「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。」
有名な一説だ。
伊豆の踊り子
著者:川端康成
驚くべきことに、二十数年前に読んだはずの内容が、頭の中のどの記憶領域を探しても見つからなかった。改めて読んでみて、恥ずかしながら「あぁ、まさにタイトルどおりに踊り子さんたちの話だったんだ」が、最初に口をついて出た言葉だ。
主人公の島村は、伊豆の旅館に何度か滞在。そこで知り合った芸者とのやりとりが描かれている。描写が本当にあった話では、と思えるほどリアルで、当時の伊豆の芸者さんたちがどのような生活を送っていたかがよくわかる。物の本を読んでいると、どうやら実際に著者川端康成自身がその舞台になった伊豆の旅館に泊まり、この小説を書いていたようだし、作中に登場する火事の話などは実際にあった話なのだと当人が語っていたようだ。「なるほどどうりで」と思った。
加えて、描かれている男女の痴話は人類普遍の話で、昨日・今日あった友達の話として語られたとしても、違和感がない。人間は、物理的には進歩しているが、精神的には一歩たりと進歩してないのかなと感じずにはいられない。思わず笑ってしまう。
雪晒し(出典:雪国観光圏より) |
文字で書かれた文章の塊なのに、色々な想いや知識を運んでくれる・・・文学作品の良さを久しぶりに体感した気分だ。
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