日経ビジネス2013年9月30日号の特集はビッグデータ。以下、特集に関係ある・なしに関わらず気になった記事をピックアップ。
『(東京メトロの)2013年3月期の売上高営業利益率は23%。鉄道会社ではトップクラスだ。高収益体質で知られるコマツや「ユニクロ」のファーストリテイリングを上回る。』(東京メトロ、再燃する「上場」期待より)
感想)
営業利益率23%って・・・とんでもなく高数値だ。上場企業の利益率を調べてみたら、たとえばソフトバンクが22.1%、漢方薬で有名なツムラで21.9%程度だ。23%という数字の高さがうかがい知れる。交通手段はいってみれば生活必需品なわけだし、よっぽどのことがない限り、この数字は続くわけだ。そこまで競争原理の働かない市場ゆえ、動機は薄いだろうが、逆に、もっとサービス向上にお金をかけられる・・・いや、かけるべきではないだろうか。ちなみに、上には上がいるものだ。上場企業の営業利益率トップは極東証券の57.4%、国際帝石の57%、グリーが52.3%、カカクコムが49.9%、キーエンスが46.1%・・・。経常で見たらもっと変わるだろうが、それにしても凄い。
『清川を支えたのは、古原からアドバイスを受けて聴講したグーグルのエリック・シュミットの言葉だ。ベンチャーの誕生を歓迎するシリコンバレーですら、90%の人が新しいものに反対する』(清川忠康 めがね販売の常識を覆すより)
感想)
企業アイデアが多くの反対されたら、逆にそれはチャンスだと考えるべき・・・とは良く言ったものだ。清川氏の記事を読んでいると、この言葉を地でいく印象だ。起業を目指す人にとって、とても重要なケーススタディになると思う。
『ハウステンボスの抱える問題は3つありました。1つ目は規模の大きさです。東京ディズニーランド(TDL)と同じくらいの投資をしていましたが、お客さんが来る地域から計算すると、TDLには関東の2000万人者市場規模があるのに対し、ハウステンボスは福岡まで入れても200万人。10分の1ですよ。それなのに、TDLの1.6倍の敷地面積をもつこと自体が間違いでした・・・(中略)・・・あとはイベント力です・・・(中略)・・・イベントはオンリーワンかナンバーワンの企画をやるしかありません。いろんなイベントを仕掛けて、それでお客さんを増やしただけ。あんまり難しくないから話したくないんだけど』(澤田 秀雄エイチ・アイ・エス会長、ハウステンボス社長 アジア大航海時代が来る より)
感想)
「ハウステンボスは、色々な人が努力してもダメだったのだから、今更エイチアイエスが頑張っても難しそう。」・・・くらいにしか思っていなかったが、澤田社長の言を聞くと明瞭完結。まさにこれが”現状にもとづく有効な戦略”ってやつと言えるのだろう。こうした戦略論が、なぜ、エイチ・アイ・エス以前に生まれなかったのか。澤田社長が圧倒的に有能だから、ということなのか。前の組織が硬直化していたからなのか。その理由をぜひ知りたかった。
『たった99ドル(約9900円)であなたの遺伝情報を解析します」今年8月、全米でこんなテレビコマーシャルが始まった。提供するのは遺伝子解析を手がける米シリコンバレーのベンチャー、23andMe(23アンド・ミー)だ。検査キットに唾液を入れて送ると、4~6週間で遺伝病のリスクなどの分析結果が分かる』(遺伝子解析が激安に より)
感想)
ただ単にWow(わぁお)という気持ち。法的問題がネックで日本ではまだこうしたサービスが行われていないらしいが、個人的なリスク管理の一環として、始まったら飛びついちゃうかも。この商売を始めたら、その会社はとんでもなく儲かるだろうなー。
20代後半から、今日にいたるまで毎日を全速力で駆け抜けてきました。疾走するスピードは毎年加速度的に増えています。 そんな自分の足跡を残したい、考えを整理したい、自分の学びの場としたい・・・こういった思いからこのブログを立ち上げました。とりわけ、読んだ本や雑誌、観た映画、その他遭遇した事件・・・などなど、思いの丈を吐露しています。
2013年9月29日日曜日
書評: 静かなるイノベーション
静かなるイノベーション ~私が世界の社会起業家たちに学んだこと~
著者: ビバリー・シュワルツ(藤崎香里 訳)
出版社: 英治出版
■What's this book about?(何の本だろう?)
社会人または、これから社会人になろうとする者に、人生の新たな選択肢を示してくれる本だ。その選択肢とは"社会起業家(ソーシャルアントレナーシップ)"だ。
社会企業家とは、本書の言葉を借りれば、公正を重視し重要な社会変革を起こすためにシステムを破壊してつくりかえる人々のことだ。一瞬、「政治家のことか?」とも思うが、”起業家”という言葉がつくことからも分かるように、もっと簡単に言えば、世の中をより良くするための活動をビジネスとして成り立たせてしまおうという人々のことだ。お金が絡めば勢いがつくし、それによって半永久的な活動となりやすいからだ。従来、「世の中に役立つことをしたい」という人は、活動家や提唱者、医者や人権弁護士、教授、研究所、学者などになるという道を選んできた。そこに現実的な選択肢が加わった。それが社会起業家なのである。ちなみに、わたしがMBAを習得した2005年頃には既に”社会起業家”という言葉が登場していたが、当時は今ほどの注目度はなかった。ところが2008年~9年頃から「先輩が行った大学院では、社会起業家についてどんな学びを得られるのか・・・教えてください」と頻繁に聞かれるようになった。社会起業家は、まさにトレンドといえるのだろう。
とはいえ、社会起業家が何であるのか、まだイメージがわきづらい。まして、どうやったらなれるのか、わからない。著者もまさにその一人だったようである。そんな著者が、世界最大の社会企業ネットワークを持つアショカグループの存在を知った。そこで、社会に大きな変革をもたらすことに成功している人たちがたくさんいることを目の当たりにしたのである。彼らを突き動かしたモチベーションは何なのか。そこに共通点はないのか。本書は、世界中で大きな成功を収めたアショカフェロー18人に直接インタビューを行った結果がまとめられている。
■What's so good about it?(この本の何がいいのか?)
