この時期になると、2016年の景気予測が新聞を賑わせ始める。ふと、昨年末の2015年予想はどうだったかと、クリッピングしておいた景気の記事を見返すと、結構当たってないことに気がつく。
「2015年はREIT指数が2000越えになると予想する専門家が大半だ」(日経新聞 2014.12.26)
現実は2000超えず、一時1550まで下り、今日現在1750。
こうしたこと総括せずに、2016年の予想ばかりするから、いよいよ信憑性ないよなーと思うのである。
20代後半から、今日にいたるまで毎日を全速力で駆け抜けてきました。疾走するスピードは毎年加速度的に増えています。 そんな自分の足跡を残したい、考えを整理したい、自分の学びの場としたい・・・こういった思いからこのブログを立ち上げました。とりわけ、読んだ本や雑誌、観た映画、その他遭遇した事件・・・などなど、思いの丈を吐露しています。
2016年1月3日日曜日
書評: 日本の論点2016~2017
日本の論点2016~2017
著者:大前研一
出版社:プレジデント社
本書はプレジデント誌で連載している「日本のカラクリ」の一年間のストック及び特集記事から読者の反響が大きかった稿をピックアップし、加筆修正して再構成したものだ。大前研一氏が、自分の目と耳で事実を確認し、論理学を用いて事実と事実を結びつけ、オリジナルの答えを出したものである。
今回取り上げているテーマは、全部で24。アベノミクス、憲法改正、福島第一原発事故、TPP、水素ステーションなど、昨今、世間を賑わせている・・・それでいてなかなか答えの見つからないハードな問題について、自らの思考プロセスと結論を披露してくれている。
本書の用途は大きく3つあると思う。
1つは、企業人としてこれからの国内外のビジネス環境の変化をどう捉えるべきか・・・そのヒントとして活用できる。たとえば中国、ロシア、アメリカ、ユーロ圏、イスラム国・・・このあたりの紛争や経済情勢及びそれを元にしたこれからの世界観は非常に有益だ。
2つ目は、自らの財産をどう築くか・・・そのヒントとして活用できる。先の世界観に影響を受ける話だが、将来の年金について国を当てにできない今、どのように自らの資産のポートフォリオを考えればいいのか。ちなみに、大前研一氏によれば歴史を見ると、なんだかんだで資源国は安定した経済を維持していると言う。ならば、どこに投資すべきか・・・、考える良いきっかけになる。
3つ目は、自己啓発や子供の教育をどのように行っていくべきか・・・そのヒントとして活用できる。本書以外もそうだが、大前研一氏の本を読んでいると、とにかくその膨大な引き出しと明瞭簡潔な思考プロセスに驚かされる。基本的には、他国や他社に成功事例を見つけ、それをベースラインとして、課題を浮き彫りにしたり、解決策を見つけるヒントとしている。たとえば、TPPで、日本の農業のこれからの話をしているときにはオランダの農業の話が引き合いにだされた。日本の人手不足の課題を、アメリカにおける間接業務の生産性との比較に見いだした。大学の課題を、アメリカやドイツの教育制度との比較に見いだした。端的に言えば、冒頭で述べた、まさにアリストテレスの論理学というやつなのだろう。A=B、P=AならP=B・・・みたいな。
以上3点だが、個人的に一番気になったのは、とにかく最後の3点目だ。膨大なインプットを得るための努力、論理思考術の修練・・・これがまだまだ不足していると感じた。具体的には、
1.インプットを得る
→色々なものを読む(本や新聞、雑誌、文献など)
2.論理的思考術の修練をする
→考え抜く(人に会って話す・議論する、自分の考えを文章にするなど)
をしていきたいと思った次第。書評の結論としては変な終わり方だと思うが、まぁ、このような刺激を与える本である。
著者:大前研一
出版社:プレジデント社
今回取り上げているテーマは、全部で24。アベノミクス、憲法改正、福島第一原発事故、TPP、水素ステーションなど、昨今、世間を賑わせている・・・それでいてなかなか答えの見つからないハードな問題について、自らの思考プロセスと結論を披露してくれている。
本書の用途は大きく3つあると思う。
1つは、企業人としてこれからの国内外のビジネス環境の変化をどう捉えるべきか・・・そのヒントとして活用できる。たとえば中国、ロシア、アメリカ、ユーロ圏、イスラム国・・・このあたりの紛争や経済情勢及びそれを元にしたこれからの世界観は非常に有益だ。
2つ目は、自らの財産をどう築くか・・・そのヒントとして活用できる。先の世界観に影響を受ける話だが、将来の年金について国を当てにできない今、どのように自らの資産のポートフォリオを考えればいいのか。ちなみに、大前研一氏によれば歴史を見ると、なんだかんだで資源国は安定した経済を維持していると言う。ならば、どこに投資すべきか・・・、考える良いきっかけになる。
3つ目は、自己啓発や子供の教育をどのように行っていくべきか・・・そのヒントとして活用できる。本書以外もそうだが、大前研一氏の本を読んでいると、とにかくその膨大な引き出しと明瞭簡潔な思考プロセスに驚かされる。基本的には、他国や他社に成功事例を見つけ、それをベースラインとして、課題を浮き彫りにしたり、解決策を見つけるヒントとしている。たとえば、TPPで、日本の農業のこれからの話をしているときにはオランダの農業の話が引き合いにだされた。日本の人手不足の課題を、アメリカにおける間接業務の生産性との比較に見いだした。大学の課題を、アメリカやドイツの教育制度との比較に見いだした。端的に言えば、冒頭で述べた、まさにアリストテレスの論理学というやつなのだろう。A=B、P=AならP=B・・・みたいな。
以上3点だが、個人的に一番気になったのは、とにかく最後の3点目だ。膨大なインプットを得るための努力、論理思考術の修練・・・これがまだまだ不足していると感じた。具体的には、
1.インプットを得る
→色々なものを読む(本や新聞、雑誌、文献など)
2.論理的思考術の修練をする
→考え抜く(人に会って話す・議論する、自分の考えを文章にするなど)
