2011年9月11日日曜日

書評: 40歳の教科書 ~親が子供のためにできること~

■子育ての重要なテーマについてのディベート本

「40歳の教科書」 ~親が子供のためにできること~ ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編
編者: モーニング編集部&朝日新聞社
出版社: 講談社
発行年月日: 2010年7月22日 (価格:880円) 

「英語はいつから学び始めるべきだろうか?」

この本は、幼児から中学生くらいまでの子を持つ親が子育てにおいて悩みそうな、いや、考えておくべきテーマについて専門家の意見を一冊にまとめたものである。

最大の特徴は、賛否両論の意見をまとめた本であると言う点だ。通常、こういった類の本では、様々な専門家の意見を基にしながらも、最後は、著者自身の意見や経験から「みなさんも、こうであるべきだと思いますが、どうですか?」という提言をしたものであることが多い。だが、この本は違う。結論は出さない。結論は読者自身が出すことを促している。

■自分自身の価値観・意見が浮き彫りになる

テーマには、次のようなものがある。
  • 英語はいつから学び始めるべきか
  • 中高一貫校はプラチナチケットか
  • お金と仕事をどう教えるか
  • 挫折や失敗をした子供にどう接するか
たとえば、先の「英語はいつから学び始めるべきか」というテーマについて。言語学者の大西泰斗氏は、次に挙げる論拠を基に、英語を人生のそこまでを犠牲にして学ぶべきかものだろうか、と疑問を投げかける。

『(講演会の中で良く)のべ3ヶ月以上英語しか通用しない環境に身をおいたことのある人手を挙げてください」と講演で聞くといつも、おおよそ5%程度のYESが返ってくる。5%が日本人にとっての英語の価値なのだとすれば、ネイティブなみに英語が話せることはお子さんの人生にとってせいぜいプラスα程度の作用しか及ぼさないのです』

こういった意見を読むにつけ、私は思うわけである。「その決めつけは違うだろう」と。

「5%という数字は、英語が話せない人が多いからこその数字かもしれないじゃないか。話せる人が多ければ、日本人は今よりももっと積極的に外に出て、そうした環境に身を置くことが増えていたかもしれないじゃないか。少なくとも私がそうだ」と。

と、まぁ、こんな具合である。

大事なことは、別に大西氏が正しいとか間違っているとかではないし、私が正しいとか間違っているということでもない。こうしたやりとりを通じて、自身の意見が自然と明確になってくる点にある。先の例で言えば、このやりとりを通じて、自分の英語に対する価値観が改めてはっきりとさせることができた。

■余談ですが・・・

余談だが、この本を読み、そして、自身の経験を踏まえ、私自身は子供の英語学習については次のような考えにいたった。
  • どれか1つの言語(おそらくは母国語)をしっかりと身につけるべき
    (でないと、思考力や会話力がどの言語でも、全て中途半端になると思う)
  • 英語は効果的・効率的に覚えるべきである
    (英語は、将来は話せて当然の世界になると思う)
    • 高校生や大学生でなど、英語を学ぶ場と使う場を、短期集中的に同時に持てる機会を設けられるようにする(学ぶ場と使う場を分けたり、だらだらと長期間学習したりするのはそれこそ非効率だと思う)
    • しっかりとした発音ができるようにするため、小学生の間は耳だけは英語に慣らすことのできる環境を作ってあげる(英語の歌を聞いたり、歌ったりするなど)
      (自分がそうだった)
注意しておくが、これはあくまでも、私自身の思いだ。

■重要なのは思いを、実践すること

自分の思いを持つこと。これはホップ・ステップ・ジャンプで言うところの、ホップにしか過ぎない。問題なのは、その思いを形にすること(ステップ・ジャンプ)だ。

本は、まえがきで次のように語っている。

『教育や子育てが多用であること、そして仮説であること自体はいいことだ。逆に、唯一絶対の教育なんてものが幅をきかす方が恐ろしい。親としては、自分が「これだ」と思う仮説を新字、実践していけばいいだろう。』

『ただ問題なのは、親が仮説を仮説のままにして通り過ぎていってしまうことである。仮説とは本来「検証」という作業とセットになっている。仮説があって検証があるからこそ「証明」ができるのだ。ところが、自らを選んだ仮説をしっかり検証する親は意外と少ない』

この本は、子育ての足がかり・・・すなわち親がホップするための場、をくれる1つの手段、ということができるだろう。

【関連リンク】 (40歳という年齢が強く関わる本)
40歳からの適応力(羽生善治)
やめないよ(三浦知良)
40歳の教科書 NEXT ~自分の人生を見つめ直す~


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