社会起業家をテーマにした本は数多くある。Amazon.co.jpで検索したら、700件以上もヒットがあった。そんな中で本書が特徴的なのは、世界最大の社会企業ネットワークアショカグループで大きな成功を遂げているメンバー達に直接インタビューを敢行した結果が反映されている点だろう。ドイツで人々が所有する電力会社を作り上げたウアズラ・スラーデク、グアテマラの農村への物流革命をもたらす小規模委託販売モデルを作り上げたグレッグ・ヴァン・カーク、新しい仕事を創出することでペルーの町を美しくする仕組みを作り上げたアルビナイ・ルイス・・・など、文字通り、世界中で成功した人たちの生きた事例を読むことができる。
そして、もう1つ特徴的なのは、本書の構成だ。事例を5種類に分類し、それをそのまま章立てとしている。具体的には「時代遅れの考え方をつくりかえる」「市場の力学を変える」「市場の力で社会的価値をつくる」「完全な市民権を追求する」「共感力を育む」という5つだ。この分類は、読者が「どんな社会起業家になれるか?」を考える際のヒントになる。社会起業家に共通するものとして、身近な生活に感じた不満がきっかけになっていることが多いと本書は指摘するが、たとえば私に置き換えて考えてみると「通勤電車の混雑具合、孤独死、自殺・・・」などがパッと思いつく。ではそれらがこれら5つの章のどれに当てはまるのか・・・それを見つけてページを開くと、そこには具体的な事例が載っている。こんな感じでヒントになるのだ。
それと意外に気がつかないことだが、敢闘賞だと思うのが翻訳だ。和訳された文章というものは一般的に堅苦しく、どこか、ぎこちがない。内容が内容だけに、読みづらくなるのが常であるが、本書の本の文章はスムーズで、読みやすかった。
■To whom do you recommend this book? (で、誰にお勧めの本なのか?)
いいことばかり書き連ねたが、留意点も挙げておきたい。別の視点から見れば、社会起業家の事例が載っているだけの本・・・と言えなくもない。(どんな本を読むときにも当てはまることだが、本書を読むときは特に)何の意識もせずただボーッと読んでいると、頭には何も残らない可能性がある。一回目は軽く流し読みするとして、二回目からは、自らのケースを当てはめて読むといいだろう。自分が感じている社会の不満などを列挙してみて、それが本書のどの章立てに当てはまるかを考え、自分ができる身近なことってなんだろうかと考えてみる・・・。そうすると、本書が生きてくる。
というわけで、人生に選択肢を増やしたい人、社会起業家に強い興味がある人にはぜひお勧めしたい。また、会社の中に起業家マインドを醸成したいという人・・・会社で本書を配るというのもアリかもしれない。
著者: ビバリー・シュワルツ(藤崎香里 訳)
出版社: 英治出版
■What's this book about?(何の本だろう?)
社会人または、これから社会人になろうとする者に、人生の新たな選択肢を示してくれる本だ。その選択肢とは"社会起業家(ソーシャルアントレナーシップ)"だ。
社会企業家とは、本書の言葉を借りれば、公正を重視し重要な社会変革を起こすためにシステムを破壊してつくりかえる人々のことだ。一瞬、「政治家のことか?」とも思うが、”起業家”という言葉がつくことからも分かるように、もっと簡単に言えば、世の中をより良くするための活動をビジネスとして成り立たせてしまおうという人々のことだ。お金が絡めば勢いがつくし、それによって半永久的な活動となりやすいからだ。従来、「世の中に役立つことをしたい」という人は、活動家や提唱者、医者や人権弁護士、教授、研究所、学者などになるという道を選んできた。そこに現実的な選択肢が加わった。それが社会起業家なのである。ちなみに、わたしがMBAを習得した2005年頃には既に”社会起業家”という言葉が登場していたが、当時は今ほどの注目度はなかった。ところが2008年~9年頃から「先輩が行った大学院では、社会起業家についてどんな学びを得られるのか・・・教えてください」と頻繁に聞かれるようになった。社会起業家は、まさにトレンドといえるのだろう。
とはいえ、社会起業家が何であるのか、まだイメージがわきづらい。まして、どうやったらなれるのか、わからない。著者もまさにその一人だったようである。そんな著者が、世界最大の社会企業ネットワークを持つアショカグループの存在を知った。そこで、社会に大きな変革をもたらすことに成功している人たちがたくさんいることを目の当たりにしたのである。彼らを突き動かしたモチベーションは何なのか。そこに共通点はないのか。本書は、世界中で大きな成功を収めたアショカフェロー18人に直接インタビューを行った結果がまとめられている。
■What's so good about it?(この本の何がいいのか?)
社会起業家をテーマにした本は数多くある。Amazon.co.jpで検索したら、700件以上もヒットがあった。そんな中で本書が特徴的なのは、世界最大の社会企業ネットワークアショカグループで大きな成功を遂げているメンバー達に直接インタビューを敢行した結果が反映されている点だろう。ドイツで人々が所有する電力会社を作り上げたウアズラ・スラーデク、グアテマラの農村への物流革命をもたらす小規模委託販売モデルを作り上げたグレッグ・ヴァン・カーク、新しい仕事を創出することでペルーの町を美しくする仕組みを作り上げたアルビナイ・ルイス・・・など、文字通り、世界中で成功した人たちの生きた事例を読むことができる。
そして、もう1つ特徴的なのは、本書の構成だ。事例を5種類に分類し、それをそのまま章立てとしている。具体的には「時代遅れの考え方をつくりかえる」「市場の力学を変える」「市場の力で社会的価値をつくる」「完全な市民権を追求する」「共感力を育む」という5つだ。この分類は、読者が「どんな社会起業家になれるか?」を考える際のヒントになる。社会起業家に共通するものとして、身近な生活に感じた不満がきっかけになっていることが多いと本書は指摘するが、たとえば私に置き換えて考えてみると「通勤電車の混雑具合、孤独死、自殺・・・」などがパッと思いつく。ではそれらがこれら5つの章のどれに当てはまるのか・・・それを見つけてページを開くと、そこには具体的な事例が載っている。こんな感じでヒントになるのだ。
それと意外に気がつかないことだが、敢闘賞だと思うのが翻訳だ。和訳された文章というものは一般的に堅苦しく、どこか、ぎこちがない。内容が内容だけに、読みづらくなるのが常であるが、本書の本の文章はスムーズで、読みやすかった。
■To whom do you recommend this book? (で、誰にお勧めの本なのか?)
