2012年8月28日火曜日

16匹の青虫に強襲された哀れなパセリ

2012年の夏・・・自宅の庭にパセリを植えた。

勢いよく育ってる!

しかし、パセリを見ると何やら、そこには違和感が・・・。そう、大量の青虫だ。数をかぞえると、確認できただけで全部で16匹。ゾゾーッっとする。


この青虫は蛾の幼虫ではなく、キアゲハの幼虫。パセリを救おうかとも考えたが、放っておくことにした。

そうしたら、2日後・・・。当たり前と言えば当たり前のことだが、パセリは見るも無残な姿になっていた。16匹を超える青虫に食べつくされたのだ。そして、食料を失った青虫は、一匹足らず姿を消していた。


鳥に食べられたのか? はたまた民族大移動を開始したのか? 周りをつぶさに調べると、同じ庭の中の気の柱に一匹を発見。へばりついて休憩しているかのようだ。


そして、翌日。その青虫は、なんと蛹(サナギ)になっていた。蛹になってから、はや4~5日ほど経過(2012年8月28日現在)。


さて、立派なキアゲハはでてくるのでしょうか。


2012年8月25日土曜日

書評: この1冊ですべてわかるコーチングの基本

「あと2回は読みたい!」

読み終わってそんな感想を持った。

この1冊ですべてわかるコーチングの基本
著者:コーチ・エイ 監修:鈴木義幸
出版社:日本実業出版社
発行年月日:2009年9月1日



年齢(もうすぐ40歳)のせいだろうか。最近、やたらと”人に教える”ことが、自分の中で気になっていて、3冊まとめ買いしたのだが、今回の書評はその2冊目にあたる。

■最初に読むべき1冊

みなさんは「コーチング」が何かお分かりだろうか? 

他力ではなく、自力解決できるようにするためのサポート(プロセス)のことだ。つまり、サポート(コーチング)する側が、サポートされる(コーチングを受ける)側自身に、積極的にモノゴトを考えさせることによって、問題解決を図るプロセスのことだ。

たとえば、子供が算数ドリルで悩んでいたとして、親が、問題の回答を教えてしまうのは単なるヘルプ。「もう一回問題文を読んでご覧」とか「まずはここまでを考えてご覧」などと声をかけて、本人が本人の力で解を導き出させるようにするのがコーチングだ。

興味深いのは、コーチングする側(コーチ)自身も、ほとんどの場合、問題の答えを知らないということだ。コーチは問題の答えは知らないかもしれないが、問題を解く方法は知っている・・・問題の解き方を伝授する・・・コーチングとは、さしずめそんなところだろうか。

さて、本書は、こうしたコーチングについて、その”いろは”に始まり、そのやり方、実施手順やポイントについて解説した本である。「みなさんは”コーチング”が何かお分かりだろうか?」なんて、偉そうなことを言ってしまったが、要は、この本を読んだから聞けたことだ(汗)

第1章・・・コーチングとは何か
第2章・・・コーチのもつべき視点
第3章・・・コーチングの3原則
第4章・・・コーチング・プロセス
第5章・・・コーチングのスキルと実践例
第6章・・・組織へのコーチング

■読み手が最も理解しやすい形

本書最大の特徴は、なんといってもケーススタディだ。紹介されているケースの量と質・・・ともに読者を満足させるに十分なレベルだ。

ケースを紹介しているのはおもに第5章と6章だが、全260ページ中、その半分にあたる約130頁近くがこれに割かれている。

紹介されている事例は、明らかに書き手の実経験に基づくものであり(当然、ある程度の創作はあるだろうが、描写が詳しいので、とても作り話だとは思えない)、かつ、その内容が丁寧に描写されている。かの有名な「ザ・ゴール」(エリヤフ・ゴールドラット著)ほどではないにせよ、ストーリー性が強く、その場(コーチングをしている場)にいるかのような感覚で学ぶことができる(下記抜粋参照)。

コーチは、Aさんの声の力強さ、口調、顔の表情からも、コーチングへのコミットメントが高まってきたのを感じつつ、質問をしていきます。

コーチ「では、仕込み時期のこの半年で、どんなものを手にしたいですか?」
Aさん「部下の創造性やモチベーションを最大限に引き出せるようなコミュニケーション力ですね。いいクルマ作りをできる場づくりです。」
コーチ「それは現在のAさんのコミュニケーション力と比較して、どんなコミュニケーションだと言えるのでしょうか?」
Aさん「”どうせこいつはこうだろう”と決めつけて話すのではなく、白紙からいろいろなアイデアと創造性を引き出してこれるような柔軟なコミュニケーションですね」
コーチ「ひと言でいうと、どんなコミュニケーションですか?」
Aさん「創造的コミュニケーション」・・・
(本書より抜粋)

著者側の意図としては、本書を通じて「実際にコーチングを受けてみたい!」と思って欲しいのだろうが「良くわからないもの(コーチング)にお金を払うのはちょっと・・・」という読者の不安を取り除いてくれるという意味では、ある程度成功しているのではないだろうか。

■3回読みたくなる理由

さて、この本を読んで、わたしはなぜ「あと2回は読みたい」と思ったのか。この本に色々なエッセンスがつまっているからだ。これも優れたケーススタディがなせる技なのかもしれない。

1回目は、コーチングは実際には、どんなふうに進めていくものなのだろう?という観点で読んだ。

次(2回目)は、コーチはどういう意図でこのタイミングでこんな質問を投げかけたんだろう?自分が同じような質問を投げかけるにはどういうプロセスを踏めばいいのか?という観点で読むだろう。そして最後(3回目)はおそらく、自分の身の回りのケースに当てはめてみるとするとどんな感じになるだろうか?という観点で読む、だろう。

