
ハーバードビジネスレビュー2011年4月号のテーマは"The Failure Issue"...ずばり「失敗」。なかなか面白いテーマで学びが多かった。
全体的に「どう失敗から学ぶか!?」「どう成功から学ぶか!?」「失敗を積極的に受け入れる文化を醸成するにはどうしたらいいのか!?」といった疑問にスポットライトを当てた記事が多かった。
特に興味深く読んだのは以下の記事だ。
- Block Buster's Former CEO On Sparring with an Activist Shareholder
- How to avoid catastrophe
■Block Bustere's Former CEO On Sparring with an Activist Shareholder
(ブロックバスターの前CEO・・・物言う株主とのバトル)
ブロックバスターは欧米で有名なビデオレンタルチェーン店だった。私もイギリスに住んでいたときにだいぶお世話になったので良く覚えている。本記事では、この会社に1997年からCEOとして経営に携わっていたJohn Antiocco(ジョン・アンティオッコ)氏の失敗談・・・敗北談?(記事を最後まで読むと、本当にそうか!?と疑問に思ってしまうが・・・)が紹介されている。話はこうだ。

戦略の優れた金のかかるCEO(アンティオッコ氏) vs. 物言う株主(カールイチャン氏)
この記事が面白いのは、前CEOであるアンティオッコ氏の言い分と、カール・イチャン氏の言い分が両方掲載されていることだ。アンティオッコ氏は「自分の戦略は正しかった。途中から、イチャン氏が入ってきてかき混ぜたことは非常に残念でならなかった」と述べている。これに対し、イチャン氏は「アンティオッコ氏の受け取っていた報酬は異常に高かった。そして、氏は私が短期的な利潤追求者で、なおかつ、私怨で個人的に彼を攻撃していたと思っているようだが、そんなことはない。当時、役員の中に彼のそうしたスタンスに強く反感を覚えていた者が多かったのは事実だ。戦略面だけを語れば、彼の選択していた道は正しかったようには思うが・・・」
この記事から何を学び取ればいいのか?
記事にはイチャン氏が指摘する”多額の報酬”とやらがいくらか載っていなかったので、自分で調べてみたが、どうやら2004年の報酬だけで5億1千6百万ドル(557億円)だったようだ。ちなみに当時(2004年度)の財務諸表を見ると総利益が36億ドル(3,888億円)。アンティオッコ氏の報酬が総利益の14%を占めている換算になる。こうした数字だけで見ると、アンティオッコ氏もステークホルダーの長期的な利益を必ずしも重視していたような印象は持てない。一方、イチャン氏は業界の変化を十分に読み取れたなかった・・・(あるいは読み取れる人材を役員に送り込めなかった)という点では、もちろん彼にも責任はある。
以上から、イチャン氏もアンティオッコ氏も、どっちかが正しくどっちかが間違っていた・・・ということではなく、どっちにも反省すべき点が多分にあったと考える。が、イチャン氏がCEOのポジションを追われる際に多額の報酬(24.7億ドル:2667億円)をもらうことに成功している一方で、アンティオッコ氏は倒産により多額の損失を出しており、また従業員や投資家も多くの痛みを伴った事実だけをみると、イチャン氏の一人勝ちといった様相は否めない。信条としては、やはり記事中一方的な主張を繰り広げるイチャン氏を支持できない・・・というか好きになれない。
■How to avoid catastrophe
(大災害を避けるには?)

記事では、事例の1つとしてBP社が起こしたメキシコ湾オイル流出事故を挙げている。運悪く起きた事故ではなく、起こるべくして起こった事故であったことが判明しているそうだ。使用していた安全性を確保するための機材は欠陥だらけの製品であったことが大分前から分かって(にも関わらず使用を続けて)いたことや、安全性確保のための作業手順の手抜きが常態化していたことを指摘している。
にもかかわらず経営陣が何ら改善策をとらなかったのはなぜか?
これは、いずれも“結果的には”大事故には至らなかったため判断が曇ったのでは、と言われている。BPの経営陣は、何十回というニアミスが起きているにもかかわらず(偶然とも言える)成功に、むしろ安心感を得て、その裏に潜んでいたはずの問題を問題としてとらえることができなかったのではないか。その結果、どのような大惨事になったか?・・・はご承知おきの通りだ。
“経験からの学び”については、目に見えやすい課題・・・すなわち“失敗”から学ぶことも重要だが、“成功”から学ぶ(すなわち、成功の裏に隠れた失敗がなかったのかを見ようとする)姿勢を持つことが大事なことであるな、と改めて感じた。東日本大震災で、「結果的にはなんとかなったよね」と少しでも思っている人には、この記事を警告として受け取って欲しいと思う。
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