いいことばかり書き連ねたが、留意点も挙げておきたい。別の視点から見れば、社会起業家の事例が載っているだけの本・・・と言えなくもない。(どんな本を読むときにも当てはまることだが、本書を読むときは特に)何の意識もせずただボーッと読んでいると、頭には何も残らない可能性がある。一回目は軽く流し読みするとして、二回目からは、自らのケースを当てはめて読むといいだろう。自分が感じている社会の不満などを列挙してみて、それが本書のどの章立てに当てはまるかを考え、自分ができる身近なことってなんだろうかと考えてみる・・・。そうすると、本書が生きてくる。
というわけで、人生に選択肢を増やしたい人、社会起業家に強い興味がある人にはぜひお勧めしたい。また、会社の中に起業家マインドを醸成したいという人・・・会社で本書を配るというのもアリかもしれない。
2013年9月21日土曜日
雑誌「韓国を叱る」を読んで
今回は月刊VOICE2013年10月号から。印象に残った言葉、文章を、以下にクリッピング。
『(高橋)是清という人物はものすごい数の失敗をして、そのたびに学びを得て乗り越えています。』
(高橋是清に学ぶ「命懸け」の出口戦略 幸田真音より)
感想)
高橋是清・・・昔、学校で習ったけど、実はほとんど覚えていない。この記事を読んで、40歳にして突如、この人物に強い興味がわいた。ちなみに、記事中に出ていた「明治五年に太陰暦から太陽暦に変更した理由」・・・っていうのが、なんか突拍子なくて面食らった。ちなみに、その理由とは「それによって月数が一つ減ることになり、役人の人件費(月給制)を一ヶ月分削減できたから」だそうΣ(゚д゚;)
『いま、現代自動車の社員の平均年棒が約900万円ですね。トヨタより多く、生産性はトヨタよりずっと落ちるのに、8月20日から二日間、賃上げ要求のストに入った。このあたりがおそらく韓国経済のターニングポイントだと思う。』
(中国属国化で自滅する韓国 屋山太郎&室谷克実より)
『サムスン電子の利益は、あまりにも「スマートフォン依存」になってしまっている・・・(中略)・・・サムスン電子の売り上げ(利益ではない)が韓国のGDPに締める割合は、20%に達しているのだ。現在の韓国は、「サムスン電子が販売するスマートフォンの売り上げ」に国民経済が左右されてしまう、異様な構造を持つに至ったのだ。』
(サムスン共和国の崩壊が始まった 三橋貴明より)
感想)
ぶっちゃけ感じたのは「他人の芝は青く見える」ということ。もともと、韓国はパッと見、勢いある国というイメージが強く、(今でこそ勢いがでてきたがつい最近まで)日本は、勢いがない国というイメージが強かった。しかし、ふたを開けてみれば、どこの国もそれなりに大きな問題を抱えているんだな、と。いや、日本と韓国のケースでは、むしろ、韓国の方が大変そうですらある。韓国は、日本以上に、財閥がものすごく力を持ち、限られたごく一部のものばかりが得をする社会になっている・・・といいつつ、その代表格であるサムスンが資本の過半数を外国勢に握られている・・・わたしが朴大統領だったら、何ができるんだろう。
『政治犯の場合は(日本・韓国間の)引き渡し対象から除外されるわけだが、「ソウル高裁は「放火犯」にすぎない劉容疑者について、”靖国神社をたんなる宗教施設でなく、過去の侵略戦争を正当化する政治秩序の象徴とみなした犯行で、政治的大義を実現するために行われた」と指摘し、劉容疑者を「政治犯」と認定したのである。』
(サムスン共和国の崩壊が始まった 三橋貴明より)
感想)
感情論を抜きにして、放火はダメだと思う。明らかに犯罪。人の命を奪いかねない。政治的解決手段として人命を奪う行為を容認するのは、どう差し引いても納得がいかない(ちなみに、私は韓国人が好きだし、友達もいっぱいおります・・・)。
『私は元中国人だから知っていますけど、ある意味で中国ほど韓国を嫌う国はありません。中国人の日本に対する「嫌い」という感情と、韓国に対する「嫌い」という感情はまったく異なります。日本への「嫌い」は過去の「歴史問題」いわゆる「軍国主義」に対するもので、抽象的なものです。一方で、韓国に対する「嫌い」はより具体的なモノで、はっきりいってしまえば、韓国人が「嫌い」だということです。中国の半日には、日本に対するある種の尊敬やコンプレックスも含んだ複雑なところがある。一方で中国は朝鮮半島国家を完全に見下しています。』
(中国も呆れる熱狂ファシズム 呉善花&石平 より)
感想)
全く知らない事実に気づかされた・・・ということでとりあげた。本当なのだろうか。今度、中国の友達にあったら聞いてみたい。世の中のこと、隣国のこと、理解できているようで、実は本当に何も知らない自分に気づかされる。
『消費税引き上げの代償として財政出動するのは最悪で、なぜなら、自民党議員に象徴されるように、財政支出にたかりたい利害関係者はこのチャンスを待っているからだ。ほとんどの支出は無駄なので、それなら減税をした方がよい。消費税引き上げ率を抑え、消費者にカネをもたせるべきだろう。政府が無理をして捻出する財政支出で生じる需要よりも、質の高い需要となるからだ。』
(消費増税延期論は単なるポピュリズム 小幡績 より)
財政出動は最悪・・・というこの記事の理由には賛同したい。東日本大震災の復興増税の流用事件を忘れてはいけない。こうした財政出動により落ちてくるお金を自分たちのところにひきよせるのが得意なシロアリさんたちがたくさんいる。それが日本の景気刺激にどうつながるのか。まぁ、1万歩譲歩したとして、自堕落なシロアリさんたちがその金を得たとして、国内でお金をしっかりと使ってくれれば(最終的には他のひたちにお金がまわり・・・良いのだろうが、それが海外旅行などを通じて、日本の外に流れているばかりだとしたら、あるいはひたすら貯金になっているのだとしたら・・・それはもう・・・悲しくて悲しくて・・・。
『(高橋)是清という人物はものすごい数の失敗をして、そのたびに学びを得て乗り越えています。』
(高橋是清に学ぶ「命懸け」の出口戦略 幸田真音より)
感想)
高橋是清・・・昔、学校で習ったけど、実はほとんど覚えていない。この記事を読んで、40歳にして突如、この人物に強い興味がわいた。ちなみに、記事中に出ていた「明治五年に太陰暦から太陽暦に変更した理由」・・・っていうのが、なんか突拍子なくて面食らった。ちなみに、その理由とは「それによって月数が一つ減ることになり、役人の人件費(月給制)を一ヶ月分削減できたから」だそうΣ(゚д゚;)
