TBSのラジオDig、3月30日の放送では「農産物などの放射線量の基準値は妥当?」というテーマで議論が交わされていた。ラジオパーソナリティを含め、番組に出演されていた方ほぼ全員の間で
「政府の指示が曖昧だから」
「政府よもっとしっかりしろ」
「政府の発表の仕方が悪い」
「だから消費者による買い占めがおこったり、福島県産の不買が起こるんだ」
といった主張が目立っていたように思う。
もちろん、政府の対応の改善すべき点はものすごくたくさんあるだろう、しかも早急に。しかし、政府もきっとこう思っているのではないか?
「消費者が混乱しているのは、メディアが煽って消費者に伝えているせいもある」と。
実際に一部ジャーナリストの間では、メディアの報道の仕方にも問題がある・・・との指摘があがっている。
では、消費者心理はどうか?
「どこまで政府を信頼していいのか、分からないから・・・」
「メディアで凄い数値が出てるという報道が良くされているから・・・」
「放射線量の人体に与える影響が、本当に研究者によって解明されているとは思えないから・・・」
と思っているのかもしれない。
私は、今回の原発事故に伴う混乱は○○が悪い!と一方的に決めつけてしまうこと自体が問題だと思う。メディアも消費者も政府も反省すべき点があるのではなかろうか。だから、一方的にメディアが「政府が悪い」と主張するのを聞くと、「ん?本当にそうか?」とつい思ってしまう。
たとえば、メディアは良く「基準値の○○倍が検出された」という報道をしている。この報道で取り扱われる数値は”事実”ではあろうが、重要な情報が欠落している。このため、結果的に消費者心理を煽ることにつながっているのではないか。ここで私が言う欠落している「重要な情報」とは何か? 以下は、ウェブで拾ってきたニュースの一部だが、これを見て何か気づかないだろうか。
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放射性ヨウ素、放水口近くで基準値の4385倍
経済産業省原子力安全・保安院は31日、東京電力福島第一原子力発電所の南放水口近くで30日午後に採取した海水から、基準値の4385倍となる濃度の放射性ヨウ素131を検出したと発表した。同じ場所では29日午後、海水の放射性物質濃度としては最高となる基準の3355倍を記録していたが、これを上回った。放射性物質が継続して海に流出している可能性について、経産省の西山英彦大臣官房審議官は「可能性はあると思う。それを突き止めなければならない」と認めた。この場所の放射性ヨウ素131は30日午前、基準の800倍に一時低下していた。
(2011年3月31日14時01分 読売新聞)
ヨウ素検出、ハウスも5倍、基準値27倍のホウレンソウ
【社会ニュース】 2011/03/20(日) 19:00
茨城県は20日、県北部に位置する日立市で採取した露地栽培のホウレンソウから1キロ当たり5万4千ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたと明らかにした。食品衛生法の暫定基準値(2千ベクレル)の27倍。放射性セシウムも暫定基準値(500ベクレル)を上回る1931ベクレルだった。また、福島県境の北茨城市で露地のホウレンソウから基準値の12倍の2万4千ベクレルの放射性ヨウ素を検出。高萩市ではハウス栽培のホウレンソウから1万1千ベクレルと5倍の放射性ヨウ素を測定した。
(情報提供:共同通信社)
放射性ヨウ素、放水口近くで基準値の4385倍
(読売新聞) 2011年03月31日 14時01分
経済産業省原子力安全・保安院は31日、東京電力福島第一原子力発電所の南放水口近くで30日午後に採取した海水から、基準値の4385倍となる濃度の放射性ヨウ素131を検出したと発表した。同じ場所では29日午後、海水の放射性物質濃度としては最高となる基準の3355倍を記録していたが、これを上回った。放射性物質が継続して海に流出している可能性について、経産省の西山英彦大臣官房審議官は「可能性はあると思う。それを突き止めなければならない」と認めた。この場所の放射性ヨウ素131は30日午前、基準の800倍に一時低下していた。
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いずれも、ニュースヘッダは「基準値の○○倍」と書かれている。人の目を惹きつけたいのだろうし事実だろうからそれは仕方がないことなのだとしても、これを見た消費者はどう思うか? そして、気になってニュースヘッダをクリックして、記事の内容を見ても、その○○倍にもなる基準値が、結局「人体にどういった影響を与えることになるのか」といったことについては一切触れられていない。そう、一番重要な「○○倍だから、人体にはどういった影響になる」という結論がないのだ(もちろん、Digのように専門家を招いて伝えようとしているメディアがたくさんあることも事実ではある)。メディアは客観性が大事であり、事実だけを伝えることが重要なのだ・・・だから、消費者に数値だけを伝えるから、後は自己判断して・・・ということなのかもしれないが。頭だけ触れてお尻を伝えないのは煽っている、といわれても仕方が無いのではないか。AERA(アエラ)は「放射能がくる」というタイトルを雑誌につけて世間の批判を買ったが、上記のような報道の仕方も50歩100歩だと思う。そもそも消費者がそこまで情報リテラシーが高くないことをメディアは知っているはずだ。これを見た消費者は、「○○倍」という数字だけが頭に残り、怖い・・・やっぱり買うのは止めよう・・・そう思うのは当然ではないか。
そもそも「○○倍」という表現方法は総量が見えないので、情報を歪めて伝える可能性があり、非常に危険だ。たとえば「100万人に1人に影響がある」とされたものが、「100万人に10人に影響がある」ことがわかった・・・とされるだけでも、それは「10倍になった」ことになる。これが「1億人に1人に影響がある」とされたものが「1億人に10人に影響がある」とされたとしても、それだけで「10倍になった」と言える。この両者・・・10倍という数字は同じだが、実質的なインパクトは全然異なる。総量が見えないと、正確な情報も伝わらない。ちなみに余談だが、このように自分が考えられるようになったのは「リスクリテラシーが身につく統計的思考法」を読んだおかげではある。
と、メディアの伝え方を責めてばかりいるが、もちろん、メディア自体が指摘しているように政府の対応にも問題はある。消費者も数字に踊らされないように情報リテラシー(もしくはリスクリテラシー)を上げていく努力をする責任があると思う。この3者が3者とも反省し、改善しようとしていかなければ”風評被害はそう簡単にはおさまらない”。そう思う。
TBSラジオの番組があまりにも一方的な”政府たたき”になっていたので「それは違うんじゃない?」と思わず感じて、ブログに思いを吐露してしまった。
=========追記(4月7日)==========
上記ブログを書いた4日後の4月5日(火)、TBSラジオ番組小島慶子さんの”キラキラ”にゲスト出演されていた八代嘉美教授(慶応大学医学部特別研究助教授)の発言が興味深かった。わたしが考えていたこととちょうど似たようなことをおっしゃっていたからだ(もちろん八代先生の方が遙か昔から、そのようなことは主張されていたのだろうと思うが・・・)。私は3者が・・・と書いたが、先生は発言の中で「東電、政府、国民、そして科学者・・・この4者が自分の立場を認識して適切な情報発信・解釈をしなければならない」と述べられていた。
いずれにしても非常に興味がわくようになった。Twitterもされているようなので、早速フォロワーに・・・。
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20代後半から、今日にいたるまで毎日を全速力で駆け抜けてきました。疾走するスピードは毎年加速度的に増えています。 そんな自分の足跡を残したい、考えを整理したい、自分の学びの場としたい・・・こういった思いからこのブログを立ち上げました。とりわけ、読んだ本や雑誌、観た映画、その他遭遇した事件・・・などなど、思いの丈を吐露しています。
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