2011年5月9日月曜日

日経ビジネス5月9日号「不動産ショック」

日経ビジネス2011年5月9日号のテーマは「不動産ショック」。まだまだ震災に強く関係する記事が中心だ。自分なりに様々な雑誌に目を通しているつもりだが、毎回、初めて聞く話が何かしら出てくる。


大規模な電源設備を予め備えていたおかげで被害拡大を食い止めることができた企業として、キリンビールや、エルピーダメモリ、コマツなどが紹介されている。特にエルピーダメモリの11万2千キロワットの出力を持つ広島工場のコージェネ設備を写した写真は圧巻だった(さりげなく三菱のマークが目立っていたりする・・・笑)。

また、東北リコー社長の話 ≪実践の奥義≫大震災対応のBCP「想定外の断水を克服」を興味深く読めた。3月12日に開いた対策会議で操業停止を決めるも、電話が輻輳して利用できなかったため、自宅にいる社員にどうやって伝えるか苦労した話は、なるほどな、と思った。

他にも今回の号では色々とタメになる記事があったが、ここで個人的に取りあげてきたいのは以下の2つだ。

  • ≪リポート≫企業の災害対応に新潮流 「被災地支援が事業を磨く」
  • ≪渦中のひと≫西久保愼一 スカイマーク社長の告白「不透明な運賃をぶち壊す」

■≪リポート≫企業の災害対応に新潮流 「被災地支援が事業を磨く」

このリポートでは、震災から何週間か経って多くの企業が被災地支援から手を引きはじめる中、大きな貢献を続ける(あるいは、つい最近まで続けていた)企業にスポットライトを当てたものだ。

・すかいらーく・・・被害者ゼロまで炊き出しを続ける
・三城ホールディングス・・・めがねの提供に一手間かける
・エイチアイエス・・・埋もれたニーズに応えるプラン

こうした活動は、短期的な視点を持っていては実現できないものだ。なぜなら、短期的には莫大な費用がかかるからだ。事実、すかいらーくはこうした活動に3億円前後の費用がかかると見積もっている。この記事で、わたしが思い起こされるのは、先日、5月5日子供の日に訪問・インタビューさせていただいた仙台の企業だ。この企業では工場の8割が津波によって流されるも1週間後には片ハイながら、事業を再開している。その企業の常務が強調されておっしゃっていたのが、共助(助け合い)の重要性だった。

『被災時には、本当にたくさんの方に助けていただいた。』

当然、自分がどうしたら助かることばかりを考えていては、いざというときに誰も助けてくれない。常務は次のようにも述べている。

『日頃から、ネットワークを大事にしていたお陰もあると思う。外部委託しなくていい業務でも、あえてお願いして関係を築く努力をしてきた部分もある。それが本当に生きた。それがなければ、いくら立派なハード(BCP文書)が整備されていても事業は再開できなかっただろう。また、被災したときには、自分たちは何が地域や被災者に対して何ができるのか・・・こうしたことも真剣に考えて、実行できるようにしておかないといけないと思う』

NHK解説委員の山崎氏が書いた「地域防災力を高める」でも同じように共助に重要性を指摘している。本に寄れば、阪神大震災では、要救助者3.5万人のうち2.7万人(約80%)が近隣住民などにより救出されたそうだ。

もちろん、単なるボランティアでは企業がつぶれてしまいかねない。将来的には企業の利益につながり、短期的には被災地域の貢献にもなる・・・こうしたウィン・ウィンの関係を築く努力をすることが今の企業には求められているように思う。

■≪渦中のひと≫西久保愼一 スカイマーク社長の告白「不透明な運賃をぶち壊す」

この記事は地震とは関係ない。厳しい飛行機業界において、日本のLCL(ローコストキャリア)として息を巻く西久保愼一社長へのインタビュー記事だ。スカイマークでは、超巨大飛行機で有名なA380を活用し、国際線のビジネスクラスに、低価格フライトを持ち込もうと計画している。

『・・・ビジネスクラスはまだまだ高い。JALやANAの欧州や米国の路線では、正規運賃だと70万円以上の場合が多い。ビジネスクラスの座席空間は確かに広ですが、それでもエコノミーの2.5倍程度。しかし価格では6~9倍の差があります・・・(中略)・・・ビジネスクラスで30万円前後、プレミアムエコノミーで15~20万円を考えています・・・』

これは上手い!と思った。なぜなら、このサービスは私のような海外渡航の多いビジネスマンをターゲットにしているのだと思うが、まさにその当人であるわたしが「ぜひ使いたい!」と思ったからだ。ビジネスクラスは確かに高い。かく言う私もビジネスクラスには乗ったことはない。いつもエコノミーか、運良くアップグレードしてもらったプレミアムエコノミーを利用している。スカイマークのこのターゲッティングは機能するのではないか。

もちろん大手2社は指を口にくわえてぼーっと見ているわけにはいかない。ANAもLCL会社(A&F・Aviation(エーアンドエフ・アビエーション))を設立したという話だ。ただし、価格競争が激化することは間違いないだろうから、LCLの別会社を設立して闘うとは言え、大手2社の利益率は中長期的に下がっていかざるを得ないだろう。

ところで今回のような震災においては、大手2社が臨時フライトを出すなど、有事対応力を見せた。価格競争で三社が疲弊して、不測の事態に対応できる体力がなくなってしまわないように留意することも必要だ・・・なぁんてことを思った。

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