2013年6月28日金曜日

書評: 成功学のすすめ

「僕の夢には日付がある」・・・そう語って、自分の夢を次々に実現させてきたワタミ会長、渡邉美紀氏。でも、夢に日付を入れるだけではまだ足りない。具体的に何をどのように毎日を行動したら、夢を実現できるのか・・・その具体的手段を示すのがこの本だ。

成功学のすすめ ~7×7×7の法則~
著者:神野博史(じんの はくし)
発行元:如月出版

読みやすさ: ★★★★☆
オススメ度: ★★☆☆☆


■“豊かに生きる”ための虎の巻

著者の神野博史(じんの はくし)氏は、早稲田大学出身であり、議員であり、大学講師であり、公認会計士であり、経営者であり、コンサルタントである。身の回りの人みんなが豊かに生きることができるように、方々で活躍をしている人だ。こうした経歴自体が物語るように、神野氏は常に人生の目標を立て、それを達成してきた。自ら立てた目標を達成し成長し続けること・・・本書では”成功”をそう定義するが、著者自らが信じ、実践し、実現してみせた”成功”をつかみとるワザの集大成ともいうべきもの・・・それが本書なのだ。

人生を成功させる秘訣とは、いったい何だろうか? 神野氏が"成功を確実にする7つの黄金律"と題する章があるが、たとえばその1つにあたる「生活習慣を変える」の項では、具体的な心構え・活動のポイントとして「朝晩の心構えが成功を招く」「すすんで挨拶をする」「毎日かならず読経する」「朝風呂は成功思考を喚起する」「モノを大切にするとモノが集まってくる」「1日、7000歩、歩く」・・・などを挙げている。そこには「それができれば確かに人生は一変するだろうな」というともすれば耳の痛くなるような教訓がズラリとならぶ。

■著者自身の成功体験と熱い想いと強い信念と

成功するための秘訣??・・・自己研鑽するための方法??・・・こういった類の本はゴマンとあるじゃないか、と思う。私の数少ない読書歴からでも、たとえば、白石豊氏の「心を鍛える」新渡戸稲造氏の「逆境を超えてゆく者へ」などがパッと頭に思い浮かぶ。新鮮味という観点では、スポーツという切り口でアプローチする白石氏の本が優れていたし、説得力という観点では、やはりお札にまでなった新渡戸稲造氏が優れいていたように思う。このように類書がたくさんある中で、本書の特徴とはいったい何だろうか。

本書最大の特徴は、先に触れたように”この本のもとになる被験者が著者自身である”という点にある。いわゆる”成功の秘訣本”というものには、その根拠のほとんどを他人のケースに求めたり、自分と他人の両方のケースに求める場合が多い。本書はそのいずれでもなく、著者自身のみをベンチマークにしているといっても過言ではない。だから「信憑性が低いか」というと、そういうことでもなく、むしろ、そこに著者の「これをすれば絶対に成功できるはず。疑いの余地はない。」という熱い想いと強い信念を感じる。

また、本のタイトルに”成功学”とつけていることも特徴的と言えるだろう。そこには成功術を”学問のレベル”に昇華させようとしている著者の意志を感じる。学問とは、数学や物理学、統計学、言語学などのように、長い時間が経過しても陳腐化しない普遍的なものだと思う。つまり、著者は、人生を成功させるために役立ちそうなポイントを、ただ漠然と列挙するのではなく、誰もが、いつの世も、適用できるようなものをと、論理的・体系的な説明を試みている。なお、論理的・体系的といっても決して難しい読み物ではない。ポイントそれぞれに約1~2頁ほどの解説がついており、内容はシンプルで、ともすれば、日めくりカレンダーについてくるちょっとした教訓を読んでいるような印象だ。

■得られるものと、今後に求めたいもの

さて、この本から得られるものは何だろうか。私は先に「それができれば確かに人生は一変するだろうな」ということが書かれている、と述べた。全くその通りで、読むと身がピリリと引き締められた感じになる。具体的にはたとえば「自分の目標を立てる」という教訓について、私が既に実践してきたものであったが、ここ数年、なおざりになりがちのものであったので、本書を読んで「もう一度、緩んだふんどしを締めにゃあかんな」と思い直すきっかけをもらえた。また、ボランティアをしたほうがいいともあったが、わたしはボランティアには縁が全くないといっていいほどの人間である。だが、この本を読んで、ボランティアをすることの重要性についてははじめて納得できたような気がする。機会あればぜひ検討してみたい・・・と素直に思った。

一方でこうすればもっといい本になったのにな・・・と思える点もある。先に、「完全に著者自身をベンチマークになした本」と述べたが、そうであればこそ、もっと著者自身の経験を豊富かつ具体的に盛り込んで欲しかった。たとえば本書の中には、実際に著者自身が公認会計士を目指していた当時に作成したノートなどの写真などが登場する。非常に生々しくインパクトがあったが、こうした資料をもっと載せてくれたら、本書の魅力は2倍、3倍になっただろうと思う。

■成功に近道はないが、“道”は確かに存在すると確信した

これまでに読んだどの類書とも違うことは言っていないし、私も部分的だが、これまで似たようなことを実践してきたことがあるから、著者はとても正しいことを言っている・・・ということが直感的に理解できる。著者の言うことを本当に実践できれば、間違いなく、著者の言う”成功”をすることができるのだと私も思う。こうした本を読むにつけ、改めて思う。やはり、成功への近道こそないが、成功学というものは確かに存在するのだと。

だから、自分を今より高めたいと思っていて、こうした類の本を読んだことがない人・・・正直、書き方に好みが大きく分かれるところだと思うが、そういった人は・・・もし、この本がリーズナブルに入手できるのならば(1500円は高すぎると思う)、手を出してもいいのではないかと思う。なお、著者いわく、成功学の実践に年齢制限はないとのこと。わたしも同感だ。


2013年6月23日日曜日

書評: プラチナデータ

プラチナデータ
著者: 東野圭吾
出版社: 幻冬舎文庫


■警察に革新的技術がもたらされたときに何が起こるのか?

