2018年3月20日火曜日

記事評:取締役会の新たな役割:イノベーションを統治する(HBR2018年2月号)を読んで

久々にハーバード・ビジネス・レビュー(2018年2月号)を読んだ。最近、企業の役員の方にお会いすることが多いので、コーポレート・ガバナンスのことが気になっており、この記事が琴線に触れた。

記事の趣旨を大胆にまとめるならば、「企業にイノベーションが足りない足りない・・・と言われているが、実は、その責任の一旦は取締役会にもある」というものだ。

ただし、取締役会はせいぜい月1回。数時間程度である。普通に考えれば、議論する時間などない。事前に根回しをされた内容を追認する。つまり、ワイガヤのディスカッションなどほとんど行われていない・・・それが一般的な(私の)イメージだ。

今の時代、それでは駄目だろう・・・というのだ。そのためには、時間的制約の壁を乗り越える必要があるし、どのような人材を巻き込むべきかという論点がある。前者について工夫している組織では、たとえば取締役会のテーマを変えて、年に2種類の戦略会議を開いていると言う。1つは自社の組織能力と市場におけるポジションについて話し合うもので、学びに重点をおく会議であり、もう一つは意思決定を下す会議だそうだ。そして後者については、取締役会メンバーの多様性に工夫をするという。その会社の専門分野に精通した人材を招くよりも、会社に足りない視点を持っているプロを招聘するというのだ。最近、私も仕事で社外取締役や社内取締役の双方に面談する機会があるが、上手く言っているなと思える企業は、足りない視点を補う社外取締役を呼べている。

納得感がある。どうせ時間とお金をかけて外部の人材を招聘するならそれくらいの工夫はしたいし、成果を期待したいところだ。


ところで、最後に次の一文も心に響いたので掲載しておく。

『フォーチュン100に入る小売企業のCEOは、「他社のCEOや取締役会を見て、取締役会が枝葉末節にとらわれる過ぎると命取りになることを学びました」と我々に語った。こうした問題を避けるには、取締役会に対して何を求めているかを最初に明言することである』

当たり前だが、意外に実践できている企業は少ないのではなかろうか。いまの時代、誰か一人がイノベーションをかんがえるのではなく、全階層、全組織的な取り組みが、企業のイノベーションを促進していくのだろう。

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