「この1冊ですべてわかるコーチングの基本」とは良く言ったものだ。まさに納得のタイトルだ。


【類書】
書評:The Goal(ザ・ゴール)
書評:It's Not Luck(ザ・ゴール2)
書評:子どもの心のコーチング

2012年8月19日日曜日

書評: 子どもの心のコーチング

単純な私・・・。

ハーバード大学で大活躍の北川智子先生(「ハーバード白熱日本史教室」より)や、全国の先生から尊敬される菊池省三先生(「プロフェッショナル仕事の流儀」より)に大いに触発された。

「自分はコンサルタントだし、何より二児の父親だし、”人を教える技術”について、もう少し磨きをかけたい。よし、まずは本で学習しよう!!」

というわけで、”コーチング”というキーワードを頼りに、Amazonで適当に見つけた書籍を3冊ほどまとめ買いをした。
早速一冊目を読み終えたので、本日はこの本について紹介をしたいと思う。


子どもの心のコーチング―一人で考え、一人でできる子の育て方
出版社: PHP文庫
著者: 菅原裕子







■自分の子育てを見つめなおすきっかけを与えてくれる本

本書は、”子を持つ親達”に向けた、よりよい子育て方法についての指南書だ。

では、”子を持つ親達”は、この本から何を得ることができるのか? それを知るには、次の質問※に「はい」「いいえ」で答えてみてもらうのがいいだろう。

※本からの抜粋ですが、ネタバレではありません。

①子どもはよく笑う
②毎日が楽しそうだ
③目が輝いている
④友達とよく遊ぶ
⑤親によく甘える
⑥いろいろなモノゴトに関心を示す
⑦子どもなりの自己主張をする
⑧話すときは視線を合わせる
⑨親の過剰な干渉や介入をいやがる
⑩機嫌の回復が早い

7歳以上の子どもにはさらに次の質問を追加されたし
⑪朝自分で起きられる
⑫学校などでの出来事をいろいろと話してくれる
⑬悩みがあるときは打ち明けてくれる
⑭親の意見を求めてくる
⑮我慢できるが、我慢しすぎるということはない

みなさんは、いくつの「はい」がついただろうか。

より多くの「はい」がつくほうがいいわけだが、本書は、「はい」が多かった人には「自分の子育てに自信を持つきっかけ」を与えてくれるだろう。「いいえ」が多かった人には「子育ての悩み解決のヒント」を与えてくれるだろう。そして、そのどちらでもない人には「自分の子育てに課題を見つけるきっかけ」を与えてくれるだろう。

私の例で言えば、実は、子育てにそんなに課題を感じていなかった(じゃー、読むなよ・・・と言われそうだ・・・)。

が、著者の「子育てにおいて、”褒めるのはいいことだ”という誤解がある」という指摘に、自分にも思い当たるフシがあった。「明日から、少し子どもへの接し方を修正してみよう」・・・そんなふうに思った次第である。

■子のコーチング方法をコーチング

この本最大の特徴は、そのノウハウもさることながら、著者の読者に対する指南の仕方にある。さすが、コーチングのプロだ。タイトルには「子どもの心のコーチング」とあるが、本の内容は、まさに親のコーチングそのものである。つまり、子育ての方法について、一方的に読者に「こうしたほうがいい」とか「こうすべき」という、解を示すのではなく、「こういうふうにされたときの子どもの気持ちを目をつぶって一度考えてみて下さい。ね、子どもの立場にしたら、そんな言われ方をしたら、嫌でしょう?」などと、読者自身に、1つ1つ考えさせることによって、あるべき方向に導いてくれる。

たとえば、次のような感じだ(本書「あなたの”きき耳チェック”」より抜粋)。

(自分から行きたいと言って通いだしたピアノレッスン・・・。)そして、三回目のレッスンから帰るなり、子どもはこう言いました。

「ピアノやめる。もう行かない。」

この瞬間、あなたは子どもになんというでしょうか?メモ用紙とペンをとって、そのセリフを書いて下さい・・・。

■自分なりに咀嚼して子育てに活用したい

素晴らしい本だと思うが、一点だけ気になったことがある。それは「そもそも子育てに正解ってあるのだろうか?」ということだ。

著者が自ら子育てで苦労をし、さらに数多くの課題を抱える親達と接してきた結果、その中で「これだ!」と確信できたものを紹介してくれているわけだから、その多くは間違いなく信じるに足ると思う。しかし、だからといってその全てが正解か、というと、そうではないだろう、と思う。

たとえば、著者の紹介してくれた体験談に「いくら言っても片付けをしない小学校四年生の娘に、本人自らが必要と感じて片付けるようになるまで、うるさく言うのを止めた。そうしたら、中学校二年生になって、自発的に片付け始めた。」というものがある。

しかし、この方法が当てはまらない子どももいようかと思う。先日、ガイアの夜明けで、”全く片付けのできない夫婦”が紹介されていたが、最近、片付けができない人たちが増えているのだと言う。うるさく言っても反発するだけ・・・という著者の主張には賛成だが、その解決方法には、場合によっては放任するよりも、上手く機能する方法があるような気がした。

何が言いたいのかというと著者を非難するつまりは全くなく、つまり、本の読み方が大事だよ、ということだ。現状、子育てが著者の指摘どおりになっていないからと言って、何でもかんでも・・・そう、著者の論拠に納得できないものまでも・・・両手放しで受け入れる必要はないし、そうすべきではないだろう、ということだ。

■立ち止まって、ぜひ整理を

いずれにせよ、自分(親)自身の行動・・・ましてや子育てのあり方が客観的に見てどうか、なんて考える機会は、なかなかないと思う。少なくとも私はなかった。

きっと「あー、こんなふうにしてやればよかった・・・」と、子どもが大人になってから気づくことになるのだろう。

今の子育てに問題はないか、より良くできる点がないか、一度、立ち止まって整理してみてもいいんじゃないだろうか。


【”子を育てる”という観点での類書】
書評: 40歳の教科書 ~親が子どものためにできること~

2012年8月18日土曜日

商品評: SoftBank 録画対応デジタルTVチューナー

結局、誘惑に負けて買っちゃいました・・・SoftBank 録画対応デジタルTVチューナー」を。これは、デジタルテレビ番組を無線LAN経由でiPhoneやiPadに飛ばせる機械だ。

