2011年4月28日木曜日

HBR 2011年4月号 ”失敗”


ハーバードビジネスレビュー2011年4月号のテーマは"The Failure Issue"...ずばり「失敗」。なかなか面白いテーマで学びが多かった。

全体的に「どう失敗から学ぶか!?」「どう成功から学ぶか!?」「失敗を積極的に受け入れる文化を醸成するにはどうしたらいいのか!?」といった疑問にスポットライトを当てた記事が多かった。

特に興味深く読んだのは以下の記事だ。

  • Block Buster's Former CEO On Sparring with an Activist Shareholder
  • How to avoid catastrophe

■Block Bustere's Former CEO On Sparring with an Activist Shareholder
(ブロックバスターの前CEO・・・物言う株主とのバトル)


ブロックバスターは欧米で有名なビデオレンタルチェーン店だった。私もイギリスに住んでいたときにだいぶお世話になったので良く覚えている。本記事では、この会社に1997年からCEOとして経営に携わっていたJohn Antiocco(ジョン・アンティオッコ)氏の失敗談・・・敗北談?(記事を最後まで読むと、本当にそうか!?と疑問に思ってしまうが・・・)が紹介されている。話はこうだ。

ご多分に漏れず、競争の激化で、ビデオレンタル店としてのシェアに伸び悩んでいた。ライバルは(今日では当たり前になりつつある)日本のTSUTAYA DISCASやDMMが手がけているようなメール便を利用したレンタルサービスを開始し、ジワジワとブロックバスターを追い詰める。当時こそ業界トップを走っていた会社とは言え、ビジネスモデルを変えるというのは簡単な決断ではない。投資額も膨大だし、リスクもある。だが、アンティオッコ氏は、ビデオレンタルの延滞金で稼ぐような従来のビジネスモデルから、メール便のビジネスモデルへ切り替えようと決意する。ところが、すぐに結果の見える戦略ではなかったこと、そして、そのとき持ち上がっていた買収話が独禁法にひっかかり上手くいかなかったということがケチのつきはじめとなった。このときに、物言う株主として有名なCarl Ichan(カール・イチャン)氏が登場。アンティオッコ氏の経営手腕ならびに異常に高い報酬に異を唱え、委任状争奪(合)(経営権を奪い合う)戦をはじめる。最終的には、カール・イチャン氏が経営権を奪取し、アンティオッコ氏を追い出し・・・というお話だ。これでカール・イチャン氏がブロックバスター社の企業価値を一気に高めた・・・となれば、「あー、良かったね」という一種の成功談で終わる話だが、実際は(結果からだけで言えば)彼のとった戦略は失敗。会社は倒産とあいなった。

戦略の優れた金のかかるCEO(アンティオッコ氏) vs. 物言う株主(カールイチャン氏)

この記事が面白いのは、前CEOであるアンティオッコ氏の言い分と、カール・イチャン氏の言い分が両方掲載されていることだ。アンティオッコ氏は「自分の戦略は正しかった。途中から、イチャン氏が入ってきてかき混ぜたことは非常に残念でならなかった」と述べている。これに対し、イチャン氏は「アンティオッコ氏の受け取っていた報酬は異常に高かった。そして、氏は私が短期的な利潤追求者で、なおかつ、私怨で個人的に彼を攻撃していたと思っているようだが、そんなことはない。当時、役員の中に彼のそうしたスタンスに強く反感を覚えていた者が多かったのは事実だ。戦略面だけを語れば、彼の選択していた道は正しかったようには思うが・・・」

この記事から何を学び取ればいいのか?

記事にはイチャン氏が指摘する”多額の報酬”とやらがいくらか載っていなかったので、自分で調べてみたが、どうやら2004年の報酬だけで5億1千6百万ドル(557億円)だったようだ。ちなみに当時(2004年度)の財務諸表を見ると総利益が36億ドル(3,888億円)。アンティオッコ氏の報酬が総利益の14%を占めている換算になる。こうした数字だけで見ると、アンティオッコ氏もステークホルダーの長期的な利益を必ずしも重視していたような印象は持てない。一方、イチャン氏は業界の変化を十分に読み取れたなかった・・・(あるいは読み取れる人材を役員に送り込めなかった)という点では、もちろん彼にも責任はある。

以上から、イチャン氏もアンティオッコ氏も、どっちかが正しくどっちかが間違っていた・・・ということではなく、どっちにも反省すべき点が多分にあったと考える。が、イチャン氏がCEOのポジションを追われる際に多額の報酬(24.7億ドル:2667億円)をもらうことに成功している一方で、アンティオッコ氏は倒産により多額の損失を出しており、また従業員や投資家も多くの痛みを伴った事実だけをみると、イチャン氏の一人勝ちといった様相は否めない。信条としては、やはり記事中一方的な主張を繰り広げるイチャン氏を支持できない・・・というか好きになれない。

■How to avoid catastrophe
(大災害を避けるには?)


この記事の趣旨を一言でいうならば(記事中、このような言葉は出てこないが)「”ハインリッヒの法則”を理解せよ」である。ハインリッヒの法則とは、1:29:300の法則とも言われ、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するという意味である。つまり、大事故は突如偶然に起こるものではなく、それまでに何度となくシグナルが出ているにも関わらず見逃しているから起きるものなんだよ、というわけだ。

記事では、事例の1つとしてBP社が起こしたメキシコ湾オイル流出事故を挙げている。運悪く起きた事故ではなく、起こるべくして起こった事故であったことが判明しているそうだ。使用していた安全性を確保するための機材は欠陥だらけの製品であったことが大分前から分かって(にも関わらず使用を続けて)いたことや、安全性確保のための作業手順の手抜きが常態化していたことを指摘している。

にもかかわらず経営陣が何ら改善策をとらなかったのはなぜか?

これは、いずれも“結果的には”大事故には至らなかったため判断が曇ったのでは、と言われている。BPの経営陣は、何十回というニアミスが起きているにもかかわらず(偶然とも言える)成功に、むしろ安心感を得て、その裏に潜んでいたはずの問題を問題としてとらえることができなかったのではないか。その結果、どのような大惨事になったか?・・・はご承知おきの通りだ。

“経験からの学び”については、目に見えやすい課題・・・すなわち“失敗”から学ぶことも重要だが、“成功”から学ぶ(すなわち、成功の裏に隠れた失敗がなかったのかを見ようとする)姿勢を持つことが大事なことであるな、と改めて感じた。東日本大震災で、「結果的にはなんとかなったよね」と少しでも思っている人には、この記事を警告として受け取って欲しいと思う。

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