2011年12月12日月曜日

書評: まじめの罠

「与えられたルールに疑いを持たず、その中で懸命に成果を出そうとする人」・・・この人たちが陥りやすい罠を勝間和代氏は”まじめの罠”と呼ぶ。

そして「そうした”まじめの罠”に陥る人達は、ルールを破って効率的・効果的に成果を出した人を許さない」傾向がある、とも述べる。

「まじめの罠」
著者: 勝間和代氏
発行元: 光文社新書 (2011年10月20日 740円)

著者のツイッターでのつぶやきで偶然、この本が出版されたことを知ったのだが、タイトルの”まじめ”という言葉が妙にひっかかり(日本人なら誰もが反応しそうなキーワードではある)Amazonで衝動買いしてしまった。

■日本人の多くがハマる大きな落とし穴

日本人の多くがハマっている大きな落とし穴・・・国、社会、会社、上司、先生、隣人が作ったルールを、”当然正しいもの”であるかのように馬鹿正直に受け入れた結果、実はみんな大きく損をしているんだよ、早くその負のループから抜けだそうよ、ということを訴えている本だ。

ルールに従うのは大事な事だが、ルールは所詮人が作ったものであり、そのルール自体が間違っていることが多いにもかかわらず、それに盲目的に従うのは危険だ、というのが勝間氏の主張である。

たとえば、ルールが間違っている例として農林水産省が作った「カロリーベースの自給率計算」を挙げている。これは文字通り、カロリーで日本はどれくらい自給自足できているのかを計るものだ。頭の回転の早い人なら、ここですぐに疑問がわく。「ん!? なぜ、自給自足をカロリーで計算するのか?」と。当然、この基準で計算すると、商品価値が高く競争力のある野菜や果物を作ると自給率が下がることになる。逆に米やジャガイモのようなカロリーの高いものを作ると自給率が上がることになる。

■”まじめ教”の洗脳を解こうとする著者の意気込み

勝間氏はこの本で”まじめ”という言葉を使っているが、氏が本質的に言わんとしている「正しい課題設定をせよ」という観点では、類似した本はたくさんあるように思う。わたしがパッと思いつくところでは大前研一氏の「質問する力」だ。

しかし、この本が特徴的なのは「”まじめの罠”からの脱出ノウハウ」という点よりも「”まじめの罠”がいかに危険なものか?」「”まじめの罠”にいかにして人は陥るのか」といった点にフォーカスを当てているところだろう。逆に言えば”まじめの罠”は、それだけ小手先のテクニックだけで脱出できるような簡単な罠ではない、その罠に陥る過程をしっかりと理解するところから始めねば、ということなのだろう。

ちなみに、昨日偶然知ったのだが近々、勝間和代氏が「ズルい仕事術」という本をディスカヴァー・トゥエンティワン社から出すらしい。段取りがいいなー。タイトルからも容易に察しがつくが、実質的には、今作「まじめの罠」の続編・・・実践編といったところか。

【”まじめの罠”の目次】
第一章: 「まじめの罠」とは何か、そして、なぜ「まじめの罠」はあなたにとって危険なのか
第二章: あなたが「まじめの罠」にハマってしまうメカニズムを理解しよう
第三章: 「まじめの罠」の害毒
第四章: 「まじめの罠」に対する処方箋

■長いものにすぐに巻かれてしまう人向けの本

”まじめ”な人だけが本の対象者・・・と著者自身言うとおり、上で述べた趣旨について理解している人はあえて読む必要のない本だ。

世の中のマジョリティにすぐに飛びつく傾向のある人、マスメディアや政府が発表する内容を盲目的に信じてしまう傾向にある人・・・そういった人は、この本を読んでみると、自分の成長の糧を得られるかもしれない。



【関連リンク】
失敗を許容しない文化(ブログ記事)

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