録画対応デジタルTVチューナー

買った理由は、次の通り。
  • 我が家にはiPhone2台(妻用と自分用)とiPad1台がある
  • スキマ時間に録画した番組を見たい
  • 通常のテレビは、家族に占有されていることが多い
値段は約2万円。録画用のハードディスクは別売で、標準のものを買うと3万円になる。セットアップは簡単。
  1. 自宅のTVアンテナとチューナーを接続
  2. iPadやiPhoneに「録画対応デジタルTV」アプリをインストール
  3. アプリを起動し、後は画面指示に従うのみ
既に自宅にインターネットがある場合は、そのネットワークに接続すれば、外出先から録画指示もだせるようになる。

なお、外付けHDDは標準以外にも、公式サイトに、動作確認済みのものがいくつか表示されているが、数が少ない。実際は、標準のものでなくてもUSB2.0端子を持つHDDであれば、十分に使えるようだ。ちなみに私は、1年前に購入したI-O DATA USB 2.0/1.1接続 ポータブルハードディスク「カクうす」 750GB HDPC-U750を接続したが何ら問題はなかった。


「録画対応デジタルTV」アプリは、こんな感じ。「録画 対応 デジタル」などと入力して検索すればすぐに見つかる。

画面上から4列目右から2番目
立ち上げると、まずはStation TVのロゴが表示される。


アプリを立ち上げてから、番組が表示されるまでがやや長い。数えてみたところ約7秒。一度立ち上がった後の番組切り替えには、約3.5秒。


画質は文句なし。録画した番組も品質は変わらない。

画質は、こんな感じ
当然、番組表も見ることができる。


番組録画もこんな感じでらくらく。


1週間近く使ってみて感じた良い点・悪い点を挙げておく。

【良い点】
  • スキマ時間に見ることができる(場所を選ばないので;狙い通り)
  • 画質が思いのほか、いい
  • iPhoneでも見ることができる
  • リモートから録画指示ができる
  • HDDをあまり選ばない

【悪い点】
  • 起動や番組切り替えの時間にストレスを感じる(慣れるけど・・・)
  • 2台同時に視聴できない
  • アプリがたまに落ちる

ところで、最近、iPhoneだけでなく、PCでも見ることのできるデバイスが出ているようだが、個人的には「2台同時に視聴できない」とか「iPhoneやiPadでしか見ることができない」といった制限を実は気に入っている。なぜなら、あまり便利になりすぎると、本当にテレビしかみなくなってしまうからだ。あくまでも目的は、たまる一方の見たい番組の効率的な消化。

個人的には、買って良かったと満足している。お陰で、たまる一方だったテレビ番組(情熱大陸、プロフェッショナル、カンブリア宮殿、ガイアの夜明け・・・かなり偏りがあるけど・・・(^_^;))の消化が非常に早くなった。



ブレまくる消費税増税の目的

「何のための消費税増税か」

2012年9月号のVOICEで取り上げられている大きな論点だ。

国の借金は1000兆円を突破。このままでは財政が破綻してしまうからと、野田首相は消費税増税法案成立に命?をかける。法案の正式可決は時間の問題のようだ。しかし、時を同じくして、次の事項がその成立に向け(※正確には、整備新幹線については既にゴーサインが出ている)動きはじめている。

  • 整備新幹線の未着工区間の建設(3兆円の7割を国と自治体が負担;民主党)
  • 国土強靱化基本法案(10年間で100兆円;自民党)
  • 防災・減災ニューディール(10年間で100兆円;公明党)

国家破綻から免れるためと・・・それでも揉めに揉めた消費税5%アップで得られる税収はやっとこさの13.5兆円。そんな中で、こんな巨額の公共事業投資を認めようとしているってどういうことなのか・・・という点をめぐって、著名人が意見を対立させている。


【反対派】

柳井正(ファーストリテイリング会長兼社長)
『・・・整備新幹線の話以上に、ある意味で私を驚かせ、また呆れさせたのは、自民党が提出した「国土強靱化基本法案」である。・・・費増税による税収増は1%につき、たったの約2.5兆円。こんな法案(国土強靱化基本法案)が通ってしまえば、もはや増税する意味などどこにもなくなってしまう』

江田憲司(みんなの党)
『変動相場制のもとでは、公共事業のために財政支出を行なっても、金利の上昇→円高→輸出減が起こり、その効果が吸収されるというものだ。つまり公共事業は、ほとんど景気浮揚に寄与しないのである』


【賛成派】

谷垣禎一(自由民主党総裁)
『連動地震など)そうした国民の潜在的不安を取り除くことも、政治の役割だと思います。・・・さらに「国土強靱化基本法案」にはもう1つ、別の狙いもあります。消費増税を行うと、どうしても経済成長にマイナスの影響が出る恐れがある。そこで投資をして、成長を刺激すると言う政策が必要なのです。決してバラマキではありません。』

前原誠司(民主党政策調査会長)
『まず消費増税分の5%は、すべて社会保障費に回します。これは、区分管理して、ほかには転用できないとなっているので、間違いありません。また整備新幹線についてですが、私が国土交通大臣を勤めていたとき、整備新幹線の新規着工について5条件を満たさなければ認可しないとしました。・・・それが整ったのです。・・・国の公共事業費は、一貫して下がり続けています。増税分が公共事業に使われるということはありません』


