「全世界史」講義 〜教養に効く!人類5000年史〜 古代・中世編
著者:出口 治明
出版社:新潮社
●教養深い出口さんが書いた世界史の講義本
本書は、タイトルどおり世界史の講義本だが古代・中世編、すなわち、メソポタミア文明が登場した紀元前1000年ごろから、寒冷化とペストが世界を席巻しモンゴル帝国が衰退していくAD1400年ごろまでの世界史をまとめたものだ。「古代・中世編」と呼んでいるからには、本書はシリーズもので、この続きとして「近世・近現代編」もある。
ところで、どうして本書に手を出すことになったのか。今更、世界史?と言われるかもしれないが、私も45歳になり、今更、知識欲というものが湧いてくるのだ。そこに、たくさんの本をお読みになり、深い教養を持つライフネット生命保険会長の出口治明さんが、書いた歴史教科書だというものだから、勝手ながら「さぞかし、面白いのではないか?」という期待を持って買った次第。
●世代ごとのテーマ設定と出口節
この講義本は、各年代、BC1000〜BC1、AD元年〜500、AD500〜700、AD700〜800、AD800〜900・・・などといったようなくくりで、大きなテーマを掲げ、その年代の中で各地域で起こった著名な事象を解説している。例えば、BC1000〜BC1に対しては「世界帝国の時代」と称し、最初の世界帝国アッシリアや、中国の統一国家「秦」について語っている。AD元年から500年にかけては「漢とローマ帝国から拓跋帝国とフランク王国へ」と称し、大乗仏教やローマ帝国の台頭などについて触れている。
もちろん、上記の並びで単に歴史を語っているだけでは従来の歴史教科書とあまり代わり映えしない。出口さん流の表現や考えが付け加わっていること、意外に詳しいところまで掘り下げていることが特徴と言えるだろう。たとえば、中国の老子について出口さんは次のように説明している。
『孔子は、ひとことで言えば現状を肯定した人です・・・“あくせく働いて高度成長して何になるのか。国を大きくするために禿山を作って、戦争をしてそれで幸せになるのか”これが墨子の発想です。孔子とは正反対です。高度成長を止めて、堅実に守りを固めて生活しようというのが墨子の思想です。一方で傍観者的な知識人も出てきます。“成長の是非などどうでもいい。精神の高みが大切だ”という考え方です。』(「全世界史」講義 古代・中世編 第二章 知の爆発の時代より)
●それでも難しい。知識欲という炎に対する油になった
読み終えてみて、思ったこと。それは「もう一回・・・今度は一ページ一ページの内容を咀嚼できるスピードで、ゆっくりと読んで世界史を頭に叩き込みたい」ということだ。知識欲を満たそうと思い買ったわけだが、返って知識欲が増殖してしまった。多少、読み方が悪かったこともあるかもしれない。せっかく、出口さんがマクロの視点で、テーマごとに歴史をまとめてくれているのだから、最初はもっとマクロの視点を意識しながら読むべきだった。なんとなく中身を読み始めてしまったものだから、ミクロに入り込んでしまい・・・カタカナの多さに頭が混乱してしまった。
しかも割と細かい。この本は学校の教科書に比べて理解しやすいに違いない・・・そう思って買うと痛い目に遭うかもしれない。本を読みながらとっていた私のメモを見返すと・・・惨憺たるものだ。
BC1000〜1:アッシリア帝国、秦
AD元年〜500:大乗仏教、ローマ帝国
AD500〜700:イスラム教の登場、密教、隋・唐
AD700〜800:イスラム帝国、イコノクラスムス
AD800〜900:製紙技術を基にしたイスラム大翻訳運動、ヴァイキングの侵攻
AD900〜1000:東ローマ帝国衰退、浄土宗・禅宗の登場
AD1000〜1100:ノルマン・コンクエストによるイングランドの建国、カノッサの屈辱
AD1100〜1200:・・・メモなし・・・
AD1200〜1300:パクス・モンゴリア、耳聴告白制、プリンス・オブ・ウェールズ、ジンギスカン登場
AD1300〜1400:寒冷化とペスト
上記のとおり、1200年から1300年ごろのヨーロッパの話は、ついぞ頭に入ってこなかった。勝手な贅沢を言わせてもらうなら、テーマごとにもっと強いストーリー性をもたせて、解説してほしかった。
とは言え、繰り返しになるが、更に世界史を深掘りしよう・・・というきっかけをもらったことは否定しない。特段、読みやすいとは言えないが、きっと歴史は色々な教材を斜め読みして興味を持てたところを深掘りしていく・・・そんなのがいいんだろうなぁ・・・と勝手に結論づけている。
【歴史を学べるという観点での類書】
・学校では教えてくれない日本史の授業(井沢元彦)
・学校では教えてくれない日本史の授業2 天皇編(井沢元彦)
・井沢元彦の学校では教えてくれない日本史の授業3 悪人英雄論(井沢元彦)
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