『いま、現代自動車の社員の平均年棒が約900万円ですね。トヨタより多く、生産性はトヨタよりずっと落ちるのに、8月20日から二日間、賃上げ要求のストに入った。このあたりがおそらく韓国経済のターニングポイントだと思う。』
(中国属国化で自滅する韓国 屋山太郎&室谷克実より)
『サムスン電子の利益は、あまりにも「スマートフォン依存」になってしまっている・・・(中略)・・・サムスン電子の売り上げ(利益ではない)が韓国のGDPに締める割合は、20%に達しているのだ。現在の韓国は、「サムスン電子が販売するスマートフォンの売り上げ」に国民経済が左右されてしまう、異様な構造を持つに至ったのだ。』
(サムスン共和国の崩壊が始まった 三橋貴明より)
感想)
ぶっちゃけ感じたのは「他人の芝は青く見える」ということ。もともと、韓国はパッと見、勢いある国というイメージが強く、(今でこそ勢いがでてきたがつい最近まで)日本は、勢いがない国というイメージが強かった。しかし、ふたを開けてみれば、どこの国もそれなりに大きな問題を抱えているんだな、と。いや、日本と韓国のケースでは、むしろ、韓国の方が大変そうですらある。韓国は、日本以上に、財閥がものすごく力を持ち、限られたごく一部のものばかりが得をする社会になっている・・・といいつつ、その代表格であるサムスンが資本の過半数を外国勢に握られている・・・わたしが朴大統領だったら、何ができるんだろう。
『政治犯の場合は(日本・韓国間の)引き渡し対象から除外されるわけだが、「ソウル高裁は「放火犯」にすぎない劉容疑者について、”靖国神社をたんなる宗教施設でなく、過去の侵略戦争を正当化する政治秩序の象徴とみなした犯行で、政治的大義を実現するために行われた」と指摘し、劉容疑者を「政治犯」と認定したのである。』
(サムスン共和国の崩壊が始まった 三橋貴明より)
感想)
感情論を抜きにして、放火はダメだと思う。明らかに犯罪。人の命を奪いかねない。政治的解決手段として人命を奪う行為を容認するのは、どう差し引いても納得がいかない(ちなみに、私は韓国人が好きだし、友達もいっぱいおります・・・)。
『私は元中国人だから知っていますけど、ある意味で中国ほど韓国を嫌う国はありません。中国人の日本に対する「嫌い」という感情と、韓国に対する「嫌い」という感情はまったく異なります。日本への「嫌い」は過去の「歴史問題」いわゆる「軍国主義」に対するもので、抽象的なものです。一方で、韓国に対する「嫌い」はより具体的なモノで、はっきりいってしまえば、韓国人が「嫌い」だということです。中国の半日には、日本に対するある種の尊敬やコンプレックスも含んだ複雑なところがある。一方で中国は朝鮮半島国家を完全に見下しています。』
(中国も呆れる熱狂ファシズム 呉善花&石平 より)
感想)
全く知らない事実に気づかされた・・・ということでとりあげた。本当なのだろうか。今度、中国の友達にあったら聞いてみたい。世の中のこと、隣国のこと、理解できているようで、実は本当に何も知らない自分に気づかされる。
『消費税引き上げの代償として財政出動するのは最悪で、なぜなら、自民党議員に象徴されるように、財政支出にたかりたい利害関係者はこのチャンスを待っているからだ。ほとんどの支出は無駄なので、それなら減税をした方がよい。消費税引き上げ率を抑え、消費者にカネをもたせるべきだろう。政府が無理をして捻出する財政支出で生じる需要よりも、質の高い需要となるからだ。』
(消費増税延期論は単なるポピュリズム 小幡績 より)
財政出動は最悪・・・というこの記事の理由には賛同したい。東日本大震災の復興増税の流用事件を忘れてはいけない。こうした財政出動により落ちてくるお金を自分たちのところにひきよせるのが得意なシロアリさんたちがたくさんいる。それが日本の景気刺激にどうつながるのか。まぁ、1万歩譲歩したとして、自堕落なシロアリさんたちがその金を得たとして、国内でお金をしっかりと使ってくれれば(最終的には他のひたちにお金がまわり・・・良いのだろうが、それが海外旅行などを通じて、日本の外に流れているばかりだとしたら、あるいはひたすら貯金になっているのだとしたら・・・それはもう・・・悲しくて悲しくて・・・。
月刊VOICE2013年10月号 |
2013年9月16日月曜日
物流コストを引き上げる大きな要因
日経ビジネス2013年9月16日号の特集は「アベノリンピクスの行方」。ただし、やや後付け感が否めず、どちらかというと、もう1つの特集「物流」の記事が面白かった。
今、物流コストを引き上げる大きな要因となっているのが、再配達の増加だ。Amazonでは徹底した効率化でスピード物流に磨きをかけてきたが、唯一、コントロールしきれず流れが滞る場所がある。それが、購入者の受け取り時だ。(「独走アマゾンの執念 王者と組んだ王者」より)
感想)
Amazonや楽天が、当日配送エリアの拡大にしのぎを削るなど、物流スピードも来るところまで来たか・・・といった印象を持ったが、記事が指摘するように消費者の受け取りがボトルネックになるとは、確かにそのとおりだ。数年前からヤマトが、女性の配達ドライバーを増やすことで、警戒感の強い女性が居留守を使わずに荷物を速やかに受け取ってくれるような工夫をしている・・・という番組特集を観た記憶があるが、なるほど、ああしたことも、まさにこの指摘を克服するための取り組みだったというわけだ。記事では、解決策としてコンビニ受け取りを拡大させる・・・とあったが、コンビニもスペースは限られるし、さらなる工夫が求められるのだろう。
今、物流コストを引き上げる大きな要因となっているのが、再配達の増加だ。Amazonでは徹底した効率化でスピード物流に磨きをかけてきたが、唯一、コントロールしきれず流れが滞る場所がある。それが、購入者の受け取り時だ。(「独走アマゾンの執念 王者と組んだ王者」より)
感想)
Amazonや楽天が、当日配送エリアの拡大にしのぎを削るなど、物流スピードも来るところまで来たか・・・といった印象を持ったが、記事が指摘するように消費者の受け取りがボトルネックになるとは、確かにそのとおりだ。数年前からヤマトが、女性の配達ドライバーを増やすことで、警戒感の強い女性が居留守を使わずに荷物を速やかに受け取ってくれるような工夫をしている・・・という番組特集を観た記憶があるが、なるほど、ああしたことも、まさにこの指摘を克服するための取り組みだったというわけだ。記事では、解決策としてコンビニ受け取りを拡大させる・・・とあったが、コンビニもスペースは限られるし、さらなる工夫が求められるのだろう。