をしていきたいと思った次第。書評の結論としては変な終わり方だと思うが、まぁ、このような刺激を与える本である。
書評: 考えすぎた人(お笑い哲学者列伝)
いやぁ~、久々に笑わせてもらった。小難しい哲学者の本で笑えることなんてそうそうあるだろうか。
お笑い哲学者列伝 考えすぎた人
著者:清水義範
出版社:新潮文庫

本書は、有名な哲学者12人の考えや生い立ちについて、わかりやすく・面白く・・・物語調で解説した本である。12人の哲学者とは、
ソクラテス
プラトン
アリストテレス
デカルト
ハイデッガー
ウィトゲンシュタイン
ルソー
カント
ヘーゲル
マルクス
ニーチェ
サルトル
だ。あらかじめ言っておくが、私は哲学が好きじゃない。むしろ、どちらかと言えば嫌いだ。先に挙げた12人の哲学者の中には知らない名もある。ウィトゲンシュタインなぞ、初めて耳にした。ではなぜこの本に手を出したかと言えば、自分の知らない世界のことも知っておきたい。ただしどうせなら、苦無く学びたい・・・そう思ったからだ。
結果から言えば、まさに要望を満たしてくれる“当たり本”だった。前段で述べたように、わかりやすく・面白く書かれている。そして途中で爆笑する機会が2回ほどあった。たとえばアリストテレスの論理学の話。三段論法に関してのアレクサンドロスとその氏師アリストテレスとの物語は、かけあい漫才のようだった。
学友(イヌチヨロス)『(1)すべての動物はフンをする。(2)すべての馬は動物である。(3)すべての馬はフンをする。どうでしょう』
アリストテレス『正しいよ。正しく三段論法を使っている。この三段論法は第一格第一式というものだ。では、第一格第二式の三段論法を教えよう』
アレクサンドロス『すべての馬がフンをすることぐらい、三段論法で考えなくたって知ってるよなぁ。先生が言いたいのは、この世に便秘の馬はいないってことなのか』
(本書「アリストテレスの論理が苦」より)
本書・・・というか著者がすごいのは、とにかく小難しい話をあの手この手でかみ砕いて説明しようとしているその工夫の程度だ。あるときは、このアリストテレスの例のように、当時を舞台にした物語調で語っている。あるときは、現代社会に主人公を設けて、コンパの中で哲学者像を語っている。またあるときは、死んでいるはずの哲学者を特殊な装置でこの世に呼び出して対話する形をとっている。残念ながら、全てが全て、分かりやすく・面白いとは言えない。たとえば、箇条書き調で書かれているウィトゲンシュタインの章は、正直、読みたい気には全くさせられなかった。また、描かれている哲学者の考え方もどこまで正確なのかも分からない(著者も本書の中でたまに自信なさげに書いている場面があったからだ)。が、そのチャレンジ精神と実際にそのいくつかでは目的を達成させている点を強く賞賛したい。
参考までに私的に興味を持てて読めたランキングを以下に示したい。
1.アリストテレスの論理が苦 (←大爆笑)
2.ソクラテスの石頭 (←爆笑)
3.ヘーゲルの弁証法的な痴話喧嘩 (←哲学者の変人っぷりを実感)
4.サルトルの非常識な愛情 (←実はこんなやつが現代の自分の身近にいることに驚嘆)
5.マルクスの意味と価値 (←実は自分も思っていた疑問に思ってた)
6.プラトンの対話の変 (←難しいイデアの話を飽きずに読み通せた)
7.ルソーの風変わりな契約 (←授業で学ぶ前に読んでおきたかった)
8.デカルトのあきれた方法
9.ニーチェの口髭をたくわえた超人
10.カントの几帳面な批判
11.ハイデッガーの存在と、時間
12.ウィトゲンシュタインの奇妙な語り方
ところで、この本を読んでいて、なぜか以前に読んだ「感じる科学」(さくら剛著)が頭に思い浮かんだ。この本も難しい物理学の内容を愉快に読めるよう書かれたものである。今回、「考えすぎた人」を読んで、改めて本の無限の可能性とと人間の想像力の豊かさを感じた。人間の想像力・・・哲学者のみならず、本書の著者の想像力は非常に豊かだと思う。どうしても自分に照らし合わせたくなるが、自分の仕事で書く文章や各種資料もそうだし、ブログもそうだが、いつも一定の型を破れないでいる。本書は、哲学者たちが何を考えていたかを伝えてくれるだけでなく、真に想像力を働かせるとはどういうことかを知らせてくれるという点で、大きな価値を感じた。
そんな本書だが、世界史などにおいて意味の無いカタカナの丸暗記で困っている受験生や、私のように哲学なんて・・・と毛嫌いしている人たち、これから哲学を勉強しようかと思っている人たち・・・に特に向いている本だと思う。哲学者の考えが全てわかるものではないが、食わず嫌いを助けてくれる良書だと思う。
お笑い哲学者列伝 考えすぎた人
著者:清水義範
出版社:新潮文庫
本書は、有名な哲学者12人の考えや生い立ちについて、わかりやすく・面白く・・・物語調で解説した本である。12人の哲学者とは、
ソクラテス
プラトン
アリストテレス
デカルト
ハイデッガー
ウィトゲンシュタイン
ルソー
カント
ヘーゲル
マルクス
ニーチェ
サルトル
だ。あらかじめ言っておくが、私は哲学が好きじゃない。むしろ、どちらかと言えば嫌いだ。先に挙げた12人の哲学者の中には知らない名もある。ウィトゲンシュタインなぞ、初めて耳にした。ではなぜこの本に手を出したかと言えば、自分の知らない世界のことも知っておきたい。ただしどうせなら、苦無く学びたい・・・そう思ったからだ。
結果から言えば、まさに要望を満たしてくれる“当たり本”だった。前段で述べたように、わかりやすく・面白く書かれている。そして途中で爆笑する機会が2回ほどあった。たとえばアリストテレスの論理学の話。三段論法に関してのアレクサンドロスとその氏師アリストテレスとの物語は、かけあい漫才のようだった。
学友(イヌチヨロス)『(1)すべての動物はフンをする。(2)すべての馬は動物である。(3)すべての馬はフンをする。どうでしょう』
アリストテレス『正しいよ。正しく三段論法を使っている。この三段論法は第一格第一式というものだ。では、第一格第二式の三段論法を教えよう』
