2021年3月28日日曜日

書評:ゲンロン戦記

まったく読むつもりがなかったが、東浩紀さんをNewsPicksでみかけて、「あ、この人、面白い人かも」とおもって手を出すことに決めた。ちなみに「なにを面白いと思ったか」というと、効率性や合理性が志向される現代において、非効率性や非合理性の中にこそある本質について鋭い考察をしていたからだ。しかも、彼の発言姿勢にはあまり裏表を感じない。

ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる (中公新書ラクレ)

そんな人が「自分で会社をやってみて、とにかく色々と失敗した。それを赤裸々に書いてある」というのだから、きっと変な脚色なくいろいろな事実をしっかりと地味に書いてくれていそうだ。そう思った。

実際、地味だ。でも、その地味さがいい。彼の心情が素直に入ってくる。中身については、すごく目新しいことが書いてあるのかといえば、厳密にはそうではない。ただ、当たり前の落とし穴について事例を克明に語ってくれている。では、当たり前の落とし穴とはたとえばどんなことか。それは、いくら信頼していても経理を任せっぱなしにすれば、経営がぼろぼろになること、利益の見込みが立たないのにコストをかければ経営が傾くこと、とか、そういったことだ。

でも、事例が地味で鮮明なので、(彼が述べているように)今後、同じように会社経営をする人にとってはす、ごくイメージがしやすく自分ごとになりやすく、同じ失敗の予防本として役立つだろう。

同書は、そうした経営の話もさることながら、著者の論壇者としての思想もちょこちょこ垣間見える。だから、わたしが冒頭に述べた非効率性や非合理性の中にこそある本質についての発言もある。それは次のようなものだ。

「 メッセージが本来は伝わるべきでない人に間違って伝わってしまうこと、本来なら知らないでも良かったことをたまたま知ってしまうこと。そういう「事故」は現代ではリスクやノイズと捉えられがちですが、僕は逆の考え方をします。そのような事項=誤配こそがイノベーションやクリエーションの源だと思うのです。」

「誰でもそうでしょうが長時間の飲み会なんて、何を話したかほとんど覚えていないものです。けれども「すごかった「みたいな感覚が残り続けるし、結局はそういう感覚で人が動くのです。後輩はオフラインのコミニケーションの方が起こりやすいものです」

なぜ、オフラインが大事か。なぜ、非効率が大事か。そうしたことを端的にわかりやすく語ってくれていると思う。みんな効率性を求めて無駄を省けば、予測の範囲内の行動や結果しかうまれない。でも、今の世の中それでは解決できないことがたくさんある。そういえば、RANGE(適用する知識の幅)のデイビッド・エプスタインも似たようなことを言っていた気がする。

ゲンロンという会社は、こうした彼の想いの上で、浮き沈みを繰り返しながら、いまも前進を続けている。ゲンロン戦記・・・言い得て妙だ。


2021年3月21日日曜日

書評:異端のすすめ 〜強みを武器にする生き方〜

書店に足を運んだ際に橋下徹さんの著書「異端のすすめ」が目に止まった。帯には「短い人生、リスクを恐れている暇はない」と言う文句。それで購入を決めた。

異端のすすめ 強みを武器にする生き方 (SB新書)

理由は2つある。1つは、もちろん、個人的に橋下さんのことが好きだからだ。彼の話し方や主張は、他の人と一線を隠していると感じることが多く、惹きつけられる。もう1つは私なりのユニークな理由で、自分がリスクマネジメントのコンサルティングをしていることもあり、「リスクをとる・とらない」はどこで差が出て・・・いや、どこで差をつけるべきで、どう言う場面で「リスクをとるべきなのか」について常に興味があり、そのヒントになるかもしれないと思ったからだ。

本書を一言で表せば“橋下さんから若者へのメッセージ”だ。「今のうちから●●をやっておくといいよ。自分は実際、こうやったよ。こんなこと考えて、こう言うことやってたら、それがすごく役に立ってるよ。だからみんなもここは真似したほうが絶対いいよ」と言ったメッセージが書いてある。

お恥ずかしながら、帯に気を取られて買ったせいもあり、実は自分が本書のターゲット層ではないことに読んでから気がついたw。対象は若者、具体的には20〜30代だ。その意味では、「若い時に読みたかったな(もちろん私が若い時には登場していなかった本だが)」というのが率直な感想だ。