警察庁は、犯人検挙に役立つ"DNA捜査システム"を開発した。このシステムは、犯人の残していったDNAの痕跡(たとえば、髪の毛一本)から、DNAデータベースに照合をかけ、犯人と同一のDNAを持つ者(つまり、犯人)を見つけ出せる技術。この技術が革新的なのは、その照合能力にある。DNSデータベース上に、犯人のDNAと完全に一致するものを見つけられなかったとしても、類似するDNAを持つ者・・・すなわち、犯人の近親者を特定できてしまう。さらに、DNAから犯人の顔イメージも作り出す。そして、こうした処理が、わずか数日で行われるというわけだ。

まさに夢のようなこの技術は極秘裏の試験導入ではあったが、警察において大きな成果をあげつつあった。そんな中、DNA捜査システムの開発・導入に携わった開発者の1人が大きな問題に気がつく。その問題発見のきっかけとなったのは照合時に頻出する”NF13”というコード。NFとはNot Foundの略で、DNAデータベース上で、照合元のDNAと一致または類似するDNAが全く見つからないときに表示されるエラーコードだ。その問題とは何なのか? それが明らかになろうとした矢先、その開発者が謎の死を遂げる。いったい何が起きたのか? そしてその開発者が指摘しようとした問題とはなんだったのか? 果たしてNF13というエラーコードが持つ真の意味は? 最新技術の裏に隠された巨大な陰謀が明らかになっていく・・・。

■最新技術をネタにした限りなくリアルなストーリー

この本を読み終えるまでの2日間。先が知りたくて知りたくて、隙間時間はひたすら本にかじりついていた。ストーリーや結末をどうとらえるかは人によって異なるところだが、少なくとも「読者を捕まえる魅力を十分に兼ね備えた本」ということだけは間違いなく言える。この本の何がいったい・・・そんなに興味をそそるのか。

それは、フィクションでありながら、ノンフィクションのような・・・妙なリアリズム感にあると思う。まず、小説に登場するDNA捜査システムだが、まだ現代の科学技術では無理とされるが、決してあり得ない話ではない。事実、この書評を書いている今、まさにこの瞬間、横にあるテレビでは遺伝子検査サービスなるものが登場した・・・と紹介されている。ただしちなみに、ネットで調べてみたところ現代の科学技術では、毛幹から適切なDNAを抽出できる成功確率は数パーセントだとか・・・。

妙なリアリズムを感じさせるもう1つの点は、このDNA捜査システムの活用のされ方だ。小説では試験導入という名目で、国民のDNAを極秘裏に採取しデータベース化を行っていることになっている。これは明らかにプライバシーの侵害で、違法行為だ。この話を聞いて何か思い出さないだろうか? そう・・・いま、アメリカで起きているプリズム(PRISM)だ。プリズムとは、テロ活動の予測や防止という目的のために、アメリカ政府が極秘裏にグーグルやフェースブックの個人情報を収集して監視するプログラムのことだ。この小説はこのプリズム問題が明るみに出る遙か前に書かれたものだが、権威ある者が、ひとたび強力な技術(力)を手にすると、どういうことが起こりやすいのか・・・DNA捜査システムの使われ方は、まさにノンフィクション以外の何者でもない。

■軽い気持ちで読めるなら・・・

さて、「プラチナデータ」の残念な点を1つ挙げるとすれば、後半にさしかかるとだいぶ色々な展開が読めてきたという点だろうか。最後までワクワク感を持ちたい読者としてはあともう少しだけ頑張って欲しかったところだ。

まぁ、仕掛けや最後のオチに満足するかどうか・・・これは人によって大きく分かれるところだと思うが、先に述べたように読者に「先が知りたい!」思わせる点では十分成功しているし、また、娯楽要素を提供しつつ、さりげなく今後の我々一般国民へ警鐘を鳴らしている・・・という点は興味深い。大きな期待を持って読むと裏切られるが、軽い期待で読むなら、そこそこ愉しめる価値ある本だと思う。


2013年6月16日日曜日

書評: 聞く力

コンサルタントという職業柄、人と話す機会はとても多い。だが、決して、コミュニケーションが得意なほうだとは思わない。特に自分は、パーティなどで見知らぬ人と出会って、弾んだ会話をする・・・そんなことが大の苦手だ。このように苦手だと思っているから、「聞く力」がヒントになれば・・・と思って、読んだ。





■1000人斬りをして学んだコミュニケーション術

ん!?阿川佐和子(あがわさわこ)さん?聞く力!?・・・確かに有名人であるには違いないが、インタビューの達人だったっけ? 

本書のプロフィール欄を見ると、”週刊文春”の対談ページは連載900回を突破している・・・とある。なるほど、これだ。900回・・・ということは、この連載のためだけでも900人以上とインタビューをしたという計算になる。毎日インタビューをしたとしても3年近くかかるボリュームだ。そう、つまり、本書は、阿川佐和子さんが実体験の中で得た”上手な対話の仕方”について得た学びを35個のヒントにまとめ、共有してくれる本・・・というわけである。本人の言葉を借りて表現すれば、本書は、阿川佐和子さんがインタビューの中で1000人近い出会い、30回以上のお見合いで掴んだコミュニケーション術を披露したものなのだ。

■本書そのものが阿川さんの主張の裏付けになっている

ひとたびページを開くと、スラスラと読めてしまう。さすが、エッセイスト。あたかも読者が目の前にいることがわかっているかのような、淀みのない、やわらかい言葉遣い。そして、時折みせる謙虚な姿勢。人の話を上手に聞くための35のヒントの中に「相手の気持ちを推し測る」「自分ならどう思うかを考える」・・・というポイントが出てくるが、これらは何もインタビューのためだけではないのだろう。こうしたテクニックは、本書にも遺憾なく発揮されているのだ。

『今でも対談に出かける前は、ビクビクどきどきしております。あら、インタビュー? ちょちょいのちょいでやっつけてきますよ、なんて、そんな余裕はないのです』(本書の”まえがき”より)

「テレビにしょっちゅう出てる人が、そんなビクビクしてる・・・だなんて。謙遜し過ぎるのもはなはだしい」・・・普通なら読者はこう考え、やや引いてしまうところだが、彼女が惜しげもなく披露する失敗事例を読んでいると、それ(謙虚な姿勢)が全くの嘘ではないことが分かる。本当は、相手にしゃべってもらわなければいけなかったのに、自分がほとんどしゃべっていた、という話。事前に用意したメモばかり見てインタビューをしたがために、全く流れを無視した質問になってしまった、という話。分からなければ何でも正直に聞けばいいという考えに甘えすぎて準備を怠り、相手を怒らせてしまった話・・・などなど、聞いていると、「あぁ、テレビに出てるような有名人でも、我々庶民とさして変わらないところから出発し、苦労を積み重ねてきたんだなぁ・・・」という(なぜだか)読んでいる者に、安心感を与えてくれるのだ。