こうした方々の主張のポイントを見ると、個人的には【賛成派】の部が悪いように思う。

理由は、谷垣氏の主張する公共事業投資が景気浮揚に貢献する・・・という主張を支える論拠が見当たらないからだ。

また、前原氏の主張する「国の公共事業費は、一貫して下がり続けています。(だから、こうした法案を通すことは別に問題ではないんです)」は、そもそも主張のポイントがズレている。目的は国の公共事業費を減らすことではなく、国の借金を減らすことだ。「国の公共事業費が下がっているから、と主張しても、借金は増え続けている」のだから、公共事業費が下がっていることを根拠に、こうした公共事業投資を正当化するのはおかしい。


元公務員が、小難しい名前の会社をたちあげて、政府から適当に予算をとって、実際は何の経験も技術も持たない自分の身内を数時間働く振りさせて、年収1000万円を超える収入を渡している・・・なぁんてシロアリがいる話を聞いたこともある(あくまでも、噂)。

野田首相の主張していたシロアリ退治はいずこへ・・・。柳井会長の焦りも分かる。いや、資産の少ない我々がもっと焦らなければいけないのに・・・。

っというふうに、まぁ、今月号VOICEを読んでいると、こんな感じで色々と考えさせられるわけで・・・。

2012年8月17日金曜日

子供の成長と親の想い


私が家族のために、夏休みをとったお盆の一週間も、半ばを過ぎた頃のことだ。

「おじいちゃんと一緒に帰る」


小学二年生の息子が突然、こんなことを言い出した。田舎の(彼の)祖父が、横浜の我が家へ来てくれていたのだが、そんな祖父が、自分の家に、いよいよ帰らなければいけない、というタイミングでの出来事だった。

しかし一方で、両親とも別れたくない・・・そんな想いが胸をよぎったのだろう。「帰るべきか、とどまるべきか」・・・決められず、ついには、わんわん泣き出してしまった。

親の心情としてはやや複雑なものだ。「子供に合わせて仕事の休みをとったのに、肝心の本人が遠くに行っちまうのかい!?」という寂しい気持ちもあれば、「親から離れてでも行動しようとする息子の成長っぷりに嬉しい」という気持ちもある。

息子は30分ほど泣きながら悩んだ後、「おじいちゃんと一緒に帰る」という意思決定を下した。夜8:00頃・・・彼を乗せた車は夜路へ消えていった。

翌日・・・。

息子の様子は、どうだったのかを早速聞いてみると、なにやら興味深い話。「強制していないのに、朝起きて自ら一生懸命、勉強をしていた」と言う。いつも彼の横に座って、集中を促しながら勉強をさせていた身としては、信じられない行動だ。

「自らしっかりしなければ・・・」

周りに誰も面倒を見てくれる人がいないからこそ、息子なりにそんなことを思ったのかもしれない。

自分で意思決定をしたからこそ、自らの行動に責任を感じ、そして行動した結果から学ぶ

彼は、この夏、間違いなく大きく成長をした。

そして、親の想いは・・・というと、常に複雑なのである (ー_ー;)

2012年8月16日木曜日

書評: 大前流 心理経済学

『世界では高齢者になると金融資産は目減りしてくのだが普通だが、日本人は高齢になればなるほど資産が増え、最後には平均3,500万円もの金融資産を残して死んでいく。』

大前流心理経済学 貯めるな使え!
著者: 大前研一
出版社: 講談社



■大前流 心理経済学とは

デフレから脱却できない。金利を限りなくゼロに近づけてもダメ。お金をばらまいてもダメ。お金が回らない。国民の貯金1,500兆円は、一向に塩漬けのまま。

どうしてこうなってしまうのか!?

大前氏は、その理由こそが、ケインズの経済学などでは説明できない”日本人特有の心理”だと言う。

『すべて、「日本人固有の心理」が原因である。強いて言えば、そうした心理を正しく導くことができず、数十年にわたって国民をミスリードしてきた政府の責任である。』(本書より引用)

すなわち、感情が反映されていない数字だけを追いかけて「あーしろ、こーしろ」と主張する経済専門家の話など聞いても全く無駄で、その裏に潜む心理を理解した上で処方箋を考え、実践しよう。

これこそが、まさに”大前流 心理経済学”だ。

■日本人特有の心理と7つの解決策

本書の特徴は、先述のように従来の経済専門家が気にかけてこなかった”日本人の心理”に分析の視点をおいていること、そして、それに基づいて7つの具体的な解決策を示していること・・・この2つにある。

日本人の心理とは、たとえば「汗水たらさず稼ぐカネを良しとしない」「みんな(周り)が、やらなければ手を出さない」「漠然とした不安を自ら明らかにしようとせずなんとなく怯える」といったことだ。日本と世界の違いを理解する大前氏ならではの指摘だ。

たとえば、大前氏は次のような事例を紹介している。

『イザという時に備えて三重の備え(年金、貯蓄、生命保険)をしている「イザという時」とは、いったいどんなときなのか。私は講演などのたびに会場の人々に直接質問しているのだが、きちんと答えられる人はほとんどない。』

これだけが理由ではないが、結果、平均3,500万円もの資産を残して死んでいく、というわけだ。

また、7つの具体的な解決策も大前氏らしい。大局観を捉えた大胆かつユニークな提案が多い。

たとえば、氏は「金利を下げるのではなく、(クリントン政権のときのように世界中からお金を日本に集めるために)金利を上げろ!」と提案する。

おそらく経済専門家の多くが「なんてバカなことを!」と反論するのだろうが、素人の私からすれば、そもそも金利をいくら下げても効果をなしてないのだから、今更その逆をやっても失うものなどないだろう・・・大前氏の言うとおり、やってみればいいじゃん、と思ってしまう。実現可能性はともかく、大局、大胆、ユニーク・・・こういったキーワードに触れる機会が少ない今の日本には、氏のこうした視点・アプローチが必要ではないかと思う。