私にとっては自分がやってきたことの正しさを再確認する機会となった。
  • マルチタスクの鍵は即時処理
  • 何事も手を抜かずに一生懸命やる
  • インプット以上にアウトプットをこそ意識する、等
もちろん、議論にめっぽう強い橋下さんの「議論への臨み方」は自分がどうやって議論をコントロールするのかを示してくれていて勉強になった。また、「自分をどうやって他人と差別化するのかを考えて実践してきた」という考え方もヒントを与えてくれた。差別化というとビジネスにおいて組織としての差別化の話ばかりに終始しがちだが、なるほど「個人における差別化」とはあまり考えたことがなかった。例えば「自分はどう他人と差別化を図るのか、それを一言でいうとどう表現できるか」について入社まもない若手に考えてもらうと、より仕事における自分ごと化ができるのでは、と思った次第だ。

一方で、こういう自己啓発本って、読んで明日から本当にそうしよう・・・と思って実践する人がどれくらいいるのかは(全ての本に言えることだが)疑問が残る。仕事で成長したい、成功したい、豊かにしたい・・・と思っていない人は、何を読んでも響かないだろう。逆にそう思っていてどうやればいいか模索している人には良い後押しになるのだろう。そんなことを感じた。


2021年3月7日日曜日

書評: Learn Better

本書を一言で表すとすれば「有効な学習方法の集大成本」だろう。

Learn Better

著者:アーリック・ボーザー

要するに学習方法のコツをまとめた本である。ここで言う学習方法には、記憶の仕方もあれば、理解の仕方、そしてそれを有効活用する方法などが含まれる。

今の世の中、さまざまな自己啓発本があり、「今さら、学習方法について何が学べるのか?」と思うかもしれないが、要所要所で大きな気づきを与えてくれた。

振り返って、強く印象に残った点がいくつもある。

例えば「効果的な記憶方法」とは、今や色々なところで聞かれる話だ。だが、私の興味をそそったのはその背後にある短期記憶と長期記憶の関係性についての話である。「短期記憶メモリは非常に小さいもので揮発性が高く、さっさと消えていってしまう」といった話を聞いて、脳内にイメージが膨らんだ。それが分かっただけで、どういう風に「覚えたいもの」と向き合うべきか、パッと視界が開けたように感じた。

「記憶においてネックとなるのは短期記憶がその名の通り、非常に短い時間しか持たないことだ。脳のスケッチ帳は小さい。短期記憶の働きはいろいろな意味で狭い入り口になぞらえられる。大きいものは入らないし、たくさんの情報も入らない。ダイヤルアップ接続用モデムのようなものと考えても良いだろう」(本書より)

また、イメージトレーニングもよく聞く話ではある。ただ私にとっては「ふーん、そうなの。ボクサーとかよくやってそうだよね。あと、格闘技漫画とかでなんかそんなのよく見るけど・・・」と言った程度のものだった。だが、これも「イメージトレーニングをした者とそうでない者の実験結果」の話を聞いて、何よりも「イメージトレーニングを使うことで自分の実力に自信が深まり、やがて大会に対する感情にも良い影響を及ぼせるようになった」といったクダリを読んで、一気に「これはやらねば」という気になった。

「記録することの意味・意義」もそうである。皆さんは「記録」はなんのために行うとお考えだろうか。私の中では記録をする理由は3つあった。1つは、「後で振り返りをするため」。2つに「第三者が、チェックをするため」。3つに、「忘れないようにするため」である。ところが、本書は第四の理由を教えてくれた。それが次のクダリである。

「モニタリングとは要するに気づきの一形態であると言う。結果を記録するためには何が起きているかに気付かざるを得ない」(本書より)

まだ、ある。「不確実性の意識の仕方」について。ここでは、学習力の高い人にある傾向の1つとして「はっきりと定義されてないものや不確実性を受け入れる感性を持っていること」をあげているのだが、その中で「あえて毎日左と右で箸を持ち替えて食べてみたりするなど、日々の身近なそうした試み1つで、人は小さな違いを意識するようになり、『変化』への感度が高くなる」という話を聞いた時、なるほど!と思ったものだ。と言うものも、リスクマネジメントの仕事をしているせいもあり、普段から、「人はどうやったらリスクに敏感になれるか?」と言うことを考えていて、こうした問いのヒントになったからだ。