■人とコミュニケーションをとる機会が多い人に

さて、読んでみてどうだったか。冒頭に触れた自分の苦手は克服できそうか。結論から言うと、”難しそう”である。理由は、(少なくとも私にとっては)35のヒントについて、既に知っていた・・・あるいは、これまでも何となく気にかけていた・・・といったものがほとんどであったからだ。きっと、過去にビジネス書を何冊か読み、テクニックだけに関しては既に”頭でっかち”の息に達していたからなのかもしれない。だからわたしのように「明日からすぐにでも使えそうな魔法のテクニックが欲しい」・・・そんな幻想を抱いて読むなら、やめた方がいい。

とは言え、本書を読むことで、基本的な考え方は整理される。「メモなんか用意してたらダメ。相手の話に集中できなくなる。」などといった指摘を聞くと、「ああ、そうだった、そうだった」と、普段からなんとなく分かってはいるけどあまり意識していなかったことに気づかせてくれる。ぼんやりと考えていたことが整理された・・・みたいな・・・感覚だ。

まとめると、”決して魔法の本ではないが(いや、そんなものがあるはずもないだろうが)、人との対話における基本中の基本をカバーしている本”・・・それが本書「聞く力」と言えるだろう。だから、「人と話す機会は多いけど、自分はしっかりと基本を抑えることができているか自信がないな」とか、「いま、人と話すことにおいて、自分はどのレベルにいるんだろう」とか・・・そんな疑問を持つ人が読むのにちょうどいい本だと思う。ちなみに、私の場合は、「どうも、基本は抑えることができているようだ。だから、後はテクニックにこだわり過ぎて”頭でっかち”にならず、実践重視で磨いていくのが正しい道かな」ということが、本書を読んで得た結論だ。


【コミュニケーションという観点での類書】
伝える力(池上彰著)
伝え方が9割(佐々木圭一)

2013年6月14日金曜日

深夜3時のタクシー劇場・・・

深夜3時。オフィスを出ると目の前を”空車”を灯したタクシーが1台、2台、3台、4台と、通り過ぎていく。わぁお、多いな・・・そんなことを思ってる合間にも次から次に新たな空車タクシーがやってくる。

歩き始めたとたん、気のせいか、わたしの周りにいたタクシー達が、マトリックスのワンシーンのように速度を落として走り始める。いや、きっと、自分が気にし過ぎなんだ・・・そうだ、そうに違いない。車が同時にスローモーションのように速度を落とすなんて、そんな映画みたいなことはあり得ない・・・はずだ。

自宅方向のタクシーを捕まえるために”新宿通り”を渡るべく交差点で信号待ち。その瞬間、横断歩道の(渡りきったところ)向こう側に一台のタクシーが、キュッ・・・っと停車。手も挙げてないのに・・・まさか・・・ね。そうか、きっと誰かが乗っていて人を降ろす必要があったんだ・・・。そうなんだ。

信号が青になったので渡る。さっきのタクシーはまだ停止ランプをつけて止まっている。誰も降りてきた気配はない。意味もなく止まった車がなんか怖かったので、近づく気がしなかった。横断歩道をわたりきった瞬間・・・タクシーは、急発進して走り去った。

単にひねくれた性格が災いしてるだけなのか、純粋に怖かったからなのか・・・わからないが、横断歩道を渡りきった後も、次から次にやってくるタクシーに向かって手を挙げることができなかった。なに、してんだか、オレ。仕方がないので、しばらく道に沿って歩き始めた。はよ、帰りたいぜー。つと勇気を振り絞って手を挙げる。しかし、そういうときに限って一台も目の前を走っていない(>_<) おいおい。タクシーが私を狙っている・・・だなんて、全て妄想だったんだ・・・そうだ、そうに違いない。だって、いざ手を挙げてみれば一台もいないんだもの。

そう思った瞬間、100メートル後方で信号待ちしてい車が、猛ダッシュで近づいてくる。タクシーだ。それも遙か後方で、非常停止ランプをつけ、パッシングをしながら・・・近づいてくる。怖いって・・・。やや警戒しながらタクシーに乗り込んだ。

タクシーの運転手が「どちらまで行かれます?」と聞いてきた。「東名川崎方面でお願いします」と答えた。強い博多弁なまりで「えええええっ!!! ありがとうございます!!! 本当にっ!!!! いいんですか!? いや、いや、いや、いやーー。いやー!!! すごい助かるな-。ありがとうございます!!! ありがとうございます!!!!」・・・リアクション大き過ぎるって、運転手さん・・・。

運転手「お客さん、ナビに正確な目的地を入れたいんですけど・・・いいですか!?」
私「あ、いや、面倒なんで、東名川崎着いたら、そこから口頭で説明します」
運転手「わかりましたっ! ではもし、あれだったら・・・寝てらしてください。着いたら起こしますから・・・」
私「あ、助かります。ありがとうございます。じゃー、お言葉に甘えて・・・。」

(10秒後)

運転手「お客さん、もう、今日は雨が降ってて、客足が遠のいちゃって。いや、本当に助かりました・・・」
私「そ、そうなんですか・・・。雨降った日って逆に儲かりそうな感じしますけどねー。お役にたてて良かったです。じゃ、まぁ着いたら起こして下さい。」
運転手「はい」

(10秒後)

運転手「お客さん、私ね、九州からでてきて働いてるんですよ。家族はずっと九州、私はずっと東京で・・・。もう25年になるかな。」
私「えっ、そうなんですか。25年て・・・。でも、たまに帰ってらっしゃるんですよね?」
運転手「はい、帰ってますよ。年に3~4回。ちょうど、近いうちに祭りがあるんで・・・これだけはずっと小さい頃から出てて・・・なので、もうすぐまた帰ります。」
私「へぇ~、祭りかぁ。いいですね~。」
運転手「はい。あ、ごめんなさい。話しかけちゃって。寝てて下さいね。起こしますから。」
私「いえいえ。ありがとうございます。」

(10秒後)

運転手「お客さん、博多の名物って何か知ってます・・・?」
私「え、ええ、明太子とか・・・ラーメンとか・・・かなぁ」
運転手「そう、そうなんですよ!明太子。明太子っつってもねー、いろいろな種類があって・・・。今は・・・・が有名かな」
私「・・・・」

(繰り返し、繰り返し、繰り返し)

えんえん、この繰り返しで、ついに自宅に到着。なんだ、この”眠気さ”と、次から次と玉手箱のように話題を振ってきた運転手さんの話の底が見えなかった”もやもや感”は。


オフィスを出てから次から次へと・・・めまぐるしくいろいろなことが起こり一体何なんだ今日は・・・という困惑の気持ちと、タクシーという名のライオンの群れに襲われそうになって疲れたな・・・という疲労感一杯の気持ちと・・・、眠りたいという気持ちと・・・、でもさりげなくこの運転手さんの人生が面白そう・・・実は話をもっと聞いてみたいという好奇心と・・・。

まぁ、色々とあったわけだが・・・この奇妙な思い出と、今から名古屋で仕事なのに猛烈に眠いっ!という事実だけが残った。また、あの運転手さんのタクシーの乗りたいっ!


