日経ビジネス4月11日号「3・11 不屈の国」を読んだ。思わず勢いで定期購読を始めたはいいが、週刊の購読はちょっと多かったかも・・・とすでに息切れ気味(笑)。
さて、当雑誌だが、これまではどちらかというと「被災」を中心にとりあげられた記事が多かったが、今回は、そのタイトル(「不屈の国」)からも読み取れる通り「再生」をテーマにスポットライトがあてられている。復興に向けて、どんな取り組みが始まっているか、どんな支援が差し伸べられているか、といった記事が多い。
中でも今回、個人的に興味がわいたのは、次の3つだ。
■ガス復旧に全国27社が集結
社会インフラの中でも、ガスはとりわけ復旧に時間がかかるものだ。ガスの場合は復旧に完璧さが要求されるからだ。電気であれば、多少、地中の中でケーブルのどこかが裂けていたとしても各家庭や工場に電力を届ける上であまり大きな支障はない。が、ガスの場合はガス管のどこかに少しでも穴があればガス漏れがおき、大きな二次災害につながりかねない。ガス漏れ箇所は特定するのに時間がかかる上、修復にもそれなりに時間を要する。そんなわけで、災害時にはいくら人の手があっても足りないわけだ。
この記事では、全国のガス会社が被災地に集合し、被災地のためにみんなが協力し合ってがんばっている姿が取り上げられている。天災は1社だけが良ければいいというものでもないし、1社だけで対応できるものでもない。こういった”共助”は、防災・事業継続を考えるうえで、極めて大事なことだと思う。
■”憧れの街”を取り戻す
この記事では、松崎浦安市長が今回の地震について、そして政府の対応について、激白している。浦安は、東日本大震災で液状化被害(埋立地のような地盤のゆるい土地が地震の影響で、あたかも液体であるかのような状態に変化し、建物や地中のパイプが支えを失い大きな被害を受ける被害のこと)が目立った地域だ。
とりわけ、液状化問題を事前に十分に認識しておきながら、とってあった対策が十分に機能しなかった、という話は興味深かった。市長は記事で次のように述べている。
『もともと、液状化を事前に止めることはまず不可能と考えていましたので、浦安市としてはライフラインの復旧に全力を挙げるというところに意識を置いて対策を講じてきました。そのための上水タンクも完備していたんです。(中略)・・・正直言って、このタンクは浦安市の自慢でしたが、(3基中)2基が液状化でだめになりました。』
何事も完璧な予想などあり得ない。はずれて当然・・・大事なのは失敗から学ぶこと・・・と個人的には思いたい
■中国でも原発推進に逆風
タイトルは「原発推進に逆風」とあるが、私が驚いたのは中国にある稼働中ないし建設中の原発の数だ(「NUCLEAR TECHNOLOGY REVIEW 2010」データによれば、中国で建設中の原子炉は31基とあるが、日経ビジネスのデータ(77基)のほうが新しいと思われる)。
- 現在稼働中の原子炉・・・13基
- 建設中及び計画中の原子炉・・・77基
- 地方政府が建設の意向を表明しているものが144基
仮にもし中国で全て原子炉が建設されれば、第一位のアメリカ(104基)を超える数だ。
ところで日本は?というとデータによれば54基。福島第一原発の事故で1号機から4号機までの4基の話題だけで世界の注目を集めている現状を考えると54基という数は「えっ!?そんなにもあるの!?」と驚いてしまう数だ。
福島原発事故のニュースを受けて、中国政府は原子炉建設の一時中止を宣言しているらしいが、それにしても注目すべきは、その数。そしてその数もさることながら、その建設場所だ。基本的に原子力は燃料棒を常に冷却する必要があることから大量の水が必要とされる。そういう意味で、その多くが中国の東海岸沿いに建設されている。どんなに信頼性が高かろうが、数が増えれば事故が起きる確率も高くなるわけで・・・。今は福島県にみんなの目が向いているが、もう少し高いところから俯瞰的に日本列島を見てみると、中国をはじめ隣国の原子力発電所は気になって仕方がない(もちろん、彼ら隣国は、逆に日本の原発事故が気になって仕方がないのだとは思うが・・・)
いずれにせよ、日本の原発だけではなく、もう少し広い視野でアンテナをはっておく必要があるのは間違いなさそうである。
====2011年4月27日(追記)====
日経ビジネス2011年4月25日号「東電の罪と罰」に「中国で多発する放射線事故」という記事が掲載されていた。そこには、中国では88年から98年までの10年間に332件の放射線事故が発生し、966人が被曝したというデータが載っていた。事故発生率は米国の40倍だともあった。いよいよ怖い・・・。
====2011年5月9日(追記)====
日経ビジネス2011年5月9日号「不動産ショック」で、≪編集長インタビュー≫ 小林喜光氏(三菱ケミカルホーディングス社長)「総合」だから危機に強い で小林社長が次のように述べていた。
『中国やインドはかつて日本がやってきたことを、これからやります。中国の沿岸部に ある原発の安全にも日本の教訓をいかさなければなりません。そうでなければ、日本が原発を止めたところで、中国で事故が起きれば、偏西風に乗って、放射性物質が来るかもしれない。グローバルな見方で、原発を人類の一種の宝と捉えて安全対策を進めるべきです』
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