350ページ近い本なので、本を読むのが苦手な人には後半、だんだんと疲れてくるかもしれないが、斜め読みをするだけでも十分に気づきを与えてくれる本だと思う。少しでも、このタイトルがあなたの心に響くのならば、価値ある一冊になってくれるだろう。


2021年2月23日火曜日

書評: 運転者 〜未来を変える過去からの使者〜

さしずめ「ザ・ゴール」のポジティブシンキング力版。なお「ザ・ゴール」とは、小説に仕立て上げられた経営管理の教育本のこと。詳しくは過去の私の書評を読まれたし。

運転者 〜未来を変える過去からの使者〜
著者:喜多川泰

ふらぁ〜っと立ち寄った本屋で割と目立つ場所に積み上げられていた本でタイトルも装丁もなんとなく変わっていたし、惹かれるように手にとった。

小説なのかと言えば小説なのだが、冒頭「まるでザ・ゴールだ」と喩えたように、ある種の自己啓発本ではある。ただ、それが物語形式で描かれているので、腹落ちしやすい。そしてそのテーマは、ポジティングシンキング力だ。何事にもめげず前向きな努力をすることがいかに大切か、どうしてそれが大切なのか、どうやったら身につくのか・・・それらを物語を通じて語った本。読み終えた頃には、本書の主人公と同じように「今日から、運を転じるために前向きに生きよう」と思えるようになる本だ。

「努力」というと重く聞こえるが、そんな重苦しいことではなく、常に陽気でいよう。他人への親切を心がけよう。物事を損得で捉えるのはやめよう・・・とかそんなことだ。

ところで、偶然手にとったはずの本だが、ここ数ヶ月読んだ本とすごく似ていることに驚いた(自分の心が自然とそうした本を手繰り寄せているのか・・・)。RANGE(知識の幅)は「損得を超えてとにかく色々なことに興味を持って生きればたくさんの発見ができる」といった話だったし、GIVE AND TAKEでは「損得を超えて人助けをするギバーこそが、一番得をする」という話だったし、本書も「損得で生きるな」という訴えかけをしているし・・・本当によく似ている。

物語になっているし、(その分、押し付けがましくなく嫌らしくないし)読みやすいし、活字が苦手な人にも入り込みやすい本だと思う。

2021年2月22日月曜日

書評:日本の論点 2021〜22

「まぁまぁかな〜」というのが本書を読んでの感想。

日本の論点2021〜2022
著者:大前研一

自らのマクロ視点を養うため何かしらの気づきが得られればそれだけで儲けものと、だいたい毎年買っている本だ。そんなわけで、今回も買った・・・。

多少、学びはあった。例えば、デジタル庁に関しての指摘。

「デジタル丁創設に関しては『庁』と言っている時点で期待値ゼロだ。世界中でデジタル化をうまく行った国・地域では『省』の上に『スーパーデジタル省』的なセクションを作ってあらゆる省庁に命令する権限を与えている」(本書より)

類似例を海外から引っ張ってくるのは大前研一氏の常套手段だが、確かに「おっしゃる通り」と感じた。縦割りの強い官公庁組織において横串を通す形で作った組織なのだろうが、権限が弱ければ実効性が心許ないのは明白だ。

また、カジノ不要論についての話。

「カジノはもはや斜陽産業である。ラスベガスはもはや「売春とギャンブルの街」ではない。1990年代にテーマパーク型のホテルとコンベンション施設を整備し、各種スポーツイベントやシルクドソレイユ、人気歌手の上を誘致するなどして展示会や見本市、国際会議、そしてファミリーデスティネーション、リタイアメントタウンに完全に路線変更した」(本書より)

これも私の意識からは抜けていたこと。カジノの話になると、いつも論点は「治安」になるが、「そもそもカジノは斜陽産業である」と言われれば、日本のそれは「論点ズレ」を起こしていると言わざるを得ない。しかも、よくよく考えてみれば、日本の統合型リゾートも「カジノ」ってメディアが騒でいるが、「統合型(IR)」なのでカジノって全体のごく一部で、確か、IR全体の3%程度で・・・「カジノ=論点」はいよいよ変だ。