アレクサンドロス『すべての馬がフンをすることぐらい、三段論法で考えなくたって知ってるよなぁ。先生が言いたいのは、この世に便秘の馬はいないってことなのか』
(本書「アリストテレスの論理が苦」より)
参考までに私的に興味を持てて読めたランキングを以下に示したい。
1.アリストテレスの論理が苦 (←大爆笑)
2.ソクラテスの石頭 (←爆笑)
3.ヘーゲルの弁証法的な痴話喧嘩 (←哲学者の変人っぷりを実感)
4.サルトルの非常識な愛情 (←実はこんなやつが現代の自分の身近にいることに驚嘆)
5.マルクスの意味と価値 (←実は自分も思っていた疑問に思ってた)
6.プラトンの対話の変 (←難しいイデアの話を飽きずに読み通せた)
7.ルソーの風変わりな契約 (←授業で学ぶ前に読んでおきたかった)
8.デカルトのあきれた方法
9.ニーチェの口髭をたくわえた超人
10.カントの几帳面な批判
11.ハイデッガーの存在と、時間
12.ウィトゲンシュタインの奇妙な語り方
ところで、この本を読んでいて、なぜか以前に読んだ「感じる科学」(さくら剛著)が頭に思い浮かんだ。この本も難しい物理学の内容を愉快に読めるよう書かれたものである。今回、「考えすぎた人」を読んで、改めて本の無限の可能性とと人間の想像力の豊かさを感じた。人間の想像力・・・哲学者のみならず、本書の著者の想像力は非常に豊かだと思う。どうしても自分に照らし合わせたくなるが、自分の仕事で書く文章や各種資料もそうだし、ブログもそうだが、いつも一定の型を破れないでいる。本書は、哲学者たちが何を考えていたかを伝えてくれるだけでなく、真に想像力を働かせるとはどういうことかを知らせてくれるという点で、大きな価値を感じた。
そんな本書だが、世界史などにおいて意味の無いカタカナの丸暗記で困っている受験生や、私のように哲学なんて・・・と毛嫌いしている人たち、これから哲学を勉強しようかと思っている人たち・・・に特に向いている本だと思う。哲学者の考えが全てわかるものではないが、食わず嫌いを助けてくれる良書だと思う。
2016年1月1日金曜日
書評:人生を面白くする本物の教養
ライフネット生命会長兼CEO、出口治明氏の人生論が語られている本だ。
人生を面白くする本物の教養
著者:出口治明(でぐちはるあき)
出版社:幻冬舎新書
■人生を面白くする出口流生き方術
出口会長の人生論とは「面白く生きるために何を大事に行動しているか?」ということ。では何を大事に?と言えば、「本物の教養を身につける」こと。本物の教養を身につければ、人やモノに対して興味を持てるようになるし、何よりも、人も自分に対して興味を持ってくれる。
だから本書のタイトルは「人生を面白くする本物の教養」。「本物の教養」を身につけるために、出口氏自らが実践してきた方法を優しく紹介してくれている。それが本書だ。
■そもそも出口氏の語る“本物の教養”とは
では、本物の教養とは何か? 出口氏の主張を私なりの言葉でまとめると、大きく3段階に分けて説明できる。
第一段階は、単に記憶しただけの情報で何の役にも立たない知識。出口氏は、これは雑学であり教養ではない、と切り捨てる。第二段階は、覚えた情報でも、何かに役立てたり楽しむために使える知識。たとえばサッカーを楽しむために覚えたゲームのルールなどがそう。出口氏はこれを“教養化した知識”と呼んでいるが、本書のターゲットではない。そう、目指すのは、第三段階。第三段階とは、自分の頭で何かを考え、自分の意見を持つためのベースとなる知識。たとえば「日本の経済問題を解決するためには、人口を増やすしかない。だから移民を受け入れるべきだ」という専門家の話があったとして、それを何も考えずに受け入れて、その通りに行動するならそれは第二段階の教養化した知識にしか過ぎない。そうではなく「なぜだ!? いや、その考え方は間違っているのでは?自分はこう思うから、こっちを信じてこのように行動しよう」「いや確かにそうだ。実際、ここはこうだから・・・」などと自らの頭で考え、発展させることができて初めて…出口氏の言う本物の教養と言える。
表現は異なるが、「学び続ける力」の著者、池上彰氏も全く同じことを言っている。
■出口氏推奨の「数字・ファクト・ロジック」が醸し出す本書の魅力
出口氏が実践してきたことって何だろう。本の帯にもあるが、根本は本を読み、人に会い、旅をし、考え抜くというもの。そして、考える際には「数字・ファクト・ロジック」で考えるというもの。こうした観点から、新聞の読み方、新しい分野の勉強の仕方、人との付き合い方、興味の深堀の仕方など、実践方法の紹介は、多岐にわたる。
「なんか一般的な話だな」と思うかもしれない。ある意味、そうだ。だが、本書が魅力的なのは、出口氏が提唱する「数字・ファクト・ロジック」が、本書にも随所に現れているからだろうと思う。何かを主張する都度、出口氏本人の経験談をイチイチ丁寧に紹介している。社会人なりたての頃の話、ロンドンでの滞在期間中の話、知人の影響を受けて旅行したときの話。本書の後半では、今、現代社会を賑わせているなかなか答えの見つからないテーマ・・・たとえば原発問題や消費税問題に関して、出口氏自身の経験談、すなわち本人の「数字・ファクト・ロジック」に基づいた考えを披露してくれている。
■学びも、刺激も
生き様や価値観がとても似ていると思った。私もイギリスにいたし、起業という共通点もある。規模感が全く違うけど。面白く生きたいというのは私の強い想いでもある。仕事が全てではない、むしろ、それ以外の方がはるかに重要という価値観も一緒だ。
だから、私自身は、新たな学び…というより、改めて自分の中でぼんやりしていた価値観や実践すべき事項がくっきりと映し出された感じがした。刺激が多かった。たとえば出口氏は「週に2〜3冊」読んでいるそうだ。自分は週にせいぜい1冊程度。負けてられないなと思う。
