読み終わってそんな感想を持った。
この1冊ですべてわかるコーチングの基本
著者:コーチ・エイ 監修:鈴木義幸
出版社:日本実業出版社
発行年月日:2009年9月1日
年齢(もうすぐ40歳)のせいだろうか。最近、やたらと”人に教える”ことが、自分の中で気になっていて、3冊まとめ買いしたのだが、今回の書評はその2冊目にあたる。
■最初に読むべき1冊
みなさんは「コーチング」が何かお分かりだろうか?
他力ではなく、自力解決できるようにするためのサポート(プロセス)のことだ。つまり、サポート(コーチング)する側が、サポートされる(コーチングを受ける)側自身に、積極的にモノゴトを考えさせることによって、問題解決を図るプロセスのことだ。
たとえば、子供が算数ドリルで悩んでいたとして、親が、問題の回答を教えてしまうのは単なるヘルプ。「もう一回問題文を読んでご覧」とか「まずはここまでを考えてご覧」などと声をかけて、本人が本人の力で解を導き出させるようにするのがコーチングだ。
興味深いのは、コーチングする側(コーチ)自身も、ほとんどの場合、問題の答えを知らないということだ。コーチは問題の答えは知らないかもしれないが、問題を解く方法は知っている・・・問題の解き方を伝授する・・・コーチングとは、さしずめそんなところだろうか。
さて、本書は、こうしたコーチングについて、その”いろは”に始まり、そのやり方、実施手順やポイントについて解説した本である。「みなさんは”コーチング”が何かお分かりだろうか?」なんて、偉そうなことを言ってしまったが、要は、この本を読んだから聞けたことだ(汗)
第1章・・・コーチングとは何か
第2章・・・コーチのもつべき視点
第3章・・・コーチングの3原則
第4章・・・コーチング・プロセス
第5章・・・コーチングのスキルと実践例
第6章・・・組織へのコーチング
■読み手が最も理解しやすい形
本書最大の特徴は、なんといってもケーススタディだ。紹介されているケースの量と質・・・ともに読者を満足させるに十分なレベルだ。
ケースを紹介しているのはおもに第5章と6章だが、全260ページ中、その半分にあたる約130頁近くがこれに割かれている。
紹介されている事例は、明らかに書き手の実経験に基づくものであり(当然、ある程度の創作はあるだろうが、描写が詳しいので、とても作り話だとは思えない)、かつ、その内容が丁寧に描写されている。かの有名な「ザ・ゴール」(エリヤフ・ゴールドラット著)ほどではないにせよ、ストーリー性が強く、その場(コーチングをしている場)にいるかのような感覚で学ぶことができる(下記抜粋参照)。
コーチは、Aさんの声の力強さ、口調、顔の表情からも、コーチングへのコミットメントが高まってきたのを感じつつ、質問をしていきます。
コーチ「では、仕込み時期のこの半年で、どんなものを手にしたいですか?」
Aさん「部下の創造性やモチベーションを最大限に引き出せるようなコミュニケーション力ですね。いいクルマ作りをできる場づくりです。」
コーチ「それは現在のAさんのコミュニケーション力と比較して、どんなコミュニケーションだと言えるのでしょうか?」
Aさん「”どうせこいつはこうだろう”と決めつけて話すのではなく、白紙からいろいろなアイデアと創造性を引き出してこれるような柔軟なコミュニケーションですね」
コーチ「ひと言でいうと、どんなコミュニケーションですか?」
Aさん「創造的コミュニケーション」・・・
(本書より抜粋)
著者側の意図としては、本書を通じて「実際にコーチングを受けてみたい!」と思って欲しいのだろうが「良くわからないもの(コーチング)にお金を払うのはちょっと・・・」という読者の不安を取り除いてくれるという意味では、ある程度成功しているのではないだろうか。
■3回読みたくなる理由
さて、この本を読んで、わたしはなぜ「あと2回は読みたい」と思ったのか。この本に色々なエッセンスがつまっているからだ。これも優れたケーススタディがなせる技なのかもしれない。
1回目は、コーチングは実際には、どんなふうに進めていくものなのだろう?という観点で読んだ。
次(2回目)は、コーチはどういう意図でこのタイミングでこんな質問を投げかけたんだろう?自分が同じような質問を投げかけるにはどういうプロセスを踏めばいいのか?という観点で読むだろう。そして最後(3回目)はおそらく、自分の身の回りのケースに当てはめてみるとするとどんな感じになるだろうか?という観点で読む、だろう。
「この1冊ですべてわかるコーチングの基本」とは良く言ったものだ。まさに納得のタイトルだ。
【類書】
・書評:The Goal(ザ・ゴール)
・書評:It's Not Luck(ザ・ゴール2)
・書評:子どもの心のコーチング
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