■リーマン・ショックが大前氏の主張を変えたのか

実は、この本、2007年に出版されたものだ。そう、リーマン・ショック前(正確にはサブプライムローン問題が顕在化した頃)に書かれた本だ。リーマン・ショック以後、世界経済がくすぶりつづけている。アメリカでは、ゼロ金利政策がとられ、お金がじゃぶじゃぶ刷られているが、5年近く経過する今も、景気は一進一退だ。

リーマン・ショックとその後の世の中の状況を受けて、大前氏の見解は変わったのだろうか。

これについては、President Online(2011年10月31日号)での氏の次のようなコメントが参考になる。

『これ(景気刺激策が効果を得ていない状態)は日本だけに見られる特異な現象ではない。今、アメリカは日本とほとんど同じパターンの陥穽に足をとられている。リーマンショック以降、「オバマ・ニューディール」ともいうべきバラマキ総合経済対策を講じてきたが、まったく効果なし。雇用にもつながらず10%近い失業率が続いている。』(2011年10月31日号「劇的な景気回復には心理経済学しか無い」より)

つまり、ケインズでは測れない人間心理に起因する問題がアメリカでも起きている、というわけだ。

リーマン・ショックを受けて、一つ、大前氏の見方に変わった点があるとすれば、「日本人特有だと思っていた心理(細かい心理状況は異なるが)は、必ずしもそうではない」という点だろうか。

ただいずれにしても、大前流心理経済学の適用範囲が日本から世界に広がっただけで、今の問題を説明するのに十分、有益ではありそうだ。

■人生を豊かにするチャンス

景気は停滞。日本の借金は膨らむばかり。国際的な地位は低下する一方。政治は迷走。

本当に暗い話ばかりが続く日本だが、「まだ1人1人の人生を豊かにするチャンスは十分に転がっている」

そんなことを感じさせてくれる一冊だった。


余談だが、影響を受けやすい私は、この本を読んだ後、どうやって自分の資産を有効活用するかを考えるために、さらに投資に関する本を2冊も買ってしまった・・・。影響受けすぎかなぁ。

【類書】
お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)


2012年8月13日月曜日

書評: 数学物語

「こんな教え方をしてくれる先生がいたら、人生の幅がもう少し広がっていたかもしれない」

数学物語
著者: 矢野健太郎
発行元: 角川ソフィア文庫



■定規がなくて、直角はどうやって作る?

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「数学物語」は、数学が生まれた背景を通じて、数学の魅力に迫り、数学が好きになり、そして、いつの間にか数学力が身につく・・・そんな本だ。

本書の最大の特徴は、数学の起源・・・すなわち、”数字の誕生”にはじまり、私達がよく知る超有名な”数学の公式”にいたるまでを、歴史的背景や自然、日々の生活に密接に結びつけて、解説していることにある。

たとえば「定規のない時代に、どうやって直角を作り出したのか」という問題。直角が作れなければ、ピラミッドの石も作れない。

言われて、はたと気づく。直線は自然の対局にあるもの。そんな直線で形成される直角もしかり。今でこそ、定規や分度器を与えられて当たり前のように直角を作ることができるが、そういった道具のない時代に、どうやって直角を作り出せたのか?

ちなみに正解は、右図の通り。縄を1本用意し、これに12個の等間隔に開けた結び目を3:4:5に分けると直角ができる。

このほかにも、「棒きれ一本でピラミッドの高さを図るにはどうしたいいのか」、「海岸から船までの距離をどのように図るのか」など、読者の興味をそそる形で数多く紹介されている。


■宗教と科学は表裏一体

ところで、「ダ・ヴィンチ・コード」で有名な、小説家ダン・ブラウン氏は、小説「天使と悪魔」の中で、物語を通じて、”宗教と科学は表裏一体である”ということをうたっている。そのときは、そんなものかな・・・と何気なしに思ったものだが、「数学物語」を読んでいると、まさに、その意味を肌で感じた気にもなる。

たとえば、コンパスで円を描いて、そのコンパスの頭をそのまま円の中心部に当てて、コンパスの形に円を等分に切っていくと、ちょうど6等分になると言う。

「どうしてそうなるのか?」

そこには偶然とは思えない・・・誰かの意思が介在しているようでもあり、そのような法則を追求することは万物の創造主に近づける・・・そんな意識が芽生えてくるのは決して不自然なことではない・・・そう感じる。

実際、本書を読むと、昔の人達がいかに、定規とコンパスだけで定理を導き出すことに腐心していたのかが伝わってくる。その行為に”美しさ”を感じていたようだ。

そんな精神がフリーメーソンなどの秘密結社を創りだしたことすらも、なんとなく納得できてしまう。

■前半はとっつきやすいが、後半にやや息切れも

聞けば、我々が慣れ親しんでいる、アラビア数字・・・"1,2,3,4,5,6,7,8,9,10..."、元はインドで生まれたものだと言う。ところが、立地の影響で、インドからアラビアへ、アラビアから世界中へ伝播したらしい。

と、まぁ、こんな感じで非常にとっつきやすい本で、気がつけば数学力が身についている。

が、そんなわかりやすい本も、後半にいくにしたがって、徐々に難しくなる。小学校・中学校で習う数学が多いが、正直、全く頭を使わずにぼんやりと読める本とは言いがたい。

最後は、「パスカルの円錐曲線試論」や「オイラーの公式」にまで言及する。わたしは、数学力を身につけることが目的ではなかったので、難しくてつかれる箇所はさっさと、読み飛ばしてしまった。

■数学に面白みを感じられない人に

わたしは、数学は決して得意ではない。高校生のときには、サイン・コサイン・タンジェントの話についていけず挫折した。文系の道を選んだ。

そんなわたしでも、少なからず興味を持って読むことができた本である。学校で公式を習ったときは、なんとも思わなかったが、本書を読んで、これらを発見した天才達に改めて感動すら覚えた。