2013年6月7日金曜日

書評: 学校では教えてくれない日本史の授業2 天皇編

人生ではじめて日本史が頭に焼きついた。相変わらず面白い本を書いてくれる著者に感謝。

タイトル: 井沢元彦の学校では教えてくれない日本史の授業2 天皇論
著者: 井沢元彦
出版社: PHP出版


■点と点を結ぶ歴史の”裏教科書”

著者、井沢元彦氏特有の鋭い視点をもって日本の歴史を解剖するシリーズ第二弾だ(シリーズ第一弾はこちら)。今回は、天皇制についてだ。例によって歴史教科書にはおろか、学校の先生の話にも出てこないような”裏話”や”行間”を語ってくれている。

ところで、城郭研究者の西股総生(にしまたふさお)氏は、戦国時代の城のデザインから、当時の戦い方のみならず、当時の兵士達がどのように徴兵されていたのか、戦争のないときはどのように生活を営んでいたのか・・・を、ひもといて見せた。人文地理学の権威、足利健亮(あしかがけんりょう)氏は、地図に見てとれる地形や地名、番地などから、昔は土地が何に利用されていたのか、その土地に住む人々の昔の暮らしがどんなだったのか、どのような思いで戦国大名がその場所に城を建設したのか・・・をひもといて見せた。

実は、井沢元彦氏の”鋭い視点”というのもこうした人達に通ずるものがある。通常の歴史専門家が加味していない視点・・・すなわちたとえば、通常の学問に、宗教学や言語学などを加味することが新たな発見(著者曰く、当然の発見)につながっている。たとえば、幕府と朝廷の二立併存の話。かの藤原氏も、足利氏も、織田信長も、豊臣秀吉も、徳川家康も・・・決して、天皇を抹殺してその権威を奪うようなことはしなかった。著者はその理由について、日本人の怨霊を恐れる気持ちとケガレ(血を流すこと/流した者)を忌み嫌うという宗教観から見事に説明してみせている。仏教では輪廻転生や輪廻から解き放たれる解脱(げだつ)という考え方があるが、日本人(・・・いや神道といったほうがいいかもしれないが)にはどうやら、死=無/ろくなものではない、(だから忌み嫌うもの)といった考え方が強かったようだ・・・と、天皇のお墓の造りや埋葬の形態などから解説してみせているのだ。

■天皇を見つめることで日本史のすべてが浮き彫りになる面白さ

点と点を結んでくれる”学校では教えてくれない”シリーズにおける本書の見どころは、日本史に一本の太い線をとおしてくれることにあるだろう。逆に言えば、天皇制というテーマを深く掘り下げることで、これほどまでに、はっきりと日本史の全体像が見えてくるとは思わなかった。邪馬台国、豪族、聖徳太子、武士、大名、幕府、仏教、2・26事件・・・すべてが天皇制につながっている。

しかも本書で取りあげるテーマが誰もが興味を持つものばかりなのである。たとえば今ぱっと、私が思い出せるだけでも、以下のようなものがある。
  • 邪馬台国は結局どこにあったのか?
  • 古墳とはいったいなんなのか?
  • 白河上皇がとった院政(いんせい)は何がそんなに凄いことなのか?
  • 武士はなぜ天皇の地位を脅かさなかったのか?
  • 仏教は神道になぜ?どのように?とりこまれたのか? 

■読む者全ての頭を刺激してくれること間違いなし

著者も認めているが、この本に書かれていること全てが正しいとは限らない。だが、教科書に載っている歴史も正しいことは限らないのである。むしろ、そうでないことのほうが多いくらいだと思う(知っているだろうか? われわれが昔ならった仁徳天皇陵は、もう仁徳天皇陵とは言わないそうである。また、鎌倉幕府の設立年度は1192年よりももっと前だったという説が有力になってきているそうだ)。

であるとするならば、本書の価値を”書いている内容の正確性”だけで判断するべきではなく、むしろ、”どれだけ人の興味を刺激してくれるか”あるいは”既存の歴史をどれだけ補ってくれるか”で判断するべきだろう。そのようなわけでとりわけ、(もちろん、賛否両論はあるだろうが)
  • 受験勉強で日本史を丸暗記しようとして苦しんでいる人
  • 神道や仏教のつながりに疑問を持っている人
  • 天皇はいったい何者なんだと思っている人
  • 学校で歴史を教える先生方
といった人達には極めて有益になると思う。



【面白い切り口で歴史をひもとくという観点での類書】
 ・学校では教えてくれない日本史の授業(井沢元彦著)
 ・学校では教えてくれない日本史の授業 悪人英雄論 (井沢元彦著)
 ・地図から読む歴史(足利健亮著)
 ・戦国の軍隊(西股総生著)

2013年5月19日日曜日

多くの日本企業が「似たような事業」に取り組んでいる

月刊VOICE2013年6月号
今回、月刊VOICE2013年6月号で最も印象に残ったのはローランド・ベルガー氏の次の話だ。

『私が見過ごせないと思うのは、多くの日本企業がじつは「似たような事業」に取り組んでいる事実である。ソニー、日立、東芝、パナソニックといった日本企業は、同業他社をベンチマークにしすぎるあまり、いずれも同じようなビジネス、市場にフォーカスしている。』
(ユーロが強い通貨であり続ける理由 ローランド・ベルガー)

要するに、「日本企業はグローバルで戦うには非常に非効率だ。似た事業をするならくっつくべきだし、そうでないならもっと差別化を図るべきだ」・・・そんな指摘なのだと思うが、”同業他社をベンチマークしすぎるあまり”という言葉に激しく同意したい。そして、この指摘は何も事業戦略に限った話ではない、ということを付け加えておきたい。私は、企業に対してリスクマネジメントのあり方をコンサルティングさせていただく立場だが、プロジェクト期間中に十中八九聞かれる言葉が

「他社はどうしている?」

という質問だ。自分たちがどうしたいか?どこまでリスクをとりたいか?を決めるのに、その判断基準の多くを他社に求めてしまうのである。市場の攻め方も一緒なら、守り方も一緒・・・。これまでは需要があったのでそれでも通用したが、グローバル化が進み、供給者の競争が激化する今日・・・これでは生き残れないのではないか・・・と、生意気ながら、危惧してしまうのである。


以下は、その他月刊VOICE2013年6月号で私の目にとまったもの。

『最近、自らの意見は述べず、その傍らで誰か著名人が発した刺激的な言葉を世の中に流布させようとするメディアが目立つ』
(高校野球で見えた「狡い」メディアの姿 杉山茂樹)

