面白くて眠れなくなる化学
著者:左巻 健男
最近、Youtubeサーフィンをしていると、過激な実験をしてView数を集めている動画に巡り合う。先日は、「ガラスなのに弾丸を壊す硬さ」の実験動画を見つけた。動画投稿者が、実際にそのスペシャルなガラスを作って銃で撃ち、弾丸が粉々に砕けるシーンを超スロー再生で見せる・・・そんな動画だ。このスペシャルなガラスは「オランダの涙(Rupert's Drop)」と呼ばれるもので、立派な実験と言える。強い関心を持って見てしまった。
この例のように、世の中には面白い現象がたくさんある。あるいは、普段、当たり前として捉えている事象が実は化学のちからのお陰なのだというものもたくさんある。そんな化学の事象の中から、我々が「えっ!?そうなの!?」「へぇー、そうだったんだ」と思えるものを選び出して、優しく解説してくれているのが本書である。
え!?どんなテーマを取り扱っているかって? 例えば、ニトログリセリンの話。ニトログリセリンと言えば、ノーベル博士を思い浮かべるが、意外にそれがどうやって爆発するのか、どの程度の影響力を持つのか、知らない人も多いはずだ。あるいは、ダイヤモンドを燃やす話。そう、ダイヤモンドは炭素でできているから、理論的には超高熱で燃え、炭になるはずだ。しかし、実際のところ、実験材料となるダイヤモンドは高価だし、家で手に入る道具・・・例えば、マッチやろうそく、ガスコンロなどで、そんな簡単には燃えないから、「ダイヤモンドが本当に燃える」ことの証明実験をする人は稀有だ。しかし、著者はそれを実際にやってのけた。そしてその内容について紹介している。
ただ、こうやって話すとすごく面白そうな本に聞こえるだろうが、冒頭に述べたとおり「面白くて眠れなくなる」というほどではなかったのが率直な感想だ。なぜって、化学実験の話だから、やはり本だけで楽しむには限界があるからだ。事実、私は左手に本書、右手にiPadを持ち、テーマごとにYoutubeで関連する実験動画を探しながら読んだ。また、本書が取り扱っているテーマの中には、あまり興味を持てないものも少なからずあった。「ケーキの銀色の粒の正体は?」とか、「ファーブルが語る化学の魅力」、あるいは「缶詰のみかんのひみつ」・・・など、正直、その「問い」自体に興味を持てなかった。
読んで勉強になったこともある。「アルカリ性食品は体に良い」という話や「コーラを飲むと歯や骨が溶ける」「温泉・入浴」をめぐるウソ・ホント」における著者の解説は、自分の無知を気づかせてくれた。
というわけだから、私は本書を買って後悔はしていないが、誰しもに進めたいと思う本ではない。本書に対する好き嫌いは人によって分かれるところだろう。
【類書】
・感じる科学(さくら剛)
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