2011年5月2日月曜日

日経ビジネス5月2日号 「消えた外国人労働力」


日経ビジネス2011年5月2日号のテーマは「消えた外国人労働力」~日本人だけで職場は守れるか~。東日本大震災から2ヶ月近くが経とうとしているが、相変わらず記事の9割は地震絡みの話だ。同じ5月2日の日経新聞朝刊には”労働力”ではないが留学生について、似たような記事が踊る・・・。留学生、「日本離れ」~新学期に再来日せず入学辞退・・・。

ただし、私の性格がねじ曲がっているせいなのか、例によってスポットライトがあたる記事にあまり興味はわかなかった。今回、興味を引いたのは以下の記事だ。
  • ≪危機対応の研究≫ 新幹線、50日で復旧
  • ≪技術&トレンド≫ シェールガス、世界で採掘ブーム始まる
  • ≪特集≫リーダーが語る復興
■≪危機対応の研究≫ 新幹線、50日で復旧 

4月25日には東京-仙台間の新幹線の運行が再開された。3月11日の被災から、44日目のことである。そんな新幹線が実際にどのような被災をし、どのように早期復旧に向けて取り組んできたかの取材結果を5ページにわたって掲載している。取材によれば、3月11日の本震災により実に1,200にも及ぶ箇所が、また、4月7日の大きな余震では、約550カ所が被害を受けたそうだ。にも関わらず、結果的には阪神大震災(約3ヶ月)や新潟意見中越地震(66日)のときよりも早い復旧にこぎつけた。記事には、この裏にあった様々な努力・苦労について書かれている。 わたしは2つの点で驚いた。1つ目は、余震の影響の大きさ。本震か余震か・・・なんて、人間が勝手に作った定義なので、地震を起こす方からすれば知ったことか・・・とったところだろうが、それにしても1ヶ月の間に2回も、地震によって大きな被害を受けるとは・・・。地震で倒壊した建物は少ないと聞くが、高度な技術が集約した新幹線は、さすがに「ビクともしない」とは言えないようだ。 とは言え、復旧のスピードはたいしたものだ。これが驚いた2点目。上述したように、過去の震災よりも被害が圧倒的に大きかったのにもかかわらず、復旧が早く済んだというのは快挙以外のなにものでもないと思う。もちろん、日本の大動脈はもっともっと強固である必要がある。まだか、まだか、と不満を募らせた人もいただろう。だが新幹線の災害対策は、正しい方向へ着実に歩みを進めている・・・。そんな印象を受けた。

■≪技術&トレンド≫ シェールガス、世界で採掘ブーム始まる

”シェールガス(shale gas)”というものあるらしい。その名の通り天然ガスの一種だが、通常われわれが利用するガスに比べ、採掘が難しくコストに見合わないとされてきた。ところがここにきて技術革新が進んだことで、従来よりも安価に採掘することが可能になり、エネルギー業界に激震をもたらしはじめている。2035年には天然ガス生産の46%を占めるのではないか、と予測されているほどだ。福島第一原発の事故の影響で、全世界で原発使用に「待った!」の声がかかる中、火力発電所の原料であるLNG(液化天然ガス)の入手は、価格の面から困難になるのでは?と懸念されていたが、どうやら杞憂の終わりそうだ・・・とのこと。 とにかく今回、この記事を読んで”シェールガス”という言葉をはじめて知った・・・ことが収穫・・・かな。 ちなみに、日本国内にこのシェールガスが存在するか、というとそういうことではないらしい。しかも、火力発電所の燃料・・・ということで、クリーンエネルギーを促進するものではないようなので、そこは注意が必要だ。

■≪特集≫リーダーが語る復興

YKK AP、NTTドコモ、NTTデータ、NEC、富士通、曙ブレーキ工業の社長が今回の震災を通して苦労したこと、学んだこと、そしてこれからのことを語った記事だ。非常にためになった。

これらリーダー達が語ってくれた”これからの課題”の中で個人的に興味深かったものを挙げておくと

【NTTデータ】
・データセンターの発電機用の重油は3日超用意する
・システムを異なる電力館内のセンターに分散させる

【NTTドコモ】
・電話基地局のバッテリー(3時間)の強化をする
・衛生移動基地局車を現在(10台)の2倍にする
・断線対応のためマイクロ波のネットワークも用意する
・ボイスメールのサービスを検討する

【富士通】
・2次、3次といったサプライヤ供給能力まで調べておくようにする

とりわけ富士通の山本社長の「2次、3次のサプライヤ供給能力まで調べておくようにする」という発言は、サプライチェーンマネジメント全体に関わる話であることから、富士通一社だけの話ではなく、業界全体に向けての発言とも受けてとれる。上流にいる企業おいても、下流にいる企業においても、ますます「事業継続計画(BCP)」が注目されるということだろう。

===(2011年8月8日追記)===
日経ビジネス2011年8月8・15日号に再びシェールガスが取りあげられていた。技術的な可採埋蔵量(単位は立法メートル):

1位中国(36兆1000億)
2位米国(24兆4000億)
3位ポーランド(5兆3000億)
4位フランス(5兆1000億)
5位英国(6000億)
6位ドイツ(2000億)

ポーランド以外は経済で他を圧倒している国ばかりだ。日本に見つからんかねぇ。

===(2012年7月9日追記)===
2012年7月9日号の日経ビジネスに「欧州ガス事情に安堵するロシア」という記事が掲載された。
シェールガスが思ったほど脅威にならない、というのが趣旨だ。背景には、シェールガスの代表的な採掘法(水圧破砕法)が大きな環境汚染をもたらす可能性のあるものとして、ヨーロッパ各国が禁止措置をとりはじめたという事実がある。

しかも推定埋蔵量に誤りがあるという。たとえば、ポーランドでは5兆3000億と言われてきたが、実際にはこれよりも90%少ない3500億~7700億㎥ではないか、とのこと。エクソン・モービルはポーランドから撤退したともある。

どう転がるかわからないエネルギー業界。これからもますます目が離せない。

===(2015/01/25追記)===
昨年の夏、アメリカはテキサス州のサンアントニオに出張する機会があった。そのときに感じたのは、足利義満。シェールオイルの出るテキサス州では、この世の栄華を極めているような・・・そんな金満ぶり。明らかにアメリカ経済は潤っている・・・とそう実感したのだ。振り返れば、3年以上も前の日経記事(上記参照)を読んだとき、「ふーん、そんな技術もあるんだなー。でも、本当に世界を揺るがすほどの技術なのかな」と半信半疑で思ったものだが、いま、完全に強大な影響力を持つ技術になっている。シェアを失う一方のサウジアラビアは怒って、価格安定化の努力を放棄したし、その影響を受けて原油価格が急落し、エネルギーで持っているロシアなどはルーブルが急落中。先日、同じ余波を受けて、採算が合わなくなり、シェールオイル事業を営む一部アメリカ企業が倒産した。ちなみに、2011年に追記した「可採埋蔵量」はあまり現時点での論点にはなっていないようだ。石油を利用する化学会社(たとえばエチレン系など)は、戦い方や戦う土俵をガラリと変えないと生き残れない時代になった。スピード勝負だ。

ますます、目が離せない。

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