先日読んだ本「シンプルに考える」の著者、LINEの元社長、森川亮氏もそうだった。いま注目されるような人たち、グローバルで通用するような人達は全て自分の頭で考える・・・いや、考え抜く人たちばかりだ。そうなりたい人なら、本書を読むと同時に、少しでも似たようなことを実践してみてはいかがだろうか。
【教養というキーワードでの類書】
・学び続ける力(著者:池上彰)
・奇跡の教室(著者:伊藤氏貴)
・自分を変える読書術(堀紘一)
人生を面白くする本物の教養
著者:出口治明(でぐちはるあき)
出版社:幻冬舎新書
出口会長の人生論とは「面白く生きるために何を大事に行動しているか?」ということ。では何を大事に?と言えば、「本物の教養を身につける」こと。本物の教養を身につければ、人やモノに対して興味を持てるようになるし、何よりも、人も自分に対して興味を持ってくれる。
だから本書のタイトルは「人生を面白くする本物の教養」。「本物の教養」を身につけるために、出口氏自らが実践してきた方法を優しく紹介してくれている。それが本書だ。
■そもそも出口氏の語る“本物の教養”とは
では、本物の教養とは何か? 出口氏の主張を私なりの言葉でまとめると、大きく3段階に分けて説明できる。
第一段階は、単に記憶しただけの情報で何の役にも立たない知識。出口氏は、これは雑学であり教養ではない、と切り捨てる。第二段階は、覚えた情報でも、何かに役立てたり楽しむために使える知識。たとえばサッカーを楽しむために覚えたゲームのルールなどがそう。出口氏はこれを“教養化した知識”と呼んでいるが、本書のターゲットではない。そう、目指すのは、第三段階。第三段階とは、自分の頭で何かを考え、自分の意見を持つためのベースとなる知識。たとえば「日本の経済問題を解決するためには、人口を増やすしかない。だから移民を受け入れるべきだ」という専門家の話があったとして、それを何も考えずに受け入れて、その通りに行動するならそれは第二段階の教養化した知識にしか過ぎない。そうではなく「なぜだ!? いや、その考え方は間違っているのでは?自分はこう思うから、こっちを信じてこのように行動しよう」「いや確かにそうだ。実際、ここはこうだから・・・」などと自らの頭で考え、発展させることができて初めて…出口氏の言う本物の教養と言える。
表現は異なるが、「学び続ける力」の著者、池上彰氏も全く同じことを言っている。
■出口氏推奨の「数字・ファクト・ロジック」が醸し出す本書の魅力
出口氏が実践してきたことって何だろう。本の帯にもあるが、根本は本を読み、人に会い、旅をし、考え抜くというもの。そして、考える際には「数字・ファクト・ロジック」で考えるというもの。こうした観点から、新聞の読み方、新しい分野の勉強の仕方、人との付き合い方、興味の深堀の仕方など、実践方法の紹介は、多岐にわたる。
「なんか一般的な話だな」と思うかもしれない。ある意味、そうだ。だが、本書が魅力的なのは、出口氏が提唱する「数字・ファクト・ロジック」が、本書にも随所に現れているからだろうと思う。何かを主張する都度、出口氏本人の経験談をイチイチ丁寧に紹介している。社会人なりたての頃の話、ロンドンでの滞在期間中の話、知人の影響を受けて旅行したときの話。本書の後半では、今、現代社会を賑わせているなかなか答えの見つからないテーマ・・・たとえば原発問題や消費税問題に関して、出口氏自身の経験談、すなわち本人の「数字・ファクト・ロジック」に基づいた考えを披露してくれている。
■学びも、刺激も
生き様や価値観がとても似ていると思った。私もイギリスにいたし、起業という共通点もある。規模感が全く違うけど。面白く生きたいというのは私の強い想いでもある。仕事が全てではない、むしろ、それ以外の方がはるかに重要という価値観も一緒だ。
だから、私自身は、新たな学び…というより、改めて自分の中でぼんやりしていた価値観や実践すべき事項がくっきりと映し出された感じがした。刺激が多かった。たとえば出口氏は「週に2〜3冊」読んでいるそうだ。自分は週にせいぜい1冊程度。負けてられないなと思う。
先日読んだ本「シンプルに考える」の著者、LINEの元社長、森川亮氏もそうだった。いま注目されるような人たち、グローバルで通用するような人達は全て自分の頭で考える・・・いや、考え抜く人たちばかりだ。そうなりたい人なら、本書を読むと同時に、少しでも似たようなことを実践してみてはいかがだろうか。
【教養というキーワードでの類書】
・学び続ける力(著者:池上彰)
・奇跡の教室(著者:伊藤氏貴)
・自分を変える読書術(堀紘一)
2015年12月30日水曜日
書評: 日本企業の組織風土改革
最近、新聞を賑わせている事件・・・東芝や朝日建材、東洋ゴムの二の舞を繰り返さないようにするためにはどうしたらいいか、どうしてそうなってしまうのか、そうならないためにはどうしたらいいのか・・・について、ヒントを示す本だ。
日本企業の組織風土改革 〜その課題と成功に導く具体的メソッド〜
著者:柴田 昌治
出版社:PHPビジネス新書
組織風土改革と文字で書けば簡単に見えるが、そんな容易な命題じゃない。これまで色々な会社でもその必要性が説かれ、認識され、実施の努力がなされてきたはずだが、ほとんどは不成功に終わっている。組織が抱えている問題を掘り下げてゆくと話題が「企業文化」に落ち着くことが多い。しかしながら「では、どうやって変革するか」という点に話がのぼると、深く議論されずに終わるか、「結局はトップの姿勢だよね」などといった安易な解決策に帰結しようとしてしまう傾向が強い。本書が興味深いのは、そこをさらに掘り下げて、もう一歩先のアプローチを示そうとしている点だ。
少し、虎の巻に触れておくと、「コアネットワーク」が解決の鍵になると著者は主張する。「コアネットワーク」とは、著者曰く「良い会社にしたいという内発的な強い思いをもった多様な人間が「思い」を共有するという一点で結びついていく”要”」だそうである。このコアネットワークを作りいかにこの輪を広げていくか・・・それに尽きるというのだ。そして、本書はその一点にフォーカスして、解決策を説いた本といってもいいだろう。
さて、この本。読んでみると、時折、そうそう、それ、あるある!・・・とうなずかされる場面が多かった。自分もよく経験しているから分かる。