さらに、景気の話。

「資産リッチな国では、金利が高い方が資金に余裕が生まれる。1900兆円もの個人金融資産がある日本では、金利が1%上がれば19兆円の余裕が生まれ、個人消費につながる。安倍政権と黒田日銀のいわゆるアベクロバズーカはここに着目せずに10世紀の経済に則ったリフレ派の誤った政策を実行、金利を下げて国債を乱発した。その結果今日に至るも成果ゼロである。資産課税を一律1%とするだけで所得税をゼロにしてもお釣りがくる。個人と企業の固定資産と金融資産の1%を課税すれば50兆円。これに10%の付加価値税を加えれば、合計100兆円。」(本書より)

「へー、そういう考え方があるんだ」と思ったのだが、ただし、こちらは「はい、そうですか」と納得してはいけない分野だと感じた。実際、リフレ派の中にも説得力ある専門家がいて、その人たちからすると「は!?」的なところもありそうだ。

実際、大前研一氏は有名な人だし、ロジカルな説明の仕方をするので、説得力があるのだが、色々な分野における彼の発言に対する別の専門家の指摘を見ていると、間違った発言(しかも割とはっきりと断言しているのに)も多いようだ。

加えて、本書は彼が過去1年間にわたって月刊プレジデントに寄稿してきたものをベースに加筆修正したものである。だから、普段から、週刊ダイヤモンドや月刊プレジデント、東洋経済、エコノミストなど、メジャーどころのソースを見ている人からすると目新しいものはないかもしれない。

そんなことをいうと、「じゃぁ、読みたくないわ」と思ってしまう人もいるかもしれないが、私にとっては相変わらず価値のある本だと思っている。本書に載っている彼の見識そのものが必ずしもすごいということではなく、すでにいくつか紹介したように、自分で疑問に思いもっと詳しく調べてみたい!と思えるきっかけを与えてくれるからだ。

2021年2月20日土曜日

書評:GIVE AND TAKE ー「与える人」こそ成功する時代

最近、High Output Managementやエッセンシャル思考など、当たり本が続いたので、その類似本を読めば引き続き楽しめるだろうと思い、Amazonが自動的に推薦した本に飛びついた。

GIVE AND TAKE ー「与える人」こそ成功する時代
著者:アダム・グラント

本書は、一言でいうなら「日本の諺である”情けは人の為ならず”を実証した本」である。

もう少し詳しく解説すると、人間の性格を、見返りを求めないギバー、見返りを得るために与えるマッチャー、得することしかやらないテイカー・・・の3タイプに分けて捉え、「なぜ、ギバーが最も得をするのか?」を解説した本である。

本書には「なるほど」と頷ける指摘がいくつも登場するが、ここではその中の1つを紹介しておきたい。ギバーがやっていることの話の中で著者が「責任のバイアス」について触れているのだが、その理由の説明が目から鱗だった。なお、「責任のバイアス」とは、夫婦やカップルの両方に対して「自分が家事にどれだけ貢献しているかを割合で答えてください」という質問をし、双方から提示された割合を足しこむとなぜか100%を大きく超えてしまう傾向がある、つまり、人には「自分の貢献度を過剰評価する傾向がある」ということを指す。

著者は「責任のバイアス」に陥る理由を次のように説明している。

「もっと強力で有望なもう1つの要因がある。それは『受け取る情報量の差』だ。人間は『他人がしてくれたこと』より、自分が『してあげたこと』に関する情報をより多く手に入れる。自分がした努力は全てわかっているが、パートナーの努力については一部を目撃するに過ぎない。だから誰が偉いのかを考えるとき自分自身の『してあげたこと』をよりわかっているのは当然だ・・・(中略)・・・お互いの貢献度を正しく判断するカギは、「他人がした貢献に注目すること」である。それには、自分自身がやったことを評価するまえに、相手がしてくれたことをリストにするだけでよい」(本書より)

夫婦・カップル間の家事問題に限らず、似たような摩擦が至る所に生じると思うが、こんなに明快に解説してくれた本には初めて出会った。

ただ究極の学びはおそらく「何かをしてあげて・・・損をしたな」と感じることがあるとしたら、「そう考えること自体が損だ」ということだろう。もちろん、得することばかりしか考えない人にそれをするとこちらが食い尽くされるだけだが、そうではな人に対して、いちいち損得勘定で付き合っても自分が損するだけなのだ。

そんなわけで、なんとも単純すぎる話でお恥ずかしい話だが、私も今日からギバーを目指したいと思うw

テイカーの傾向にある人はもちろん、世の中全ての人が読むべき本だろう。著者の狙い通り、私のように「あ、ギバーになろう」と思う人が増えていけば、世の中の幸福度がましていく気がする。

