2012年8月19日日曜日

書評: 子どもの心のコーチング

単純な私・・・。

ハーバード大学で大活躍の北川智子先生(「ハーバード白熱日本史教室」より)や、全国の先生から尊敬される菊池省三先生(「プロフェッショナル仕事の流儀」より)に大いに触発された。

「自分はコンサルタントだし、何より二児の父親だし、”人を教える技術”について、もう少し磨きをかけたい。よし、まずは本で学習しよう!!」

というわけで、”コーチング”というキーワードを頼りに、Amazonで適当に見つけた書籍を3冊ほどまとめ買いをした。
早速一冊目を読み終えたので、本日はこの本について紹介をしたいと思う。


子どもの心のコーチング―一人で考え、一人でできる子の育て方
出版社: PHP文庫
著者: 菅原裕子







■自分の子育てを見つめなおすきっかけを与えてくれる本

本書は、”子を持つ親達”に向けた、よりよい子育て方法についての指南書だ。

では、”子を持つ親達”は、この本から何を得ることができるのか? それを知るには、次の質問※に「はい」「いいえ」で答えてみてもらうのがいいだろう。

※本からの抜粋ですが、ネタバレではありません。

①子どもはよく笑う
②毎日が楽しそうだ
③目が輝いている
④友達とよく遊ぶ
⑤親によく甘える
⑥いろいろなモノゴトに関心を示す
⑦子どもなりの自己主張をする
⑧話すときは視線を合わせる
⑨親の過剰な干渉や介入をいやがる
⑩機嫌の回復が早い

7歳以上の子どもにはさらに次の質問を追加されたし
⑪朝自分で起きられる
⑫学校などでの出来事をいろいろと話してくれる
⑬悩みがあるときは打ち明けてくれる
⑭親の意見を求めてくる
⑮我慢できるが、我慢しすぎるということはない

みなさんは、いくつの「はい」がついただろうか。

より多くの「はい」がつくほうがいいわけだが、本書は、「はい」が多かった人には「自分の子育てに自信を持つきっかけ」を与えてくれるだろう。「いいえ」が多かった人には「子育ての悩み解決のヒント」を与えてくれるだろう。そして、そのどちらでもない人には「自分の子育てに課題を見つけるきっかけ」を与えてくれるだろう。

私の例で言えば、実は、子育てにそんなに課題を感じていなかった(じゃー、読むなよ・・・と言われそうだ・・・)。

が、著者の「子育てにおいて、”褒めるのはいいことだ”という誤解がある」という指摘に、自分にも思い当たるフシがあった。「明日から、少し子どもへの接し方を修正してみよう」・・・そんなふうに思った次第である。

■子のコーチング方法をコーチング

この本最大の特徴は、そのノウハウもさることながら、著者の読者に対する指南の仕方にある。さすが、コーチングのプロだ。タイトルには「子どもの心のコーチング」とあるが、本の内容は、まさに親のコーチングそのものである。つまり、子育ての方法について、一方的に読者に「こうしたほうがいい」とか「こうすべき」という、解を示すのではなく、「こういうふうにされたときの子どもの気持ちを目をつぶって一度考えてみて下さい。ね、子どもの立場にしたら、そんな言われ方をしたら、嫌でしょう?」などと、読者自身に、1つ1つ考えさせることによって、あるべき方向に導いてくれる。

たとえば、次のような感じだ(本書「あなたの”きき耳チェック”」より抜粋)。

(自分から行きたいと言って通いだしたピアノレッスン・・・。)そして、三回目のレッスンから帰るなり、子どもはこう言いました。

「ピアノやめる。もう行かない。」

この瞬間、あなたは子どもになんというでしょうか?メモ用紙とペンをとって、そのセリフを書いて下さい・・・。

■自分なりに咀嚼して子育てに活用したい

素晴らしい本だと思うが、一点だけ気になったことがある。それは「そもそも子育てに正解ってあるのだろうか?」ということだ。

著者が自ら子育てで苦労をし、さらに数多くの課題を抱える親達と接してきた結果、その中で「これだ!」と確信できたものを紹介してくれているわけだから、その多くは間違いなく信じるに足ると思う。しかし、だからといってその全てが正解か、というと、そうではないだろう、と思う。

たとえば、著者の紹介してくれた体験談に「いくら言っても片付けをしない小学校四年生の娘に、本人自らが必要と感じて片付けるようになるまで、うるさく言うのを止めた。そうしたら、中学校二年生になって、自発的に片付け始めた。」というものがある。

しかし、この方法が当てはまらない子どももいようかと思う。先日、ガイアの夜明けで、”全く片付けのできない夫婦”が紹介されていたが、最近、片付けができない人たちが増えているのだと言う。うるさく言っても反発するだけ・・・という著者の主張には賛成だが、その解決方法には、場合によっては放任するよりも、上手く機能する方法があるような気がした。

何が言いたいのかというと著者を非難するつまりは全くなく、つまり、本の読み方が大事だよ、ということだ。現状、子育てが著者の指摘どおりになっていないからと言って、何でもかんでも・・・そう、著者の論拠に納得できないものまでも・・・両手放しで受け入れる必要はないし、そうすべきではないだろう、ということだ。

■立ち止まって、ぜひ整理を

いずれにせよ、自分(親)自身の行動・・・ましてや子育てのあり方が客観的に見てどうか、なんて考える機会は、なかなかないと思う。少なくとも私はなかった。

きっと「あー、こんなふうにしてやればよかった・・・」と、子どもが大人になってから気づくことになるのだろう。

今の子育てに問題はないか、より良くできる点がないか、一度、立ち止まって整理してみてもいいんじゃないだろうか。


【”子を育てる”という観点での類書】
書評: 40歳の教科書 ~親が子どものためにできること~

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