『(良く課題を見つけようとして色々な人にインタビューをすることが多いが)入社20年目の社員から話を聞く場合は、人を選ばないと問題の本質に迫るような有益な情報は得られない。本人には問題のを「隠している」という意識がそもそもない場合も多い。問題を問題として捉える感性がすでに失われているからだ。』(本書より)
そしてコアネットワーク醸成の話。もっともな話ではある。納得感もある。総じて「まぁ結局、近道はないよね」・・・というのが正直な感想。地味に地道に丁寧に醸成していく必要がありそうだ。本書のサブタイトルには、具体的かメソッドとあるが・・・改めて自分の考えを整理できたという意味では価値があったと思う。
コンサルタントが書いた本なので、コンサルタント業を行っている人にとって有益となる本だが、組織内部に変革を起こしたいと頭を悩ませている経営陣や事務局の人・・・管理職の人には、何をするにせよひとつのヒントになるだろう。
日本企業の組織風土改革 〜その課題と成功に導く具体的メソッド〜
著者:柴田 昌治
出版社:PHPビジネス新書
組織風土改革と文字で書けば簡単に見えるが、そんな容易な命題じゃない。これまで色々な会社でもその必要性が説かれ、認識され、実施の努力がなされてきたはずだが、ほとんどは不成功に終わっている。組織が抱えている問題を掘り下げてゆくと話題が「企業文化」に落ち着くことが多い。しかしながら「では、どうやって変革するか」という点に話がのぼると、深く議論されずに終わるか、「結局はトップの姿勢だよね」などといった安易な解決策に帰結しようとしてしまう傾向が強い。本書が興味深いのは、そこをさらに掘り下げて、もう一歩先のアプローチを示そうとしている点だ。
少し、虎の巻に触れておくと、「コアネットワーク」が解決の鍵になると著者は主張する。「コアネットワーク」とは、著者曰く「良い会社にしたいという内発的な強い思いをもった多様な人間が「思い」を共有するという一点で結びついていく”要”」だそうである。このコアネットワークを作りいかにこの輪を広げていくか・・・それに尽きるというのだ。そして、本書はその一点にフォーカスして、解決策を説いた本といってもいいだろう。
さて、この本。読んでみると、時折、そうそう、それ、あるある!・・・とうなずかされる場面が多かった。自分もよく経験しているから分かる。
『(良く課題を見つけようとして色々な人にインタビューをすることが多いが)入社20年目の社員から話を聞く場合は、人を選ばないと問題の本質に迫るような有益な情報は得られない。本人には問題のを「隠している」という意識がそもそもない場合も多い。問題を問題として捉える感性がすでに失われているからだ。』(本書より)
そしてコアネットワーク醸成の話。もっともな話ではある。納得感もある。総じて「まぁ結局、近道はないよね」・・・というのが正直な感想。地味に地道に丁寧に醸成していく必要がありそうだ。本書のサブタイトルには、具体的かメソッドとあるが・・・改めて自分の考えを整理できたという意味では価値があったと思う。
コンサルタントが書いた本なので、コンサルタント業を行っている人にとって有益となる本だが、組織内部に変革を起こしたいと頭を悩ませている経営陣や事務局の人・・・管理職の人には、何をするにせよひとつのヒントになるだろう。
2015年12月29日火曜日
書評: 虚構の城
あらすじは、こうだ。出光興産(小説上は大和鉱油)を舞台にした小説。主人公は、エリートエンジニア田崎健治。特に大きな不満もなく勤めていた主人公。ある日、部下の一人から、労働組合結成の相談が舞い込む。相談内容がなんとなく気になった田崎は、この件を同期に相談。するとその直後に、あっという間に左遷される。理不尽さを覚えながらも、腐らずに、左遷先の東京で仕事に邁進する田崎だったが、大和鉱油の異常なまでの労働組合タブー視の雰囲気に違和感ばかりが募ってゆく・・・。
虚構の城 完全版
著者:高杉良
出版社:角川文庫
さて、感想だが、2つの観点から触れておきたい。
1つは物語としてどうかという観点。この点では、なかなかの秀作だ。一気に読めた。上司と部下、官僚と民間社員、キャリアとノンキャリア、妻と夫、男と女・・・。人間同士のぶつかりあいの描写を通じて、人間の生臭い・・・けどリアルな素顔が、さらけだされている。出光興産という舞台が絡んでなくても、魅力的である。
もう1つの観点は、出光興産を描いた物語としてどうかという点。描かれている範囲は一時点の話であり広くはなかったが、田崎というごく普通の社会人の目線を通して、出光興産の特徴を見事に浮き彫りにしている。ちなみに、実はこの小説、知人から勧められて読んだ。私に勧めてくれた彼のコメントはこうだ。
「“海賊と呼ばれた男”(百田尚樹)を読んで、出光興産や創業者の出光佐三を理解したつもりなら、まだ甘いですよ。この本も読んだ方がいいですよ。僕も勧められて読んで、なるほどな、と思わされました。」
実際「海賊と呼ばれた男」は読んでいたし、感動もしていた。彼のこのコメントは私の関心をくすぐるのに十分だった。で・・・読んだ。「あぁ、なるほど、そういうことねー」というのが率直な感想だ。要するに、出光興産の影の部分が描かれているのだが、あそこまで強烈なカリスマを持つ組織であれば、それもあり得るだろうなぁと思う。不思議と、この小説の描き出した出光興産の世界観が違和感なく、自分の心に入ってきた。
「海賊と呼ばれた男」・・・間違いなく面白い小説だったが、考えてみれば、あの小説に描かれていた内容は、あまりにも美しすぎた・・・と言えるのかもしれない。負の側面が一切でてこないからだ。
誤解の無いように言っておくが、もちろん、「海賊と呼ばれた男」や、出光興産自体のことが嫌いになったわけではない(まぁ、すごい好きというものでもなかったが)。創業者の偉業がなくなるわけではない。誰にでも、どんな組織でも、正の側面もあれば、負の側面もある。一つ負の側面があったからといって、全てが否定されるわけではない。大事なのは、これからだ。こうした事実をもとに、これからの組織や人がどうあるべきか・・・考えてゆくことだと思う。