日経ビジネス2013年9月16日号 |
2013年9月7日土曜日
商品やサービスの背後にあるもの
日経ビジネス2013年9月9日号の特集は、「スクエア・インパクト」。スクエアとは、会社の名前だ。モバイル端末で、簡単に決済できる仕組みをゼロ円で導入できるサービスを提供している。創業者のジャック・ドーシーCEOは、ツイッターの発明者でもある。
ツイッターもスクエアも、コミュニケーションと顧客体験に焦点を当てているところで哲学が共通している。スクエアは単なる決済サービスを提供するだけの会社じゃない。ツイッターが140文字でコミュニケーションをシンプルにしたように、店舗と顧客のコミュニケーションを単純化するためにスクエアがある・・・(中略)・・・スクエアの「魂」はソフトウエアやサービスの背後にあるものであり、コピーできるものではない。(「特集 スクエア・インパクト 魂はコピーさせない」より)
感想)
ソフトウエアやサービスの背後にあるもの・・・この表現がすごく心に残った。ごく平凡に表現すれば、経営理念やミッションみたいなもの・・・もっと平凡に言えば、会社が目指す究極の目的・・・といえるだろうか。スクエア社ではこれが明確であり、かつ、しっかりと共有できている・・・それがジャック・ドーシーCEOの魂というものではなかろうか。ツイッターやモバイル決済はその魂から生まれたイチ手段に過ぎず、スクエア社に真に根付いている”魂”さえしっかりしていれば、顧客に受け入れられるモノを作れる・・・そういうことじゃないかと思った。
「世界中の情報を整理しアクセスできるようにするという」使命をかかげるGoogleにしても、「自由でみずみずしい発想を原動力に すばらしい夢と感動 ひととしての喜び そしてやすらぎを提供する」という使命をかかげるディズニーにしても、本当に強い会社は、その「背後にあるもの」を大事にしており、品質の高い経営理念やミッション・・・言わば、目に見えないひもで、経営とスタッフ一人一人をしっかりと結びつけているのだと感じた。我が社に足りないものだ。
僕は以前、ソニーにいました。・・・(中略)・・・「ソニーの持つ技術がこう入っているから他社に勝てる」というプレゼンが求められました。もちろんその視点の大事さは知っています。でも、差別化にこだわるが故に、ユーザの顔が見えなくなる場合もある。僕はユーザーが求めるものの中で、「良いものをいち早く出す」というシンプルなことがビジネスとして非常に意味があると思っています。(「失敗なくして運は来ない 森川亮 LINE社長インタビュー記事」より)
感想)
差別化と顧客ニーズ・・・結論から言えば、どちらも必要なわけだ。ただし優先順位のつけかたが問題なのだろう。そもそも差別化と顧客ニーズ・・・見てる方向が異なる。差別化は競合を意識したものだし、顧客ニーズは顧客を意識したものだ。差別化・・・すなわち、競合他社を意識し過ぎると、本当に顧客が欲しいものを見失う・・・そういうことなのだろう。
ツイッターもスクエアも、コミュニケーションと顧客体験に焦点を当てているところで哲学が共通している。スクエアは単なる決済サービスを提供するだけの会社じゃない。ツイッターが140文字でコミュニケーションをシンプルにしたように、店舗と顧客のコミュニケーションを単純化するためにスクエアがある・・・(中略)・・・スクエアの「魂」はソフトウエアやサービスの背後にあるものであり、コピーできるものではない。(「特集 スクエア・インパクト 魂はコピーさせない」より)
感想)
ソフトウエアやサービスの背後にあるもの・・・この表現がすごく心に残った。ごく平凡に表現すれば、経営理念やミッションみたいなもの・・・もっと平凡に言えば、会社が目指す究極の目的・・・といえるだろうか。スクエア社ではこれが明確であり、かつ、しっかりと共有できている・・・それがジャック・ドーシーCEOの魂というものではなかろうか。ツイッターやモバイル決済はその魂から生まれたイチ手段に過ぎず、スクエア社に真に根付いている”魂”さえしっかりしていれば、顧客に受け入れられるモノを作れる・・・そういうことじゃないかと思った。
「世界中の情報を整理しアクセスできるようにするという」使命をかかげるGoogleにしても、「自由でみずみずしい発想を原動力に すばらしい夢と感動 ひととしての喜び そしてやすらぎを提供する」という使命をかかげるディズニーにしても、本当に強い会社は、その「背後にあるもの」を大事にしており、品質の高い経営理念やミッション・・・言わば、目に見えないひもで、経営とスタッフ一人一人をしっかりと結びつけているのだと感じた。我が社に足りないものだ。
僕は以前、ソニーにいました。・・・(中略)・・・「ソニーの持つ技術がこう入っているから他社に勝てる」というプレゼンが求められました。もちろんその視点の大事さは知っています。でも、差別化にこだわるが故に、ユーザの顔が見えなくなる場合もある。僕はユーザーが求めるものの中で、「良いものをいち早く出す」というシンプルなことがビジネスとして非常に意味があると思っています。(「失敗なくして運は来ない 森川亮 LINE社長インタビュー記事」より)
感想)
差別化と顧客ニーズ・・・結論から言えば、どちらも必要なわけだ。ただし優先順位のつけかたが問題なのだろう。そもそも差別化と顧客ニーズ・・・見てる方向が異なる。差別化は競合を意識したものだし、顧客ニーズは顧客を意識したものだ。差別化・・・すなわち、競合他社を意識し過ぎると、本当に顧客が欲しいものを見失う・・・そういうことなのだろう。
日経ビジネス2013年9月9日号 |
===2013年10月14日追記(スクエアとユニクロの提携)===
2013年10月14日号の日経ビジネスに、ユニクロがスクエアに急接近の記事が・・・。店舗の機動力向上と小スペース化・・・が採用の理由とのこと。特に機動力向上という観点では、店員一人一人をレジ化することにより、混雑時にお客様が行列に並ぶストレスから解放できる=機会損失を減らせる・・・ということだが、さて、どれだけの効果があるのか、興味がわく。確かに並ばないのは有り難いが、それが理由で買い物をあきらめる・・・ってのはそんなにあるものなんだろうか。ぜひ、効果のほどを知りたい。
2013年9月6日金曜日
書評: 井沢元彦の学校では教えてくれない日本史の授業3 悪人英雄論
井沢元彦の学校では教えてくれない日本史の授業3 悪人英雄論
著者: 井沢元彦
発行元: PHP研究所
