2011年4月15日金曜日

中央公論5月号を読んで・・・原発は悪魔との契約か

中央公論5月号は「3・11と日本の命運」というテーマ。


■佐藤優の新・帝国主義の時代「大震災と大和心のをゝしさ」

佐藤氏は記事中で「東京電力、原子力安全・保安院、首相官邸を含め日本の官庁や大企業は完璧な危機管理マニュアルを持っているはず」と断言している。完璧であるにもかかわらず、それが機能していない理由として”日本人の思想問題”を挙げている。なんとなく言わんとしていることは分かるが、私は頭がそこまで良くないので、その部分の理解はパス(笑)。ただし、彼の以下の発言には私も同意したいと思った。

『読者の反発を覚悟してあえて言うが、東電と関連会社の社員に刑事免責を与えた上で、真相を語る仕組みを政治主導で作って欲しい。本件は、国民の不満を解消し、時代のけじめをつけるための国策捜査の対象になりやすい。しかし、国策捜査になると関係者が真実を語らない。それでは国益が既存される。』

事は「単に東電が悪い」という一組織に責任を押しつける次元の事象ではないと思う。東電、原発ムラと呼ばれる組織の構成員、原子力がもたらす経済効果とひきかえに原発を受け入れた市民、他県にリスクを転嫁した首都圏の人々、内閣、内閣を選んだ国会、国会を構成する国会議員、国会議員を選んだ国民、原子力の安全性に聞く耳もたずで・・・目をつぶって利便性に安穏としてきた国民・・・。この悲劇を繰り返さないために全身全霊、全力を尽くすことが必要だと思う。

■再生など望めるのか 東北の慟哭 菊池正憲

ジャーナリスト菊池氏が、被災11日後の3月22日に被災地域を訪れ取材を敢行した際の記録だ。現地で利用したタクシー運転手から聞いた話が紹介されているが、これが衝撃的で今もって私の頭から離れない。

『あの日、勤務中だった安井さん(タクシー運転手)の携帯に妻は自宅から電話をかけてきて、「お父さん、怖い。どうしたらいい?」と叫んだ。咄嗟に「しばらくじっとしていろ」と答え、電話を切った。地震は強烈だったが、「海岸から離れた我が家には、絶対に津波は来ない。外に出るとかえって危ない」と信じたからだ。けれども、そのやりとりが最後になってしまった。「なんで、”逃げろ”といわなかったのか、悔やんでも悔やみきれない・・・」』

先日読んだ本に「三陸海岸 大津波」がある。この本の中には、明治29年や昭和8年も、今回と全く同じような地震で大津波が発生し、目の前で家族や友人を失った人の声がおさめられていたが、その悲劇が、また同じように繰り返された・・・ことを思うと、本当にやりきれない気持ちで一杯だ。避けようがなかったのか。

■潤い、最後に落とされた福島県双葉町の”原発難民” 葉上太郎

今号読んだ中で最も印象に残った記事だ。いつだったかどこぞのラジオで「地震国で原発を建設するなど、悪魔と契約したも同じだ」発言をしたアメリカの政治家がいると聞いた。最初は「何を言っているんだ!?」と思ったものだ。だが、私のこの記事を読んでの感想は、まさにこの政治家が発言した「原発の建設は悪魔との契約」という表現以外に思いつかなかった。

福島第一原発がある場所は、双葉町という町だ。原発を受け入れる見返りとして、国から多額のお金(電源交付金と呼ぶらしい)をもらうことができる。加えて、原発が稼働すれば、この交付金のほかに、固定資産税や法人町民税が入る。大きなリスクを背負っての受け入れだ。これによって得られた収入は半端じゃない額(税収だけでもピーク時には23億円に上ったそうだ)だ。事実、双葉町は、こうした資金を数百に及ぶ町の事業の原資にあてたという。しかし、ここに落とし穴がある。こうした大きなお金の見返りは、いつまでも続くわけではない。原発が古くなると(会計上償却が進むため)税収がどんどん減ってくる。しかし、双葉町は支出を減らさなかった(減らさなかったのではなくて、減らせなかったのかどうかは分からないが)。

双葉町は財政が苦しくなっていった。どうしたのか・・・。なんと解決策として打ち出したのが「原発の増設」だったそうだ。

紆余曲折あったものの、結果、町には2007年度から4年間、毎年9億8000万円が交付された。更に、双葉町が幸運?だったのは、交付金を全額もらうことができたことだ。この交付金は、本来、県や県を通じて周辺市町村に配分される分もあるらしいのだが、前知事が原発に対して疑問を呈していた県は、拒否の姿勢を示して申請しなかったため、双葉町が総額40億円にものぼる交付金を丸々もらったそうである。葉上氏の記事から、このように町が原発にどんどんと傾倒していく経緯が理解できた。

思うに、原発が恐ろしいのは人間を死に至らしめる目に見えない”放射線”を出すことだけではないのだろう。原発は、人の命を支配するだけではなく、人の心をも支配してしまうシロモノだ。

一見、甘い蜜で人々を誘惑するが、猛毒を持つ・・・そう、それはまるで麻薬と言うべきか・・・。「原発の建設は悪魔との契約」であるとの表現は、ぴったりである。悪魔との契約は世界各地で結ばれている。人類の破滅をもたらす契約にならないことを切に願う。




==========2011年4月25日(追記)============
2011年4月25日号の日経ビジネス「東電の罪と罰」の中で、「原発交付金は麻薬」という記事が掲載されていた。この記事では、東京電力柏崎刈羽原発の建設について、地元柏崎市と刈羽市の苦悩を書いている。この記事によれば、「もう2基原発の増設を!」と、柏崎市の市議会議員である丸山敏彦氏が東電に求めたそうだ。理由は、上記、双葉町と全く同じである。事の深刻さを改めて伺わせる内容だと思う。

==========2011年9月14日(追記)============
2011年9月12日号の日経ビジネス「未来都市フクシマ 舞い降りる救世主」の記事に、福島県民同士にも対立が起きていることが指摘されていた。

『(避難した人が)昼間からパチンコ店に入り浸り、酒を飲んで暴れて、「もっときれいな宿に移せ」とごねる人もいる。そもそも浜通りの人々は原発の給付金で裕福な人も多かったでしょう」。ある会津若松市の旅館関係者は眉をひそめる』

何かが歪んでしまっている気がしてならない。恩恵を受ける立場でありながら、何気に”人事”ですませてきた我々”国民全員のツケ”なのかもしれない。

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