小説でありながら、ここまで考える機会を与えてくれる本も珍しい。私同様、「海賊と呼ばれた男」を既に読んだ人は、偏った見方にならないために読むべきだし、その逆もまたしかりだ。さすが、高杉良。
虚構の城 完全版
著者:高杉良
出版社:角川文庫
1つは物語としてどうかという観点。この点では、なかなかの秀作だ。一気に読めた。上司と部下、官僚と民間社員、キャリアとノンキャリア、妻と夫、男と女・・・。人間同士のぶつかりあいの描写を通じて、人間の生臭い・・・けどリアルな素顔が、さらけだされている。出光興産という舞台が絡んでなくても、魅力的である。
もう1つの観点は、出光興産を描いた物語としてどうかという点。描かれている範囲は一時点の話であり広くはなかったが、田崎というごく普通の社会人の目線を通して、出光興産の特徴を見事に浮き彫りにしている。ちなみに、実はこの小説、知人から勧められて読んだ。私に勧めてくれた彼のコメントはこうだ。
「“海賊と呼ばれた男”(百田尚樹)を読んで、出光興産や創業者の出光佐三を理解したつもりなら、まだ甘いですよ。この本も読んだ方がいいですよ。僕も勧められて読んで、なるほどな、と思わされました。」
実際「海賊と呼ばれた男」は読んでいたし、感動もしていた。彼のこのコメントは私の関心をくすぐるのに十分だった。で・・・読んだ。「あぁ、なるほど、そういうことねー」というのが率直な感想だ。要するに、出光興産の影の部分が描かれているのだが、あそこまで強烈なカリスマを持つ組織であれば、それもあり得るだろうなぁと思う。不思議と、この小説の描き出した出光興産の世界観が違和感なく、自分の心に入ってきた。
「海賊と呼ばれた男」・・・間違いなく面白い小説だったが、考えてみれば、あの小説に描かれていた内容は、あまりにも美しすぎた・・・と言えるのかもしれない。負の側面が一切でてこないからだ。
誤解の無いように言っておくが、もちろん、「海賊と呼ばれた男」や、出光興産自体のことが嫌いになったわけではない(まぁ、すごい好きというものでもなかったが)。創業者の偉業がなくなるわけではない。誰にでも、どんな組織でも、正の側面もあれば、負の側面もある。一つ負の側面があったからといって、全てが否定されるわけではない。大事なのは、これからだ。こうした事実をもとに、これからの組織や人がどうあるべきか・・・考えてゆくことだと思う。
小説でありながら、ここまで考える機会を与えてくれる本も珍しい。私同様、「海賊と呼ばれた男」を既に読んだ人は、偏った見方にならないために読むべきだし、その逆もまたしかりだ。さすが、高杉良。
2015年12月28日月曜日
書評:問題解決のジレンマ
タイトルが魅力的だった。自分の仕事がコンサルティングなので、また少しでもヒントになりそうなことがあればラッキーと思い、手を出した。
本書は、問題解決の際に誰もが陥りそうな落とし穴とその回避方法を、極めて論理的に分析・解説しようとしたものである。落とし穴とは、著者の言葉を借りて言えば「既知の既知」の世界のことである。世の中の問題を解決するのに、誰かが用意した試験問題を解くことで解決しようとしている人が少なくない、と指摘する。言い換えれば、「与えられた問題(やルール)が世の中の全て」と思いこんでしまい、それを解くこと(あるいはその中で戦うこと)だけに終始してしまうと言うのである。
私も仕事上、良くあることだ。あるお客様先に行くと、「A案がいいのか、B案がいいのか」で社内で何時間も議論していて結論が出ないという。「コンサルタントであるあなたはどっちを勧めるのか?」と問われる。ここで「Aなのか、Bなのか」といった問いの解答を考えようとするのが、著者の言う“落とし穴にはまった状態”だ。最初に自分が解く問題は「何を求めてAかBかの選択肢になったのか?」であるのに・・・。
ジレンマから抜け出すには、ソクラテスの唱えた「無知の知」・・・すなわち、「自分がわかっていないことを分かること」だが、問題はどうやってその境地に達するかだ。本書は、そのヒントを、先に挙げたような既知の既知や、既知の未知、未知の未知といった言葉の定義を通じて、様々な角度から解説している。中盤では、アリとキリギリスの話まで登場する。
ちなみに、ジレンマから抜け出す手段の是非や著者の意図はともかくとして、個人的に印象に残ったのは、やはり「無知の知」の重要さである。行き着くところまで行き着いた賢者たちは、みな「無知の知」が終着点のようだ。ソクラテス、ピータードラッカー・・・。そう言えばタロジロ物語のモデルにもなった西堀英三郎氏も、著書「石橋を叩けば渡れない」の中で、「モノゴトは決して思い通りには動かないという事実を認識しておくことが最大の対策だった」と経験談を語っている。私自身の人生でも思い当たることが多い。トラブルを起こした人間は、自分を客観的に見れてない(自分ができないことがわかってない)人が圧倒的に多かった。
そんなわけだから著者の指摘は全くもってなるほどとうなずける内容だが、やはり小難しい。「無知の知」の境地に至ってない人が本書を読んで、果たしてその大切さや、自分がそのような状態に陥っていることに気づくのか・・・少なくともそんなことを狙った本ではなさそうでる。「無知の知」の大切さが分かってはいるが、どう自分の部下に説明したらわかってもらえるか悩んでいる・・・そんな上司には、著者の言葉遣いや整理の仕方が役立つのかもしれない。
2015年11月28日土曜日
書評: もしも、あなたが「最高責任者」ならばどうするか? VOL.1
久々の書評だ。私の悪い癖で、何かをずっと続けることはできるのだが、やりすぎると、ふとしばらくその活動から離れたくなる。最近ずっと読書を敬遠して、映画ばかりみまくっていた。AMAZONプライムのせいだ・・・。
ボリューム感というと「とても分厚い、お得感のある本なのか?」と誤解を与えるかもしれない。事実はその逆。ページ数にして170ページ程度。どちらかというと薄い。後述するが、中身が重たい内容だけに、この薄さが逆に有り難い。