『まずアメリカだが、これは完全に復活したのではないか、と思うほどの状態だ。』
(世界のマネーは米国をめざす 大前研一)

『たとえば過去五~六年のあいだ、円はドルに対して約四割上昇した。そして韓国ウォンに対しては約五割上昇したのだ。』
(「東京特区」が日本経済の景色を変える 竹中平蔵)

『「ロシアはエネルギーを政治の武器に使用する」という間違ったイメージが日本国内にも広がってしまったからだ。そもそもウクライナへの(ロシアによる)天然ガス供給停止は、ウクライナが天然ガス料金をロシアに払わないばかりか、ウクライナ領を通過するパイプラインからの天然ガスを違法に抜き取る行為を、恒常的に行っていたことに対するロシア側の懲罰的な措置であったのである。』
(いまこそ「エネルギー日ロ同盟」を結べ 藤和彦)

『日本式の(意志決定)モデルは、”正しい”選択をするために十分な情報をもつべきだ、というものでしょう。いい替えれば、何かを選択する際には、経験を十分に積んでおかなければならない、ということです。一方、アメリカ式のモデルは、とにかく選択しなさいというものです。”正しい”選択というのは、まさに選択することからしか学べないというわけです。』
(安倍総理の「過去の失敗」は名誉の勲章だ シーナ・アイエンガー)

『部長職で定年退職した人の平均余命がいちばん短く、役員になった人や、部長に昇進できずに定年退職した人の平均余命は長い傾向が見られました。上場企業を足し良くした人に話を聞くと、「役員になる人には、いい加減な人がいるけど、部長で定年になる人は、非常にまじめな人が多い」と教えてくれました。』
(免疫力を高める中高年の秘密兵器 奥村康)

2013年5月18日土曜日

書評: 中学受験という選択

中学受験という選択
著者: おおたとしまさ
出版社: 日経プレミアシリーズ


■育児・教育ジャーナリスト・・・中学受験を語る

「中学受験したほうがいいよ」
「中学受験するなら小学校中学年からはじめないと」

小学三年生の息子を持つわたしは、最近、似た家族構成の親御さんたちから、このような言葉を頻繁に聞くようになった。わたしは現在40歳だが、学生時代にはこのような選択肢はほとんどなかったように記憶している。子供たちに選択肢が増えることはいいことだ。ただ、中学受験がなぜ注目されるようになったのか、なぜ人気を博しているのか・・・実のところ、わたしは中学受験のメリットがよく分かっていなかった。もっと言うと「勉強漬けになって子供がかわいそう」「結局は親のエゴに過ぎない」など・・・良く聞こえてくる主張は本当なのか、あるいは、ただの偏見に過ぎないのかさえも、理解できていなかった。そして、これはわたしだけではないハズだ。本書は、わたしを含めこのような疑問・悩みを持つ人たちのために書かれた本である。

ちなみに、著者のおおたまさとし氏は育児・教育ジャーナリストだ。どれだけの著名人なのか、実績を残している人なのかは知らないが、以前、水道橋博士のラジオ番組にゲスト出演した際に、氏の話す内容が至極まっとうに聞こえたので「では、本を読んでみようではないか」という気になり、本書に手を出すことになった次第だ。

■中学受験の良さを理解した上で、上手にトライするための虎の巻

こういった類の本を読むときには著者のスタンスを知っておくことが大事になる。人の意見に流されやすい人ならなおさらだ。著者が中学受験推進派なら、読み手も自然にそっちのほうに流されていくことになる。逆もまたしかりである。おおたまさとし氏はどうなのか。結論から言うと、”食わず嫌い否定派”である。つまり、「中学受験は駄目だ、駄目だ・・・とか色々言われているけれども、ちゃんと目を見開いて事実を確認して欲しい。その上で、そのメリットに納得ができたのであれば、積極的にトライすべきだ。」というスタンスである。

『中学受験といえば塾である。特殊な場合を除いて、まったく塾に通わないでの中学受験は無謀だ。しかし、塾に対する世の中のイメージがこれまた悪い。”お弁当をもたされて、夜遅くまで塾に通わされて、今の子供は本当にかわいそう”という声をよく聞く。多くの場合、思い込みではないかと私(著者)は思う。ベネッセ教育研究開発センターが・・・』(本書第二章 塾通いは本当に「かわいそう」なのか、より)

この著者のスタンスを本の構成で捉えると、全8章のうち、最初の1~3章(約4割)を中学受験に対する偏見払拭のために割いている。残りの4~8章(約6割)を中学受験をする上で知っておくべきことに割いている。特に後半では、中学受験に失敗した人、成功した人・・・の具体的事例を紹介することを通じて、読者に対する心構えを説いている。

■正しい決断を下すためのインプットの1つとして

この本から得られるアウトプットは人それぞれだ。たとえば私は(今後、どう気持ちが変化するかは分からないが、少なくともこの本を読んだ直後は)「あぁ、うちは中学受験はいらないかな」という結論を得た。これは本書のお陰で「中高一貫学校に進学した人のほうが、大学受験で有利になるのかも」という考えが必ずしも正しくなかったことがわかったからである。何よりも、やはり親子共々大変そう・・・という印象が強かった(笑)。もちろん、わたしとは逆に中学受験の合格発表のときにある家族が全員で涙を流した事例を目にして、「あぁ、やっぱり中学受験させてみようかな」と思う人がいてもおかしくはないだろう。

重要なことは、この本を読んだからと言って、過った決断を下してしまう・・・という可能性は低そうだ、ということである。むしろ、正しい決断をだすための有益な情報源の1つになるもの、と言えるだろう。自分の決断を担保するために、できれば別の著者の本も読んでおきたいところだが。

少なくとも・・・

・中学受験の功罪を知りたい人
・中学受験に疑念を持っている人
・中学受験をすると決めたけど、どんな心構えをしておくべきか知っておきたい人

そんな人にオススメの本である。

2013年5月11日土曜日

書評: 実践 日本人の英語

実践 日本人の英語
著者: マーク・ピーターセン
出版社: 岩波新書
■あのマーク・ピーターセン教授が書いた英語のライティング実践編

昔、スペイン人の友達が「僕は30歳です」というのを英語で I have 30 years old と言ってきたことがある。もちろん、これは正しくない。正しくは、I am 30 years old だ。でも、なぜスペインの友人は am ではなく have を使ったのか。それは、スペイン語ではそのように(”年齢を持つ”と)表現するからだ。これは言ってみればスペイン人ならではの間違いだ。同じように日本人ならではの間違いというのも多々存在する。そんな日本語表現にスポットライトを当て、正しくは英語でどう表現すべきかについて、実例を踏まえながら理路整然とわかりやすく解説しているのが本書である。

この本の執筆者、マーク・ピーターセン教授は知る人ぞ知る、日本人向け英語解説本の大家だ。アメリカ出身者だから英語に精通しているのはもちろんだが、(氏の書いた本を読むと分かるが)日本語への精通度も半端ではない。過去に「日本人の英語」「日本人が誤解する英語」などを出版している。

■なにが実践的なのか?

