2018年8月9日木曜日

書評:OKR 〜シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法

シンプル・イズ・ベスト・・・とはよく言ったもの。どんなに立派な手法でも、複雑で覚えられなければ意味がない。それを純粋に体現した手法が、このOKRだろう。

OKR(おーけーあーる)
〜シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法〜
日経BP社



■チームパフォーマンスを最大化させるマネジメントツール解説書
本書は、組織の目的達成を促進するための効果的・効率的な手法の解説書だ。ここで言う組織とは、会社全体にとどまらない。事業本部全体、部、課、グループなど、ありとあらゆる組織に用いることができるものだ。グーグルなどでも採用している手法らしい。

それはどんな手法か。OKR(おーけーあーる)と呼び、OはObjectives、すなわち目的の略称だ。組織において「何を実現したいのか?」を定性的に表したものだ。たとえば、「○○地区で、法人向けコーヒー小売直売市場を勝ち取る」といったように。そして、KRはKey Resultsの略で、鍵となる目標指標のことだ。Oで示す目的の達成につながる、KPI(パフォーマンス指標)のようなものだ。たとえば、成長率○%を目指す、といった感じになる。

■ザ・ゴールのような物語形式
本書の特徴は、2点ある。一つは、著者自身が「OKR」という手法に習ってか、伝えようとしているメッセージが極めて明確であるという点だ。OKRはなにか?OKRをどのように使えばいいのか?何が落とし穴で何が成功要因か?ただひたすら、それだけを伝えようと努めてくれている。読んでいるこちら側としては、OKRの実践方法を何度も刷り込まれているような感じになる。

もう1点は、物語形式であることだ。それも中途半端な小説ではなく、しっかりと登場人物のキャラクターを設定し、起業家たちがどうやって脇道にそれて失敗していくか、そこにOKRを導入することでどのように変わっていくかを描いている。まぁ、著者が外国人ということでケーススタディも外国企業ではあるが、日本人である我々にも十分に理解できるし、共感できる内容だ。読みやすいし、あっという間に読み終えることができる。

■実はOKR以上に大切なこと
よくよく考えてみると、OKRはもっともらしいことを言ってはいるが、「当たり前のこと」でもある。こんな当たり前のことを書いた本に読む価値があるのか。私の答えはYESだ。なぜなら、「当たり前のこと」ではあるが、同時に多くの人が「誰もが陥りやすい落とし穴」にハマっていると思うからである。もちろん私も例外ではない。l本書はOKRという手法もさることながら、「落とし穴」にはまらない方法について指南してくれている。実はそこが一番大事なのではないかと思う。

私で言えば、会社でよく全体目標設定をしたり、週次で達成状況を追いかけたりしているが、「多くの目標を立て過ぎ」という落とし穴にハマっている・・・ことに気が付かされた。わかってはいたが、ついついやってしまう。

■課長から経営者まで
さて、このOKRという手法が非常に良いなと思ったのは、シンプルなメカニズムだということ。そして、どういう組織単位にも適用しやすいということだ。考えても見よう。もしこの手法が会社全体に導入しなければいけない経営管理ツールだとするならば、読者の立場によっては「重たすぎて、明日から実践するには難しい。無理だな。」で終わってしまうかもしれない。でも、一グループからでもパイロット的に導入することが可能な手法なので、誰もが「まずやってみよう」という気になれる。そこがいい。

そう考えれば、組織のリーダー、すなわち、課長・部長・事業本部長・社長・取締役・・・どういう単位であっても、組織のリーダーを担う人であり、本書の趣旨に少しでも興味を持てる人であれば、対象読者と言えるだろう。最後に本書に書いてあった次の言葉でしめたい。この言葉の価値を感じることができるなら、読むべきだ。

『重要なことはめったに緊急でなく、緊急なことはめったに重要でない』(ドワイト・アイゼンハワー)


【経営管理手法という観点での類書】
ザ・ゴール(エリヤフ・ゴールドラット)
戦略プロフェッショナル(三枝匡)

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