それはさておき...まじめな話。
久々に読書をした。レビュープラス社からの献本がきっかけ。献本だが、自分も読みたいと思って、話を引き受けた。タイトルはもしも、あなたが「最高責任者」ならばどうするか?Vol.1
。私が好きな大前研一氏が関わっている本である。
本書は、一言で言えば、勉強本。それも企業戦略立案のための思考力アップを目的とした勉強本である。
そんな本書だが、特徴は3つのキーワードで表せる。ボリューム、ケース、大前研一・・・の3つだ。
そして、ケース。本書は特定のケースに対して、読者自身がまず自らの頭で考え、その考えと本書の考えを照らし合わせて、気づきを得る・・・そんな読み方を想定している。なお、ケース数は全部で8つ。コカ・コーラ、ローソン、UBER、任天堂など・・・。また、特定のケースとは言ったものの、本書が読者に投げかけるボールは単純明快。「あなた(読者)が、この企業の社長なら、どういった手を打つか?それを考えなさい」。それだけだ。
3つめのキーワードは大前研一。読者自らが考えたものと、本書の考えとを照らし合わせて気づきを得る・・・と述べたが、「本書の考え」とは、そもそも「大前研一氏の考え」である。一流の戦略コンサルタントの思考プロセスを追体験できるという意味で価値がある。
そのまま何も考えずに、本書の考えを読んでも何の役にも立たない。自らでまず考えることが必要な本である。その意味で、正直、なかなか・・・良い意味でヘビーな本ではある。頭に高負荷のかかる本だ。だから、先の話につながるわけだが、ちょうどいい薄さだと思う。
さて、企業戦略立案の思考力アップという観点では、まさにそういう立場にある人・・・具体的にはたとえば、社長や役員をはじめ、経営企画部の人、これから新しく事業を立ち上げようとしている人・・・などに向いている本と言えるだろう。
ただし一点、留意事項を挙げておきたい。本書が読者に投げつけるものが、「この会社の社長になったら、どうするか?」という、大きいボールなので、それを受け止められる力量をある程度持っている人でないと、キツいと思う。具体的には、有価証券報告書や四季報、業界マップなどから情報を引っ張ってこれることはもちろん、そこにある内容から、財務諸表や事業環境などを読み取り、課題を抽出できるような能力は、先に持っておきたいところだ。本書も述べているが、複数人まじえてのディスカッションを前提とした・・・グループ勉強会などで使うというのもありだろう。
たぶん、個人的には、Vol2が出たら、買ってしまうだろうな。下手なパズルを解くより面白い。
ただし一点、留意事項を挙げておきたい。本書が読者に投げつけるものが、「この会社の社長になったら、どうするか?」という、大きいボールなので、それを受け止められる力量をある程度持っている人でないと、キツいと思う。具体的には、有価証券報告書や四季報、業界マップなどから情報を引っ張ってこれることはもちろん、そこにある内容から、財務諸表や事業環境などを読み取り、課題を抽出できるような能力は、先に持っておきたいところだ。本書も述べているが、複数人まじえてのディスカッションを前提とした・・・グループ勉強会などで使うというのもありだろう。
たぶん、個人的には、Vol2が出たら、買ってしまうだろうな。下手なパズルを解くより面白い。
2015年9月21日月曜日
書評:奇跡の脳 〜脳科学者の脳が壊れたとき〜
奇跡の脳 〜脳科学者の脳が壊れたとき〜
著者: ジル・ボルト・テイラー (竹内薫訳)
出版社: 新潮文庫
脳科学者であった著者ジル・ボルト・テイラー氏が、脳卒中になった瞬間から、奇跡の回復をとげるまでの話が、そこには確かにはっきりと描かれていた。左脳を損傷し、言語能力や記憶を喪失し、そこからどうやって回復できたのか、そこにはどんな苦労や発見があったか、、、患者と、そして脳科学者という両方の立場から紐解いている。皮肉といえば皮肉だが、脳のことを勉強して、脳のことを一番よく知っている当人が、脳の病気に見舞われた・・・。この事実こそが、本書最大の特徴であり、魅力である、と言えるだろう。
読み進めるたびに、自分が興奮していくのがわかった。著者がずっと脳の話をするので、「あ、いま、自分の左脳がものすごく活動している」なんていうことを自分でも感じながら読んだ。左脳と右脳が違う役割を持っていることくらいは知っていた。だが、本書を読むことでまた自分の知らない世界が開けたかのようだった。人間の底知れない生命力の強さに・・・いや、ヒトの脳の想像以上の脆さと強さに驚嘆した、と言っていいだろう。
なんとはないきっかけで、一瞬のうちに記憶や言語力が失われてしまうという事実に、至極合理的であると感じつつも、なんとも受け入れがたい脆さを感じた。そう、そのあっけなさは、まるでウィンドウズが壊れたPC・・・ブルースクリーンになった画面を見つめているかのようである。ハードディスクが壊れちゃった・・・あ、データが消えた・・・まさにそんな感じで、人が何十年にも渡り積み重ねた記憶が一瞬にして、文字通り完全に消失してしまうのである。人間とは、なんてこう・・・機械的なんだろう・・・と思ってしまう。
一方で、脳の逞しさにも惚れ惚れする。脳卒中で完全に言語や学習してきた知識を喪失した人間が、こんな立派な本を書きあげるまでに回復したのである。この事実は、驚愕以外のなにものでもない。いま、彼女がどうしているのか、とても興味があり、読了後にインターネットで彼女のことを調べていたら、TEDという有名な大会で、立派にプレゼンしている動画を目の当たりにすることができた。その様子からは、本を読んでいなければ、とても脳卒中になった人とは分からない。それほどの回復ぶりだったのである。ヒトの脳とは何とも逞しいことか。