「日本人が誤解する英語」も、今作「実践編 日本人の英語」も、何となくだが似ている。どちらも日本人だからこそ間違えやすい英語に言及しているという点では一緒だ。また、部分的に同じような解説も見られる。では、いったいどこが異なるのか? いったい何が実践的なのか!?

前者が文法視点でテーマを分け、解説しているのに対し、後者は日本人が良く使う日本語視点で章立てをし、解説をしてくれている。したがって、たとえば「日本人が誤解する英語」では、前置詞、冠詞、仮定法、使役動詞、受動態などといった言葉がずらっと目次に並んでいるが、「実践編 日本人の英語」では、「~の~」「もし~なら」「~だけ」「ほとんど」「結果として」「~など」といったような、日本人なら誰もが良く使うフレーズが目次に並んでいる。

つまり、同じ誤解を生じやすい英語の中でも、よく使う日本語に焦点を当てている・・・という点が、本書を実践編と呼ぶ所以と言えるだろう。

■この問題を間違えるなら買う価値あり

せっかくなので、ちょっと考えてみて欲しい。以下に3つの問題を出す。

第一問)
みなさんは、「体重が減りました」を英語でどう表現するだろうか。なお、体重は "weight"、減るは "lose"(過去形は "lost") を使う。

第二問)
「東京で友達に会えた」を英語でどう表現するだろうか。なお、友達は"friend"、会うは"meet"を使う。

第三問)
街の情報を英語で「the information of the city」と書いた。どこが間違っているだろうか。

回答はこの書評の一番最後に書いておくが、もし、間違った人は本書から得られる学びは、それ相応のものがあると言えるだろう。本書には、このように「えっ!? それ、間違いだったの!?」「えっ!? 何が問題なの!?」と思えるような英語に対する解説が、たくさん登場する。ちなみに、私に関して言うと、カンマやイタリック体を使った場合の文意の違いについて学ぶことができたので大きな収穫だった。

■英語のライティングを極めたい人なら2冊とも読んでおきたい

さて、学び多き本ではあるが、対象読者層は、本当にライティングを極めたいという人に限定されるかもしれない。具体的にはたとえば、研究者や院生など英語の論文を書く機会の多い人や、私のように仕事で英語を使う機会が多い人、あるいは、英語の先生なんかも知っておいて損はない。いや、先生なら、こうしたことを知っておいて欲しい。断言できるが、わたしが学生時代の英語の先生は、こんなことをとてもとても理解して英語を押してくれていなかったように思う。

なお、先述したように「日本人が誤解する英語」「実践 日本人の英語」も似た内容をカバーしてはいるが、それぞれ特徴がある。両者は、補完関係にあると言えるので、ライティング力を真剣に伸ばしたいという人なら両方の本を読むことをオススメする。そうではなく、ちょっと気軽に知ってみたい、学んでみたい・・・という人・・・そういう人には、良く使う日本語視点で解説してくれている、この「実践 日本人の英語」がちょうどよいかもしれない。

★問題の解答)
第一問) I lost weight が正解。もし、I lost my weight と書いたのなら間違い。
第二問) I was able to meet him が正解。もし、I could meet him と書いたのなら間違い。
第三問) of ではなく、 about もしくは on が正解。
※理由を知りたい方は、ぜひとも本書を読んみてください。



【類書】
 ・日本人が誤解する英語(マーク・ピーターセン著)

2013年5月9日木曜日

書評: 「はじめての積立て投資1年生」ほか1冊

今回は、比較的狭い分野に限定された本であるだけに、読んだ2冊をまとめて紹介させていただく

忙しいビジネスマンでも続けられる毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術
著者: カン・チュンド
出版社: 明日香出版社


はじめての積立て投資1年生 ~1万円からコツコツはじめて増やせるしくみがわかる本~
著者: 竹内弘樹 (監修:尾上堅視)
出版社: 明日香出版社



■リターンが低いのもリスクが高いのも嫌!というわがままな人向け投資術解説本

初心者向け積立て投資術の本である。なお、積立て投資術とは、”投資信託”と呼ばれる金融商品を使って、コツコツ上手に貯めて子金持ちになりましょう・・・というテクニックのこと。また、投資信託とは、(誤解を恐れず、私流にわかりやすく表現すると)FXほどハイリスクハイリターンでもなく、株式ほどミドルリスクミドルリターンでもなく、普通用金や定期預金ほどローリスクローリターン※でもない・・・言わばちょいミドルリスクちょいミドルリターンのような金融商品のことである。株式やら債権やら・・・個々にそれぞれを見ればリスクが高いものも、色々と組み合わせて福袋化することで、適度なリスクで適度なリターンを見込めようになる・・・そんな発想から作り上げられた商品のことだ。

ちなみに私はFXに手を出したことがあるが、20万円を専用口座に振り込んで最初の1ヶ月で10万円儲けた。ただし、翌月には13万円を失い、トータルで3万円のロスになった。こちらは投資信託に比べて、まさにハイリスクハイリターンの商品と言える。

※普通預金は元本割れを起こさないという点でノーリスクだが、貨幣価値そのものを減少させてしまうインフレに対してはノーリスクですまないので、あえてローリスクという言い方をさせていただいた

■わかりやすさの中にも、違いあり

各本の特徴について述べたい。「積立て投資術」は、”超”がつくほどシンプルさが際立つ本だ。理由は、読者が明日から何をすればいいか・・・明確な道筋を示しているからだ。無数にある積立て信託を行うための窓口会社の中から、具体的に4つの会社の名前を挙げている。それだけでない。買うべき投資信託の種類までほぼ特定している。さらに、著者はあくまでも”一例”とエクスキューズしているものの「毎月5万円で7000万円つくる」というゴール設定まで、読者の代わりにしてくれている。見出しの一部になっていることからもご理解いただけるハズだ。「選択肢を提示されてもよく分からない!」というとことん甘えん坊の読者は、とりあえずこの本の著者が言うままに、推奨する窓口会社で、推奨された商品を買う・・・そんな感じになるだろう。