200ページたらずの本。ピタゴラスの定理やアルキメデスの原理などを習い始める中学3年生以上・・・そして、わたしのように数学を毛嫌いにしている人にオススメだ。

【楽しめながら何かを学習できるという観点での類書】
書評: The Goal(ザ・ゴール)
・書評: It's Not Luck(ザ・ゴール2)
・書評: 学校では教えてくれない日本史の授業



2012年8月11日土曜日

書評: 人を見抜く技術

『私が人生を学ぶのは”できる人”からではなく、”できない人”からだ。”できない人”を見て、「なんでできないんだろう?」と考え、そこから学んでいく。』

面白いことを言う人だな。

そう感じたその人の名は、桜井章一。この桜井氏が、60年間を超える人生で得た学び・・・人の観察眼について語っているのがこの本だ。

人を見抜く技術──20年間無敗、伝説の雀鬼の「人間観察力」
出版社: 
(講談社プラスアルファ新書)
著者: 桜井章一

桜井章一氏は、知る人ぞ知る麻雀棋士だ。1960年代に麻雀の代打ち(ある人間の代理として麻雀を行う者)になり、20年間無敗のまま引退した、という有名な話がある。素人の私が聞いても、「そんな馬鹿な!?」という疑念が頭をもたげるが、そのような噂が広まるほど”強かった”ということなのだと解釈している。

そんな強者の話であれば、ぜひ、聞いてみたい・・・そう思うのが人間心理だ。

■要点が詰め込まれた本

全5章からなるが、章ごとに8~20の要点がまとめられている。たとえば、第一章のテーマは”「癖」は心を丸裸にする”。この章には、次に示す8つの要点が、各1~3ページ程度で語られる。

・癖はその人の真実を表す
・誰も癖からは逃れられない
・精神のメタボ癖がついた現代人
・無駄な力みで両手の親指が反る
・自然に生きる人は癖が少ない
・”酔い癖”が人を愚鈍にする
・対局相手の心理は動き癖で読める
・正確ではなく癖を直す

まるで超短編集を1冊にまとめた本のようでもある。必要と感じるところだけを、かいつまんで読めるような気軽さを持てる本だ。

■果たして「人を見抜く力」は身につくのか

わたしは、この本を通じて「人を観察することの面白さ・大切さ」を学んだ。

興味深いのは、得た”学び”が、観察力そのものではなく、観察することの面白さ・大切さである、ということだ。実は、著者の元々の狙いもそこにあるようだ。

桜井章一氏は”はじめに”にて、次のように語っている。

『この本は俗にいう「自己啓発書」のように、なにかの”答え”を示したものではない。私が読者のみなさんにのぞむのは、答えを簡単に得ようとするのではなく、絶え間なく変化していくモノゴトに対応できる柔軟な観察力を磨いていってほしいということだ。』

もちろん、全く、観察眼に関するノウハウを学べない、というわけではない。ただ、方法論は決して突拍子もないことではなく、むしろ、常識的なものが多い。たとえば、「一方的にしゃべる人は、実はさみしがりやである」とか「やたら謙虚な人ほど、実は要領で生きている」といったように、だ。

ノウハウも大事だが、人に意識を向けることが大事であり、技術は後からついてくる・・・氏はそれが言いたかったのだろう・・・と思う。

■直感的な文章が良くも悪くも個性的

ところで、桜井章一氏が”自然”に対して大きな敬意を払っている、ということが、この本から伝わってくる。彼が語る言葉には、幾度となく「自然(界)」というキーワードが出てくるからだ。

本人も自然体で生きることを務めているからなのだろう。文章の表現も、極めて”自然体”だ。つまり、こう・・・氏が思いつくままを、文章に起こした・・・そんな感じなのだ。

良く言えば文章が直感的。直感力を大事に生きてきた桜井氏ならではである。ただし、悪く言えば、ややまとまり感がなく、読みづらいと感じるときが何度かあった。

■桜井章一氏を知ることから始めてみては?

先述したように気軽に読める本なので、桜井章一氏を知っており、彼の人物像に興味が少しでも持てる人にはオススメだ。彼が何者か知らない人は、本に手を出す前に、とにかく彼が何者かを知ってほしい。テレビやインターネットで勉強し、もし興味があるな・・・と思えるなら、そのときは買いだ。


【人生論という観点での類書】
書評: 40歳からの適応力
書評: 石橋を叩けば渡れない
書評: 人間の基本

===(卓球選手平野早矢香さんの弟子入り 2012年9月4日追記)===
2012年9月2日の安住紳一郎の日曜天国を聞いていたら、そこに卓球選手、平野早矢香さんがゲスト出演。そして彼女の話になんと桜井章一さんが登場した。

なんでも、とにかく強くなれるチャンスは全て吸収したい、という思いで、桜井章一さんに電話・手紙を書いた後、彼女は雀荘に押しかけたらしい。

驚きつつも桜井章一さんは「じゃー、そこで一回素振りをしてごらん」と一言。真面目な平野早矢香さんも素直にその場(雀荘)で素振りをしてみせたとか(想像すると笑える)。それを満た桜井章一さんは「左手が遊んでるんじゃない?」とまた一言。一瞬、「はっ!?」と思うかもしれないが、実はこれは非常に的を得たアドバイスだったらしい。異世界にがむしゃらに飛び込む勇気を持つ平野選手もさすが、全く異業種の選手の突然の訪問にもたじろがず、真面目に彼女の精神に応えてみせた桜井章一さんもさすが・・・。

聞いていて笑わせてもらったが、とっても素敵な話じゃないですか。

2012年8月5日日曜日

書評: 石橋を叩けば渡れない。

「うん、うん、そのとおりだ・・・」

喫茶店で、何度も頷きながら、一気に読破してしまった。

石橋を叩けば渡れない。
著者: 西堀栄三郎
出版社: 生産性出版


■タロ・ジロ物語のモデルになった西堀栄三郎氏の貴重な学び

この「石橋を叩けば渡れない」では、西堀栄三郎氏の人生論が紹介されている本だ。

ところで、西堀栄三郎氏のことを知らない人のために、少し触れておきたい。彼は、映画「タロ・ジロ物語」のモデルとなった人物の1人だ。「タロ・ジロ物語」とは、不運が重なり、鎖につながれたまま南極に取り残された樺太犬15頭の物語である。このうち13頭は死んだが、南極越冬隊は2頭(タロとジロ)と1年後に奇跡的な再開を果たす。

