送り火
著者:高橋弘希
主人公の歩(あゆむ)は、父親の仕事の関係で転校を繰り返す小中学生時代を送っていた。そして今度は、東京から津軽地方に引っ越してきた。学校ではすぐに友達ができ、晃、稔、内田、藤間とつるむようになる。晃がリーダー格だが、歩は、晃の言動の違和感に気づく。仲間内で罰ゲーム付きゲームをやっていると、晃は常に稔が負けるように仕向け、稔が罰ゲームを受けている姿を楽しんでいる一方で、内田や藤間が稔を侮辱したり意地悪をしたりしたときには、稔を馬鹿にするな!とキレる。歩は意地悪をするなどといったことはせず、上手く立ち振る舞っていたが・・・。(あらすじ)
晃に歪んだ感情を感じつつも、それにしたって中学生はそんな面もあるだろう・・・と、サスペンスやホラーでもなく、何気ない中学生の日常を読み進めていたのだが、物語は衝撃的なシーンで終わる。「えっ、ここで終わり!?」というのが読み終えた直後の率直な感想。だが、噛めば噛むほど味がでるスルメのように、、、反芻してみると、ジワッ、ジワッ・・・とこみ上げてくるものがあった。
「えっ、ここで終わり!?」が、読み終えて30分後には「あー、こういうのあるわ、ある、ある。」というのが感想に変わった。そして、晃や稔が持っていた感情や、性格というものが初めて腑に落ちた。
シンプルな物語の中に、シンプルじゃない人間性を見事に描ききっている。しかも、印象に残るストーリーで。
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