2018年8月13日月曜日

記事評:The Case for Good Jobs (HBR2018.8)

ハーバード・ビジネス・レビュー(2018年8月号)のテーマは「従業員満足は戦略である」。その中の記事の一つ The case for good jobs (Zeynep Ton) は勉強になった。

「なぜ、よい職場を目指すべきなのか」「どうなれば悪い職場でどうなればよい職場なのか」について解説した論文だ。なお、ここで述べる「よい職場」と「悪い職場」の違いは、明確だ。

Zeynep Ton氏は、両者は、基本的に本社と顧客に接する現場との間における意思決定の仕方に違いがある、という。具体的には次のように言及している。

『職場環境のよい小売業者の場合、店舗従業員の生産性と顧客に提供しうるサービス水準の影響を考慮して本社が意思決定をする。たとえば、コストコの仕入れ担当者は、各店舗での従業員の仕事量に負荷がかからないように、新商品の導入タイミングを調整して商品が順番に店舗に運ばれるようにしている。』(出典:The case for good jobs (Zeynep Ton)  HBR2018.8)

すなわち、職場環境のよい企業では、本社と店舗の意思疎通は双方向に行われる。本社は現場の業務に影響を及ぼす意思決定をする際、店舗からの情報や意見を取り込む体制になっている。逆に言えば、これらができていない企業が「悪い職場」というわけだ。

これだけ聞けば、「当たり前のことでは?」と思うが、それができていない企業が圧倒的に多いらしい。そういえば、日本でも、数年前の「すき家」で問題が起きたことが思い起こされる。深夜に従業員一人にオペレーションさせ(ワンオペ)るのみならず、手の混んだメニューを展開して、大量の離反を招いた。また、最近でこそ、ファミリーマートはオペレーションを大幅に見直したとのことだが、私が大学生でバイトをやっていたとき、夜中のオペレーションは本当に大変だった。夜中に商品が納入されてくるが、その検品に苦労したのを覚えている。加えて、コンサルで現場に入ると、「本部は好き勝手言ってくる」「現場が本部の言うことを聞かない」といった発言が聞かれる企業も少なくない。

Zeynep Top氏は、「よい職場」戦略を推進するためには、大きく2つの要件が必要だと述べている。

①採用、研修、報酬、高い達成基準、従業員の意欲を換気する昇進機会を提供すること、つまりは人材への投資
②経営者が実現すべき四条件ー「集中と簡略化」「標準化と権限委譲」「複数業務の習得トレーニング」「余裕を持った業務内容」

だが、私にとってこの記事で最も印象に残ったのは、筆者の次の言葉だ。

『我々がインタビューしたコストコの店長たちは”店長は仕事の90%を教育に費やさなければならない”という、共同創業者のジェームズ・シネガルが繰り返し問いていた言葉を何度も使った。』

テクニカルに職場改善を進めることも大事だが、このコストコの「教育に90%」という意識がなによりも大事なのだと思った。この意識をみんなが持てていれば、行動も変わると思う。そして、これに関しては小売だとか業種を問わないと思う。果たして、同じことが自分の組織でできているのか?・・・そう問うたときに、恥ずかしくなった。

改めて足りないことを気づかせてくれた記事だった。

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