このときの第一次南極観測隊越冬隊隊長が、ほかならぬ西堀栄三郎氏である。何もかもが未知の世界で、隊員達をまとめあげ、過酷な環境で一定の成果を残しつつ、一冬を無事に越させた・・・その張本人だ。


■心に染みる体験談

本書の最大の特徴は、西堀氏の主張1つ1つに添えられた、わかりやすい”たとえ話”だ。そして、”たとえ話”には、氏自身の生々しくも面白い体験談が数多く使われている。

たとえば、氏は本の中で、不測の事態に立ち向かうための有効策は、常に冷静沈着でいられるようにすることであり、そのためには「モノゴトは決して思い通りには起こらない」という事実を認識しておくことである、と語っている。

この主張を裏付ける具体例として、南極越冬に向けた食料準備の話を取りあげている。これが面白いのだ。

緻密な計算に自信を持つ栄養の専門家の「計算通りの食料準備を進めよ」の指示に対し、「モノゴトは決して思い通りには起こらない」・・・と考えていた西堀氏は、内々で指示の二倍の食料を準備させたそうである。

『私は、食料準備係に・・・(中略)・・・数字は二倍にしておけよ」といったのです。』

『ところが、(南極に向けて)出発してから、案の定、もう思いもよらないことが次から次と起こってきます。インド洋を渡っている最中に、どうもくさいぞくさいぞと誰かが言うものですから、調べてみたら・・・(中略)・・・(冷蔵庫に入れ忘れたためにそれらが)みな腐っているというんです・・・(中略)・・・これで先生のお献立はまずダメになってしまいました。』

『私は始めから「思いもよらんことが起こるぞ」と覚悟していたものですから、ちっともおそれることはないわけです・・・』

と、彼の主張は、終始、こんな感じなのである。

リーダーシップやマネジメント力が求められる人にこそ読んでほしい

「南極観測を経験したからって、それだけで役立つような深い人生論を語れるの?」

そんな疑問を持つ人がいるかもしれない。しかし、実は西堀氏の経験は南極観測だけじゃない。

『私は若い頃から、人間というものは経験をつむために生まれてきたのだ、という幼稚な人生観を持っています。』

これは氏が冒頭で述べている言葉だが、本書を読むと、氏がいかにこの考えを実践してきたかが良く分かる。経験の広さ・深さには、ただただ、感心させられる。

「今から40年以上も前の本が今のビジネスに役立つの?」

こんな疑問を持つ人もいるかもしれない。しかし、これも答えはYESだ。

ピーター・ドラッカーの本が、今日の数多くの成功者の愛読書になっていることからも分かるとおり、本質をとらえた本は何年たっても色褪せないものである。たとえ話がわかりやすい分、ある意味、ピーター・ドラッカーの本よりも、役立つかもしれない。

ちなみに、わたし自身は、本書を通じて「人の育て方」や「不測の事態への対応力の付け方」、そして「創造性の身につけ方」について学んだ。特に「人の育て方」については、最近、個人的に悩みっぱなしのテーマであっただけに、一筋の光明が見出すことができた。

今年出会った本の中で間違いなくイチオシの本だ。

【関連書籍】
南極越冬隊タロジロの真実

【”生き方を学べる”という意味での類書】
人間の基本


Amazonの利益率の低さには理由がある

2012年8月6日~13日合併号の日経ビジネスから得た気づきは2つ。


1. 沖縄にはポテンシャルがあるということ

自分の中で沖縄といえば、「失業率全国1位」「肥満率全国1位」「離婚率全国1位」という悪いイメージが先行していた。しかし、自分は沖縄のことを何も理解していなかったようだ。

立地の優位性、出生率全国1位・・・ビジネスの観点から沖縄を見ると、違う筋書きが見えてくる。事実、マーケットの成長性を期待して、ドン・キホーテはじめ、東急ハンズなどが実際に進出しはじめているという。アメリカ文化の影響を強く受けてきたせいもあろうが、マクドナルドの全国売上平均は沖縄が一番だそうだ。

記事では、あわせて、沖縄が今抱えている問題(例:オスプレイなど)についても言及している。なかなか、読み応えのある記事だ。


2. Amazonの利益率の低さには理由があるということ

Amazonは、ずっと昔から注目している。普通の会社とは何か違うからだ。会社は株主のもの・・・長い間そう強く信じて疑わなかったアメリカでは、株主は常に、短期間で儲かるビジネスにしか興味を示さなかった。投資額が莫大であるならなおさらだ。そんな社会において、莫大な投資を要したAmazonは、黒字化にいたるまで実に8年(1994年7月に設立し、2001年1~2月期に初の黒字を出した)を要している。

マーケットが良くそんな会社を許容したな・・・と思うわけだが、この疑問については先日、カンブリア宮殿に出演していたジェフ・ベゾスAmazon社長の話を聞いてある程度納得できた。

黒字化を出した後も、決して、利益率は高くなく、莫大な投資に対してあまりにも見合わないのではないか。MBAでは、そんなケーススタディをやった記憶もある。

その時の”Amazon=利益率低い”という記憶が未だに鮮明に残っているため、今回の記事は興味深かった。記事では、「営業利益率の低さ」でAmazonを評価するのは無意味だ、との論について触れている。Amazonでは、買入債務の回転数が90日であるのに対し、なんと売掛債権の回転日数は16日だというのだ。つまり、利益率がいくら高かろうが、それは会計上の数字に過ぎず、実際に”今、すぐに使えるお金(キャッシュ・フロー)”で見た場合、必ずしもあてにならない。取引先への支払いはのんびりだけど、請求した現金の回収はむちゃくちゃ早い・・・これにより、手元資金は豊富になる、という算段だ。