2021年2月7日日曜日

書評:風神の手

道尾秀介氏の 「風神の手」・・・読みました。

小説はネタばらしせずに語ることが難しく、また、リラックス効果はあっても、学習効果があるわけではないので個人的にあまり好きではないのです。ですが、彼の作品はいつも読み応えがあるので、高評価のついた彼の作品を見つけて、つい手を出してしまいました。

ある街での出来事を中心に3編に分けて描いているのですが、オムニバスでもなんでもなく、1つのストーリーをぜんぜん異なる3つの視点で描いているなかなかおもしろい作品です。

久々に読んで「そうそう、彼の作品って・・・こんな感じ」って思いながら読み進めました。こんな感じってのが、どんな感じなのかを、うまく表現できなのですが、伏線の貼り方がすごい。そして、それが複雑すぎず読者が頭の中で咀嚼できる範囲に収まっており、それでいて結構リアリスティックだったりする。だからのめり込む。小説って基本的にフィクションですから、読んでいるとどうしても「そんなこたぁー、ないだろー」っていうところがあって、そうした場面で妙に冷めてしまうのですが、彼の作品にはそう感じる場面が少ない。

中身について言えば、「そうそうなんだよ。人生って」って思わせるところが多かった。「そうそうなんだよ。人生って」って何度か感じました。「人間万事塞翁が馬」っていうフレーズを思い出したり、「人生は奇跡の連続」っていう言葉を思い出したり・・・。そんな人生図をわずか数百ページの小説の物語にまとめた・・・著者の才能に改めて感服しました。

リラックスタイムにおすすめの一冊です。


2021年1月30日土曜日

書評: エッセンシャル思考 〜最初の時間で成果を最大にする〜

今回、読んだ本はこれだ。質問形式で感想を書きたいと思う。

エッセンシャル思考 〜最初の時間で成果を最大にする〜
著者: グレッグ・マキューン

 ●真っ先に思い浮かぶ言葉は?
全く、200パーセントその通り。

●エッセンシャル思考って何?
放射型のエネルギー発散ではなく、一直線型のゴールオリエンティッドなエネルギー発射ができるようにする思考。

【本書より】

●つまり?
超圧倒的な優先順位をつける。余裕(あそび)を作る

「遊びは本質を探求するのに 役立つだけでなく、 それ自体がどこまでも本質的である」(本書より)

●どうやって遊びを作る?
ひと言で言えば、次のようなことにつきる

「中途半端なイエスをやめて、「絶対やりたい!」か「やらない」かの二択にしよう」(本書より)

●明日から何をする?
今まではやや他人や世の中に人生をコントロールされていたかんがあるが、もっとグリップを握り、こっちから優先順位をつける。とにかく人生をコントロールする側に回る。そのために圧倒的な優先順位付基準を持つようにしたい。

●誰が読むべき?
今、仕事はそこそこ、プライベートでも暇を持て余している、という人は読まなくていい。逆に次のような人にはドンピシャの処方箋だ。
  • とにかく忙しい
  • やりたいことがたくさんあり過ぎて困る
  • 人にカレンダーをコントロールされてる感がある

2021年1月24日日曜日

書評:RANGE 〜知識の「幅」が最強の武器になる〜

久々に「超感動」した。

その理由を一言でいえば、自分がなんとなく感じていたことだがはっきりとはできてなかったことを、ズバリ解説してくれたからだ。間違いなく今後の自分の行動に影響を与えたと思うし、仕事に活用していくと思う。


RANGE

知識の「幅」が最強の武器になる

著者:デイビッド・エプスタイン


タイトルをどんな想いでつけたのか、疑問だったが、すぐに分かった。RANGEとは「幅」と言う意味だが、本書が示す「幅」とは「知識の幅」のことだ。才能を伸ばすのも、難解な問題を解くのも、クリエイティビティさを発揮するのも「知識の幅」を持つことが大事であり、それはなぜか、どんな事例があるのか、どうやってそれを実践するのか、どんな組織を作ればそれがビジネスシーンでも実現できるのか、などについて解説している。そして、おそらくは途方もない数の人たちにインタビューしたり、文献を調査したのだろうと言うことがわかるくらい、克明に事例を紹介してくれている。