本書は、シリーズ3作目。何のシリーズかというと、歴史学という見地のみならず、宗教学や考古学、言語学など複合的かつ斬新な見地から、日本史をひもとき解説してくれるシリーズだ。シリーズ第3弾にあたる今作は、題して「悪人英雄論」。日本の歴史に登場する誰もが知る・・・英雄と謳われた人、悪人と謳われた人たち・・・を井沢元彦の流儀でぶったぎった本である。
具体的に登場人物の名を挙げると、天智天皇、持統天皇、中臣鎌足と藤原不比等、藤原仲麻呂と道鏡、平将門、源頼義と頼家、源頼朝と義経、後醍醐天皇、足利尊氏、足利義満、北条早雲、斎藤道三、毛利元就、である。この名前を見ただけでも、本書が日本史の中のどのあたりの時代をターゲットにしているか、自分が興味を持って読めそうな本か・・・ある程度、判断がつくだろう。
前々作、前作の書評でも触れたが、本書最大の特徴は、我々が学校で習ったときには点でしかなかった歴史上のイベントを、みごとに線でつなげてくれる点にある。この特徴は本書でも健在だ。具体例を挙げてみたい。以下は、学校の歴史教科書に登場する解説文だ。足利義満が造った金閣寺についての解説文だ。
『義満が京都北山の山荘(のちの鹿苑寺)にもうけた金閣は、1層(初層)が伝統的な寝殿造、2層が和洋の仏堂、3層が禅宗様式という建築様式で、この文化の特徴をよく示していることから、室町時代初期の文化を北山文化とよんでいる(日本史B 改訂版)三省堂122ページ)』
正直、年くった今読んでも、お世辞にも「おー、すごいっ!」とか「へぇー!」という感想は出ない。せいぜい「金閣寺ね。あー、あの黄金の。おれわりと好きだな・・・」くらいだろうか。学生時代、文意を理解することよりも、ただイベントを丸暗記しようとしていたことしか記憶にない。足利義満、金閣寺、北山文化・・・というキーワードを必死で暗記していたような気がする。
この解説が、井沢元彦にかかるとどうだろう。彼は次のようにひもとく。「なぜ、金閣寺を3層違う様式で建築したのか。そこには足利義満の隠れた想いが反映されている。1層の寝殿造りに住むのはもともと天皇だ・・・貴族だ・・・すなわち朝廷勢力だ、2層の仏堂は武家造りを表している・・・すなわち武士、3層の禅宗様式は中国人の禅僧・・・ただし、中国人とは中国で生まれたかどうかなどDNAのことではなく、中華の思想・・・世界の中心・・・という意味での中国(中心)人・・・のこと、つまり、これは足利義満自身を指す。つまり、金閣寺は、足利義満がすべてのトップに君臨したいという彼の野望の象徴そのものである。」・・・とこんな感じである。金閣寺の公式ホームページの歴史解説を読んでも、このような解説は出てこない。あくまでも井沢氏の持論にとどまる話なのかもしれないが、「3種類の様式で造られている。北山文化だ。足利義満が建てたんだ」と教えられるよりも、はるかに印象的で、ものすごく魅力的だ。もっと当時の歴史を知りたい・・・心が動かされる。これが、本書・・・いや、本シリーズの魅力なのだ。
一点、注意点を挙げるとすれば、読むのにややエネルギーがいる、という点だろうか。歴史に家系の話はつきものだ。天皇が登場するならなおさらである。また、昔の人の名前には似たものが多い。そこに輪をかけるように、もともと聞き覚えの薄い天皇や武将の名前も登場するので、著者のいわんとすることを正しく理解するために、何度もページをひっくり返して、家系図と解説を確認しながら読むことになる。だから、一気に読み進めるのが難しい。
一方で、そうしたハードルを乗り越えると・・・つまり、著者の趣旨を理解できると、ぱっと目の前が開けたような発見がある。ある意味、かめばかむほど味が出るスルメ・・・と同じ楽しみ方ができるとも言える。1回目は、”ちなみに・・・”的な解説文はどんどん読み飛ばし、理解できる範囲でさらっとながして楽しみ、2回目はさらに深く読み込む・・・そんな読み方もアリだと思う。実際、私もそうした口だ。
「悪人英雄論」と題しているものの、前作、前々作と類似した年代を切っているので、内容には重複する箇所もある。たとえば、「後醍醐天皇と楠木正成をつなげた思想とは」というテーマが第2弾に登場するが、これと同じ話は第3弾にも登場する。裏を返せば、シリーズのどの本から手をつけても、話を理解できるようになっている、とも言える。なので、歴史本に少しでも興味がある方は、まず自分が興味を持てそうな一冊を手にとり、もし、それでハマったなら、残りの2冊に手を出す・・・そんな本書・・・いや、本シリーズにはそのようなアプローチが最適だろう。
なお、勝手な推測だが、著者がときおりこきおろす歴史専門家・・・彼らからすると本書の内容には反論したいところもたくさんあるのではないかと思う。ただ、井沢元彦氏の解説は説得力がある。そして何より面白い。それは先述したとおりだ。賛否両論分かれるのだろうが、わたしは好奇心を刺激してくれる本書を強く推したい。
【面白い切り口で歴史をひもとくという観点での類書】
・学校では教えてくれない日本史の授業(井沢元彦著)
・学校では教えてくれない日本史の授業2 天皇編(井沢元彦著)
・地図から読む歴史(足利健亮著)
・戦国の軍隊(西股総生著)
著者: 井沢元彦
発行元: PHP研究所
■歴史の裏教科書 第3弾
本書は、シリーズ3作目。何のシリーズかというと、歴史学という見地のみならず、宗教学や考古学、言語学など複合的かつ斬新な見地から、日本史をひもとき解説してくれるシリーズだ。シリーズ第3弾にあたる今作は、題して「悪人英雄論」。日本の歴史に登場する誰もが知る・・・英雄と謳われた人、悪人と謳われた人たち・・・を井沢元彦の流儀でぶったぎった本である。
具体的に登場人物の名を挙げると、天智天皇、持統天皇、中臣鎌足と藤原不比等、藤原仲麻呂と道鏡、平将門、源頼義と頼家、源頼朝と義経、後醍醐天皇、足利尊氏、足利義満、北条早雲、斎藤道三、毛利元就、である。この名前を見ただけでも、本書が日本史の中のどのあたりの時代をターゲットにしているか、自分が興味を持って読めそうな本か・・・ある程度、判断がつくだろう。
■日本史の点と点を線にしてくれる魅力は相変わらず
前々作、前作の書評でも触れたが、本書最大の特徴は、我々が学校で習ったときには点でしかなかった歴史上のイベントを、みごとに線でつなげてくれる点にある。この特徴は本書でも健在だ。具体例を挙げてみたい。以下は、学校の歴史教科書に登場する解説文だ。足利義満が造った金閣寺についての解説文だ。