「はじめての積立て投資1年生」は、同じく、わかりやすさという点と、このあたりを買えばいい・・・というおおよその方向性を示してくれているのが特徴的だが、「積立て投資術」に比して、幾ばかりかの選択肢を読者側に残している。だからだろう。もう1つの特徴には、実際に投資信託の種類を選択する場合の判断材料になる投資信託説明書の読み取り方や、インターネットで投資信託を購入するための操作方法を、実際のマネックス証券の画面を例にとりながら、解説してくれている点が挙げられる。

ちなみに、私自身、なぜこの2冊を買ったのかと言えば、やはりAmazonでの評価が高かったからだ。で、読んでみてどうだったかと言えば、その評価は妥当だったように思う。特徴を述べる際に触れたように、これらの本を読めば、投資信託を理解できるだけでなく、明日から具体的にどうすればいいか・・・その答えを得ることができる。

■投資信託に既に何らかの興味を持っている初心者にこそオススメ

では、最後にこの本の対象読者は誰か? 以下のいずれかに合致する人は読むべきだろう。言い換えると、”積立て投資術”に興味のない人は読むべき本じゃないし、興味がある人は読むべき本だと思う。

・投資信託が、何なのかを知りたい
・とりあえず投資信託を、気軽に始めてみたい
・何も考えずに投資信託を始めたが、きちっと理解しておきたい

わたしの場合は、3つめが当てはまるが、この本を読むことで不景気のときにこそ投資信託をやるべきという意味をようやく理解することができたし、投資信託の窓口会社の良し悪しの判断の仕方も理解できた。その意味では、これらの本を買ったのは正解だった。

  

2013年5月6日月曜日

書評: あんぽん ~孫正義伝~

この本・・・なんだか分厚いし、装丁は古めかしいし、タイトルは間の抜けた感じがするし、著者の佐野眞一氏は最近、橋本市長に「血脈主義者め!」とたたかれてたし・・・。孫正義(そんまさよし)に興味があって数ヶ月前に買ったものの、ずっと本棚に放りっぱなしになっていた。だが、昨日、ようやく重い腰をあげて読んだ。結論から言おう。素晴らしい本に出会えたことに感謝したい。

あんぽん ~孫正義伝~
著者: 佐野 眞一
出版社: 小学館


■ソフトバンク社長のルーツを三代にまで遡る本

『今から一世紀前。韓国・大邱で食い詰め、命からがら難破船で対馬海峡を渡った一族は、筑豊炭田の”地の底”から始まる日本のエネルギー産業盛衰の激流に飲み込まれ、豚の糞尿と密造酒のにおいが充満する差が・鳥栖駅前の朝鮮部落に、1人の異端児を産み落とした。孫家三代海峡物語、ここに完結!』(本書の帯より)

本を開く前から、鮮烈なメッセージが目に飛び込んでくる。いったい何が孫正義(そんまさよし)というカリスマを生んだのか。本書は、著者佐野眞一氏が、孫正義の生まれ育ったルーツにこそ、そのヒントがあると確信し、自身の足で徹底的・客観的に事実を調査し、そこに著者なりの考察を加え、答えを導き出そうとしたものである。そのようなわけで、この本には孫正義本人が誕生してからこれ(2011年)までの年表はもちろんのこと、西暦500年頃にいたという韓国の筍(スン)将軍にまで遡る家系図までついている。体裁だけを見れば、さながら、既に亡くなった偉人を語る伝記物語のような印象だ。

■孫正義、血脈、佐野眞一・・・この本がもたらす4つの驚き

気がつけば口をアングリ開けながら一気に読み進めていた。本書の魅力は実は次の4つの驚きに集約されるといっても過言ではない。

1つめは、孫正義の異才ぶり。たとえば、小学校三、四年生のときに「コーヒー何倍飲んでも無料」というアイデアを出して、父親のお店を繁盛させたという話。中学校三年生のときに、学習塾のビジネスプランを書き、自分がオーナーになる前提で、当時の担任を雇われ社長としてスカウトしようとしたという話。彼にまつわる話のほんの一部にしか過ぎないが、これだけでも彼のバイタリティと強烈な才能をうかがい知ることができる。情けない話だが、わたしは驚愕の連続だった。

2つめは、血脈がもたらす影響の大きさ。”血脈”というと(橋本市長の件もあるので)誤解のないように言い換えると、血脈をきっかけとした”育ちの環境こそ”が孫正義というカリスマを作り上げたという事実だ。豚小屋同然の超極貧生活。在日という事実がもたらすイジメや就職上の制約。度量の大きい商魂たくましい父親(三憲)の存在。どんなに差別されようとも正しいことを貫く姿勢を見せる祖母の存在。ヤクザのような身内・・・。人によっては覆い隠したい過去かもしれないが、一方で、これら全てが、今日の孫正義を生む要素であったことは紛れもない事実なのだ。

3つめは、孫正義の潔さ・・・というより肝っ玉の大きさ、といったほうがいいだろう。本書は、現代のプライバシー保護主義を真っ向から否定するような本でもある。自分の家に出入りしていたカタギではない人達の話。部落出身であり、在日であるという話。たとえ成功者であっても、当事者であれば、誰もが隠したいであろう事実・・・いや場合によってはタブー視されてきたことさえもあけっぴろげに書かれている。小学校時代、孫正義氏は在日ということで差別を受け、石を投げられたとある。今ですら、ツイッターなどで「在日のくせに日本のことに口出すな!」などという暴言を受けることが少なくないという。

4つめは、著者、佐野眞一氏の取材力だ。わたしが過去に読んだ本の数などたかがしれているが、たとえば、西郷隆盛を追った「南海物語(加藤和子著)」、陸軍中将根本博を追った「この命、義に捧ぐ(門田隆将著)」。取材力・・・という一点のみで語れば、それらを遙かに凌いでいると感じた(ただし公平をきすために言えば、孫氏もその近親者もまだその多くが現役で情報を得やすいということも大きな要因と言えるだろう)。帯にあった”孫家三代海峡物語”とは、決して大げさな話ではなく、著者は日本と韓国をまたにかけ、孫正義張本人とその両親、祖父・祖母・・・あるいは彼らを知る近親者に直接インタビューを敢行している。

■様々なエッセンスが凝縮されている素晴らしい本

このように佐野氏の取材力と洞察力のお陰で、本書を読むと、孫正義のすごさ(あるいは、世間でいうところの”うさんくささ”)と、その理由の全てが分かるのだ。

加えて、八面六臂に活躍している(だが一方で頻繁に叩かれている)孫正義という人間を心から信じていいものなのかどうなのか、それを知るための足がかりにもなる。正しいことを貫く難しさと大切さ、コンプレックスを持つ者や、早くからやりたいことを見つけた者の生命力、海外に出ることの意議など、資本主義社会で成功するためのヒントも得られる。そして何よりも「自分のしてきた苦労なんぞ、本当にたかがしれている。まだまだ頑張らねば。」という励みにもなる。