「すごい」の一言に尽きる。


印象に残った話はたくさんあるが、強いてその中から2つ挙げるとすれば、アナロジー思考と言う言葉。類例を他分野や全く異なる分野に求めることがいかに大切か(でも、実際はいかにできてないか)、と言う話である。


「テトロックは専門家たちの意見をテストしてみることにした。東西冷戦が続く中、284人専門家による短期と長期の予測を集めた・・・(中略)・・・プロジェクトは20年間続き、約80,000件の予測が集まった。その結果見えてきたのは、とても意地悪の世界だった。専門家の予測の能力はひどいものだった。専門分野であることや、経験年数、学位、そして極秘情報にアクセスできることすら、予測の能力には何の関係もなかった。短期予測も調教側も間違っており、どんな領域でも間違っていた。専門家たちが、その出来事が起こる事は決してありえない、あるいはほぼありえないと断言したことが、15%の確率で起きていた。専門家たちが間違いなく起こると言った事は、4回に1回以上は起こらなかった」(本書より)


そしてもう1つは、ロジカルシンキングが強調されがちなビジネスシーンにおいて、整合性がいかに組織に成功に意味をなしていないか、と言う話だ。


「人間は一貫性が好きだ。多くの企業を調べると、そのプロフィールには整合性が見られた。しかし、1つの業界の組織を幅広く対象とした最初の体系的な研究で、334の高等教育機関を調べて研究者たちは、組織の成功を示すどんな指標にも整合性が全く影響を及ぼさないことを示した」(本書より)


自分がコンサルタントという立場であるから、こうした指摘は余計に心に響く。


ところで、私自身、仕事で「難題を解けたとき」や「ひらめいた!となったとき」は、たいてい他分野のことを考えていた時である。また、経営者、コンサルタント、品質管理、内部監査、マネージャーなど、複数の役割を同時並行して担うことがあったが、面倒くさいなと思う一方で、そこから得られるメリットの方が大きかった。1つの役割で得た知識・経験が、他の役割で役に立ったことが少なからずあったからだ。だが、冒頭で「自分がなんとなく感じていたことだがはっきりとはできてなかったこと」と述べた通り、その「良さ」をうまく説明できずにいた。だから、職場で「それは自分の業務とは異なるからやりたくない」「ゴールに直結しないことはやりたくない」といった発言をする人がいたときに、「君のその考え方は、すごく損をしているよ」と、うまく説得できないことにもどかしさを感じていた。


そうしたモヤモヤがついに払拭された気分だ。偶然、手にした本だが、本書に出会えて本当に幸運だったと思う。



2020年12月31日木曜日

書評: 人新世の「資本論」

SDGsは幻想だし、それどころかアリバイ作りのようなものであり、目下の危機から目を背けさせる効果しかない」という著者の言葉にはハッとさせるものがある。

どんな本かと言えば「『サスティナビリティ』を脅かす一番の張本人は『資本主義』であり、これを解決するには『脱成長コミュニズム』を目指すしかない」ということを語った本である。脱コミュニズムについて、その背景から理由、解決方法にいたるまで著者の考えを説いている。


では、脱成長コミュニズムとは何か。それは成長、すなわち、生産至上主義から脱し、次の5つの柱を掲げて活動することをいう。詳しくは本書を読まれたし。


使用価値経済への転換

労働時間の短縮

画一的な分野を廃止

生産過程の民主化

エッセンシャル・ワークの重視


脱コミュニズムとは、言い換えれば、人工的な希少性の領域を減らし、消費主義・物質主義から決別した「ラディカルな潤沢さ」を増やすこととも言える。人工的な希少性の意味を少し解説しておくと、資本主義では希少性に値がつくため、そこにたくさんの無駄を生じさせるというのだ。典型例がブランディングだ。ブランディングをするために、広告を刷り、宣伝をし、不必要なプロモーション活動を行う。


脱コミュニズムは、そうした活動領域を減らそうという考えだ。そしてそれは決して国家に管理される必要のあるものではなく、市民が中心となってできる活動だと著者はいう。具体的にはワーカーズ・コープ(労働者協同組合)は、脱コミュニズムが目指す上で参考となる取り組みである。また、具体的な解決策として、本の後半では、バルセロナ市民が取り組んでいる「フェアレス・シティー」の取り組みを紹介している。これは、2050年までの脱炭素化という数値目標をしっかりと掲げ、数百ページに及ぶ分析と行動計画を備えたマニフェストである。