『義満が京都北山の山荘(のちの鹿苑寺)にもうけた金閣は、1層(初層)が伝統的な寝殿造、2層が和洋の仏堂、3層が禅宗様式という建築様式で、この文化の特徴をよく示していることから、室町時代初期の文化を北山文化とよんでいる(日本史B 改訂版)三省堂122ページ)』
正直、年くった今読んでも、お世辞にも「おー、すごいっ!」とか「へぇー!」という感想は出ない。せいぜい「金閣寺ね。あー、あの黄金の。おれわりと好きだな・・・」くらいだろうか。学生時代、文意を理解することよりも、ただイベントを丸暗記しようとしていたことしか記憶にない。足利義満、金閣寺、北山文化・・・というキーワードを必死で暗記していたような気がする。
この解説が、井沢元彦にかかるとどうだろう。彼は次のようにひもとく。「なぜ、金閣寺を3層違う様式で建築したのか。そこには足利義満の隠れた想いが反映されている。1層の寝殿造りに住むのはもともと天皇だ・・・貴族だ・・・すなわち朝廷勢力だ、2層の仏堂は武家造りを表している・・・すなわち武士、3層の禅宗様式は中国人の禅僧・・・ただし、中国人とは中国で生まれたかどうかなどDNAのことではなく、中華の思想・・・世界の中心・・・という意味での中国(中心)人・・・のこと、つまり、これは足利義満自身を指す。つまり、金閣寺は、足利義満がすべてのトップに君臨したいという彼の野望の象徴そのものである。」・・・とこんな感じである。金閣寺の公式ホームページの歴史解説を読んでも、このような解説は出てこない。あくまでも井沢氏の持論にとどまる話なのかもしれないが、「3種類の様式で造られている。北山文化だ。足利義満が建てたんだ」と教えられるよりも、はるかに印象的で、ものすごく魅力的だ。もっと当時の歴史を知りたい・・・心が動かされる。これが、本書・・・いや、本シリーズの魅力なのだ。
■かめばかむほど味が出るスルメ本
一点、注意点を挙げるとすれば、読むのにややエネルギーがいる、という点だろうか。歴史に家系の話はつきものだ。天皇が登場するならなおさらである。また、昔の人の名前には似たものが多い。そこに輪をかけるように、もともと聞き覚えの薄い天皇や武将の名前も登場するので、著者のいわんとすることを正しく理解するために、何度もページをひっくり返して、家系図と解説を確認しながら読むことになる。だから、一気に読み進めるのが難しい。
一方で、そうしたハードルを乗り越えると・・・つまり、著者の趣旨を理解できると、ぱっと目の前が開けたような発見がある。ある意味、かめばかむほど味が出るスルメ・・・と同じ楽しみ方ができるとも言える。1回目は、”ちなみに・・・”的な解説文はどんどん読み飛ばし、理解できる範囲でさらっとながして楽しみ、2回目はさらに深く読み込む・・・そんな読み方もアリだと思う。実際、私もそうした口だ。
■誰が読むべきか
「悪人英雄論」と題しているものの、前作、前々作と類似した年代を切っているので、内容には重複する箇所もある。たとえば、「後醍醐天皇と楠木正成をつなげた思想とは」というテーマが第2弾に登場するが、これと同じ話は第3弾にも登場する。裏を返せば、シリーズのどの本から手をつけても、話を理解できるようになっている、とも言える。なので、歴史本に少しでも興味がある方は、まず自分が興味を持てそうな一冊を手にとり、もし、それでハマったなら、残りの2冊に手を出す・・・そんな本書・・・いや、本シリーズにはそのようなアプローチが最適だろう。
なお、勝手な推測だが、著者がときおりこきおろす歴史専門家・・・彼らからすると本書の内容には反論したいところもたくさんあるのではないかと思う。ただ、井沢元彦氏の解説は説得力がある。そして何より面白い。それは先述したとおりだ。賛否両論分かれるのだろうが、わたしは好奇心を刺激してくれる本書を強く推したい。
【面白い切り口で歴史をひもとくという観点での類書】
・学校では教えてくれない日本史の授業(井沢元彦著)
・学校では教えてくれない日本史の授業2 天皇編(井沢元彦著)
・地図から読む歴史(足利健亮著)
・戦国の軍隊(西股総生著)
2013年9月2日月曜日
書評: マッキンゼー流 入社1年目 問題解決の教科書
マッキンゼー・・・一昔(十年ほど)前なら、日本ではまだそれほど知られていなかった名前だが、今や一つの大きなブランドになりつつある。大前研一や勝間和代など、メディアで活躍する彼らが同会社の出身者であることは周知の事実。雑誌に登場する著名人のプロフィールにマッキンゼーという名前が入っていることも珍しくない。最近では、マッキンゼーを冠した本を目にする機会も増えてきた。エリート中のエリートである彼らのコンサルティングのワザには、大いに参考にすべき点がある・・・そんな印象を持つ中で、目にした最近の一冊・・・。
マッキンゼー流 入社1年目 問題解決の教科書
著者: 大嶋 祥誉(おおしま さちよ)
発行元: ソフトバンク クリエイティブ(株)
本書は、マッキンゼー出身者である著者(大嶋 祥誉氏)が自身の経験を基に、特に技術面から、ビジネスマンなら誰しも知っておきたいこと、知っておくと必ず役立つこと、を手引きした本だ。
「いくら有名なコンサルティングファームのマッキンゼー出身者が書いた本だからって、自分はコンサルタントをやっているわけではないんだし、それが自分の何の役に立つのか?」・・・そう疑問に思うなら、それは杞憂だ。人間の基本スキルである”見て聞いて読んで話して書くこと”・・・と同様に、どんな業種・業態・規模・役職・部署に所属する人であっても、共通に求められる基本中の基本のワザが紹介されている。そのワザとは、タイトルにあるように”問題解決能力”のことだ。どんな役割の人であれ、日々問題に直面し、それを乗り越えることが求められる。そのためには、何が真の問題かを正しくとらえるために、事実関係を確認・分析をしたり、誰かの理解や協力をもらうために説得材料を用意し、わかりやすくプレゼンをしたり、あるいは上司に承認をもらった計画を確実に履行するためにプロジェクト管理をしたり・・・さまざまな活動が必要になる。
本書では、こうした活動を効果的・効率的に行うためのテクニックを・・・一流コンサルティングファームが昇華させてきた基本中の基本のスキルを・・・マッキンゼー社員も入社一年目に学ぶワザを・・・紹介しているのである。
問題解決能力とひと言で言っても、先に触れたとおり、さまざまな技術要素が絡んでくる。そもそもの心構え、課題・仮説設定や仮説検証を行うためのロジカルシンキング能力、それを文書にまとめるドキュメンテーション能力、人に伝えるプレゼン能力、これら活動を間接的に支えてくれるツール(フレームワーク)など、様々だ。こうした要素すべてをバランス良くカバーしているのが本書の特徴だ。