嘘偽りのない人間くささがいっぱいつまっている。わたしがこれまでに読んだ中でも、驚かされることがとにかく多い、イチオシの一冊だ。



【孫正義氏に関連する類書】

2013年5月4日土曜日

書評: 感じる科学

駅から自宅までの道のりで、普段とは違う角をまがって歩いて帰ってみる。すると・・・「ええっ! こんなところに、こんなにいい店があったのか!?」なぁんていう発見があったりする。いつもとちょっと違う行動をしてみただけなのに、とてもすてきな発見ができた・・・みなさんは、そんな体験ないだろうか!? そのときの得した感・・・といったら、もうなんともたまらない。

実はつい最近、そんな体験があった。この本を読み終えたときだ。

感じる科学
著者: さくら剛
出版社: サンクチュアリ出版



本はたいていアマゾンで買う。そしてたまに市営図書館で借りる。しかし、このときは地区センターという地元にあるとても小さな図書室に足を運んで本を借りた。蔵書も少ない。雰囲気も暗い。普通であれば、借りるモチベーションがわきおこらないところだが、「意外にこんなところでしか出会えない本があるかも」などといういい加減な期待をもって、借りたのだ。

■相対性理論から進化論まで

本書は、習ったはずだけど覚えていない、ニュースでよくみるけど理解できない、重要なハズなんだけど好きになれない・・・そんな”科学”のテーマを、かき氷の氷のようにかみ砕いてかみ砕いて・・・易しく解説した本である。光の話にはじまり、相対性理論や量子論・・・そこから発展してテレポーテーションやタイムマシンの実現可能性、宇宙の創世から終焉・・・果ては進化論にいたるまで、順を追って、幅広いテーマをカバーしてくれている。

たとえば、最近よく聞く暗黒物質(ダークマター)という言葉も登場する。ダークマターとは、宇宙を構成する要素の1つだ。人間が知っている要素(星やガスなどといった物質)だけでは宇宙全体の5%程度しか説明できないらしいが、宇宙の残りを構成する多くはダークマター(とダークエネルギー)だと言われている。だが、ダークマターは目で見ることも触ることも難しく、いままでずっと「そこにあるだろう」と言われ続けながら、まだその存在が証明されていないものだ。「空気のように風を切るように走ってみると肌で感じることのできるものならいざ知らず、なぜ、見ることも触ることもできないものを”あるはずだ!”なんて言えるのか!?」 わたしはこのことずっと疑問だった。この疑問について新聞の解説欄を読んでも、理解できなかった。が、本書はそんな疑問もあっという間に解決してくれた。

※ちなみに、この答えは逆説的に導かれたもので、ダークマターなるものが存在しないと、万有引力の理論だけでは、今のように地球が太陽のまわりをくるくるまわったり、月がいつまでも地球のそばから離れなかったり・・・ということを説明できないからだそうだ。

さらに、ここ数年で話題になった”神の粒子(ヒッグス粒子)”のニュース・・・覚えているだろうか。この本が発刊されたのは2011年12月なので、さすがにこの話題自体には直接、触れていないが、本書のお陰で、このニュースの持つ意味もある程度、理解できるようになった・・・かな。

欧州原子核研究機構(CERN)が、2012年に発見した「ヒッグスらしき」粒子は、本当に長らく見つかっていなかったヒッグス粒子であるとの確信をこれまで以上に深めたと発表した。ヒッグス粒子は、宇宙の物質が質量を持つ理由を解明するカギとなる粒子だ。(2013/3/18 ナショナルジオグラフィック ニュースより)

■数式の出てこない物理の教科書

前段で「かみ砕いてかみ砕いて・・・易しく解説した本」と書いた。そうなのだ。本書のすごいところは、物理バリバリの本なのに、数式がほぼ全くといっていいほど登場しないところにある。唯一登場するのはE=MC^2だが、これもまじめに理解する必要はない。自慢じゃないが、わたしは高校のときに数式の意味が全く分からず意義も見いだせず物理から脱落したクチだ。だが、そんなわたしが楽しんで読めてしまう本なのだ。

そして何よりも、この本を読んでいると、常になにかを頭に思い浮かべながら読んでいることが多いことに気がつく。いわゆる”ビジュアル化”しながら読めるというやつで、記憶に残りやすいのだが、著者の文才によるところが大きい。

『彼ら(ゴースト)が物体を通過する体を持ちなおかつ地球の重力をうけているのなら、ゴーストは床をすり抜けて地球の中心に向かって落ちていかなければおかしいのです。・・・(中略)・・・よってパトリック・スウエイジや松嶋菜々子さん演じるゴーストは、物理法則にのっとるならば恋人からはるか遠い地球の中心部で、身動きがとれないままクリンクリンと永久に回転を続けることになるのです。』(本書 万有引力の章より引用)

このように、数行に1回は、かならず”たとえ話”・・・というのか”横道”・・・というのか・・・映画やドラマの話、ドラえもん、北斗の拳、こち亀、ミニモニ、佐々木希、クレオパトラ・・・メジャーな話からサブカル的な話題に逸れる。もしかしたら、それがウザいという人も少しはいるのかもしれないが、わたしにはそれが、愉しくてたまらなかった。難しいテーマのハズの本なのにがっついて読んでしまった。

■普段と異なる世界へ足を踏み入れてみるのも一興

「聴いていて絵が自然に思い浮かび、なおかつ論理が通っていると、ストンと腹に落ちる、それが本当の意味で伝える力なのだ」

とは、池上彰氏が人にモノゴトを伝える上で大事にしている信条だそうだ(「学び続ける力」より)。そして、このビジュアル化を”科学”という世界で見事に体現したものが本書と言っても過言ではないと思う。難解であるはずのテーマをここまでわかりやすく、しかも、おもしろおかしく伝えてくれる本は、そうそうないハズだ。私もモノを書く立場でもあるので、著者の才能に嫉妬すら覚えるほどである。

「科学を理解したいけど、意味わかんねー」と嘆いている人達
「たまには変わった本、読んでみてー」と望んでいる人達

この書評を読んだのも、何かの縁だ。だまされたと思って、一度手に取ってみてはいかがだろうか。「ええっ!こんなところにこんな本あったの!?」・・・と、そんなお得感を味わえるかも。


【”楽しんで学べる”という観点での類書】

書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...