「いやいや、SDGsESGという言葉が注目されているし、これらに関する取り組みが進めば解決の可能性はあるでしょう?」 そんな反論が容易に出そうだ。しかし、それに対しても、幻想だということを訥々と説いている。資本主義の上で、しかもそれが「人任せ」では、超富裕層が優遇されだけだと著者はいう。


「コロナショック・ドクトリンに際して、アメリカの超富裕層が2020年春に資産を62兆円も増大させた出来事を思い起こせばいいだろう」(本書より)


そんな本書を読んだ感想を述べておく。確かに、どこか心の中で「地球の資源はまだまだ豊富であり、科学が発展すればいずれ解決される」そんなことを考えていた。でも、一番大事なことを忘れていた。その科学発展の時間的猶予がそもそもないのだ。


とはいえ、正直、この本を読んだから、明日から本書が示す考え方を軸に、全部自分の生き方を変えるのは無理だし、そうしようとまでは思わない。思わないが、今日の取り組みレベルでは全く温暖化に対抗できないということ、本当に取り返しのつかないレベルまで来ているということを強く意識できるようになった。加えてSDGsは本質ではなく手段にしか過ぎないし、その手段としてもまだまだ貧弱な取り組みであるということを認識できたことは大きいと思う。今後、経営者としてもビジネスパーソンとしても一個人としても、意思決定をする際の重要なインプットにしたい。もちろん、これからの若者たちのために、自分が社会に対して何ができるかを考え続けたいと思う。


最後に、やや余談だが、ミレニアル世代やZ世代などこれからを担う若者が、それ以前の世代に比べて、サステイナビリティなどに、より強い興味を持っていることを理解できた気がする。そうした世代に「売り上げをあげよう。上げなければ生き残れない」「やれ働こう」「やれお金を稼ごう」と訴えかけても心に響かないことは明らかだ。そんな意識を持ったまま企業経営を進めても、空回りするだけだ。


本書を読んでそんなことを考えた次第だ。


2020年12月26日土曜日

書評:High Output Management

「過去に大企業の会社運営で苦労した人の考えを知ろうとしないなんてもったいない」・・・そう思わせてくれた本だ。

HIGH OUTPUT MANAGEMENT(著者:アンドリュー・S・グローブ)

同著者の「パラノイアだけが生き残る」を読んで、感銘を受けていたこともあり、この人の本なら間違いないだろうとの思いから手を出した。

著者のインテルでの経験を基に、企業のミドルマネジメントの”あるべき姿”を書いた本だ。著者は、あの偉大なインテルの第一号の社員であり、1979年から社長、そして会長を2004年まで担った有名な人物だ。ミドルマネジメントのあるべき姿のすべてとは具体的には、役割・責任、立ち振舞方、生産効率の上げ方、1on1、教育・訓練、退職者への対応、人事考課などなどを挙げることができる。

超大作なので読むのに時間が必要で(私は1日で読み切ることはとてもできなかったが)、概念的な話に終始するものではないので、読みやすかった。何より具体的で著者自身の体験談が書かれており、ときにはそのときの思考プロセスが描かれていたので、興味を持って読むことができた。

得られたことはたくさんあった。気がつくと私のメモには・・・「組織不全の真の兆候は、人が25%以上の時間を、臨時に開かれる使命中心ミーティングで過ごすときに現れる」、「ワンオンワンミーティングは最低1時間は続けるべきであろう。私の経験で言うと、時間がそれ以下の場合には部下が持ち出してくる問題は、素早く取り扱える簡単なものにおのずと限定されがちである」「われわれは(人事考課において)スター的従業員の業績改善の試みにもっと時間を使うべきではないか」など、たくさん書かれていた。

実際、メモに取ったもののいくつかは、直接私が面倒を見るリーダーやメンバーたちに伝えたいと思ったし、人事考課における取り組み方など、いくつか会社で実践してみたいと思うことがあった。

ビジネスパーソンなら全員が読むべき内容である。「ミドルマネジメントのあるべき姿」という以上は、ミドルマネジメントはもちろんのこと、そういうミドルマネジメントを育てていかなければいけない経営者、やがてミドルマネジメントを目指す人は全てその対象になるからだ。


書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...