”バランス良く”・・・というところがミソで、フレームワークにしても10個も20個も紹介されているわけではなく、3Cや7S、ポジションマトリックスなど、本当に良く使うであろう4~5つ程度のツール紹介にとどめられている。プレゼン資料のまとめ方についても、何重ものポイントについて触れられているわけではなく、考え方を整理するピラミッドストラクチャーをはじめ、1つ2つの程度の主要ポイントの言及のみにとどめられている。なぜなら、知識武装させることだけが目的ではないからだろう。人は、ややもするとこうした本にテクニックばかりを追い求めてしまいがちである。本書も指摘しているが、3Cや7S・・・など、どんなに立派なフレームワークを使おうが、プレゼンスキルを持とうが・・・一番最初のとっかかりである「どこからどこまでが事実で、どこからどこまでが人(あるいは自分)の意見なのか」を整理する力(雲雨傘の理論)が、しっかり身についていなければ、何の役にも立たないのだと思う。
確かに”内容の濃さ”という観点では、玄人は物足りなさを感じるかもしれないが、そうでない人には、多過ぎず複雑過ぎず難しすぎず・・・ちょうどよい案配と言えるだろう。
1つだけ気をつけておきたいこととすれば、本書のタイトルにある「入社1年目」というキーワードは、「マッキンゼー社内で1年目の社員がこうした教育を徹底的に施されるよ」というところに由来している点だ。冒頭でも触れたとおり、彼らはエリート中のエリート集団だ。入社1年目・・・あるいは入社前に目を通しておくのが理想的だろうが、こうした類の本を読んだことがない若者であれば、別に、入社2年目でも、5年目でも、手にとってみる価値はあるのではなかろうか。
こういった類の本を読んだことがない方で興味がある方、ビジネスマン初心者や、ビジネスマンでありながらも基礎が弱いんだよな、と思っている方、あるいは新入社員研修を考える人事部門の人々・・・などには参考になる可能性が高い本だ。
【類書】
・質問する力 (大前研一著)
・「正しく」考える方法(齋藤了文、中村光世著)
マッキンゼー流 入社1年目 問題解決の教科書
著者: 大嶋 祥誉(おおしま さちよ)
発行元: ソフトバンク クリエイティブ(株)
■ビジネスファンダメンタルの指南書
本書は、マッキンゼー出身者である著者(大嶋 祥誉氏)が自身の経験を基に、特に技術面から、ビジネスマンなら誰しも知っておきたいこと、知っておくと必ず役立つこと、を手引きした本だ。
「いくら有名なコンサルティングファームのマッキンゼー出身者が書いた本だからって、自分はコンサルタントをやっているわけではないんだし、それが自分の何の役に立つのか?」・・・そう疑問に思うなら、それは杞憂だ。人間の基本スキルである”見て聞いて読んで話して書くこと”・・・と同様に、どんな業種・業態・規模・役職・部署に所属する人であっても、共通に求められる基本中の基本のワザが紹介されている。そのワザとは、タイトルにあるように”問題解決能力”のことだ。どんな役割の人であれ、日々問題に直面し、それを乗り越えることが求められる。そのためには、何が真の問題かを正しくとらえるために、事実関係を確認・分析をしたり、誰かの理解や協力をもらうために説得材料を用意し、わかりやすくプレゼンをしたり、あるいは上司に承認をもらった計画を確実に履行するためにプロジェクト管理をしたり・・・さまざまな活動が必要になる。
本書では、こうした活動を効果的・効率的に行うためのテクニックを・・・一流コンサルティングファームが昇華させてきた基本中の基本のスキルを・・・マッキンゼー社員も入社一年目に学ぶワザを・・・紹介しているのである。
■問題解決能力を支える基本テクニック
問題解決能力とひと言で言っても、先に触れたとおり、さまざまな技術要素が絡んでくる。そもそもの心構え、課題・仮説設定や仮説検証を行うためのロジカルシンキング能力、それを文書にまとめるドキュメンテーション能力、人に伝えるプレゼン能力、これら活動を間接的に支えてくれるツール(フレームワーク)など、様々だ。こうした要素すべてをバランス良くカバーしているのが本書の特徴だ。
”バランス良く”・・・というところがミソで、フレームワークにしても10個も20個も紹介されているわけではなく、3Cや7S、ポジションマトリックスなど、本当に良く使うであろう4~5つ程度のツール紹介にとどめられている。プレゼン資料のまとめ方についても、何重ものポイントについて触れられているわけではなく、考え方を整理するピラミッドストラクチャーをはじめ、1つ2つの程度の主要ポイントの言及のみにとどめられている。なぜなら、知識武装させることだけが目的ではないからだろう。人は、ややもするとこうした本にテクニックばかりを追い求めてしまいがちである。本書も指摘しているが、3Cや7S・・・など、どんなに立派なフレームワークを使おうが、プレゼンスキルを持とうが・・・一番最初のとっかかりである「どこからどこまでが事実で、どこからどこまでが人(あるいは自分)の意見なのか」を整理する力(雲雨傘の理論)が、しっかり身についていなければ、何の役にも立たないのだと思う。
確かに”内容の濃さ”という観点では、玄人は物足りなさを感じるかもしれないが、そうでない人には、多過ぎず複雑過ぎず難しすぎず・・・ちょうどよい案配と言えるだろう。
■新入社員に読ませたい本
1つだけ気をつけておきたいこととすれば、本書のタイトルにある「入社1年目」というキーワードは、「マッキンゼー社内で1年目の社員がこうした教育を徹底的に施されるよ」というところに由来している点だ。冒頭でも触れたとおり、彼らはエリート中のエリート集団だ。入社1年目・・・あるいは入社前に目を通しておくのが理想的だろうが、こうした類の本を読んだことがない若者であれば、別に、入社2年目でも、5年目でも、手にとってみる価値はあるのではなかろうか。
こういった類の本を読んだことがない方で興味がある方、ビジネスマン初心者や、ビジネスマンでありながらも基礎が弱いんだよな、と思っている方、あるいは新入社員研修を考える人事部門の人々・・・などには参考になる可能性が高い本だ。
【類書】
・質問する力 (大前研一著)
・「正しく」考える方法(齋藤了文、中村光世著)
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