Eman al-Obeidy(イーマン・アルオベイディ)という女性が注目されている。彼女は、先月(3月)、ジャーナリストがおしかけるリビアのホテルに突然入ってきて、叫び始めた。
「私を見て、カダフィーに忠誠を誓う軍の人間に何をされたのかを!」
あたりは騒然。彼女の顔にはアザがあった。詳しく聞くと、歩いているところを拉致され、殴られ、15人に集団レイプされたのだと言うではないか。
彼女はどうやら衝撃の事実を語っている・・・今、とんでもない現場に自分たちは居合わせている・・・何十人ものジャーナリスト達がそう気づくのに時間はかからなかった。ところが・・・さらに驚くべき事が起こった。
まわりにいたホテルの従業員がかけより彼女に布をかぶせ、連れ去ろうとしたのである。
当然、ジャーナリスト達はそれを妨害すべく立ちふさがる。しかし、複数の従業員は近寄るジャーナリストを殴りつけ「おまえは狂ってる。連れて行く。」とEmanに言いながら連れ去っていった。ホテルの従業員もカダフィーに忠誠を誓う人間達が扮していたのだ。
現代において、こんなことがあっていいのだろうか?
目の前に助けを求めている人間がいる・・・助けたいと思う人たちが、手をさしのべられる距離にいる人たちが、目の前に大勢いる。
にも関わらず、彼女は連れ去られた。
後日、リビア政府は「彼女は、酔っていた」とか「彼女は、娼婦だった」とか「精神異常者だ」などと二転三転する主張を展開。その後、国営テレビでは(まともそうな)ニュースキャスターの女性が「娼婦ですら愛国心があるはずなのに、Emanにはそれすらない」とさげすんだ報道を行った。
全世界に報道され注目されたためだろう。カダフィー側もさすがに彼女を殺害する・・・という愚かな手段には訴えなかったようだ。その後CNNが解放後の彼女を発見。政府は彼女が余計なことをしゃべらないよう、当然一般の電話回線を切っている。しかしまわりの助けを借りて衛星電話を手配して、なんとかCNNが再インタビューに成功した。
そのインタビューの中で分かったことだが、Emanが誘拐されとらわれていた時、同じ場所に別の女の子(16歳くらい)が、やはりとらわれていたそうだ。その少女はもう怖くて逃げることをあきらめていたとのこと。逃げ出す恐れがないということで、その少女は縄で縛られていなかった。怖がる少女に必死に頼みこんで自分の縄をほどいてもらい、Emanは逃げ出すことに成功した・・・ジャーナリストがいるホテルにいたる道中なんども検問でひっかかったが、そのたびに「ホテルの従業員です」と嘘をついて切り抜けたそうだ・・・(Emanを助けてくれた少女の身がとても案じられるが・・・)。
インタビューに答えた彼女は、もちろん監視下にあり、今はトリポリの友達の家に身をよせているそうだが、当然、アパートの住人にも気を許せない状態だ。今回の事件について、裁判が行われることになったようだが、法廷に手続きに向かおうとしたところ、外に一歩足を踏み出せば銃を持った人間がつめよってきて「殺すぞ」と脅されて、裁判所にでむくことができない・・・というのが実態のようだ。もうむちゃくちゃである。人権もへったくれもあったものではない。
CNNのアンカーはこう言っている。「彼女の主張を100%証明できる客観的な証拠はない。が、彼女がものすごい危険な状態におかれているのは間違いのないことだ。我々はこれを伝える義務がある。」と。
全世界が注目している。彼女の無事を・・・そして彼女と似たような境遇にいる人々に心から祈りを捧げたい。
====追記(2011年5月9日)====
2011年5月8日付けのCNNニュースによると、アルオベイディさんは、5月5日(木)にリビアを脱出し、チュニジアへ入国することができたそうだ。今後のことは全く白紙だそうだが、とりあえずは一段落といったところか。
Tunis, Tunisia (CNN) -- Eman al-Obeidy, who garnered worldwide attention for her vocal rape allegations against the regime of Moammar Gadhafi, says she has fled Libya, fearing for her safety.
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