2011年9月4日日曜日

みなさん会社四季報って使ってます?

なぜアップルの時価総額はソニーの8倍になったのか?
(『会社四季報で読み解く ビジネス数字の秘密)
著者: 長谷川正人 出版社: 東洋経済新報社
発行年月日: 2011年3月14日 (価格:1,600円)

会社四季報なんて、私は読んだことがなかった。
  • ワケのわからん数字が小さい文字でギッシリと書かれている本
  • 就活のときにとりあえず読んでみる本
  • 読む、いや見るのにエネルギーのいる本
そんな印象だった。なんとなく好きになれなかった。どうしても数字を知りたければ、その企業のホームページ(IR情報)で公開されている情報を読めばいい。そう思っていた。

でも、本のタイトルが興味深かった。なによりも「食わず嫌いは駄目だ」という思いがあった。それが今回この本”なぜアップルの時価総額はソニーの8倍になったのか?に手を出した理由だ。

■楽しみながら財務諸表の読み方を学ぶ本

端的に言えば、この本は財務諸表の読み方、すなわち会社を数字から読み解く方法を論じたものだ。特徴は大きく2つ。論じるに当たって会社四季報の活用を前提としていること。そしてもう1つは、誰もが興味を惹きそうなテーマを引き合いに出している点だろう。

『最も元気のいいソフトバンクの安全性が低く、一時期は「1人負け」とされていたドコモの貸借対照表が圧倒的に良いのはなぜか?』
『トヨタの数字をよくみると意外にも借金も多く、多くの人が予想する「トヨタは無借金に近い優良企業ではないか」というイメージと異なるのはなぜか?』

こうした企業以外にも、グーグル、マイクロソフト、キリンホールディングス、アサヒビールなど、誰もがその動向が気になりそうな名だたる企業を事例に扱っている。

売上推移にはじまり、グループ会社の情報、セグメント別売上比率、営業利益率、自己資本比率、キャッシュフローにいたるまで、主要な数字の読み方について触れており、こうした数字を読み解きながら、各企業の戦略や体質の違いについて述べている。

ちなみに、この本では中に取りあげられている企業の四季報データがそのまま記載されているため、私のように会社四季報を持っていない人でも本の解説を理解するという点では何ら問題はない。

■会社四季報で全てが理解できるという意味ではない

サブタイトルには「会社四季報で読み解く ビジネス数字の秘密」とあるし、先ほど私自身も特徴の1つとして”四季報”というキーワードを挙げたが、気をつけなければいけないのはこれがイコール

「会社四季報さえあれば、この本が教えようとしていることを達成できる」

という意味ではないという点だ。数字の読み解きにあたっては、四季報データ以外の情報を頻繁にひっぱってきている。

たとえば本の第1章は、タイトルにも出てくる「なぜアップルの時価総額はソニーの8倍になったのか?」だ。ソニーとアップルの企業比較だが、お気づきだろうか? ソニーは日本の一部上場企業なので四季報にデータが載っているが、アップルは外国企業だ。会社四季報にはデータがない。それを補うために、本はいきなり第1章から四季報外・・・アップルの本社から財務諸表をひっぱってきて、解説を行っている(※もちろんこうした点については、本の”はじめに”で著者自身が注意を喚起しているが)。

本はあくまでも読者の興味を惹きつけようと”会社四季報”という言葉を全面に押し出しているが、実際は「四季報はあくまでも入り口の情報で、実際は色々なところから数字を集めて分析する必要がある」という大前提を理解しておくことが重要だ。

■なにはともあれ四季報を買ってみよう

決して難しい本ではない。社会人であれば誰でも読める。ただし少なくとも、財務諸表に出てくる基礎中の基礎・・・損益計算書、収益、営業利益、経常利益、企業価値といった言葉の意味自体は本を読む前に理解している必要があるだろう。本の中ではそういった言葉の解説はしていないからだ。

実際には会社四季報は役に立つと思ったし、四季報を読むため・理解するために必要な情報はこの本に載っているとも感じた。初めて四季報のデータを面と向かって読んだが、なるほど最低限必要な情報は全て、半ページの中に集約されている。

先に述べたとおり、最初に四季報を読んで会社の全体をざっと理解し、足りないと思う情報があれば、その会社が公開している情報からより詳しい数字をつかむ。そうやって理解する。こんな使い方だろう。

というわけで影響されやすい私は早速、会社四季報を買って使い始めている。

【関連書籍】
会社四季報 2011年3集 夏号 [雑誌]
「1秒!」で財務諸表を読む方法―仕事に使える会計知識が身につく本




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