著者は言う。本書を読むことで、自分と同じ病気になった人への手の差し伸べ方を学んで欲しいと。著者は言う。本書を読むことで、脳の美しさと逞しさを知って欲しいと。著者は言う。本書を読むことは、右脳への旅することでもあり、深い安らぎを得る旅でもあると。健常者にも、脳障害を持つ人が身近にいる人にも、すべての人に新たな発見とたくましく生きるヒントを与えてくれる本である。間違いなく私の大好きな本の一冊となった。
2015年8月30日日曜日
書評: ぼくらの真実
「もっと早く読んでおけば良かった。」というのが素直な感想。
ぼくらの真実
著者:青山繁晴
出版社:扶桑社
本書に手を出したきっかけは、TBSラジオ番組VOICEというコーナーの存在だ。内容もそうだが、青山繁晴氏の熱意溢れる姿勢に心打たれる。彼の声が引き起こすスタジオ内の空気振動が、そのまま私に届いているんじゃないかと錯覚するほどの・・・そんな熱意を感じるのである。そんな人が魂を込めて書いた、と言う。それは読まずにいられない。
本書には、自衛隊問題や改憲問題、沖縄基地問題、靖国問題など、何かと気軽な意見を述べることが憚れるような解決が難しい問題を語る際、あれは語る以前に、そもそも我々が知っておくべきこと・・・それを著者は”僕らの真実”と呼んでいる・・・について書かれている。その事実とは、日本国憲法の中の矛盾、日本国憲法と現実の矛盾、そしてそのような日本国憲法が生まれた背景のことなどである。
いきなり著者の考えを述べるのではなく、大元の情報・・・いわゆる一次情報を基に考察を展開させているので、「えー、本当にそうなのかなぁ・・・」とか「信じがたいなぁ」といった野暮な感想を持ちづらい。一次情報とは、例えば、憲法前文について問題提起をするにあたり、日本国憲法の基になっていると言われるGHQ案の英語の原文を引用し、それと日本国憲法の日本語文を比較しているが、そうったことだ。そのお陰で、青山氏自身が自らの考察を披露する前に、私自身が今の憲法に違和感を持つことができた。深く考えさせられるし、彼が示す見解に対する反論も容易ではない。つまり非常に示唆性、説得性に富んだ一冊になっている。
ただし、著者自身が述べているように、あくまでも彼は一石を投じることが目的なので、そのまま書いてあることを鵜呑みにすべきではないとは思うが。
読み終えてみて、「もっと早くにこの本に出会っておきたかった」というのが最初の感想だ。本書は最近出版されたものなので不可能とは分かっているが・・・そう、できれば学生時代、憲法について学習する時に、知っておきたかった。誰かが作ったルールの中で踊らされている、とは言い過ぎかもしれないが、少なくとも誰がどのような意図で作ったルールの中で自分たちが生きているのか、誰が何を必死で守ろうとしているのか、守るべきなのか、を知ることができるからだ。
私は日本が好きだ。反省すべき点もあるが、これからも残って欲しいと思う良い面がたくさんある。さらにいい国になって欲しい。そう思うからこそ、先に挙げたような難題にも逃げずに自分の意見を持って、よりよくするための意思表示をできるようにしておきたい。そのためにはコトの本質を理解しておくことが必要不可欠だ。そして、本書はまさにその本質にせまる入り口たりえるだろう。
2015年8月23日日曜日
書評:メンターが見つかれば人生は9割決まる!
メンターが見つかれば人生は9割決まる
中身は、タイトル通りである。「メンターが見つかれば、人生は9割決まる」・・・と確信を持つ著者が、自身の経験を踏まえながら、その理由、実践方法について丁寧な解説をしている。念のため補足をしておくと、メンターとはロールモデルのことで、師匠とも言うべき存在の人のことである。著者は、メンターを早々に見つけ、1年間、その人の一挙手一投足を参考にしながら、自分を高めていきなさい、さすればその後の将来が豊かになる・・・とこう主張しているわけだ。
著者:井口晃
出版社:かんき出版
久しぶりにレビュープラス社からの献本。これまでも機会はあったがタイミング的にやや暇だったというのが、本書を手に取った一番の理由。
ところでロールモデルについては、私も餓えていた時期がある。社会人成り立ての頃は周りにそういった人がいて、真似をしようと試みたこともあったし、真似してきた。だが、30歳を過ぎたあたりで、ああなりたい!と思える人に恵まれなかった。それで40歳を過ぎる今に至るわけだが、もしかしたら本書を読めば、こんな私にも、メンターが見つけられるかも!?と変な期待を持ったりもした。さすがに、それを本書に求めるのはお門違いだったようだ。
先の私の経験からも、本書のメインターゲットは、あくまでも社会人成り立てから、社会人になって数年経ったくらいの人たちだろうと思う。私のようにそれなりに月日を重ねると、メンターを探すよりも、むしろ誰かのメンターになる・・・そういう時期にきている・・・と言えるのかもしれない。なれるにふさわしい人間であるかどうかは別にして・・・。
そんな本書だが、当たり前といえば当たり前のことが書いてある。たとえば、本書には一度メンターを決めたら、そのメンターの1日の習慣を聞き出すことが大事、とある。これは私自身、感じるところであり、これから成長してほしい部下にそうして欲しいと思うところでもある。たまに「あなたみたいになりたいです!」と言ってくる人がいるが、本当に真剣にそう思っているのか、と疑いたくなることが少なくない。なぜなら、私の生活習慣を聞き出そうとも、探ろうともしないからだ。私なら、メンターの生活習慣を聞き出して、成長のヒントを見つけ出し、少なくとも同じ努力、いや、それ以上の努力をすることでメンターに追いつき、追い越そうとすると思う。残念ながら、多くの場合は聞きに来ない。真剣じゃないか、単なる社交辞令からの発言だったからだろう。
話がややそれたが、このように本書には”当たり前”のことが書かれている。だから、熱意もやる気もあって、すでに良いメンターに巡り合っている人は読まなくてもいいと思う。社会人数年目で、いまだメンターなどという人には無縁、かつ、成長の仕方に悩んでいる・・・そんな人に本書は向いているのだろうと思う。
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