利益率は気にせず、できるだけ安価なサービスを提供し、顧客の信頼度・満足度を向上させ、市場シェアを拡大させる→売上が上がる→手元資金が増える・・・そんな感じか。

ただ、市場は売上もいつかは鈍化する。その時への備えはできているのか?・・・そういった点も含め、記事はAmazonのこれから・・について紐解いている。

非常に勉強になった。

2012年8月4日土曜日

書評: ルポ若者ホームレス

「ホームレスだなんて・・・自己責任だよ、全部」

そう一蹴する人もいるだろう。

確かに、その側面はある。何よりも、本人たちがそう自覚しているようなのだから。何をやっても長続きしない。やる前から、諦めてしまう。ギャンブル中毒である・・・等々。

しかし、そうではない側面もある。

誰にでも起こりうる、ちょっとしたことが”きっかけ”で、正社員として働いていた会社を追われる。

・上司や同僚とそりが合わず退職
・突然、病気を患いクビ
・会社が倒産・・・

その後、腰掛けのつもりで期間工になる。期間工が派遣になり、派遣が日雇い派遣に。そして、飯場(はんば)になり、最後は路上生活に。

一端、路上生活に入ると、そこから抜け出すのは容易ではない。住所が定まらないと定職につけないが、定職につけないとお金を稼げず、定住することもままならない。にっちもさっちもいかない状況に陥る。その日暮らしが続く。

驚くべきは、この話は、一昔前であれば50~60代の人に当てはまるものだったが、今や20~30代の人にも当てはまる話だという。若者ホームレスの急増は、もはや日本社会が抱える大きな社会問題の1つなのだ。

飯場(はんば)とは、鉱山労働者や大規模な土木工事や建築現場での作業員用の給食および宿泊施設のこと。(Wikipediaより抜粋)

■若者ホームレスの実態に迫る本

ルポ若者ホームレス
著者: 飯島裕子
出版社: ちくま新書


著者は、若者ホームレスの実態を知るため、50人の若者ホームレスに対してインタビューを敢行した。2008年から10年にかけて、東京都大阪で調査を実施し、1名あたり3時間を費やして、生育環境、仕事経験、現在の生活、今後の展望について、詳細な聞き取り調査を行ったそうである。

本書は、この調査結果をまとめたものだ。

■実態を知って、何を感じ取るかはあなた次第

この本に、若者ホームレス問題を解決するための処方箋が書かれているわけではない。もちろん、問題の複雑さを考えると、そのような処方箋など書きようもないだろうが。

つまり、若者ホームレスの実態を知って、そこに何を感じ、どんな主張を持つか、どのような行動につなげるかは、読者次第である。

この本を読むことで・・・

社会人、あるいはこれから社会人になろうとする人であれば、若者ホームレスにならないためのヒントを得ることができるかもしれない。

子を持つ親や教育者であれば、子供が若者ホームレスの負のサイクルに乗らないようにするためのヒントを見つけることができるかもしれない。

政治家であれば、若者ホームレスを救うための現行のセーフティーネットの何が機能して、何が機能していないのか、あるいは、実効性あるセーフティーネットはどうあるべきか、といったことに対するヒントを得ることができるかもしれない。

ホームレスを支援している(あるいはしたいと考えている)人たちであれば、数ある支援の中で、どのような方法に効果を期待できるかについて知ることができるかもしれない。

ホームレスの人であれば、ホームレスから抜け出せるヒントを得ることができるかもしれない。ただし、本書では抜け出せた成功事例について、数多くは触れていないので注意が必要だ。


さて、私は・・・と言うと、子を持つ親として、子供がもう少し成長して大人になったら、本人に「この本を読め!」って言うかもしれないな、と思った。また、その頃は世の中がどう変わっているかわからないが・・・。

みなさんは、いかがでしょうか。


【関連書籍】
ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~(今野晴貴著)


===ファーストジョブ(最初の仕事)の喪失(2013年3月24日追記)===
日経新聞2013年3月24日朝刊に、次のようなことが載っていた。

『”日本でもファーストジョブの喪失は深刻な問題になる”。一橋大学准教授の神林龍は危惧する。終身雇用を旨としてきた日本企業が人材を育成する余裕を失いつつあるように見えるからだ。従来に比べ転職が広がり、外国人の採用にもためらいは薄れている。いったん就職に失敗した場合、若者を待つ境遇は米国同様に厳しい。職業訓練などの公的支援が整っていないのは共通している。1桁台の若年失業率など見かけの数字を欧州と比べ、安心していては将来に禍根を残す。』

記事は、日本だけでなく米国におけるファーストジョブ喪失の問題を取り上げたものだが、ますます若者への風当たりは強くなっているようだ・・・。

2012年8月2日木曜日

感動した!

「プロフェッショナル仕事の流儀」が、大好きでいつも見ている。自分もいつか出れるくらい立派な人間になりたい、なんて恐れ多いことまで考えるほどだ。

さて、2012年7月16日(月)に放映された”プロフェッショナル” 菊池省三先生には心底、感動した。先日読んだハーバード大学の北川智子先生にも関心させられたが、それ以上だ。

何が人を伸ばすのか、悟っている感がすごく伝わってくる。ディベート、人を褒めること、自分たちに考えさせること・・・まさにアクティブティーチングの極みだ。

ところで、小学校生活の中に、わたしが今経験するような人材育成の課題が、そっくりそのままつまっているのだ・・・という事実にもびっくりした。何が、人のやる気を削ぎ、何が人のやる気を喚起させるのか・・・。

菊池省三先生に惚れた。そして、プロフェッショナル仕事の流儀という番組にも、更に惚れた。

書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...