2012年1月15日日曜日

書評: 犯罪

今週は、この本を読んだ。

タイトル: 犯罪
著者: フェルディナント・フォン・シーラッハ
発行元: 東京創元社

小島慶子のキラキラにゲスト出演されていた瀧井朝世さんのオススメ話がきっかけだ。

■刑事事件弁護士が語る実話物語

この本は、ドイツ人の刑事事件弁護士、フェルディナント・フォン・シーラッハ(著者本人)が、これまでに携わった刑事事件の中でも特に印象深かったものを取り上げ、物語の形でまとめたものだ。全11話(事件)からなり、一話あたり20~40ページで完結する。それぞれがとてもユニークな事件である。

『彼女がドアをあけたとき、フェーナーはなにもいわず、壁にかけた斧を手に取った。』

常に誠実に生きてきた男が、何十年間にわたる妻からの虐待に耐え切れず、ある日突然妻を殺害してしまう。周りの者はいぶかる。「なぜ、あの人が!?」「殺すくらいなら、さっさと別れれば良かったじゃないか!?」と。しかし、そこには表面を見ただけでは理解できない深いワケがあった・・・。

物語は、その心の深淵に迫っていく。

■事実は小説よりも奇なり

「これは本当に真実なのか!?」

事実であると分かっていても疑いたくなるようなユニークな話ばかりである。たとえが悪いかもしれないが、この本を読んで得られる感覚は、日テレのテレビ番組「ザ・世界仰天ニュース!!」を見たときに得られるそれと似ていると思う。

話の展開のさせ方も絶妙だ。最初に全てを話さない。著者が語るのは事件の点と点だけである。読者には、最初、それがどうつながるのか、どう事件として発展していくのかが全く読めない。そして最後には全ての点が見事に線としてつながっていくのである。

「事件のユニークさ」「物語の展開」・・・これらとあいまって著者の淡々とした語り口調(元の言語がドイツ語のせい?)が、絶妙なバランスを生み出し、読み手を惹きつけているのである。

■読書の苦手な人に

決して内容の難しい本ではなく、またオムニバス形式になっているため、読みたいときにパッと読める。本を読むためにまとまった時間を取れない人や、読書は苦手、集中力が続かないといった人には特にお勧めできる本だ。



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