できない」と自分の仕事環境を呪う人がいるが、

「上司が無能だからこそ、自分がその分、成長できる余地があるんじゃないか」

と考えるべき、という意味だ。発想の転換だ。考え方次第で「自分の力で突破できることがいくつもある」ということのいい例だと思う。




最後に、余談だが、この本を読んであらためて日本とアメリカの起業環境の違いを思い知り、日本政府にはもう少しなんとかして欲しいと感じたことがある。

本の中で著者が(ちょっと古いかなとも思ったが)中小企業白書2002年度版の統計データから

「倒産後に経営者が再就職する確率は日本が50%なのに対し、アメリカは88%にのぼっている。しかもそのうち経営者に復帰する率は、日本26%、アメリカ53%。」

と指摘している。アメリカではたとえ起業に失敗しても命まで奪われることはないが、日本では事業に失敗すると、代表取締役やその連帯保証人は、債権者である銀行に、家、土地、お金など全て持って行かれて、子供を学校に通わせることまで困難になることも少なくない、というわけだ。社会的に白眼視され、債権者に追い詰められて自殺するケースすらある、と。

社会のセーフティーネットがしっかりしてないと、チャレンジ精神がわかないのでなかなか起業家はおもいきったことできないし、それ以上に、起業家になろうっていう人が少なくなる。

日本は言うまでもなく資源の乏しい国だ。知恵を絞った革新的なサービスを次々に出していかないと立ちゆかなくなる。そのようなイノベーションを生み出す起業環境を作るための法整備を国にはしていってもらいたいと願う。

===2011年10月6日(追記)===
2011年10月6日・・・アメリカ時間だと10月5日・・・スティーブ・ジョブズ氏が亡くなったと報道された。1つの大きな歴史が幕を閉じた。会ったこともないのに、悲しみが心に染みこんでくる・・・。


亡くなった日、Apple本社のHPにはスティーブ・ジョブズ氏の写真が掲載された

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